はじめに

このたびは Armadillo-IoT ゲートウェイ A6E をご利用いただき、ありがとうございます。

Armadillo-IoT ゲートウェイシリーズ は、各種センサーとネットワークとの接続を中継する IoT 向けゲートウェイの開発プラットフォームです。ハードウェアやソフトウェアをカスタマイズして、オリジナルのゲートウェイを素早く、簡単に開発することができます。

Armadillo-IoT ゲートウェイ A6E は、標準インターフェースとしてRS485、接点入出力2ch/2ch、Ethernet、USBを搭載。様々なセンサ・デバイスを接続することができます。

Armadillo-IoT ゲートウェイシリーズの中でも、省電力や間欠動作機能に特化した IoT ゲートウェイです。自立型のシステムを構築する際には、ソーラーパネルや蓄電池をより小さなものにでき、システム全体のコストを大幅に低減することができます。 ゲートウェイを間欠動作させることで、さらに細かな節電が可能です。スリープ時はほとんど電力を消費せず、その状態からすぐに高速起動することができます。必要なときだけゲートウェイを起動しクラウドと通信し、データ送信後は再スリープといった運用を実現します。

用途に合わせて複数のモデルを用意しています。超低消費電力でクラウドと通信できるセルラー LPWA LTE-M(Cat.M1) モジュールを搭載した「Cat.M1モデル」、より高速な通信を必要とする用途向けにLTE(Cat.1)を搭載した「Cat.1モデル」、既設のLAN/無線LANを利用する安価な「WLANモデル」「LANモデル」の4モデルが選択可能です。

Linux ベースのディストリビューションとして専用設計の Armadillo Base OS を 搭載しています。Armadillo Base OS はユーザーアプリケーションをコンテナとして管理する機能、Armadillo Base OS自体とコンテナの両方を安全にリモートアップデートする機能、ネットワークや HW セキュリティに関する機能を集約したコンパクトな Armadillo専用 OS です。

Armadillo Base OS とユーザーアプリケーションを含むコンテナはどちらも、Armadillo Base OS の リモートアップデート機能で安全にアップデートすることができます。Armadillo Base OS はアップデートの状態を 2 面化しているので電源やネットワークの遮断によって中断してもアップデート前の状態に復旧します。

ユーザーアプリケーションをコンテナとして管理できる機能を利用し、各種クラウド IoT サービス(Azure IoTやAWS IoT Core)に対応したゲートウェイコンテナを用意しました。これまでの Armadillo-IoT ゲートウェイシリーズでは、ユーザー自身が開発するアプリケーションソフトウェアで、センサーからのデータ取得、クラウドへのアップロード等のゲートウェイとしての機能の他、通信障害時の対応、セキュリティ対応、間欠動作時の挙動などの難しい課題を自ら解決する必要がありました。あらかじめ用意されたゲートウェイコンテナを活用することで、これらの課題に対処することができ、短期間に IoT システムを構築可能です。

以降、本書では他の Armadillo ブランド製品にも共通する記述については、製品名を Armadillo と表記します。

1.1. 本書で扱うこと扱わないこと

1.1.1. 扱うこと

本書では、Armadillo-IoT ゲートウェイ A6E の使い方、製品仕様(ソフトウェアおよびハードウェア)、 オリジナルの製品を開発するために必要となる情報、その他注意事項について記載しています。 Linuxあるいは組み込み機器に不慣れな方でも読み進められるよう、 コマンドの実行例なども記載しています。

また、本書では、アットマークテクノが運営するArmadilloサイトをはじめ、 開発に有用な情報を得る方法についても、随時説明しています。

1.1.2. 扱わないこと

本書では、一般的なLinuxのプログラミング、デバッグ方法やツールの扱い方、 各種モジュールの詳細仕様など、一般的な情報や、他に詳しい情報があるものは扱いません。 また、(Armadillo-IoT ゲートウェイ A6E を使用した)最終製品あるいはサービスに固有な情報や知識も含まれていません。

1.2. 本書で必要となる知識と想定する読者

本書は、読者として Armadillo-IoT ゲートウェイ A6E を使ってオリジナルのゲートウェイ機器を開発するエンジニアを想定して 書かれています。また、「Armadillo-IoT ゲートウェイ A6E を使うと、どのようなことが実現可能なのか」 を知りたいと考えている設計者・企画者も対象としています。 Armadillo-IoT ゲートウェイ A6E は組込みプラットフォームとして実績のあるArmadilloをベースとしているため、 標準で有効になっている機能以外にも様々な機能を実現することができます。

ソフトウェアエンジニア
端末からのコマンドの実行方法など、基本的なLinuxの扱い方を知っている エンジニアを対象読者として想定しています。プログラミング言語として C/C++を扱えることは必ずしも必要ではありませんが、基礎的な知識がある方 が理解しやすい部分もあります。
ハードウェアエンジニア
電子工学の基礎知識を有したエンジニアを対象読者として想定しています。 回路図や部品表を読み、理解できる必要があります。

1.3. ユーザー限定コンテンツ

アットマークテクノ Armadilloサイトで購入製品登録を行うと、製品をご購入いただいたユーザーに限定して公開している限定コンテンツにアクセスできるようになります。主な限定コンテンツには、下記のものがあります。

  • 各種信頼性試験データ・納入仕様書等製造関連情報

限定コンテンツを取得するには、6章ユーザー登録を参照してください。

1.4. 本書および関連ファイルのバージョンについて

本書を含めた関連マニュアル、ソースファイルやイメージファイルなどの関連ファイルは最新版を使用することをおすすめいたします。本書を読み始める前に、Armadilloサイトで最新版の情報をご確認ください。

1.5. 本書の構成

本書には、Armadillo-IoT ゲートウェイ A6E をベースに、オリジナルの製品を開発するために必要となる情報を記載しています。 また、取扱いに注意が必要な事柄についても説明しています。

1.6. 表記について

1.6.1. フォント

本書では以下のような意味でフォントを使いわけています。

表1.1 使用しているフォント

フォント例説明

本文中のフォント

本文

[PC ~]$ ls

プロンプトとユーザ入力文字列

text

編集する文字列や出力される文字列。またはコメント


1.6.2. コマンド入力例

本書に記載されているコマンドの入力例は、表示されているプロンプトによって、 それぞれに対応した実行環境を想定して書かれています。 「 / 」の部分はカレントディレクトリによって異なります。 各ユーザのホームディレクトリは「 ~ 」で表します。

表1.2 表示プロンプトと実行環境の関係

プロンプト コマンドの実行環境

[PC /]#

作業用PCの root ユーザで実行

[PC /]$

作業用PCの一般ユーザで実行

[ATDE ~/]#

ATDE上の root ユーザで実行

[ATDE ~/]$

ATDE上の一般ユーザで実行

[armadillo /]#

Armadillo上 Linuxの root ユーザで実行

[armadillo /]$

Armadillo上 Linuxの一般ユーザで実行

[container /]#

Podmanコンテナ内で実行

Armadillo上 U-Bootの保守モードで実行


コマンド中で、変更の可能性のあるものや、環境により異なるものに関しては以下のように表記します。適宜読み替えて入力してください。

表1.3 コマンド入力例での省略表記

表記 説明

[VERSION]

ファイルのバージョン番号


1.6.3. アイコン

本書では以下のようにアイコンを使用しています。

[警告]

注意事項を記載します。

[ティップ]

役に立つ情報を記載します。

[注記]

用語の説明や補足的な説明を記載します。

1.7. 謝辞

Armadillo で使用しているソフトウェアの多くは Free Software / Open Source Software で構成されています。Free Software / Open Source Software は世界中の多くの開発者の成果によってなりたっています。この場を借りて感謝の意を表します。