第5章 起動モードとブートローダの機能

この章では、Armadillo-9の起動モードと採用しているブートローダ「Hermit-At」の起動設定機能について説明します。

起動モードには、オートブートモード、保守モード等、システム起動時に最初に動作するソフトウェアを選択することができます。

Hermit-Atでは、Linuxカーネルを起動させる時の起動オプションの設定、システム起動時の初期設定を行うことができます。

5.1. 起動モードの選択

Armadillo-9では、ジャンパの設定を変えることで、起動モードを変更することができます。以下の表に設定と起動モードを記載します。

表5.1 ジャンパの設定と起動モード

JP1JP2起動モード
オープンオープン
オートブートモード

オンボードフラッシュメモリ内のLinuxカーネルを起動します。

オープンショート
IDEブートモード

起動可能なIDEドライブ、またはコンパクトフラッシュが接続されている場合、IDEドライブまたはコンパクトフラッシュ内のLinuxカーネルを起動します[a]。 起動可能なIDEドライブ、またはコンパクトフラッシュを作成する場合は、「Armadillo-9 ソフトウェアマニュアル」を参照してください。

保守モード

上記以外の場合にHermitコマンドプロンプトを起動します。

ショート-
EP93XXオンチップブートモード

EP93XXオンチップブートROMを起動します [b]

[a] カーネルの検出は、IDEドライブ → コンパクトフラッシュの順です。

[b] ブートローダの復旧などに使用します。


5.2. Linuxカーネル起動オプションの設定

Linuxカーネル起動オプションを変更することで、コンソールや、ルートファイルシステム等の様々な種類の設定を変更することができます。ここでは、Armadillo-9に関係のある代表的なオプションについて説明します。

また、これらの設定は、Hermit-Atのsetenvコマンドを使用します。setenvで設定されたパラメータはフラッシュメモリに保存され再起動後にも設定が反映されます。

設定されたパラメータをクリアするには、clearenvコマンドを使用します。

hermit> clearenv

図5.1 Linuxカーネル起動オプションのクリア


5.2.1. コンソールの設定

Armadillo-9の起動ログの出力コンソールを変更するには、下記のようにconsoleパラメータを使用して出力先のコンソールを指定します。

hermit> setenv console=ttyAM0

図5.2 コンソールの指定


5.2.2. ルートファイルシステムの設定

ルートファイルシステムとしてマウントするファイルシステムイメージの場所や、マウントするファイルシステム等を設定します。各パラメータの意味は以下を参照してください。

root

使用するルートファイルシステムのパーティションを指定します。

rootfs

使用するルートファイルシステムのタイプを指定します。

rootdelay

ルートファイルシステムをマウントする前のディレイ時間を指定します。単位は秒です。

hermit> setenv root=/dev/hda1 rootfs=ext2 rootdelay=3

図5.3 ルートファイルシステムの指定


5.2.2.1. ルートファイルシステムイメージの場所

ファイルシステムイメージの場所を設定する場合は、イメージが存在するパーティションを設定します。各デバイスのパーティションノードの例を、表5.2「ルートファイルシステムデバイス」に示します。指定がない場合(デフォルト)は、RAMディスク(/dev/ram0)が指定されます。

表5.2 ルートファイルシステムデバイス

デバイス名デバイスノード先頭パーティションノード
RAMディスク/dev/ram/dev/ram0
ハードディスク/dev/hda/dev/hda1
コンパクトフラッシュディスク/dev/hdc/dev/hdc1

5.2.2.2. ルートファイルシステムタイプ

JFFS2などの特異なファイルシステムを使用する場合は、ファイルシステムタイプを指定します。指定がない場合は、ext2、ext3、msdos、vfatのいずれかでマウントされます[3]

5.2.2.3. マウント前ディレイ

Linuxカーネルは、指定するルートファイルシステムが存在するデバイスの認識が完了していなければ、ルートファイルシステムをマウントすることはできません。ドライバのロードタイミングやデバイスに依存する時間等、デバイスの認識時間は様々な要素で変動します。

ここで指定することができるマウント前ディレイは、ルートファイルシステムをマウントする前に、指定秒間待機するオプションとなります。指定がない場合(デフォルト)は、待機なしとなります。

5.2.3. その他の起動オプション

本書で紹介したオプション以外にも様々なオプションがあります。詳しくは、Linuxの解説書や、Linuxカーネルのソースコードに含まれるドキュメント(kernel-source/Documentation/kernel-parameters.txt)等を参照してください。

また、ビデオに関するオプションは 9章ビデオを参照してください。

5.2.4. 起動オプションの設定例

コンソールをCON2にする場合

hermit> setenv console=ttyAM1

図5.4 起動オプション設定例1


コンソールをCON1、ルートファイルシステムをコンパクトフラッシュのパーティション1にする場合

hermit> setenv console=ttyAM0 root=/dev/hdc1 rootdelay=3

図5.5 起動オプション設定例2


コンソールをビデオに出力、ルートファイルシステムをハードディスクのパーティション2にする場合

hermit> setenv console=video root=/dev/hda2 rootdelay=1

図5.6 起動オプション設定例3




[3] Linuxカーネルが標準でサポートするファイルシステムの場合は、特に指定は必要ありません。