応用編

目次

6.1. persist_file について
6.2. コンテナ
6.2.1. Podman - コンテナ仮想化ソフトウェアとは
6.2.2. コンテナの基本的な操作
6.2.2.1. イメージからコンテナを作成する
6.2.2.2. イメージ一覧を表示する
6.2.2.3. コンテナ一覧を表示する
6.2.2.4. コンテナを起動する
6.2.2.5. コンテナを停止する
6.2.2.6. コンテナの変更を保存する
6.2.2.7. コンテナの自動作成やアップデート
6.2.2.8. コンテナを削除する
6.2.2.9. イメージを削除する
6.2.2.10. コンテナとコンテナに関連するデータを削除する
6.2.2.11. 実行中のコンテナに接続する
6.2.2.12. コンテナ間で通信をする
6.2.2.13. podでコンテナのネットワークネームスペースを共有する
6.2.2.14. networkの作成
6.2.2.15. コンテナからのコンテナ管理
6.2.2.16. リモートリポジトリにコンテナを送信する
6.2.2.17. イメージを eMMC に保存する
6.2.2.18. イメージを SWUpdate で転送する
6.2.2.19. 開発時に有用な—privilegedオプション
6.2.3. コンテナ起動設定ファイルを作成する
6.2.3.1. コンテナイメージの選択
6.2.3.2. ポート転送
6.2.3.3. デバイスファイル作成
6.2.3.4. ボリュームマウント
6.2.3.5. ホットプラグデバイスの追加
6.2.3.6. pod の選択
6.2.3.7. ネットワークの選択
6.2.3.8. IP アドレスの設定
6.2.3.9. 読み取り専用設定
6.2.3.10. イメージの自動ダウンロード設定
6.2.3.11. コンテナのリスタート設定
6.2.3.12. 信号を受信するサービスの無効化
6.2.3.13. 自動起動の無効化
6.2.3.14. 実行コマンドの設定
6.2.3.15. podman run に引数を渡す設定
6.2.4. アットマークテクノが提供するイメージを使う
6.2.4.1. ABOSDE からインストールする
6.2.4.2. Docker ファイルからイメージをビルドする
6.2.4.3. ビルド済みのイメージを使用する
6.2.5. alpine のコンテナイメージをインストールする
6.2.6. コンテナのネットワークを扱う
6.2.6.1. コンテナの IP アドレスを確認する
6.2.6.2. コンテナに固定 IP アドレスを設定する
6.2.7. コンテナ内にサーバを構築する
6.2.7.1. HTTP サーバを構築する
6.2.7.2. FTP サーバを構築する
6.2.7.3. Samba サーバを構築する
6.2.7.4. SQL サーバを構築する
6.2.8. 画面表示を行う
6.2.8.1. X Window System を扱う
6.2.8.2. フレームバッファに直接描画する
6.2.8.3. タッチパネルを扱う
6.2.9. パワーマネジメント機能を使う
6.2.9.1. サスペンド状態にする
6.2.9.2. 起床要因を有効化する
6.2.9.3. パワーマネジメントの仕様
6.2.10. コンテナからのpoweroff及びreboot
6.2.11. 異常検知
6.2.11.1. ソフトウェアウォッチドッグタイマーを扱う
6.3. swupdate がエラーする場合の対処
6.4. mkswu の .desc ファイルを編集する
6.4.1. インストールバージョンを指定する
6.4.2. Armadillo へファイルを転送する
6.4.3. Armadillo 上で任意のコマンドを実行する
6.4.4. Armadillo にファイルを転送し、そのファイルをコマンド内で使用する
6.4.5. 起動中の Armadillo で任意のコマンドを実行する
6.4.6. Armadillo にコンテナイメージを転送する
6.4.7. Armadillo のブートローダーを更新する
6.4.8. SWU イメージの設定関連
6.4.9. Armadillo 上のコンテナイメージと自動起動用confファイルを削除する
6.4.10. SWUpdate 実行中/完了後の挙動を指定する
6.4.11. desc ファイル設定例
6.4.11.1. 例: sshdを有効にする
6.4.11.2. 例: Armadillo Base OSアップデート
6.4.11.3. 例: swupdate_preserve_files で Linux カーネル以外の Armadillo-640 向けのイメージをインストールする方法
6.5. swupdate_preserve_files について
6.6. SWU イメージの内容の確認
6.7. SWUpdate と暗号化について
6.8. hawkBit サーバーから複数の Armadillo をアップデートする
6.8.1. hawkBitとは
6.8.2. データ構造
6.8.3. hawkBitサーバーから複数のArmadilloに配信する
6.8.3.1. hawkBit のアップデート管理を CLI で行う
6.8.3.2. SWU で hawkBit を登録する
6.9. Web UI から Armadillo をセットアップする (ABOS Web)
6.9.1. ABOS Web ではできないこと
6.9.2. ABOS Web の設定機能一覧と設定手順
6.9.3. コンテナ管理
6.9.4. SWUインストール
6.10. ssh 経由で Armadillo Base OS にアクセスする
6.11. コマンドラインからネットワーク設定をする
6.11.1. 接続可能なネットワーク
6.11.2. IP アドレスの確認方法
6.11.3. ネットワークの設定方法
6.11.3.1. nmcli について
6.11.4. nmcli の基本的な使い方
6.11.4.1. コネクションの一覧
6.11.4.2. コネクションの有効化・無効化
6.11.4.3. コネクションの作成
6.11.4.4. コネクションの削除
6.11.4.5. 固定IPアドレスに設定する
6.11.4.6. DNS サーバーを指定する
6.11.4.7. DHCP に設定する
6.11.4.8. コネクションの修正を反映する
6.11.4.9. デバイスの一覧
6.11.4.10. デバイスの接続
6.11.4.11. デバイスの切断
6.11.5. 有線 LAN
6.12. ストレージの操作
6.12.1. ストレージ内にアクセスする
6.12.2. ストレージを安全に取り外す
6.12.3. ストレージのパーティション変更とフォーマット
6.13. 動作中の Armadillo の温度を測定する
6.13.1. 温度測定の重要性
6.13.2. atmark-thermal-profiler をインストールする
6.13.3. atmark-thermal-profiler を実行・停止する
6.13.4. atmark-thermal-profiler が出力するログファイルを確認する
6.13.5. 温度測定結果の分析
6.13.5.1. サーマルシャットダウン温度の確認
6.13.5.2. 温度測定結果のグラフ化
6.13.5.3. CPU使用率の確認
6.13.6. 温度センサーの仕様
6.14. Armadillo Base OS をアップデートする
6.15. ロールバック状態を確認する
6.16. Armadillo 起動時にコンテナの外でスクリプトを実行する
6.17. u-boot の環境変数の設定
6.18. SDブートの活用
6.18.1. ブートディスクの作成
6.18.2. SDブートの実行
6.19. Armadilloのソフトウェアをビルドする
6.19.1. ブートローダーをビルドする
6.19.2. Linux カーネルをビルドする
6.19.3. Alpine Linux ルートファイルシステムをビルドする
6.20. Network Time Protocol (NTP, ネットワーク・タイム・プロトコル)
6.21. eMMC の GPP(General Purpose Partition) を利用する
6.21.1. squashfs イメージを作成する
6.21.2. squashfs イメージを書き込む
6.21.3. GPP への書き込みを制限する
6.21.4. 起動時に squashfs イメージをマウントされるようにする
6.21.5. ウォッチドッグタイマー
6.22. 動作ログ
6.22.1. 動作ログについて
6.22.2. 動作ログを取り出す
6.22.3. ログファイルのフォーマット
6.22.4. ログ用パーティションについて
6.23. viエディタを使用する
6.23.1. viの起動
6.23.2. 文字の入力
6.23.3. カーソルの移動
6.23.4. 文字の削除
6.23.5. 保存と終了
6.24. eFuse を変更する
6.24.1. ブートモードとジャンパーピン
6.24.1.1. ブートモードと JP2
6.24.1.2. ブートデバイスと JP1
6.24.2. eFuse の書き換え
6.24.3. Boot From Fusesモード
6.24.3.1. BT_FUSE_SEL
6.24.3.2. eMMC からのブートに固定
6.24.3.3. eFuse のロック
6.25. 電気的仕様
6.25.1. 絶対最大定格
6.25.2. 推奨動作条件
6.25.3. 入出力インターフェースの電気的仕様
6.25.4. 電源回路の構成
6.25.5. 外部からの電源制御
6.25.5.1. ONOFFピンの制御について
6.25.5.2. PWRONピンの制御について
6.25.5.3. RTC_BATピンについて
6.26. 形状図
6.26.1. 基板形状図
6.27. オプション品
6.27.1. USBシリアル変換アダプタ(Armadillo-640用)
6.27.1.1. 概要
6.27.2. Armadillo-600シリーズ オプションケース(樹脂製)
6.27.2.1. 概要
6.27.2.2. 組み立て
6.27.2.3. 形状図
6.27.3. Armadillo-600シリーズ オプションケース(金属製)
6.27.3.1. 概要
6.27.3.2. 組み立て
6.27.3.3. 形状図
6.27.4. LCDオプションセット(7インチタッチパネルWVGA液晶)
6.27.4.1. 概要
6.27.4.2. 組み立て
6.27.5. Armadillo-600シリーズ RTCオプションモジュール
6.27.5.1. 概要
6.27.5.2. 仕様
6.27.5.3. ブロック図
6.27.5.4. インターフェース一覧
6.27.5.5. CON1(Armadillo-600シリーズ接続インターフェース)
6.27.5.6. CON3(USBホストインターフェース)
6.27.5.7. CON4、CON5、CON6(RTCバックアップインターフェース)
6.27.5.8. JP1(ONOFFピン接続ジャンパ)
6.27.5.9. Armadillo-640とRTCオプションモジュールの組み立て
6.27.5.10. 電池の取り付け、取り外し
6.27.5.11. 形状図
6.27.6. Armadillo-600シリーズ WLANコンボ、BT/THオプションモジュール
6.27.6.1. 概要
6.27.6.2. 仕様
6.27.6.3. ブロック図
6.27.6.4. インターフェース一覧
6.27.6.5. CON1(Armadillo-600シリーズ接続インターフェース)
6.27.6.6. CON2(拡張インターフェース)
6.27.6.7. 形状図
6.27.6.8. オプションボードの組み立て
6.27.6.9. アンテナの組み立て
6.27.6.10. ケースの組み立て
6.27.6.11. シリアルコンソールの使用方法
6.27.7. 無線LAN用 外付けアンテナセット 08
6.27.7.1. 概要
6.27.7.2. アンテナケーブルコネクタの嵌合
6.27.7.3. アンテナケーブルコネクタの抜去
6.27.7.4. 形状図
6.27.8. 外付けアンテナ固定金具 00
6.27.8.1. 概要
6.27.8.2. 組み立て
6.27.8.3. 形状図

本章では、ここまでの内容で紹介しきれなかった、より細かな Armadillo の設定方法や、開発に役立つヒントなどを紹介します。

各トピックを羅列していますので、目次の節タイトルからやりたいことを探して辞書的にご使用ください。

6.1. persist_file について

Armadillo BaseOS ではルートファイルシステムに overlayfs を採用しています。

そのため、ファイルを変更した後 Armadillo の電源を切ると変更内容は保持されません。 開発中などに rootfs の変更内容を保持するには、変更したファイルに対して persist_file コマンドを使用します。

開発以外の時は安全のため、ソフトウェアアップデートによる更新を実行してください。 SWUpdate に関しては 「アップデート機能について」 を参照してください。

rootfs の内容を変更しても、ソフトウェアアップデートを実施した際に変更した内容が保持されない可能性があります。 ソフトウェアアップデート実施後も変更内容を保持する手順に関しては 「swupdate_preserve_files について」 を参照してください。

persist_file コマンドの概要を 図6.1「persist_file のヘルプ」 に示します。

[armadillo ~]# persist_file -h
Usage: /usr/bin/persist_file [options] file [more files...]

Mode selection:
  (none) single entry copy
  -d, --delete   delete file
  -l, --list     list content of overlay
  -a, --apk      apk mode: pass any argument after that to apk on rootfs
  -R, --revert   revert change: only delete from overlay, making it
                 look like the file was reverted back to original state

Copy options:
  -r, --recurse  recursive copy (note this also removes files!)
  -p, --preserve make the copy persist through baseos upgrade
                 by adding entries to /etc/swupdate_preserve_files
  -P, --preserve-post   same, but copy after upgrade (POST)

Delete options:
  -r, --recurse  recursively delete files

Common options:
  -v, --verbose  verbose mode for all underlying commands

Note this directly manipulates overlayfs lower directories
so might need a reboot to take effect

図6.1 persist_file のヘルプ


  1. ファイルの保存・削除手順例

    [armadillo ~]# echo test > test
    [armadillo ~]# persist_file -rv /root
    '/root/test' -> '/mnt/root/test' 1
    '/root/.ash_history' -> '/mnt/root/.ash_history'
    [armadillo ~]# rm -f test
    [armadillo ~]# persist_file -rv /root
    removed '/mnt/root/test' 2
    removed '/mnt/root/.ash_history' 3
    '/root/.ash_history' -> '/mnt/root/.ash_history'

    図6.2 persist_file 保存・削除手順例


    1

    追加・変更したファイルを rootfs へコピーします。

    2

    -r を指定すると、ひとつ前の rm -f コマンドで削除したファイルがrootfsからも削除されますのでご注意ください。

    3

    すでに rootfs に存在するファイルも一度削除してからコピーするため、このようなメッセージが表示されます。

  2. ソフトウェアアップデート後も変更を維持する手順例

    [armadillo ~]# vi /etc/conf.d/podman-atmark 1
    [armadillo ~]# persist_file -P /etc/conf.d/podman-atmark 2
    [armadillo ~]# tail -n 2 /etc/swupdate_preserve_files 3
    # persist_file 20211216
    POST /etc/conf.d/podman-atmark

    図6.3 persist_file ソフトウェアアップデート後も変更を維持する手順例


    1

    何らかのファイルの内容を変更します。

    2

    -P オプションを付与して persist_file を実行します。

    3

    swupdate_preserve_files に追加されたことを確認します。

  3. 変更ファイルの一覧表示例

    [armadillo ~]# mkdir dir
    [armadillo ~]# persist_file -l
    directory          /
    directory          /root
    opaque directory   /root/dir 1
    whiteout           /root/test 2
    regular file       /root/.ash_history
    directory          /etc
    regular file       /etc/resolv.conf
    directory          /var
    symbolic link      /var/lock
    : (省略)

    図6.4 persist_file 変更ファイルの一覧表示例


    1

    rootfs のファイルを見せないディレクトリは opaque directory と表示されます。

    2

    削除したファイルは whiteout と表示されます。

  4. パッケージをインストールする時はapkコマンドを使用してメモリ上にインストールできますが、 persist_file コマンドで rootfs に直接インストールすることも可能です。

    [armadillo ~]# persist_file -a add strace
    (1/3) Installing fts (1.2.7-r1)
    (2/3) Installing libelf (0.185-r0)
    (3/3) Installing strace (5.14-r0)
    Executing busybox-1.34.1-r3.trigger
    OK: 251 MiB in 188 packages
    Install succeeded, but might not work in the running system
    Please reboot if installed program does not work 1
    [armadillo ~]# strace ls
    : (省略)
    exit_group(0)                           = ?
    +++ exited with 0 +++

    図6.5 persist_file でのパッケージインストール手順例


    1

    この例では Armadillo を再起動せずにインストールしたコマンドを使用できましたが、Armadillo の再起動が必要となるパッケージもありますので、その場合は Armadillo を再起動してください。

6.2. コンテナ

Armadillo Base OS において、ユーザーアプリケーションは基本的にコンテナ内で実行されます。 3章開発編で紹介した開発手順では、基本的に SWUpadate を使用してコンテナを生成・実行していました。

以下では、より自由度の高いコンテナの操作のためにコマンドラインからの操作方法について紹介します。

6.2.1. Podman - コンテナ仮想化ソフトウェアとは

コンテナとはホスト OS 上に展開される仮想的なユーザ空間のことです。 コンテナを使用することで複数の Armadillo-640 でも同一の環境がすぐに再現できます。 ゲスト OS を必要としない仮想化であるため、アプリケーションの起動が素早いという特徴があります。

Podman とはこのようなコンテナを管理するためのソフトウェアであり、使用方法は コンテナ管理ソフトウェアの 1 つである Docker と互換性があります。

6.2.2. コンテナの基本的な操作

この章では、コンテナ仮想化ソフトウェアの 1 つである Podman の基本的な使い方について説明します。 Armadillo-640 で実行させたいアプリケーションとその実行環境自体を 1 つの Podman イメージとして扱うことで、 複数の Armadillo-640 がある場合でも、全てのボード上で同一の環境を再現させることが可能となります。

この章全体を通して、イメージの公開・共有サービスである Docker Hub から取得した、Alpine Linux のイメージを 使って説明します。

6.2.2.1. イメージからコンテナを作成する

イメージからコンテナを作成するためには、podman_start コマンドを実行します。 podman や docker にすでに詳しいかたは podman run コマンドでも実行できますが、ここでは 「コンテナ起動設定ファイルを作成する」 で紹介するコンテナの自動起動の準備も重ねて podman_start を使います。 イメージは Docker Hub から自動的に取得されます。 ここでは、簡単な例として "ls /" コマンドを実行するコンテナを作成します。

[armadillo ~]# vi /etc/atmark/containers/my_container.conf 1
set_image docker.io/alpine
set_command ls /
[armadillo ~]# podman pull docker.io/alpine 2
Trying to pull docker.io/library/alpine:latest...
Getting image source signatures
:(省略)
Writing manifest to image destination
Storing signatures
a6215f271958c760a2975a6765016044115dbae4b90f414eba3a448a6a26b4f6
[armadillo ~]# podman_start my_container 3
Starting 'my_container'
b141e899b5ef7c9ec5434bda8f6a83d3e6bfc94f74bfb5dcef2a22041c71fdbf
[armadillo ~]# podman logs my_container 4
bin
dev
:(省略)
usr
var
[armadillo ~]#

図6.6 コンテナを作成する実行例


1

コンテナのコンフィグを作成します。このファイルでは、コンテナのイメージやコマンド、デバイスへのアクセス権限を設定します。詳しい設定の説明には 「コンテナ起動設定ファイルを作成する」 を参照ください。

2

コンテナのイメージを取得します。イメージが Armadillo に置いてない場合は「Error: docker.io/alpine: image not known」の様なエラーで失敗します。

3

コンテナを起動します。これは Armadillo 起動時に自動的に起動されるコンテナと同じものになります。自動起動が不要な場合には set_autostart no で無効化できます。

4

podman logs コマンドで出力を確認します。

"ls /" を実行するだけの "my_container" という名前のコンテナが作成されました。 コンテナが作成されると同時に "ls /" が実行され、その結果がログに残ります。 ここで表示されているのは、コンテナ内部の "/" ディレクトリのフォルダの一覧です。

[警告]

コンフィグファイルの直接な変更と podman pull によるコンテナの取得はデフォルト状態ではメモリ上でしか保存されません。

ファイルは persist_file で必ず保存し、コンテナイメージは abos-ctrl podman-storage --disk で podman のストレージを eMMC に切り替えるか abos-ctrl podman-rw で一時的に eMMC に保存してください。

運用中の Armadillo には直接に変更をせず、 SWUpdate でアップデートしてください。

コンフィグファイルを保存して、 set_autostart no を設定しない場合は自動起動します。

[ティップ]

podman_start でコンテナが正しく起動できない場合は podman_start -v <my_container>podman run のコマンドを確認し、 podman logs <my_container> で出力を確認してください。

6.2.2.2. イメージ一覧を表示する

コンテナを作成するためのイメージは、イメージ一覧を表示する podman images コマンドで確認できます。

[armadillo ~]# podman images
REPOSITORY                TAG     IMAGE ID      CREATED      SIZE
docker.io/library/alpine  latest  9c74a18b2325  2 weeks ago  4.09 MB

図6.7 イメージ一覧の表示実行例


podman images コマンドの詳細は --help オプションで確認できます。

[armadillo ~]# podman images --help

図6.8 podman images --help の実行例


6.2.2.3. コンテナ一覧を表示する

作成済みコンテナ一覧を表示するためには podman ps コマンドを実行します。

[armadillo ~]# podman ps -a
CONTAINER ID  IMAGE                            COMMAND    CREATED         STATUS                    PORTS    NAMES
d6de5881b5fb  docker.io/library/alpine:latest  ls /       12 minutes ago  Exited (0) 11 minutes ago          my_container

図6.9 コンテナ一覧の表示実行例


一覧表示により、コンテナ名やコンテナ ID を確認することができます。-a オプションを付けない場合は、動作中のコンテナのみ表示されます。 podman ps コマンドの詳細は --help オプションで確認できます。

[armadillo ~]# podman ps --help

図6.10 podman ps --help の実行例


6.2.2.4. コンテナを起動する

作成済みのコンテナを起動するためには podman start コマンドを実行します。

[armadillo ~]# podman start my_container
podman start my_container
[ 3119.081068] IPv6: ADDRCONF(NETDEV_CHANGE): vethe172e161: link becomes ready
[ 3119.088214] IPv6: ADDRCONF(NETDEV_CHANGE): eth0: link becomes ready
[ 3119.094812] cni-podman0: port 1(vethe172e161) entered blocking state
[ 3119.101231] cni-podman0: port 1(vethe172e161) entered disabled state
[ 3119.107745] device vethe172e161 entered promiscuous mode
[ 3119.113185] cni-podman0: port 1(vethe172e161) entered blocking state
[ 3119.119546] cni-podman0: port 1(vethe172e161) entered forwarding state
my_container
[ 3119.620731] cni-podman0: port 1(vethe172e161) entered disabled state
[ 3119.627696] device vethe172e161 left promiscuous mode
[ 3119.632762] cni-podman0: port 1(vethe172e161) entered disabled state

図6.11 コンテナを起動する実行例


-a オプションを与えると、コンテナ内で実行されたアプリケーションの出力を確認できます。

[armadillo ~]# podman start -a my_container
[ 3150.303962] IPv6: ADDRCONF(NETDEV_CHANGE): vetha9ef8f8e: link becomes ready
[ 3150.311106] IPv6: ADDRCONF(NETDEV_CHANGE): eth0: link becomes ready
[ 3150.317703] cni-podman0: port 1(vetha9ef8f8e) entered blocking state
[ 3150.324139] cni-podman0: port 1(vetha9ef8f8e) entered disabled state
[ 3150.330687] device vetha9ef8f8e entered promiscuous mode
[ 3150.336085] cni-podman0: port 1(vetha9ef8f8e) entered blocking state
[ 3150.342443] cni-podman0: port 1(vetha9ef8f8e) entered forwarding state
bin    etc    lib    mnt    proc   run    srv    tmp    var
dev    home   media  opt    root   sbin   sys    usr
[ 3150.804164] cni-podman0: port 1(vetha9ef8f8e) entered disabled state
[ 3150.811249] device vetha9ef8f8e left promiscuous mode
[ 3150.816349] cni-podman0: port 1(vetha9ef8f8e) entered disabled state

図6.12 コンテナを起動する実行例(a オプション付与)


ここで起動している my_container は、起動時に "ls /" を実行するようになっているので、その結果が出力されます。 podman start コマンドの詳細は --help オプションで確認できます。

[armadillo ~]# podman start --help

図6.13 podman start --help 実行例


6.2.2.5. コンテナを停止する

動作中のコンテナを停止するためには podman stop コマンドを実行します。

[armadillo ~]# podman stop my_container
my_container

図6.14 コンテナを停止する実行例


podman stop コマンドの詳細は --help オプションで確認できます。

[armadillo ~]# podman stop --help

図6.15 podman stop --help 実行例


6.2.2.6. コンテナの変更を保存する

コンテナに対して変更が行われた状態で、そのままコンテナを停止してしまうと変更が失なわれてしまいます。

変更を保存するには二つの方法があります。

  1. podman commit コマンドで保存する。

    [armadillo ~]# podman commit my_container image_name:latest
    Getting image source signatures
    Copying blob f4ff586c6680 skipped: already exists
    Copying blob 3ae0874b0177 skipped: already exists
    Copying blob ea59ffe27343 done
    Copying config 9ca3c55246 done
    Writing manifest to image destination
    Storing signatures
    9ca3c55246eaac267a71731bad6bfe4b0124afcdd2b80c4f730c46aae17a88f3

    図6.16 my_containerを保存する例


    podman commitで保存する度に、変更が行なわれた差分が保存されます。 繰り返し差分を保存すると、イメージサイズが大きくなってしまいます。 ストレージ容量が不足する場合は、ベースとなるOSのイメージから作り直してください。

  2. 「電源を切っても保持されるディレクトリ(ユーザーデータディレクトリ)」を使用する。

    podman_startadd_volumes コマンドでコンテナに Armadillo Base OS のディレクトリをコンテナで使うことができます。

    保存するデータの性質によって、保存先を選択してください。

    1. /var/app/volumes/myvolume: アップデートした場合はコピーされません。 ログやデータベースなど、アプリケーションが作成し続けるようなデータの保存に向いています。
    2. myvolume/var/app/rollback/volumes/myvolume: アップデートの際にコピーしてアップデートを行うので、アップデート中でも安全に使いつづけます。 アプリケーションと一緒にアップデートするようなデータの保存に向いています。

6.2.2.7. コンテナの自動作成やアップデート

podman run, podman commitでコンテナを作成できますが、定期的にアップデートをする際には コンテナの作成やアップデートを自動化できると便利です。

これを実現するために、Dockerfileとpodman buildを使います。この手順はArmadilloで実行可能です。

  1. イメージを docker.io のイメージから作りなおします

    [armadillo ~/podman-build]# cat Dockerfile
    FROM docker.io/arm64v8/alpine:latest
    
    # update & install dependencies (example: usbutils)
    RUN apk upgrade && apk add usbutils && rm -f /var/cache/apk/*
    
    # copy our application and set it to run on start
    COPY my_application /my_application
    ENTRYPOINT /my_application
    
    [armadillo ~/podman-build]# podman build -t my_image:1 -t my_image:latest .
    STEP 1: FROM docker.io/arm64v8/alpine:latest
    STEP 2: RUN apk upgrade && apk add usbutils && rm -f /var/cache/apk/*
    --> 234bf79175e
    STEP 3: COPY my_application /my_application
    --> 05ab31bb278
    STEP 4: ENTRYPOINT /my_application
    STEP 5: COMMIT my_image:latest
    --> 590e3ba6d55
    Successfully tagged localhost/my_image:1
    Successfully tagged localhost/my_image:latest
    590e3ba6d55f3e29bdef158d7283e9c4f7515567b2d3f978cfab2510dc02376b
    
    [armadillo ~/podman-build]# podman save my_image:latest -o my_image_1.tar

    図6.17 podman buildの実行例


  2. イメージを前のバージョンからアップデートします

    [armadillo ~/podman-build-update]# cat Dockerfile
    FROM localhost/my_image:latest
    
    # update OS packages
    RUN apk upgrade --no-cache
    
    # update application
    COPY my_application /my_application
    [armadillo ~/podman-build-update]# podman build -t my_image:2 -t my_image:latest .
    STEP 1: FROM localhost/my_image:latest
    STEP 2: RUN apk upgrade --no-cache
    --> cf1dc0d7296
    STEP 3: COPY my_application /my_application
    STEP 4: COMMIT my_image:latest
    --> 9e9d9366072
    Successfully tagged localhost/my_image:2
    Successfully tagged localhost/my_image:latest
    9e9d9366072751007b2e70544d76c46b95a7a5a02df658ef0fa3f7dcccf8850a
    
    [armadillo ~/podman-build-update]# podman save -o my_image_2.tar my_image:2

    図6.18 podman buildでのアップデートの実行例


    この場合、 podman_partial_image コマンドを使って、差分だけをインストールすることもできます。

    [armadillo ~/podman-build-update]# podman_partial_image -b my_image:1 \
            -o my_image_2_partial.tar my_image:2
    
    [armadillo ~/podman-build-update]# ls -lh
    -rw-r--r-- 1 root root   88 Dec 21 15:24 Dockerfile
    -rw-r--r-- 1 root root 9.4M Dec 21 15:26 my_image_1.tar
    -rw-r--r-- 1 root root 9.4M Dec 21 15:26 my_image_2.tar
    -rw-r--r-- 1 root root  51K Dec 21 15:26 my_image_2_partial.tar

作成した .tar アーカイブは 「mkswu の .desc ファイルを編集する」swdesc_embed_containerswdesc_usb_container で使えます。

6.2.2.8. コンテナを削除する

作成済みコンテナを削除する場合は podman rm コマンドを実行します。

[armadillo ~]# podman rm my_container
d6de5881b5fb973227b84d1d74abf269ac3183aad7e18b7a9d85208632641d94
[armadillo ~]# podman ps -a
CONTAINER ID  IMAGE                            COMMAND    CREATED         STATUS                    PORTS    NAMES

図6.19 コンテナを削除する実行例


podman ps コマンドの出力結果より、コンテナが削除されていることが確認できます。 podman rm コマンドの詳細は --help オプションで確認できます。

  1. podman rm --help 実行例
[armadillo ~]# podman rm --help

6.2.2.9. イメージを削除する

podmanのイメージを削除するには podman rmi コマンドを実行します。 イメージを削除するためには、そのイメージから作成したコンテナを先に削除しておく必要があります。 podman rmi コマンドにはイメージ ID を指定する必要があるため、podman images コマンドで確認します。

[armadillo ~]# podman rm my_container
[armadillo ~]# podman images
REPOSITORY                TAG        IMAGE ID      CREATED      SIZE
docker.io/library/alpine  latest     02480aeb44d7  2 weeks ago  5.62 MB
[armadillo ~]# podman rmi 02480aeb44d7
Untagged: docker.io/library/alpine:latest
Deleted: 02480aeb44d78f1a44b8791af7edf7d6e1b18707397a1dfb3ff4f21c5ce4a44f
[armadillo ~]# podman images
REPOSITORY                TAG        IMAGE ID      CREATED      SIZE

図6.20 イメージを削除する実行例


podman images コマンドの出力結果より、コンテナが削除されていることが確認できます。 podman rmi コマンドの詳細は --help オプションで確認できます。

[armadillo ~]# podman rmi --help

図6.21 podman rmi --help 実行例


[ティップ]

SWU で転送されたイメージは podman images で Read-Only として表示されますので、 podman rmi を実行するとエラーとなります。 その場合は abos-ctrl podman-rw rmi をご使用ください。 abos-ctrl podman-rw については 「イメージを eMMC に保存する」 を参照してください。

[armadillo ~]# podman images
REPOSITORY                TAG        IMAGE ID      CREATED      SIZE       R/O
docker.io/library/alpine  latest     02480aeb44d7  2 weeks ago  5.62 MB    true
[armadillo ~]# podman rmi docker.io/alpine
Error: cannot remove read-only image "02480aeb44d78f1a44b8791af7edf7d6e1b18707397a1dfb3ff4f21c5ce4a44f"
[armadillo ~]# abos-ctrl podman-rw rmi docker.io/alpine
Untagged: docker.io/library/alpine:latest
Deleted: 02480aeb44d78f1a44b8791af7edf7d6e1b18707397a1dfb3ff4f21c5ce4a44f
[armadillo ~]# podman images
REPOSITORY                TAG        IMAGE ID      CREATED      SIZE

図6.22 Read-Onlyのイメージを削除する実行例


6.2.2.10. コンテナとコンテナに関連するデータを削除する

abos-ctrl container-clear を使用すると、コンテナ、コンテナイメージ、コンテナに関するデータを削除することができます。

[警告]

全てのコンテナとコンテナイメージ、コンテナに関するデータが削除されるため、充分に注意して使用してください。

abos-ctrl container-clear は以下の通り動作します。

  • 以下のファイル、ディレクトリ配下のファイルを削除

    • /var/app/rollback/volumes/
    • /var/app/volumes/
    • /etc/atmark/containers/*.conf
  • 以下のファイルで container を含む行を削除

    • /etc/sw-versions
    • /etc/swupdate.watch
[armadillo ~]# abos-ctrl container-clear
This command will remove all containers and related data.
 - The following file and directories will be removed:
   - /var/app/rollback/volumes/
   - /var/app/volumes/
   - /etc/atmark/containers/*.conf
 - Lines containing the word "container" will be deleted from the following files:
   - /etc/sw-versions
   - /etc/swupdate.watch
Continue? [y/N]
y
Remove all container data succeeded

図6.23 abos-ctrl container-clear 実行例


6.2.2.11. 実行中のコンテナに接続する

実行中のコンテナに接続し、コンテナ内で指定したコマンドを実行するには podman exec コマンドを実行します。 podman exec コマンドでコンテナ内部のシェルを起動すると、コンテナ内部を操作できるようになります。ここでは、sleep infinity コマンドを 実行して待ち続けるだけのコンテナを作成し、そのコンテナに対して podman exec コマンドでシェルを起動する例を示します。

[armadillo ~]# vi /etc/atmark/containers/sleep_container.conf
set_image docker.io/alpine
set_command sleep infinity
[armadillo ~]# podman_start sleep_container
Starting 'test'
f62e7a666d7156d261905c8406c72fc271534fa29e69771c76f4f6660a2da41a
[armadillo ~]# podman exec -it sleep_container sh
[container ~]# ps
PID   USER     TIME  COMMAND
    1 root      0:00 /run/podman-init -- sleep infinity
    2 root      0:00 sleep infinity
    3 root      0:00 sh
    4 root      0:00 ps

図6.24 コンテナ内部のシェルを起動する実行例


podman_start コマンドでコンテナを作成し、その後作成したコンテナ内で sh を実行しています。 sh を実行すると、コンテナ内のプロンプトが表示されコンテナ内部を操作できるようになります。 上記ではコンテナ内で、ps コマンドを実行しています。コンテナ作成時に実行した sleeppodman exec で実行した sh がプロセスとして存在していることが確認できます。

コンテナ内のシェルから抜ける時は exit コマンドを実行します。

[container ~]# exit

図6.25 コンテナ内部のシェルから抜ける実行例


podman exec コマンドから抜けても、コンテナがまだ実行中です。コンテナを停止したい場合は podman stop sleep_containerpodman kill sleep_container で停止して podman rm sleep_container でそのコンテナを削除してください。

podman exec コマンドの詳細は --help オプションで確認できます。

[armadillo ~]# podman exec --help

図6.26 podman exec --help 実行例


6.2.2.12. コンテナ間で通信をする

複数のコンテナを実行している環境で、それらのコンテナ間で通信を行う方法を示します。 これにより、例えば SQL サーバを実行しているコンテナに対し別のコンテナから接続するといった 使い方ができます。

コンテナには作成した時点でローカル IP アドレスが割り当てられるので、コンテナの名前かその IP アドレスで通信を行うことができます。

準備として、2 つのコンテナを作成します。

[armadillo ~]# vi /etc/atmark/containers/my_container_1.conf
set_image docker.io/alpine
set_command sleep infinity
[armadillo ~]# vi /etc/atmark/containers/my_container_2.conf
set_image docker.io/alpine
set_command sleep infinity
[armadillo ~]# podman_start my_container_1 my_container_2
Starting 'my_container_1'
cbe0802f4e2d2fec88f4e300dabeba3b48865359dc02cbd99375b1b38c2c28eb
Starting 'my_container_2'
5e645f5e40fc096ad0bea323a00bebebbda4bd825a5e8d12103f752d8868692e

図6.27 コンテナを作成する実行例


コンテナに割り当てられた IP アドレスを確認するには podman inspect コマンドを実行します。

[armadillo ~]# podman inspect --format='{{.NetworkSettings.IPAddress}}' my_container_1
10.88.0.108
[armadillo ~]# podman inspect --format='{{.NetworkSettings.IPAddress}}' my_container_2
10.88.0.109

図6.28 コンテナの IP アドレスを確認する実行例


これらの IP アドレスを使って、一方のコンテナからもう一方のコンテナへ対し ping コマンドで疎通確認を行うことができます。

[armadillo ~]# podman exec -it my_container_1 sh
[container ~]# ping -c 2 my_container_2
PING my_container_2 (10.88.0.109): 56 data bytes
64 bytes from 10.88.0.109: seq=0 ttl=42 time=0.144 ms
64 bytes from 10.88.0.109: seq=1 ttl=42 time=0.210 ms

--- my_container_2 ping statistics ---
2 packets transmitted, 2 packets received, 0% packet loss
round-trip min/avg/max = 0.144/0.177/0.210 ms
[container ~]# ping -c 2 10.88.0.109
PING 10.88.0.109 (10.88.0.109): 56 data bytes
64 bytes from 10.88.0.109: seq=0 ttl=42 time=0.140 ms
64 bytes from 10.88.0.109: seq=1 ttl=42 time=0.138 ms

--- 10.88.0.109 ping statistics ---
2 packets transmitted, 2 packets received, 0% packet loss
round-trip min/avg/max = 0.138/0.139/0.140 ms

図6.29 ping コマンドによるコンテナ間の疎通確認実行例


このように、my_container_1(10.88.0.108) から my_container_2(10.88.0.109) への通信が確認できます。

6.2.2.13. podでコンテナのネットワークネームスペースを共有する

podman_startpod 機能を使うことができます。

pod を使うことで、複数のコンテナが同じネットワークネームスペースを共有することができます。 同じ pod の中のコンテナが IP の場合 localhost で、 unix socket の場合 abstract path で相互に接続することができます。

[armadillo ~]# cat /etc/atmark/containers/mypod.conf
set_type pod
add_ports 80:80

[armadillo ~]# cat /etc/atmark/containers/nginx.conf
set_image docker.io/library/nginx:alpine
set_readonly no
set_pod mypod

[armadillo ~]# podman ps
CONTAINER ID  IMAGE                           COMMAND               CREATED      STATUS          PORTS               NAMES
0cdb0597b610  localhost/podman-pause:4.3.1-1683096588               2 hours ago  Up 2 hours ago  0.0.0.0:80->80/tcp  5ba7d996f673-infra
3292e5e714a2  docker.io/library/nginx:alpine  nginx -g daemon o...  2 hours ago  Up 2 hours ago  0.0.0.0:80->80/tcp  nginx

図6.30 podを使うコンテナを自動起動するための設定例


コンテナと同じく、 /etc/atmark/containers/[NAME].conf ファイルを作って、 set_type pod を設定することで pod を作成します。

pod を使う時にコンテナの設定ファイルに set_pod [NAME] の設定を追加します。

ネットワークネームスペースは pod を作成するときに必要なため、 ports, networkip の設定は pod のコンフィグファイルに入れなければなりません。

必要であれば、他の podman pod create のオプションを add_args で設定することができます。

.conf ファイルで使用できる各種パラメータについては、「コンテナ起動設定ファイルを作成する」を参照してください。

6.2.2.14. networkの作成

podman_start で podman の network も作成ことができます。

デフォルトの 10.88.0.0/16 が使えない場合、あるいはコンテナ同士で接続できないようにしたい場合は使ってください。

[armadillo ~]# cat /etc/atmark/containers/mynetwork.conf
set_type network
set_subnet 192.168.100.0/24

[armadillo ~]# cat /etc/atmark/containers/nginx.conf
set_image docker.io/library/nginx:alpine
add_ports 80:80
set_ip 192.168.100.10
set_network mynetwork

[armadillo ~]# podman ps
CONTAINER ID  IMAGE                           COMMAND               CREATED      STATUS          PORTS               NAMES
3292e5e714a2  docker.io/library/nginx:alpine  nginx -g daemon o...  2 hours ago  Up 2 hours ago  0.0.0.0:80->80/tcp  nginx

図6.31 networkを使うコンテナを自動起動するための設定例


コンテナと同じく、 /etc/atmark/containers/[NAME].conf ファイルを作って、 set_type network を設定することで network を作成します。

そのネットワークを使う時にコンテナの設定ファイルに set_network [NAME] の設定をいれます。

ネットワークのサブネットは set_subnet [SUBNET] で設定します。 この設定は set_type network の後しか使えませんので、set_type はファイルの最初のところに使ってください

他の podman network create のオプションが必要であれば、 add_args で設定することができます。

.conf ファイルで使用できる各種パラメータについては、「コンテナ起動設定ファイルを作成する」を参照してください。

6.2.2.15. コンテナからのコンテナ管理

podman では REST API による管理アクセスも可能です。

自分のコンテナから他のコンテナの管理が必要な場合に、ホストの podman サービスを有効にして、 コンテナに /run/podman をボリュームマウントすれば podman --remote で管理できます。

podman_start をインストールすればそちらも --remote で使えます。

このオプションは Armadillo のホスト側の udev rules からコンテナを扱う時にも必要です。

6.2.2.16. リモートリポジトリにコンテナを送信する

  1. イメージをリモートリポジトリに送信する:

    [armadillo ~]$ podman image push <localimage> docker://<registry>/<remoteimage>:<tag>
  2. set_pull always を設定しないかぎり、SWUpdateでダウンロードの命令を送らないとアップデートを行いません。

    (mkswuについては「Armadillo のソフトウェアをアップデートする」を参考にしてください)

    [ATDE ~/mkswu]$ cp /usr/share/mkswu/examples/pull_container_nginx.desc .
    [ATDE ~/mkswu]$ cp -r /usr/share/mkswu/examples/nginx_start .
    [ATDE ~/mkswu]$ cat pull_container_nginx.desc
    swdesc_option version=1
    
    swdesc_pull_container "docker.io/nginx:alpine"
    swdesc_files --extra-os nginx_start
    [ATDE ~/mkswu]$ mkswu pull_container_nginx.desc
    Enter pass phrase for /home/atmark/mkswu/swupdate.key:
    pull_container_nginx.swu を作成しました。

6.2.2.17. イメージを eMMC に保存する

Armadillo Base OS のデフォルトでは、Podman のデータは tmpfs に保存されます。

起動時にコンテナを起動するにはイメージを eMMC に書き込む必要があります。 開発が終わって運用の場合は 「イメージを SWUpdate で転送する」 でコンテナのイメージを転送します。この場合は読み取り専用の app パーティションのサブボリュームに展開します。

開発の時に以下の abos-ctrl podman-rwabos-ctrl podman-storage --disk のコマンドを使って直接にイメージを編集することができます。

[ティップ]

ここで紹介する内容はコンテナのイメージの管理の説明です。データベース等のコンテナから書き込みが必要な場合には 「コンテナの変更を保存する」 にあるボリュームの説明を参照してください。

  • abos-ctrl podman-rw

abos-ctrl podman-rw を使えば、read-only になっているイメージを扱う事ができます。

[armadillo ~]# podman images
REPOSITORY                 TAG         IMAGE ID      CREATED            SIZE        R/O
[armadillo ~]# mount /dev/sda1 /mnt
[armadillo ~]# abos-ctrl podman-rw load -i /mnt/at-debian-image.tar
Getting image source signatures
Copying blob 63c098a71e7b done
Copying blob 837e73dd4d20 done
Copying blob a25086e65f63 done
Copying config b5a30f8581 done
Writing manifest to image destination
Storing signatures
Loaded image(s): localhost/at-debian-image:latest
[armadillo ~]# podman image list
REPOSITORY                 TAG         IMAGE ID      CREATED      SIZE        R/O
localhost/at-debian-image  latest      b5a30f8581cc  2 hours ago  233 MB      true

図6.32 abos-ctrl podman-rw の実行例


  • abos-ctrl podman-storage

abos-ctrl podman-storage はメモリとディスクの切り替えの他に、読み書きストレージから読み取り専用ストレージへのコピーもできます。

[armadillo ~]# podman pull docker.io/alpine 1
Trying to pull docker.io/library/alpine:latest...
Getting image source signatures
Copying blob f97344484467 done
Copying config 3d81c46cd8 done
Writing manifest to image destination
Storing signatures
3d81c46cd8756ddb6db9ec36fa06a6fb71c287fb265232ba516739dc67a5f07d
[armadillo ~]# abos-ctrl podman-storage 2
List of images configured on development storage:
REPOSITORY                TAG         IMAGE ID      CREATED     SIZE
docker.io/library/alpine  latest      3d81c46cd875  3 days ago  5.56 MB

What should we do? ([C]opy (default), [N]othing, [D]elete)
copy 3
Create a snapshot of '/mnt/boot_1/containers_storage' in '/mnt/new_storage'
Getting image source signatures
Copying blob 8ec3165d6e61 done
Copying config 4a49b68e7c done
Writing manifest to image destination
Storing signatures
Delete subvolume (no-commit): '/mnt/new_storage'
Merging development images to readonly storage succeeded
Feel free to adjust the result with abos-ctrl podman-rw commands

Now freeing up original data...
Podman is in tmpfs mode 4
[armadillo ~]# podman image list 5
REPOSITORY                TAG         IMAGE ID      CREATED     SIZE        R/O
docker.io/library/alpine  latest      3d81c46cd875  3 days ago  5.56 MB     true

図6.33 abos-ctrl podman-storage のイメージコピー例


1

イメージを書き込み可能ストレージに取得します。

2

abos-ctrl podman-storage をオプション無しで実行します。

3

書き込み可能ストレージにイメージがある場合に対応を聞かれます。今回はコピー(copy)します。

4

abos-ctrl podman-storage にオプションを指定しなかったので、ストレージが tmpfs のままになります。すでに --disk で切り替えた場合にディスクのままでも可能です。

5

コピーの確認します。イメージが読み取り専用(R/O, Read only)になりました。

[ティップ]

podman が壊れやすいので、デフォルトの「abos-ctrl podman-storage --tmpfs」で運用することを推奨しますが、tmpfs の容量が小さくてイメージの操作には向いてません。

開発時には「abos-ctrl podman-storage --disk」の状態で作業を行い、運用時には「abos-ctrl podman-storage --tmpfs」に戻してください。 戻る際に「copy」を選択肢する場合は一時的なストレージをそのまま使いつづけますので、すべての変更が残ります。

[警告]

SWUpdate でアップデートをインストールする際には、/var/lib/containers/storage_readonly ディレクトリの不要になったイメージを自動的に削除します。

自動起動させる予定がなくても、「コンテナ起動設定ファイルを作成する」 を参考にして、 /etc/atmark/containers/*.conf を使ってください。 set_autostart no を設定することで自動実行されません。

6.2.2.18. イメージを SWUpdate で転送する

  1. イメージをファイルに保存する:

    [armadillo ~]$ podman image save -o <myimage>.tar <localimage>
  2. ファイルをSWUpdateのイメージに入れる。

    二つのやり方があります:

    1. swuイメージ内に組み込む

      [ATDE ~/mkswu]$ cp /usr/share/mkswu/examples/embed_container_nginx.desc .
      [ATDE ~/mkswu]$ cp -r /usr/share/mkswu/examples/nginx_start .
      [ATDE ~/mkswu]$ cat embed_container_nginx.desc
      swdesc_option version=1
      
      swdesc_embed_container "nginx_alpine.tar"
      swdesc_files --extra-os nginx_start
      [ATDE ~/mkswu]$ podman pull --arch arm64 docker.io/nginx:alpine
      [ATDE ~/mkswu]$ podman run --rm docker.io/nginx:alpine uname -m
      aarch64
      [ATDE ~/mkswu]$ podman save docker.io/nginx:alpine > nginx_alpine.tar
      [ATDE ~/mkswu]$ mkswu embed_container_nginx.desc
      Enter pass phrase for /home/atmark/mkswu/swupdate.key:
      embed_container_nginx.swu を作成しました
    2. USBドライブに保存する

      [ATDE ~/mkswu]$ cp /usr/share/mkswu/examples/usb_container_nginx.desc .
      [ATDE ~/mkswu]$ cp -r /usr/share/mkswu/examples/nginx_start .
      [ATDE ~/mkswu]$ cat usb_container_nginx.desc
      swdesc_option version=1
      
      swdesc_usb_container "nginx_alpine.tar"
      swdesc_files --extra-os nginx_start
      [ATDE ~/mkswu]$ podman pull --arch arm64 docker.io/nginx:alpine
      [ATDE ~/mkswu]$ podman run --rm docker.io/nginx:alpine uname -m
      aarch64
      [ATDE ~/mkswu]$ podman save docker.io/nginx:alpine > nginx_alpine.tar
      [ATDE ~/mkswu]$ mkswu -o usb_container_nginx.swu usb_container_nginx.desc
      Enter pass phrase for /home/atmark/mkswu/swupdate.key:
      以下のファイルをUSBメモリにコピーしてください:
      '/home/atmark/mkswu/usb_container_nginx.swu'
      '/home/atmark/mkswu/nginx_alpine.tar'
      '/home/atmark/mkswu/.usb_container_nginx/nginx_alpine.tar.sig'
      
      usb_container_nginx.swu を作成しました。

6.2.2.19. 開発時に有用な—privilegedオプション

コンテナに、全権限と全てのデバイスへのアクセスを許可するオプション --privileged があります。このオプションを利用すると、コンテナに与えるべき最小の権限を洗い出す必要が無いため、開発時に有用です。

実運用の際、このオプションを利用することはセキュリティー上問題がある為、開発時にのみご利用ください。コンテナに必要な最低限の権限を与えることをおすすめします。

6.2.3. コンテナ起動設定ファイルを作成する

Armadillo Base OSでは、/etc/atmark/containers/*.confファイルに指定されているコンテナがブート時に自動的に起動します。 nginx.confの記載例を以下に示します。

[armadillo ~]# cat /etc/atmark/containers/nginx.conf
set_image docker.io/library/nginx:alpine
set_readonly no
add_ports 80:80

図6.34 コンテナを自動起動するための設定例


.conf ファイルは以下のパラメータを設定できます。

6.2.3.1. コンテナイメージの選択

set_image [イメージ名]

イメージの名前を設定できます。

: set_image docker.io/debian:latest, set_image localhost/myimage

イメージをrootfsとして扱う場合に --rootfs オプションで指定できます。

: set_image --rootfs /var/app/volumes/debian

6.2.3.2. ポート転送

add_ports [ホストポート]:[コンテナポート]

設定したポートで外部からコンテナへのアクセスが可能となります。

デフォルトはTCPで、UDPも /udp を付けて使えます。スペースで分けて複数のポートを設定することができます。

以下の例では、ポート80、443(web)、UDPの69(tftp)にアクセスすることができ、コンテナのポート22(ssh)にはポート2222からアクセスすることができます。

: add_ports 80:80 443:443 2222:22 69:69/udp

[警告]

pod を使う場合、このオプションはpodの設定にしないと有効になりませんのでご注意ください。

6.2.3.3. デバイスファイル作成

add_devices [ホストパス]:[コンテナパス]

コンテナでデバイスを作成して、使用可能となります。

コンテナパスを設定しない場合はホストと同じパスを使います。

複数のデバイスを作成したい場合はスペースで分けて設定してください。

: add_devices /dev/galcore /dev/v4l/by-id/usb-046d_HD_Pro_Webcam_C920_78DA8CAF-video-index0:/dev/video3

ホストパスに「:」を含む場合は add_device "[ホストパス]" "[コンテナパス]" で追加できます。

: add_device "/dev/v4l/by-path/platform-xhci-hcd.1.auto-usb-0:1.1:1.0-video-index1" "/dev/video3"

コンテナパスに「:」を含むようなパスは設定できません。

6.2.3.4. ボリュームマウント

add_volumes [ホストパス]:[コンテナパス]:[オプション]

指定するパスをコンテナ内でマウントして、データの保存や共有することができます。

ホストパスは以下のどちらかを指定してください。

  • /var/app/rollback/volumes/<folder><folder>:

    アップデートの際に新しくコピー(snapshot)した場合、コピー先のみ変更しますので、 アップデート中でもこのデータを使うことができます。 途中で電源が落ちた場合でも、このデータに影響はありません。

    SWUpdateでアップデートするデータに向いています。

  • /var/app/volumes/<folder>: appパーティションに書きます。

    アップデートの際にコピーされませんので、アップデート中の新たな変更は 更新されたコンテナ内のアプリケーションで見れます。

    ログやデータベースに向いています。

  • /tmp/<folder>: 複数のコンテナでメモリファイルシステムを共有したい場合に使ってください。
  • /opt/firmware: 学習能力に必要なファムウェアライブラリーのパス。

コンテナパスを設定しない場合はホストパスと同じパスを使います。

オプションは podman run--volume のオプションになりますので、 ro (read-only), nodev, nosuid, noexec, shared, slave 等を設定できます。

add_volumes /var/app/volumes/database:/database: ロールバックされないデータを/databaseで保存します。

: add_volumes assets:/assets:ro,nodev,nosuid /opt/firmware: アプリケーションのデータを/assetsで読み取り、/opt/firmwareのファームウェアを使えます。

「:」はホスト側のパスとコンテナのパスを別ける意味があるため、ファイル名やデバイス名に「:」を使うことはできません。

[ティップ]

複数のコンテナでマウントコマンドを実行することがあれば、shared のフラグで起動後のマウントを共有することができます。

[armadillo ~]# cat /etc/atmark/containers/mounter.conf
set_image docker.io/alpine
add_args -ti
add_volumes /tmp/mnt:/mnt:shared 1
add_args --cap-add SYS_ADMIN
add_device /dev/sda1
[armadillo ~]# cat /etc/atmark/containers/client.conf
set_image docker.io/alpine
add_volumes /tmp/mnt:/mnt:slave 2
add_args -ti
[armadillo ~]# podman exec mounter mount /dev/sda1 /mnt 3
[armadillo ~]# podman exec client ls /mnt 4
file_on_usb

図6.35 ボリュームを shared でサブマウントを共有する例


1

マウントを行うコンテナに shared の設定とマウント権限 (SYS_ADMIN) を与えます。

2

マウントを使うコンテナに slave だけを設定すれば一方にしか共有されません。

3

USB デバイスをマウントします。

4

マウントされたことを確認します。

6.2.3.5. ホットプラグデバイスの追加

add_hotplugs [デバイスタイプ]

コンテナ起動後に挿抜を行なっても認識される(ホットプラグ)デバイスを設定できます。

通常、コンテナ内からデバイスを扱うためには、あらかじめ Armadillo 本体に当該のデバイスを接続した状態で、コンテナを起動する必要がありますが、 add_hotplugs を使用することでホットプラグに対応できます。

: add_hotplugs input

add_hotplugs に指定できる主要な文字列とデバイスファイルの対応について、表6.1「add_hotplugsオプションに指定できる主要な文字列」に示します。

表6.1 add_hotplugsオプションに指定できる主要な文字列

文字列引数の説明対象のデバイスファイル

input

マウスやキーボードなどの入力デバイス

/dev/input/mouse0, /dev/input/event0 など

video4linux

USB カメラなどの video4linux デバイスファイル

/dev/video0 など

sd

USB メモリなどの SCSI ディスクデバイスファイル

/dev/sda1 など


表6.1「add_hotplugsオプションに指定できる主要な文字列」に示した文字列の他にも、/proc/devicesの数字から始まる行に記載されている文字列を指定することができます。 図6.36「/proc/devicesの内容例」に示す状態の場合、デバイスタイプを示す文字列としては、各行の先頭の数字を除いた mempty などを指定できることがわかります。

[armadillo ~]# cat /proc/devices
Character devices:
  1 mem
  2 pty
  3 ttyp
  4 /dev/vc/0
  4 tty
  4 ttyS
  5 /dev/tty
  5 /dev/console
  5 /dev/ptmx
  7 vcs
 10 misc
 13 input
 29 fb
 81 video4linux
: (省略)

図6.36 /proc/devicesの内容例


デバイスタイプと実際のデバイスファイルの対応については、 カーネルドキュメント: devices.txt(Github) を参照してください。

複数のデバイスタイプを指定したい場合はスペースで分けて設定してください。

: add_hotplugs input video4linux sd

6.2.3.6. pod の選択

set_pod [ポッド名]

「podでコンテナのネットワークネームスペースを共有する」で作成した pod の名前を入れてコンテナを pod 内で起動します。

: set_pod mypod

6.2.3.7. ネットワークの選択

set_network [ネットワーク名]

この設定に「networkの作成」で作成したネットワーク以外に nonehost の特殊な設定も選べます。

none の場合、コンテナに localhost しかないネームスペースに入ります。

host の場合はOSのネームスペースをそのまま使います。

: set_network mynetwork

6.2.3.8. IP アドレスの設定

set_ip [アドレス]

コンテナの IP アドレスを設定することができます。

: set_ip 10.88.0.100

[ティップ]

コンテナ間の接続が目的であれば、podを使ってlocalhostかpodの名前でアクセスすることができます。

6.2.3.9. 読み取り専用設定

set_readonly yes

コンテナ内からのファイルシステムへの書き込み許可を設定します。

デフォルトで書き込み可能となっています。

コンテナ内からのファイルシステムへの書き込みを禁止することで、 tmpfs として使うメモリの消費を明示的に抑えることができますが、 アプリケーションによっては読み込み専用のファイルシステムでは動作しない可能性もあります。

6.2.3.10. イメージの自動ダウンロード設定

set_pull [設定]

この設定を missing にすると、イメージが見つからない場合にイメージを自動的にダウンロードします。

always にすると、イメージがすでにダウンロード済みでも起動前に必ず更新の確認を取ります。

デフォルトでは never で、イメージが見つからない場合にエラーを表示します。

set_pull missingset_pull always

6.2.3.11. コンテナのリスタート設定

set_restart [設定]

コンテナが停止した時にリスタートさせます。

podman killpodman stop で停止する場合、この設定と関係なくリスタートしません。

デフォルトで on-failure になっています。

: set_restart alwaysset_restart no

6.2.3.12. 信号を受信するサービスの無効化

set_init no

コンテナのメインプロセスが PID 1 で起動していますが、その場合のデフォルトの信号の扱いが変わります: SIGTERM などのデフォルトハンドラが無効です。

そのため、init 以外のコマンドを set_command で設定する場合は podman-init のプロセスを PID 1 として立ち上げて、設定したコマンドをその子プロセスとして起動します。

: set_init no

6.2.3.13. 自動起動の無効化

set_autostart no

手動かまたは別の手段で操作するコンテナがある場合、Armadillo の起動時に自動起動しないようにします。

その場合、 podman_start <name> で起動させることができます。

[ティップ]

コンフィグに記載していないイメージはアップデートの際に削除されますので、そういったイメージに対して設定してください。

6.2.3.14. 実行コマンドの設定

set_command [コマンド]

コンテナを起動するときのコマンド。設定されなかった場合、コンテナイメージのデフォルトを使います。

: set_command /bin/sh -c "echo bad example"

6.2.3.15. podman run に引数を渡す設定

add_args [引数]

ここまでで説明した設定項目以外の設定を行いたい場合は、この設定で podman run に直接引数を渡すことができます。

add_args --cap-add=SYS_TTY_CONFIG --env=XDG_RUNTIME_DIR=/run/xdg_home

6.2.4. アットマークテクノが提供するイメージを使う

アットマークテクノは、動作確認環境として使用できる Debian ベースのイメージを提供しています。 ここでは以下の 3 つの手順について説明します。

  • ABOSDE からインストールする方法
  • Docker ファイルからイメージをビルドする方法
  • すでにビルド済みのイメージを使う方法

6.2.4.1. ABOSDE からインストールする

「VSCode を使用して Armadillo のセットアップを行う」を参照して、 Armadillo のセットアッププロジェクトを作成しておいてください。

VSCode の左ペインの [my_project] から [Generate at-debian-image container setup swu] を実行してください。

images/common-images/armadillo_setup_vscode_at_debian_image_container_setup.png

図6.37 at-debian-image のコンテナイメージをインストールする SWU ファイルを作成する


作成した SWU ファイルは container_setup/at-debian-image/at-debian-image.swu に保存されています。 この SWU イメージを 「SWU イメージのインストール」 を参照して Armadillo へインストールしてください。

6.2.4.2. Docker ファイルからイメージをビルドする

Armadillo-640 コンテナ から 「Debian [VERSION] サンプル Dockerfile」 ファイル (at-debian-image-dockerfile-[VERSION].tar.gz) をダウンロードします。 その後 podman build コマンドを実行します。

[armadillo ~]# tar xzf at-debian-image-dockerfile-[VERSION].tar.gz
[armadillo ~]# cd at-debian-image-dockerfile-[VERSION]
[armadillo ~]# abos-ctrl podman-storage --disk
[armadillo ~]# podman build -t at-debian-image:latest .
:
: (省略)
:
[armadillo ~]# podman images
REPOSITORY                 TAG         IMAGE ID      CREATED             SIZE
localhost/at-debian-image  latest      c8e8d2d55456  About a minute ago  233 MB
docker.io/library/debian   bullseye    723b4a01cd2a  18 hours ago        123 MB

図6.38 Docker ファイルによるイメージのビルドの実行例


podman images コマンドにより at-debian-image がビルドされたことが確認できます。 library/debian イメージはベースとなっている Debian イメージです。

6.2.4.3. ビルド済みのイメージを使用する

Armadillo-640 コンテナ から 「Debian [VERSION] サンプルコンテナイメージ」 ファイル (at-debian-image-[VERSION].tar) をダウンロードします。 その後 podman load コマンドを実行します。

[armadillo ~]# podman load -i at-debian-image-[VERSION].tar
:
: (省略)
:
[armadillo ~]# podman images
REPOSITORY                 TAG         IMAGE ID      CREATED       SIZE
localhost/at-debian-image  [VERSION]   93a4ec873ac5  17 hours ago  233 MB
localhost/at-debian-image  latest      93a4ec873ac5  17 hours ago  233 MB

図6.39 ビルド済みイメージを load する実行例


podman images コマンドにより at-debian-image がビルドされたことが確認できます。

6.2.5. alpine のコンテナイメージをインストールする

alpine のコンテナイメージは、 ABOSDE を用いてインストールすることが可能です。 「VSCode を使用して Armadillo のセットアップを行う」を参照して、 Armadillo のセットアッププロジェクトを作成しておいてください。

VSCode の左ペインの [my_project] から [Generate alpine container setup swu] を実行してください。

images/common-images/armadillo_setup_vscode_alpine_container_setup.png

図6.40 alpine のコンテナイメージをインストールする SWU ファイルを作成する


作成した SWU ファイルは container_setup/alpine/alpine.swu に保存されています。 この SWU イメージを 「SWU イメージのインストール」 を参照して Armadillo へインストールしてください。

6.2.6. コンテナのネットワークを扱う

この章では、コンテナ内のネットワークを扱う方法について示します。

6.2.6.1. コンテナの IP アドレスを確認する

基本的にコンテナの IP アドレスは Podman イメージからコンテナを作成したときに自動的に割り振られます。 コンテナに割り振られている IP アドレスはホスト OS 側からは podman inspect コマンドを用いて、以下のように確認することができます。

[armadillo ~]# vi /etc/atmark/containers/net_example.conf
set_image docker.io/alpine
set_command sleep infinity
[armadillo ~]# podman_start net_example
Starting 'net_example'
48ae479af65445674323567c17c5418dd4624292351e061bd2bd8a0add4cf150
[armadillo ~]# podman inspect --format '{{ .NetworkSettings.IPAddress }}' net_example
10.88.0.17

図6.41 コンテナの IP アドレス確認例


コンテナ内の ip コマンドを用いて確認することもできます。

[armadillo ~]# podman exec net_example ip addr show eth0
3: eth0@if8: <BROADCAST,MULTICAST,UP,LOWER_UP,M-DOWN> mtu 1500 qdisc noqueue state UP
    link/ether xx:xx:xx:xx:xx:xx brd ff:ff:ff:ff:ff:ff
    inet 10.88.0.17/16 brd 10.88.255.255 scope global eth0
       valid_lft forever preferred_lft forever
    inet6 fe80::40e5:98ff:feec:4b17/64 scope link
       valid_lft forever preferred_lft forever

図6.42 ip コマンドを用いたコンテナの IP アドレス確認例


6.2.6.2. コンテナに固定 IP アドレスを設定する

[警告]

podman はデフォルトで 10.88.0.0/16 を使います。

他に使用しているIPアドレスと被った場合等はコンテナに別のIPアドレスを設定してください。

コンテナに固定 IP アドレスを設定するためには、最初にユーザ定義のネットワークを作成する必要があります。 以下に 192.168.1.0/24 にユーザ定義のネットワークを作成する例を示します。

[armadillo ~]# vi /etc/atmark/containers/my_network.conf
set_type network
set_subnet 192.168.1.0/24
[armadillo ~]# podman_start my_network
Creating network 'my_network'
my_network

図6.43 ユーザ定義のネットワーク作成例


コンテナを作成する際に、上記で作成したネットワークと設定したい IP アドレスを渡すことで、 コンテナの IP アドレスを固定することができます。 以下の例では、IPアドレスを 192.168.1.10 に固定します。

[armadillo ~]# vi /etc/atmark/containers/network_example.conf
set_image docker.io/alpine
set_command sleep infinity
set_network my_network
set_ip 192.168.1.10
[armadillo ~]# podman_start network_example
Starting 'network_example'
3ea8c9031bf833228908bd73d8929b1d543b189b436c218e0634e0d39409e100

図6.44 IP アドレス固定のコンテナ作成例


コンテナの IP アドレスが、192.168.1.10 に設定されていることが確認できます。

[armadillo ~]# podman inspect --format '{{ .NetworkSettings.Networks.my_network.IPAddress }}' network_example
192.168.1.10

図6.45 コンテナの IP アドレス確認例


6.2.7. コンテナ内にサーバを構築する

この章では、コンテナ内で様々なサーバを構築する方法について示します。 この章で取り上げているサーバは alpine の apk コマンドでインストールすることが可能です。

6.2.7.1. HTTP サーバを構築する

ここでは、HTTP サーバとして Apache と lighttpd の 2 種類を使用する場合について説明します。

  • Apache を使用する

alpine イメージからコンテナを作成し、そのコンテナ内に Apache をインストールします。 コンテナ作成の際に、ホスト OS の 8080 番ポートをコンテナ内の 80 番ポートに転送する指定を行っています。

[armadillo ~]# vi /etc/atmark/containers/apache_example.conf
set_image docker.io/alpine
set_command sleep infinity
add_ports 8080:80
[armadillo ~]# podman_start apache_example
Starting 'apache_example'
ea0a1ed9c2fe170a6db02e480300467510f4e844900efb35c7a24cc1a8653af2
[armadillo ~]# podman exec -it apache_example sh
[container ~]# apk upgrade && apk add apache2
[container ~]# httpd
AH00558: httpd: Could not reliably determine the server's fully qualified domain name, using 10.88.0.2. Set the 'ServerName' directive globally to suppress this message

図6.46 コンテナに Apache をインストールする例


他の PC などの Web ブラウザから、ホスト OS の IP アドレスの 8080 番ポートに接続すると、 動作確認用ページが表示されます。 デフォルトでは、/var/www/localhost/htdocs ディレクトリにファイルを置くことで Web ブラウザから閲覧できます。 Apache の詳細な設定は、/etc/apache2 ディレクトリにある設定ファイルを編集することで変更可能です。

  • lighttpd を使用する

alpine イメージからコンテナを作成し、そのコンテナ内に lighttpd をインストールします。 コンテナ作成の際に、ホスト OS の 8080 番ポートをコンテナ内の 80 番ポートに転送する指定を行っています。

[armadillo ~]# vi /etc/atmark/containers/lighttpd_example.conf
set_image docker.io/alpine
set_command sleep infinity
add_ports 8080:80
[armadillo ~]# podman_start lighttpd_example
Starting 'lighttpd_example'
fd7ea338d09c5e8962654ed54bba17fb6a9ed4fca1b344e350bbf8f943d2f12b
[armadillo ~]# podman exec -it lighttpd_example sh
[container ~]# apk upgrade && apk add lighttpd
[container ~]# echo "<html><body>It works!</body></html>" > /var/www/localhost/htdocs/index.html
[container ~]# lighttpd -f /etc/lighttpd/lighttpd.conf

図6.47 コンテナに lighttpd をインストールする例


lighttpd はデフォルトでは動作確認用ページが用意されていないため、上記の手順では簡単なページを /var/www/localhost/htdocs ディレクトリの下に配置しています。 他の PC などの Web ブラウザから、ホスト OS の IP アドレスの 8080 番ポートに接続すると表示されます。 lighttpd の詳細な設定は、/etc/lighttpd ディレクトリにある設定ファイルを編集することで変更可能です。

6.2.7.2. FTP サーバを構築する

ここでは、FTP サーバとして vsftp を使用する場合について説明します。 alpine イメージからコンテナを作成し、そのコンテナ内に vsftpd をインストールします。 コンテナ作成の際に、FTP 通信で使用するポートについてホスト OS 側からコンテナ内のポートに転送する指定と、 コンテナ内の環境変数として PASV_ADDRESS にホスト OS 側の IP アドレスの指定を行っています。

[armadillo ~]# vi /etc/atmark/containers/ftp_example.conf
set_image docker.io/alpine
set_command sleep infinity
add_ports 21:21 21100-21110:21100-21110
add_args --env=PASV_ADDRESS=<ホストの IP アドレス>
[armadillo ~]# podman_start ftp_example
Starting 'ftp_example'
efcf1ba752c2db9ae1a33ac11af3be71d95ac7b737ce9734730ebca602e57796
[armadillo ~]# podman exec -it ftp_example sh
[container ~]# apk upgrade && apk add vsftpd

図6.48 コンテナに vsftpd をインストールする例


コンテナ内にユーザアカウントを作成し、このユーザで ftp ログインできるようにします。

[container ~]# adduser atmark
Changing password for atmark
New password: (パスワードを入力)
Retype password: (パスワードを入力)
passwd: password for atmark changed by root

図6.49 ユーザを追加する例


作成したユーザで ftp ログインできるように、vsftpd の設定ファイルを編集します。

[container ~]# sed -i -e 's/anonymous_enable=YES/#anonymous_enable=YES/g' /etc/vsftpd/vsftpd.conf
[container ~]# sed -i -e 's/#local_enable=YES/local_enable=YES/g' /etc/vsftpd/vsftpd.conf
[container ~]# sed -i -e 's/#write_enable=YES/write_enable=YES/g' /etc/vsftpd/vsftpd.conf
[container ~]# echo "pasv_enable=YES" >> /etc/vsftpd/vsftpd.conf
[container ~]# echo "pasv_min_port=21100" >> /etc/vsftpd/vsftpd.conf
[container ~]# echo "pasv_max_port=21110" >> /etc/vsftpd/vsftpd.conf
[container ~]# echo "pasv_address=$PASV_ADDRESS" >> /etc/vsftpd/vsftpd.conf

図6.50 設定ファイルの編集例


編集した設定ファイルを指定して vftpd を起動することにより、ftp 接続可能となります。 ftp ログイン時のアカウントは前述の手順で作成したものを使用します。

[container ~]# vsftpd /etc/vsftpd/vsftpd.conf

図6.51 vsftpd の起動例


6.2.7.3. Samba サーバを構築する

ここでは、Samba サーバの構築方法について説明します。 alpine イメージからコンテナを作成し、そのコンテナ内に samba をインストールします。 コンテナ作成の際に、samba で使用するポートについてホスト OS 側からコンテナ内のポートに転送する指定を行っています。

[armadillo ~]# vi /etc/atmark/containers/smb_example.conf
set_image docker.io/alpine
set_command sleep infinity
add_ports 139:139 445:445
[armadillo ~]# podman_start smb_example
Starting 'smb_example'
6d81c01fe27b5a92ee6ea69de2f9a8dbb569d420c2f5f630ece1966c81824a1f
[armadillo ~]# podman exec -it smb_example sh
[container ~]# apk upgrade && apk add samba

図6.52 コンテナに samba をインストールする例


コンテナ内にユーザアカウントを作成し、このユーザで samba にログインできるようにします。

[container ~]# adduser atmark
Changing password for atmark
New password: (パスワードを入力)
Retype password: (パスワードを入力)
passwd: password for atmark changed by root
[container ~]# pdbedit -a atmark
new password: (パスワードを入力)
retype new password: (パスワードを入力)

図6.53 ユーザを追加する例


samba を起動すると、前述の手順で作成したユーザアカウントで他の PC などからログインすることができます。

[container ~]# smbd

図6.54 samba の起動例


共有するディレクトリの指定などの詳細設定は /etc/samba/smb.conf ファイルを編集することで変更可能です。

6.2.7.4. SQL サーバを構築する

ここでは、RDMS として sqlite を使用する場合について説明します。 alpine イメージからコンテナを作成し、そのコンテナ内に sqlite をインストールします。

[armadillo ~]# vi /etc/atmark/containers/sqlite_example.conf
set_image docker.io/alpine
set_command sleep infinity
add_volumes /var/app/volumes/sqlite_db:/db
[armadillo ~]# podman_start sqlite_example
Starting 'sqlite_example'
114c5f1dbb7e81293dcb8fbe0c600b861626375b14cfe4023761acaa84fdcad1
[armadillo ~]# podman exec -it sqlite_example sh
[container ~]# apk upgrade && apk add sqlite

図6.55 コンテナに sqlite をインストールする例


コンテナ内に入り、sqlite3 コマンドを実行すると sqlite のプロンプトが表示され データベースの操作ができるようになります。

[container ~]# sqlite3 /db/mydb.sqlite
SQLite version 3.34.1 2021-01-20 14:10:07
Enter ".help" for usage hints.
sqlite>

図6.56 sqlite の実行例


6.2.8. 画面表示を行う

この章では、コンテナ内で動作するアプリケーションから Armadillo-640 に接続されたディスプレイに 出力を行う方法について示します。

6.2.8.1. X Window System を扱う

コンテナ内から、X Window System を起動し画面表示を行う例を示します。 ここではアットマークテクノが提供するイメージからコンテナを作成します。 このイメージに関しては 「アットマークテクノが提供するイメージを使う」 を参照してください。

[armadillo ~]# vi /etc/atmark/containers/x_example.conf
set_image at-debian-image
set_command sleep infinity
add_devices /dev/tty7 1
add_devices /dev/fb0 2
add_devices /dev/input 3
add_volumes /run/udev:/run/udev:ro 4
add_args --cap-add=SYS_ADMIN 5
[armadillo ~]# podman start x_example
Starting 'x_example'
26847e21bd519f99466af32fdf0d809e2216d3e8ddf05c185e5428fe46e6a09b

図6.57 X Window System を扱うためのコンテナ起動例


1

X Window System に必要な tty を設定します。どこからも使われていない tty とします。

2

画面描画先となるフレームバッファを設定します。

3

キーボードやマウスなどを使用可能にするためのデバイスを設定します。

4

ホスト OS 側の /run/udev をコンテナ内からマウントするように設定します。

5

X Window System の動作に必要な権限を設定します。

次に、以下のように X Window System を起動します。 オプションである vt に設定する値は、コンテナ作成時に渡した tty の数字にします。

[armadillo ~]# podman exec -ti x_example bash
[container ~]# apt install xorg
[container ~]# X vt7 -retro

X.Org X Server 1.20.11
X Protocol Version 11, Revision 0
Build Operating System: linux Debian
Current Operating System: Linux 25297ceb226c 5.10.52-1-at #2-Alpine SMP PREEMPT Thu Nov 18 09:10:13 UTC 2021 aarch64
Kernel command line: console=ttymxc1,115200 root=/dev/mmcblk2p1 rootwait ro
Build Date: 13 April 2021  04:07:31PM
xorg-server 2:1.20.11-1 (https://www.debian.org/support)
Current version of pixman: 0.40.0
        Before reporting problems, check http://wiki.x.org
        to make sure that you have the latest version.
Markers: (--) probed, (**) from config file, (==) default setting,
        (++) from command line, (!!) notice, (II) informational,
        (WW) warning, (EE) error, (NI) not implemented, (??) unknown.
(==) Log file: "/var/log/Xorg.0.log", Time: Sun Nov 21 23:51:18 2021
(==) Using system config directory "/usr/share/X11/xorg.conf.d"

図6.58 コンテナ内で X Window System を起動する実行例


Armadillo-640 に接続しているディスプレイ上に、デスクトップ画面が表示されます。

6.2.8.2. フレームバッファに直接描画する

コンテナ内で動作するアプリケーションからフレームバッファに直接描画するためには、Podman のイメージからコンテナを作成する際にホスト OS 側の デバイスファイル /dev/fbN を渡す必要があります。以下は、/dev/fb0 を渡して alpine イメージからコンテナを作成する例です。

[armadillo ~]# vi /etc/atmark/containers/fb_example.conf
set_image docker.io/alpine
set_command sleep infinity
add_devices /dev/fb0
[armadillo ~]# podman_start fb_example
Starting 'fb_example'
e8a874e922d047d5935350cd7411682dbbeb90fa828cef94af36acfb6d77476e

図6.59 フレームバッファに直接描画するためのコンテナ作成例


コンテナ内に入って、ランダムデータをフレームバッファに描画する例を以下に示します。 これにより、接続しているディスプレイ上の表示が変化します。

[armadillo ~]# podman exec -it fb_example sh
[container ~]# cat /dev/urandom > /dev/fb0
cat: write error: No space left on device

図6.60 フレームバッファに直接描画する実行例


6.2.8.3. タッチパネルを扱う

タッチパネルが組み込まれているディスプレイを接続している環境で、 コンテナ内からタッチイベントを取得するためには、Podman のイメージからコンテナを作成する際に ホスト OS 側の /dev/input を渡す必要があります。

[armadillo ~]# vi /etc/atmark/containers/touch_example.conf
set_image docker.io/alpine
set_command sleep infinity
add_devices /dev/input
[armadillo ~]# podman_start touch_example
Starting 'touch_example'
cde71165076a413d198864899b64ff9c5fecdae222d9ee6646e189b5e976d94a

図6.61 タッチパネルを扱うためのコンテナ作成例


X Window System などの GUI 環境と組み合わせて使うことで、タッチパネルを利用した GUI アプリケーションの操作が可能となります。

6.2.9. パワーマネジメント機能を使う

この章では、コンテナ内からパワーマネジメント機能を使う方法について示します。

6.2.9.1. サスペンド状態にする

パワーマネジメント機能を使ってサスペンド状態にするには、Podman のイメージからコンテナを作成する際に ホスト OS 側の /sys ディレクトリを渡す必要があります。 以下は、/sys を渡して alpine イメージからコンテナを作成する例です。ここで渡された /sys ディレクトリは コンテナ内の /sys にマウントされます。

[armadillo ~]# vi /etc/atmark/containers/pm_example.conf
set_image docker.io/alpine
set_command sleep infinity
add_volumes /sys
[armadillo ~]# podman_start pm_example
Starting 'pm_example'
ab656f08a6cba2dc5919dbc32f8a6209782ba04baa0c6c21232a52046a21337e

図6.62 パワーマネジメント機能を使うためのコンテナ作成例


コンテナ内から、/sys/power/state に次の文字列を書き込むことにより、サスペンド状態にすることができます。

表6.2 対応するパワーマネジメント状態

パワーマネジメント状態 文字列 説明

Suspend-to-RAM

mem

最も消費電力を抑えることができる

Power-On Suspend

standby

Suspend-to-RAM よりも短時間で復帰することができ、Suspend-to-Idle よりも消費電力を抑えることができる

Suspend-to-Idle

freeze

最も短時間で復帰することができる


[警告]

サスペンド状態を128秒以上継続する場合は、Suspend-to-RAM か +Power-On Suspend+を利用してください。

+Suspend-to-Idle+を利用している状態で128秒経過すると再起動してしまいます。

[armadillo ~]# podman exec -it pm_example sh
[container ~]# echo mem > /sys/power/state

図6.63 サスペンド状態にする実行例


6.2.9.2. 起床要因を有効化する

サスペンド状態から起床要因として、利用可能なデバイスを以下に示します。

UART1 (CON9)
起床要因
データ受信
有効化
[container ~]# echo enabled > /sys/bus/platform/drivers/imx-uart/2020000.serial/tty/ttymxc0/power/wakeup
USB OTG1 (下段)
起床要因
USBデバイスの挿抜
有効化
[container ~]# echo enabled > /sys/bus/platform/devices/2184000.usb/power/wakeup
[container ~]# echo enabled > /sys/bus/platform/drivers/ci_hdrc/ci_hdrc.0/power/wakeup
[container ~]# echo enabled > /sys/bus/platform/drivers/ci_hdrc/ci_hdrc.0/usb1/power/wakeup
USB OTG2 (上段)
起床要因
USBデバイスの挿抜
有効化
[container ~]# echo enabled > /sys/bus/platform/devices/2184200.usb/power/wakeup
[container ~]# echo enabled > /sys/bus/platform/drivers/ci_hdrc/ci_hdrc.1/power/wakeup
[container ~]# echo enabled > /sys/bus/platform/drivers/ci_hdrc/ci_hdrc.1/usb2/power/wakeup
RTC(i.MX6ULL)
起床要因
アラーム割り込み
有効化
[container ~]# echo enabled > /sys/bus/platform/devices/20cc000.snvs\:snvs-rtc-lp/power/wakeup
実行例
[armadillo ~]# vi /etc/atmark/containers/rtc_pm_example.conf
set_image docker.io/alpine
set_command sleep infinity
add_volumes /sys
add_devices /dev/rtc0
[armadillo ~]# podman_start rtc_pm_example
Starting 'rtc_pm_example'
8fbef3edda3b7fcea5b1f8cbf960cf469b7e82c4d1ecd35477076e81fc24e39f
[armadillo ~]# podman exec -ti rtc_pm_example sh
[container ~]# apk add util-linux
[container ~]# rtcwake -m mem -s 5
: (省略)
[  572.720300] printk: Suspending console(s) (use no_console_suspend to debug)
<ここで5秒を待つ>
[  573.010663] OOM killer enabled.
...

図6.64 サスペンド状態にする実行例、rtcで起こす


6.2.9.3. パワーマネジメントの仕様

Armadillo-640のパワーマネジメント機能は、LinuxのSPM(System Power Management)およびDPM(Device Power Management)を利用しています。パワーマネジメント状態を省電力モードに遷移させることにより、Armadillo-640の消費電力を抑えることができます。

パワーマネジメント状態を省電力モードに遷移させると、アプリケーションの実行は一時停止し、Linuxカーネルはサスペンド状態となります。起床要因が発生すると、Linuxカーネルのリジューム処理が行われた後、アプリケーションの実行を再開します。

sysfsファイル
  • /sys/power/state

6.2.10. コンテナからのpoweroff及びreboot

Armadillo Base OSはbusybox initでshutdownとrebootを対応します。

busybox initでPID 1にsignalを送ることでshutdownやrebootとなります。 コンテナからsignalを送るように、pid namespaceを共有する必要がありますが、共有されたらkillで実行できます。

[armadillo ~]# vi /etc/atmark/containers/shutdown_example.conf
set_image docker.io/alpine
set_command sleep infinity
add_args --pid=host
[armadillo ~]# podman_start shutdown_example
Starting 'shutdown_example'
c8e3b9b418fc72395db9f3c22b1eb69eb41eaaf790d3b7151047ef066cc4c8ff
[armadillo ~]# podman exec -ti shutdown_example sh
[container ~]# kill -USR2 1  (poweroff)
[container ~]# kill -TERM 1  (reboot)

図6.65 コンテナからshutdownを行う


6.2.11. 異常検知

この章では、コンテナ内で動作しているアプリケーションに何らかの異常が発生し停止してしまった際に、 ソフトウェアウォッチドックタイマーを使って、システムを再起動する方法について示します。

6.2.11.1. ソフトウェアウォッチドッグタイマーを扱う

コンテナ内で動作するアプリケーションからソフトウェアウォッチドックタイマーを扱うためには、Podman のイメージからコンテナを作成する際にホスト OS 側の デバイスファイル /dev/watchdogN を渡す必要があります。以下は、/dev/watchdog0 を渡して alpine イメージからコンテナを作成する例です。

[armadillo ~]# vi /etc/atmark/containers/watchdog_example.conf
set_image docker.io/alpine
set_command sleep infinity
add_devices /dev/watchdog0
[armadillo ~]# podman_start watchdog_example
Starting 'watchdog_example'
a5d329cca49d60423ce4155d72a119b8049a03dbd1d0277817a253e96dce7bc7

図6.66 ソフトフェアウォッチドッグタイマーを使うためのコンテナ作成例


ソフトウェアウォッチドックタイマーは、プログラム内からデバイスファイル /dev/watchdog0 を open した時点で起動します。 コンテナ内に入ってソフトウェアウォッチドックタイマーを echo コマンドで起動する例を以下に示します。

[armadillo ~]# podman exec -it watchdog_example sh
[container ~]# echo > /dev/watchdog0

図6.67 コンテナ内からソフトウェアウォッチドッグタイマーを起動する実行例


ソフトウェアウォッチドックタイマーを起動した後、/dev/watchdog0 に任意の文字を書き込むことで ソフトウェアウォッチドッグタイマーをリセットすることができます。 10 秒間任意の文字の書き込みがない場合は、システムが再起動します。

[armadillo ~]# podman exec -it watchdog_example sh
[container ~]# echo a > /dev/watchdog0

図6.68 ソフトウェアウォッチドッグタイマーをリセットする実行例


ソフトウェアウォッチドックタイマーを停止したい場合は、/dev/watchdog0 に V を書き込みます。

[armadillo ~]# podman exec -it watchdog_example sh
[container ~]# echo V > /dev/watchdog0

図6.69 ソフトウェアウォッチドッグタイマーを停止する実行例


6.3. swupdate がエラーする場合の対処

SWU イメージのインストール動作は、「SWU イメージとは」で述べたように swupdate が実行します。 mkswu で作成した SWU イメージの内容が適切でなかったり、あるいは、ストレージの空き容量が不足していたりするなど、いくつかの理由で swupdate のインストール動作が失敗することがあります。 インストールに失敗すると、swupdate は /var/log/messages にエラーメッセージのログを残しますので、エラーメッセージを見ると、エラーの内容・原因が分かります。

エラーの原因ごとに、エラーメッセージとエラーの内容および対処方法を記した FAQ ページ (https://armadillo.atmark-techno.com/faq/swupdate-troubleshooting-abos) を公開しています。 SWU イメージのインストールに失敗して対処法が分からないときは、この FAQ ページをご覧ください。

6.4. mkswu の .desc ファイルを編集する

mkswu で SWU イメージを生成するためには、 desc ファイルを正しく作成する必要があります。 以下では、 desc ファイルの記法について紹介します。

6.4.1. インストールバージョンを指定する

swdesc_option component=<component>
swdesc_option version=<version>
か
swdesc_xxx --version <component> <version> [options]
  • <component>は以下のどれかにしてください (デフォルトでは .desc ファイルのファイル名を使います)

    1. base_os: rootfs (Armadillo Base OS)を最初から書き込む時に使います。現在のファイルシステムは保存されていない。

      この場合、/etc/swupdate_preserve_filesに載ってるファイルのみをコピーして新しいbase OSを展開します。

      このcomponentがないと現在のrootfsのすべてがコピーされます。

    2. extra_os.<文字列>: rootfsの変更を行う時に使います。<文字列> には任意の文字列を指定します。

      rootfsを変更を行う時に使います。 swdesc_* コマンドに --extra-os オプションを追加すると、 component に自動的に extra_os. を足します。

    3. <文字列> (コンテナの名前などの任意の文字列): rootfsの変更がないときに使います。

      このcomponentを使うとrootfsの変更ができませんのでご注意ください。

  • アップデートを行う際にこのバージョンと現在のバージョンを比べてアップデートの判断を行います。

    <component> がまだインストールされてなかった時や <version> が上がる時にインストールします。

    デフォルトではダウングレードはできませんが、 --install-if=different オプションを追加することで <version> が変わる際にインストール可能になります。

    アップデートの一部をインストールすることもありますので、複数の component で管理し、いくつかの古いバージョンに対応するアップデートも作成可能です。

6.4.2. Armadillo へファイルを転送する

  • swdesc_tarswdesc_files でファイルを転送します。

    swdesc_tar [--dest <dest>] <tar_file>
    swdesc_files [--dest <dest>] [--basedir <basedir>] \
                 <file> [<more files>]

    swdesc_tar の場合、予め用意されてあるtarアーカイブをこのままデバイスで展開します。

    --dest <dest> で展開先を選ぶことができます。デフォルトは /--extra-os を含め、バージョンの component は base_osextra_os.* の場合)か /var/app/rollback/volumes/ (それ以外のcomponent)。 後者の場合は /var/app/volumes/var/app/rollback/volumes 以外は書けないので必要な場合に --extra-os を使ってください。

    swdesc_files の場合、mkswu がアーカイブを作ってくれますが同じ仕組みです。

    --basedir <basedir> でアーカイブ内のパスをどこで切るかを決めます。

    • 例えば、swdesc_files --extra-os --basedir /dir /dir/subdir/file ではデバイスに /subdir/file を作成します。
    • デフォルトは <file> から設定されます。ディレクトリであればそのまま basedir として使います。それ以外であれば親ディレクトリを使います。

6.4.3. Armadillo 上で任意のコマンドを実行する

  • swdesc_commandswdesc_script でコマンドを実行します。

    swdesc_command <command> [<more commands>]
    swdesc_script <script>

    アップデート先の環境でコマンドやスクリプトファイルを実行します。

    バージョンの component は base_osextra_os 以外の場合、 /var/app/volumes/var/app/rollback/volumes 以外は変更できないのでご注意ください。

    コマンドの実行が失敗した場合、アップデートも失敗します。

6.4.4. Armadillo にファイルを転送し、そのファイルをコマンド内で使用する

  • swdesc_exec でファイルを配り、コマンド内でそのファイルを使用します。

    swdesc_exec <file> <command>

    swdesc_command と同じくコマンドを実行しますが、<file> を先に転送してコマンド内で転送したファイル名を"$1"として使えます。

6.4.5. 起動中の Armadillo で任意のコマンドを実行する

  • swdesc_command_nochroot, swdesc_script_nochroot, swdesc_exec_nochroot で起動中のシステム上でコマンドを実行します。

    このコマンドは nochroot なしのバージョンと同じ使い方で、現在起動中のシステムに変更や確認が必要な場合にのみ使用してください。

    [警告]

    nochroot コマンドは確認を一切しないため、Armadillo が起動できない状態になる可能性もあります。充分にご注意ください。

    例が必要な場合は /usr/share/mkswu/examples/firmware_update.desc を参考にしてください。

6.4.6. Armadillo にコンテナイメージを転送する

6.4.7. Armadillo のブートローダーを更新する

  • swdesc_bootimx-boot を更新します。

    swdesc_boot <boot image>

    このコマンドだけはバージョンは自動的に設定されます。

6.4.8. SWU イメージの設定関連

コマンドの他には、設定変数もあります。以下の設定は /home/atmark/mkswu/mkswu.conf に設定できます。

  • DESCRIPTION="<text>": イメージの説明、ログに残ります。
  • PRIVKEY=<path>, PUBKEY=<path>: 署名鍵と証明書
  • PRIVKEY_PASS=<val>: 鍵のパスワード(自動用)

    openssl のPass Phraseをそのまま使いますので、pass:password, env:varfile:pathname のどれかを使えます。 passenv の場合他のプロセスに見られる恐れがありますのでfileをおすすめします。

  • ENCRYPT_KEYFILE=<path>: 暗号化の鍵

6.4.9. Armadillo 上のコンテナイメージと自動起動用confファイルを削除する

以下のオプションも mkswu.conf に設定できますが、.descファイルにも設定可能です。swdesc_option で指定することで、 誤った使い方をした場合 mkswu の段階でエラーを出力しますので、必要な場合は使用してください。

  • swdesc_option CONTAINER_CLEAR: インストールされたあるコンテナと /etc/atmark/containers/*.conf をすべて削除します。

    このオプションは簡単な初期化と考えてください。通常の運用では、不要になったイメージは自動的に削除されますので このオプションを設定する必要はありません。

6.4.10. SWUpdate 実行中/完了後の挙動を指定する

以下のオプションは Armadillo 上の /etc/atmark/baseos.conf に、例えば MKSWU_POST_ACTION=xxx として設定することができます。

その場合に swu に設定されなければ /etc の設定で実行されますので、 アットマークテクノが用意している Base OS のアップデートでも動作の変更は可能です。 swu に特定のオプションが設定された場合は設定されたオプションが優先されますので、一時的な変更も可能です。

  • swdesc_option POST_ACTION=container: コンテナのみのアップデート後に再起動を行いません。 コンテナの中身だけをアップデートする場合、Armadillo-640を再起動せずにコンテナだけを再起動させます。
  • swdesc_option POST_ACTION=poweroff: アップデート後にシャットダウンを行います。
  • swdesc_option POST_ACTION=wait: アップデート後に自動的に再起動は行われず、次回起動時にアップデートが適用されます。
  • swdesc_option POST_ACTION=reboot: デフォルトの状態に戻します。アップデートの後に再起動します。
  • swdesc_option NOTIFY_STARTING_CMD="command", swdesc_option NOTIFY_SUCCESS_CMD="command", swdesc_option NOTIFY_FAIL_CMD="command": アップデートをインストール中、成功した場合と失敗した場合に実行されるコマンドです。

    コマンドを実行する事で、アプリケーションやユーザーにアップデートを知らせることができます。

    LEDで知らせる例を /usr/share/mkswu/examples/enable_notify_led.desc に用意してあります。

6.4.11. desc ファイル設定例

6.4.11.1. 例: sshdを有効にする

/usr/share/mkswu/examples/enable_sshd.desc を参考にします。

descファイルを編集する必要がありませんが自分の公開鍵を指定された場所に配置してください。

[ATDE ~/mkswu]$ cp -r /usr/share/mkswu/examples/enable_sshd* .
[ATDE ~/mkswu]$ cat enable_sshd.desc
swdesc_option component=extra_os.sshd version=1

# add your public key in enable_sshd/root/.ssh/authorized_keys
if [ -z "$SWDESC_TEST" ]; then
    grep -qE '^ssh-' enable_sshd/root/.ssh/authorized_keys \
        || error "Add your keys in enable_sshd/root/.ssh/authorized_keys"
fi
swdesc_files --dest /root enable_sshd/root 1

swdesc_command "ssh-keygen -A" \ 2
        "rc-update add sshd" 3
[ATDE ~/mkswu]$ cp ~/.ssh/id_rsa.pub \
                         enable_sshd/root/.ssh/authorized_keys 4
[ATDE ~/mkswu]$ mkswu enable_sshd.desc 5
Enter pass phrase for /home/atmark/mkswu/swupdate.key:
enable_sshd.swu を作成しました。

1

自分の公開鍵を転送します。デフォルトのオプションなので enable_sshd/root ディレクトリの中身をこのまま /root に転送されます。

2

再起動する度に新しいサーバーの鍵が変わらないように、アップデートの時に一回作成します。

3

サービスを有効にします。

4

自分の公開鍵を指定された場所に配置します。

5

イメージを作成します。パスワードは証明鍵のパスワードです。

6.4.11.2. 例: Armadillo Base OSアップデート

ここでは、「Armadilloのソフトウェアをビルドする」でメインシステム向けのビルドで作成したファイルを使用します。

/usr/share/mkswu/examples/OS_update.desc を参考にします。

[ATDE ~/mkswu]$ cp /usr/share/mkswu/examples/OS_update.desc update-[VERSION].desc
[ATDE ~/mkswu]$ vi update-[VERSION].desc
# uboot image can be generated with atmark imx-boot script
swdesc_uboot imx-boot_armadillo_x2 1

# base OS is a tar that will be extracted on a blank filesystem,
# after copying just a few key config files.
#
# OS updates are only installed if version is greater than previous update
# so if you install your own updates atmark-techno provided Armadillo Base OS
# updates might not get installed
swdesc_tar "baseos-x2-[VERSION].tar.zst" \ 2
           --version base_os [VERSION] 3
[ATDE ~/mkswu]$ mkswu update-[VERSION].desc 4
Enter pass phrase for /home/atmark/mkswu/swupdate.key:
update-[VERSION].swu を作成しました。

1

imx-bootでビルドしたイメージを使います。

2

build-rootfsでビルドしたイメージを使います。

3

バージョンが上がるときにしかインストールされませんので、現在の/etc/sw-versionsを確認して適切に設定してください。

4

イメージを作成します。パスワードは証明鍵の時のパスワードです。

6.4.11.3. 例: swupdate_preserve_files で Linux カーネル以外の Armadillo-640 向けのイメージをインストールする方法

Armadillo-640 向けのアップデートイメージに Linux カーネルが含まれています。

swupdate_preserve_files を使って、以下のコマンドでインストール後に現在のカーネルをコピーして更新させないようにします。

[armadillo ~]# echo 'POST /boot' >> /etc/swupdate_preserve_files
[armadillo ~]# echo 'POST /lib/modules' >> /etc/swupdate_preserve_files 1
[armadillo ~]# persist_file /etc/swupdate_preserve_files 2

1

swupdate_preserve_files/boot/lib/modules を保存するように追加します。

2

変更した設定ファイルを保存します

[ティップ]

/usr/share/mkswu/examples/kernel_update*.desc のように update_preserve_files.sh のヘルパーで、パスを自動的に /etc/swupdate_preserve_files に追加することができます。

[ATDE ~/mkswu]$ cat example.desc
swdesc_script "$SCRIPT_DIR/examples/update_preserve_files.sh" -- \ 1
        "POST /boot" \
        "POST /lib/modules"

1

スクリプトの内容確認する場合は /usr/share/mkswu/examples/update_preserve_files.sh を参照してください。

[ティップ]

Armadillo Base OS のカーネルを再び使用したい場合は同じスクリプトの --del オプションで行を削除することができます。

[ATDE ~/mkswu]$ cat example.desc
swdesc_script "$SCRIPT_DIR/examples/update_preserve_files.sh" -- \
        --del "POST /boot" "POST /lib/modules"

6.5. swupdate_preserve_files について

extra_os のアップデートで rootfs にファイルを配置することができますが、次の OS アップデートの際に削除される可能性があります。

デフォルトでは、 /etc/atmark と、 swupdatesshd やネットワークの設定を保存しますがそれ以外はコピーされてません。

そうでないファイルを更新する際には /etc/swupdate_preserve_files に記載します。「例: swupdate_preserve_files で Linux カーネル以外の Armadillo-640 向けのイメージをインストールする方法」 を参考にしてください。

コピーのタイミングによって、以下のどれかを使用してください:

  1. 単にファイルを記載する

    この場合、アップデートする前にファイルをコピーします。 baseos のイメージと同じ swu にアップデートしたいファイルを記載していても、 このファイルが Armadillo Base OS に含まれないのであれば問題なくアップデートできます。

    : echo "/root/.profile" >> /etc/swupdate_preserve_files

  2. POST のキーワードの後に記載する

    この場合、アップデートの最後でコピーします。 Armadillo Base OS に含まれてるファイルであれば、インストール前にコピーしても保存されないのでコピーのタイミングをずらします。

    そのコピーが最後に行われるので、同じアップデートでファイルの変更ができません。アップデートを別けて、 baseos のイメージをインストールしてからこのファイルを更新することができます。

    : echo "POST /etc/conf.d/podman-atmark" >> /etc/swupdate_preserve_files

6.6. SWU イメージの内容の確認

mkswu --show [file.swu] で SWU イメージの内容を確認することができます。

出力は desc ファイルに似ていますが、そのまま desc ファイルとして利用できませんので確認用としてお使いください。

[ATDE ~/mkswu]$ mkswu --show enable_sshd.swu
enable_sshd.swu

# built with mkswu 4.1

swdesc_files --dest /root enable_sshd/root
  --version extra_os.sshd 1
  (encrypted)

swdesc_command ssh-keygen -A && rc-update add sshd default
  --version extra_os.sshd 1

6.7. SWUpdate と暗号化について

mkswu --init の時に暗号化を有効にする場合は AES でファイルを暗号化します。

現在使われてる SWUpdate の暗号化はコマンドやメタデータを含む sw-description ファイルは暗号化されてません。 そのため、通信の暗号化(HTTPSで送信するなど)を使うことを推奨します。

6.8. hawkBit サーバーから複数の Armadillo をアップデートする

6.8.1. hawkBitとは

hawkBitは、サーバー上で実行されるプログラムで、 ネットワーク経由で SWU イメージを配信し、デバイスのソフトウェアを更新することができます。

hawkBitは次のような機能を持っています。

  • ソフトウェアの管理
  • デバイスの管理

    • デバイス認証 (セキュリティトークン、証明書)
    • デバイスのグループ化
  • アップデート処理の管理

    • 進捗のモニタリング
    • スケジューリング、強制アップデート
  • RESTful APIでの直接操作

6.8.2. データ構造

hawkBitは、配信するソフトウェアを次のデータ構造で管理します。

images/hawkBit_data_structure.png

図6.70 hawkBitが扱うソフトウェアのデータ構造


6.8.3. hawkBitサーバーから複数のArmadilloに配信する

hawkBitサーバーを利用することで複数のArmadillo のソフトウェアをまとめてアップデートすることができます。

手順は次のとおりです。

  1. コンテナ環境の準備

    Dockerを利用すると簡単にサーバーを準備できます。 Dockerの準備については https://docs.docker.com/get-docker/ を参照してください。

    Dockerの準備ができたら、要件に合わせてコンテナの設定を行います。

    • ATDE の場合

    • ATDE以外の場合

      • Armadillo-640 開発用ツール から 「Hawkbit docker-composeコンテナ」 をダウンロードして展開してください。 この場合、以下に /usr/share/mkswu/hawkbit-compose を使う際に展開先のディレクトリとして扱ってください。
      • dockerがアクセスできるホストネームやアドレスを控えておいてください。
  2. hawkBitサーバーの準備

    /usr/share/mkswu/hawkbit-compose/setup_container.sh を実行して、質問に答えてください。

    以下に簡単な(TLSを有効にしない)テスト用の場合と、 TLSを有効にした場合の例を示します。

    setup_container.sh を一度実行した場合はデータのディレクトリにある setup_container.sh のリンクを実行して、ユーザーの追加等のオプション変更を行うこともできます。 詳細は`--help` を参考にしてください。

    [ATDE ~]$ /usr/share/mkswu/hawkbit-compose/setup_container.sh
    docker-compose の設定ファイルと hawkBit のデータをどこに保存しますか? [/home/atmark/hawkbit-compose] 1
    setup_container.sh へのリンクを /home/atmark/hawkbit-compose に作ります。
    docker サービスに接続できませんでした。sudo でもう一度試します。
    [sudo] atmark のパスワード: 2
    OK!
    Hawkbit admin user name [admin] 3
    admin ユーザーのパスワード:  4
    パスワードを再入力してください:
    追加の管理人アカウントのユーザーネーム(空にすると追加しません) 5
    hawkBit の「device」ユーザーを登録しますか?(自動登録用) [Y/n]  6
    device ユーザーのパスワード:
    パスワードを再入力してください:
    hawkBit の「mkswu」ユーザーを登録しますか?(swuのアップロード用) [Y/n] 7
    ユーザーにロールアウトの権限を与えますか?(インストール要求を出すこと) [Y/n] 8
    mkswu ユーザーのパスワード:
    パスワードを再入力してください:
    Setup TLS reverse proxy? [y/N] 9
    
    コンテナの設定が完了しました。docker-compose コマンドでコンテナの管理が可能です。
    /home/atmark/hawkbit-compose/setup_container.sh を再び実行すると設定の変更が可能です。
    hawkBit コンテナを起動しますか? [Y/n] 10
    Creating network "hawkbit-compose_default" with the default driver
    Pulling mysql (mysql:5.7)...
    : (省略)
    Creating hawkbit-compose_hawkbit_1 ... done
    Creating hawkbit-compose_mysql_1   ... done

    図6.71 hawkBit コンテナのTLSなしの場合(テスト用)の実行例


    1

    コンテナのコンフィグレーションとデータベースの場所を設定します。

    2

    dockerの設定によってsudoが必要な場合もあります。

    3

    admin ユーザーのユーザー名を入力します。

    4

    admin ユーザーのパスワードを二回入力します。

    5

    追加のユーザーが必要な場合に追加できます。

    6

    examples/hawkbit_register.desc で armadillo を登録する場合に作っておいてください。 詳細は 「SWU で hawkBit を登録する」 を参考にしてください。

    7

    hawkbit_push_update でアップデートを CLI で扱う場合は、「Y」を入力してください。 詳細は 「hawkBit のアップデート管理を CLI で行う」 を参照してください。

    8

    hawkbit_push_update でアップデートを実行する場合は、「Y」を入力してください。

    9

    ここでは http でテストのコンテナを作成するので、「N」のままで進みます。

    10

    コンテナを起動します。初期化が終わったら <IP>:8080 でアクセス可能になります。

    [ATDE ~]$ /usr/share/mkswu/hawkbit-compose/setup_container.sh
    docker-compose の設定ファイルと hawkBit のデータをどこに保存しますか? [/home/atmark/hawkbit-compose]
    setup_container.sh へのリンクを /home/atmark/hawkbit-compose に作ります。
    docker サービスに接続できませんでした。sudo でもう一度試します。
    OK!
    Hawkbit admin user name [admin]
    admin ユーザーのパスワード:
    パスワードを再入力してください:
    パスワードが一致しません。
    admin ユーザーのパスワード:
    パスワードを再入力してください:
    追加の管理人アカウントのユーザーネーム(空にすると追加しません)
    hawkBit の「device」ユーザーを登録しますか?(自動登録用) [Y/n]
    device ユーザーのパスワード:
    パスワードを再入力してください:
    hawkBit の「mkswu」ユーザーを登録しますか?(swuのアップロード用) [Y/n]
    ユーザーにロールアウトの権限を与えますか?(インストール要求を出すこと) [Y/n]
    mkswu ユーザーのパスワード:
    パスワードを再入力してください:
    Setup TLS reverse proxy? [y/N] y 1
    lighttpd が起動中で、リバースプロキシ設定と競合しています。
    lighthttpd サービスを停止しますか? [Y/n] 2
    Synchronizing state of lighttpd.service with SysV service script with /lib/systemd/systemd-sysv-install.
    Executing: /lib/systemd/systemd-sysv-install disable lighttpd
    Removed /etc/systemd/system/multi-user.target.wants/lighttpd.service.
    リバースプロキシの設定に証明書の domain name が必要です。
    この domain はこのままデバイスからアクセスできる名前にしてください。
    例えば、https://hawkbit.domain.tld でアクセスしたら hawkbit.domain.tld、
    https://10.1.1.1 でしたら 10.1.1.1 にしてください。
    証明書の domain name: 10.1.1.1 3
    証明書の有効期限を指定する必要があります。Let's encryptを使用する場合、
    この値は新しい証明書が生成されるまでしか使用されないので、デフォルトの値
    のままにしておくことができます。Let's encryptを使用しない場合、
    数年ごとに証明書を新しくすることが最も好ましです。
    証明書の有効期間は何日間にしますか? [3650] 4
    クライアントのTLS認証を設定するためにCAが必要です。
    署名CAのファイルパス(空にするとクライアントTLS認証を無効になります) [] 5
    サーバーが直接インターネットにアクセス可能であれば、Let's Encryptの証明書
    を設定することができます。TOSへの同意を意味します。
    https://letsencrypt.org/documents/LE-SA-v1.2-November-15-2017.pdf
    certbotコンテナを設定しますか? [y/N] 6
    
    /home/atmark/hawkbit-compose/data/nginx_certs/proxy.crt を /usr/local/share/ca-certificates/ にコピーして、 update-ca-certificates を実行する必要があります。
    このbase64でエンコードされたコピーをexamples/hawkbit_register.sh の
    SSL_CA_BASE64 に指定する手順が推奨されます。
    
    LS0tLS1CRUdJTiBDRVJUSUZJQ0FURS0tLS0tCk1JSUJlekNDQVNHZ0F3SUJBZ0lVQTByZ0cwcTJF
    SFNnampmb0tUZWg3aGlaSVVVd0NnWUlLb1pJemowRUF3SXcKRXpFUk1BOEdBMVVFQXd3SU1UQXVN
    UzR4TGpFd0hoY05Nakl3TXpJMU1EVXhOVFU0V2hjTk16SXdNekl5TURVeApOVFU0V2pBVE1SRXdE
    d1lEVlFRRERBZ3hNQzR4TGpFdU1UQlpNQk1HQnlxR1NNNDlBZ0VHQ0NxR1NNNDlBd0VICkEwSUFC
    SDFFREhBN3NOTlFJUDlTdlhlUnNmWjl2dVVFWkRkMVE2TzViRlV2RTh4UjUwUlBCLzNlajMzd0VI
    NEoKYmZqb296bEpXaExlSG5SbGZsaHExVDlKdm5TalV6QlJNQjBHQTFVZERnUVdCQlFBUmYvSkdT
    dkVJek5xZ2JMNQpQamY2VGRpSk1EQWZCZ05WSFNNRUdEQVdnQlFBUmYvSkdTdkVJek5xZ2JMNVBq
    ZjZUZGlKTURBUEJnTlZIUk1CCkFmOEVCVEFEQVFIL01Bb0dDQ3FHU000OUJBTUNBMGdBTUVVQ0lD
    Nis3ZzJlZk1SRXl0RVk5WDhDNC8vUEw1U1kKWUlGZHUxVFZiUEZrSlV0SUFpRUE4bm1VSnVQSFlz
    SHg2N2ErZFRwSXZ1QmJUSG1KbWd6dUl3bTJ2RXppRnZRPQotLS0tLUVORCBDRVJUSUZJQ0FURS0t
    LS0tCg== 7
    
    
    Let's encryptの設定は後で足したい場合にsetup_container.shを--letsencryptで実行してください。
    
    コンテナの設定が完了しました。docker-compose コマンドでコンテナの管理が可能です。
    /home/atmark/hawkbit-compose/setup_container.sh を再び実行すると設定の変更が可能です。
    hawkBit コンテナを起動しますか? [Y/n]

    図6.72 hawkBit コンテナのTLSありの場合の実行例


    1

    今回は TLS を有効にするので、「y」を入力します。

    2

    lighttpd サービスが起動している場合に聞かれます。不要なので、停止します。

    3

    証明書の common name を入力してください。ATDE の場合、 ポート転送によってホストのIPアドレスで接続しますのでそのアドレスを入力します。 Let’s encrypt を使用する場合には外部からアクセス可能なDNSを入力してください。

    4

    証明書の有効期間を設定します。デフォルトでは10年になっています。 Let’s encryptを使用する場合には使われていません。

    5

    クライアント側では x509 証明書で認証をとることができますが、この例では使用しません。

    6

    Let’s encrypt による証明書を作成できます。 ATDE の場合は外部からのアクセスが難しいので、この例では使用しません。

    7

    自己署名証明書を作成したので、 Armadillo に設置する必要があります。 この証明書の取扱いは 「SWU で hawkBit を登録する」 を参照してください。

  3. hawkBitへのログイン

    作成したコンテナによって http://<サーバーのIPアドレス>:8080https://<サーバーのアドレス> にアクセスすると、ログイン画面が表示されます。

    images/hawkBit_login.png

    デフォルトでは次のアカウントでログインできます。

    ユーザー

    admin

    パスワード

    admin

  4. ArmadilloをTargetに登録する

    左側のメニューから Deployment をクリックして、Deployment の画面に移ります。

    images/hawkBit_security_token.png

    "+"をクリックしてTargetを作成します。

    作成したターゲットをクリックすると、 下のペインに "Security token:<文字列>" と表示されるので、 <文字列>の部分をメモします。

    メモした<文字列>をArmadilloの /etc/swupdate.cfg に設定すると Hawkbit への接続認証が通るようになります。

  5. Target Filterを作成する

    左側のメニューから"Target Filters"をクリックして、Target Filters の画面に移ります。

    images/hawkBit_Target_filters.png

    "+" をクリックして新規にTarget Filterを作成します。

    images/hawkBit_Target_filters_new.png

    Filter name と フィルタリング条件を入力して保存します。

  6. Software moduleを作成する

    左側のメニューから"Upload"をクリックして、Upload Managementの画面に移ります。

    images/hawkBit_software_module.png

    "+" をクリックしてSoftware moduleを作成します。 type には OS/Application、 version には 任意の文字列を指定します。

  7. swuパッケージをアップロードしてSoftware moduleに関連付ける

    先程作成した Software module を選択して、ハイライトされた状態で、 "Upload File"ボタンをクリックするか、ファイルをドラッグアンドドロップしてアップロードします。

    images/hawkBit_software_module_result.png
  8. Distributionを作成してSoftware moduleを関連付ける

    左側のメニューから"Distribution"をクリックして、Distribution Managementの画面に移ります。

    images/hawkBit_distribution.png

    "+" をクリックしてDistributionを作成します。 type には OS/OSwithApp/Apps、 version には任意の文字列を指定します。

    images/hawkBit_distribution_new.png

    "Software module"のペインから先程作成した Softwareをドラッグして、作成したDistributionの上にドロップします。

    images/hawkBit_Distribution_assignment.png
  9. Rolloutを作成してアップデートを開始する

    左側のメニューから"Rollout"をクリックして、Rollout Managementの画面に移ります。

    images/hawkBit_Rollouts.png

    "+"をクリックしてRolloutを作成します。

    images/hawkBit_Rollouts_new.png

    項目

    説明

    Name

    任意の文字列を設定します。

    Distribution Set

    先程作成したDistributionを選択します。

    Custom Target Filter

    先程作成したTarget Filterを選択します。

    Action Type

    アップデート処理をどのように行うかを設定します。 ・Forced/Soft: 通常のアップデート ・Time Forced: 指定した時刻までにアップデートする ・Download only: ダウンロードのみ行う

    Start Type

    Rollout の実行をどのように始めるかを設定します。 ・Manual: 後で手動で開始する ・Auto: Targetからのハートビートで開始する ・Scheduled: 決まった時間から開始する

  10. アップデートの状態を確認する

    Rollout Managementの画面のDetail Statusで、各Rolloutのアップデートの状態を確認できます。

    アップデート中は黄色、アップデートが正常に完了すると緑色になります。

6.8.3.1. hawkBit のアップデート管理を CLI で行う

一つのアップデートを登録するには、hawkBit の Web UI で必要な手順が長いので CLI で行うことで 効率よく実行できます。

サーバーの設定の段階では、「mkswu」のユーザーを作成する必要があります。 作成していない場合は setup_container.sh --add-user mkswu で作成してください。

  1. hawkbit_push_update の実行例
[ATDE ~/mkswu]$ ls enable_sshd.swu 1
enable_sshd.swu

[ATDE ~/mkswu]$ hawkbit_push_update --help
Usage: /usr/bin/hawkbit_push_update [options] file.swu

rollout creation:
  --no-rollout: only upload the file without creating a rollout 2
  --new: create new rollout even if there already is an existing one 3
  --failed: Apply rollout only to nodes that previously failed update 4

post action:
  --start: start rollout immediately after creation 5

[ATDE ~/mkswu]$ hawkbit_push_update --start enable_sshd.swu 6
Uploaded (or checked) image extra_os.sshd 1 successfully
Created rollout extra_os.sshd 1 successfully
Started extra_os.sshd 1 successfully

1

この例ではあらかじめ作成されている enable_sshd.swu を hawkBit に登録します。

2

--no-rollout を使う場合に SWU を「distribution」として登録します。 デフォルトでは rollout も作成します。 テストする際、デバイスがまだ登録されていなければ rollout の段階で失敗します。

3

同じ SWU で rollout を二回作成した場合にエラーが出ます。 もう一度作成する場合は --new を使ってください。

4

一度 rollout をスタートして、 Armadillo で失敗した場合には 失敗したデバイスだけに対応した rollout を作れます。

5

作成した rollout をすぐ実行します。このオプションには追加の権限を許可する必要があります。

6

スタートまで行う実行例です。実行結果は Web UI で表示されます。

6.8.3.2. SWU で hawkBit を登録する

デバイスが多い場合は、SWUを一度作って armadillo を自己登録させることができます。

サーバーの設定の段階では、「device」のユーザーを作成する必要があります。 作成していない場合は setup_container.sh --add-user device で作成してください。

  1. hawkbit_register.desc で hawkBit の自己登録を行う例
[ATDE ~]$ cd mkswu/

[ATDE ~/mkswu]$ cp /usr/share/mkswu/examples/hawkbit_register.* . 1

[ATDE ~/mkswu]$ vi hawkbit_register.sh 2
# Script configuration: edit this if required!
# user given here must have CREATE_TARGET,READ_TARGET_SECURITY_TOKEN permissions
HAWKBIT_USER=device
HAWKBIT_PASSWORD="CS=wC,zJmrQeeKT.3" 3
HAWKBIT_URL=https://10.1.1.1 4
HAWKBIT_TENANT=default
# set custom options for suricatta block or in general in the config
CUSTOM_SWUPDATE_SURICATTA_CFG="" # e.g. "polldelay = 86400;"
CUSTOM_SWUPDATE_CFG=""
# set to non-empty if server certificate is invalid
SSL_NO_CHECK_CERT=
# or set to cafile that must have been updated first
SSL_CAFILE=
# ... or paste here base64 encoded crt content
SSL_CA_BASE64="
LS0tLS1CRUdJTiBDRVJUSUZJQ0FURS0tLS0tCk1JSUJlakNDQVNHZ0F3SUJBZ0lVYTMvYXpNSHZ0
bFFnaFZnZDhIZWhMaEwxNm5Bd0NnWUlLb1pJemowRUF3SXcKRXpFUk1BOEdBMVVFQXd3SU1UQXVN
UzR4TGpFd0hoY05Nakl3TWpFNE1EVTFNakV6V2hjTk16SXdNakUyTURVMQpNakV6V2pBVE1SRXdE
d1lEVlFRRERBZ3hNQzR4TGpFdU1UQlpNQk1HQnlxR1NNNDlBZ0VHQ0NxR1NNNDlBd0VICkEwSUFC
RFJGcnJVV3hHNnBHdWVoejRkRzVqYkVWTm5scHUwYXBHT1c3UVBPYUF4cWp1ZzJWYjk2UHNScWJY
Sk8KbEFDVVo2OStaMHk3clBqeDJHYnhDNms0czFHalV6QlJNQjBHQTFVZERnUVdCQlJtZzhxL2FV
OURRc3EvTGE1TgpaWFdkTHROUmNEQWZCZ05WSFNNRUdEQVdnQlJtZzhxL2FVOURRc3EvTGE1TlpY
V2RMdE5SY0RBUEJnTlZIUk1CCkFmOEVCVEFEQVFIL01Bb0dDQ3FHU000OUJBTUNBMGNBTUVRQ0lB
ZTRCQ0xKREpWZnFTQVdRcVBqNTFmMjJvQkYKRmVBbVlGY2VBMU45dE8rN0FpQXVvUEV1VGFxWjhH
UFYyRUg1UWdOMFRKS05SckJDOEtpNkZWcFlkRUowYWc9PQotLS0tLUVORCBDRVJUSUZJQ0FURS0t
LS0tCg== 5
"
# ... or add your own options if required
CURLOPT=-s

: (省略)

[ATDE ~/mkswu]$ cat hawkbit_register.desc 6
: (省略)
swdesc_script hawkbit_register.sh --version extra_os.hawkbit 1

[ATDE ~/mkswu]$ mkswu hawkbit_register.desc 7
hawkbit_register.swu を作成しました。

[ATDE ~/mkswu]$ mkswu initial_setup.desc hawkbit_register.desc 8
hawkbit_register.desc を組み込みました。
initial_setup.swu を作成しました。

1

hawkbit_register.sh と .desc ファイルをカレントディレクトリにコピーします。

2

hawkbit_register.sh を編集して、設定を記載します。

3

hawkBit の設定の時に入力した「device」ユーザーのパスワードを入力します。この例のパスワードは使用しないでください。

4

hawkBit サーバーのURLを入力します。

5

TLS を使用の場合に、コンテナ作成の時の証明書を base64 で入力します。

6

hawkbit_register.desc の中身を確認します。hawkbit_register.sh を実行するだけです。

7

SWU を作成して、initial_setupがすでにインストール済みの Armadillo にインストールできます。

8

または、initial_setup.desc と合わせて hawkbit_register を含んだ initial_setup.swu を作成します。

6.9. Web UI から Armadillo をセットアップする (ABOS Web)

ABOS Web は、Web ブラウザから Armadillo の動作設定を行う機能で、ABOS (Armadillo Base OS) を搭載する全ての Armadillo に対応しています。

詳細は、「ABOS Web とは」を参照してください。

6.9.1. ABOS Web ではできないこと

ABOS Web は、ABOS の詳細や Linux のコマンドシェルの操作に詳しくない方でも、簡単に Armadillo のセットアップを行なえることを目的にしています。 そのための、Armadillo の動作設定を行う機能ですから、動作設定以外のこと、たとえば、Armadillo の動作状態を監視したりすることは、できません。 さらに、Armadillo をインターネットから設定操作する、リモート操作もできません。 セキュリティの観点から、ABOS Web は、同じ LAN 内からの接続しか受け付けないように実装しています。

ABOS Web でできる Armadillo の設定については、「ABOS Web の設定機能一覧と設定手順」を参照してください。 なお、ABOS Web は OSS で提供していますので、現在の ABOS Web に無い設定機能を、ご自分で実装して機能追加することも可能です。

6.9.2. ABOS Web の設定機能一覧と設定手順

現在、ネットワークに関して ABOS Web で設定できるのは以下のものです。

  • WWAN設定
  • WLAN設定
  • 各接続設定(各ネットワークインターフェースの設定)
  • DHCPサーバー設定
  • NAT設定
  • VPN設定

これらについては、「ネットワーク設定」で紹介していますので、そちらを参照してください。

ネットワーク以外にも ABOS Web は以下の機能を持っています。

  • コンテナ管理
  • SWUインストール

本章では、これらのネットワーク以外の設定項目について紹介します。

6.9.3. コンテナ管理

ABOS Web から Armadillo 上のコンテナを一覧表示して、コンテナごとに起動・停止を行うことができます。

ABOS Web のトップページから、"コンテナ管理"をクリックすると、図6.73「コンテナ管理」の画面に遷移します。

images/abos-images/abos-web/container-list.png

図6.73 コンテナ管理


この画面では、ABOS 上にあるコンテナ全てについて、イメージ名やコンテナ名、現在状態を一覧表示します。 コンテナの一覧表示欄で選択したコンテナに対し、起動と停止、および、コンテナから出力されたログの表示を行うことができます。

[注記]

「VPN設定」に記載のとおり、VPN 接続を設定すると、abos_web_openvpn のコンテナが作成されます。 VPN 接続中は、このコンテナが動作状態になっており、このコンテナをコンテナ管理画面で停止すると、VPN 接続が切断されます。

6.9.4. SWUインストール

ABOS Web から PC 上の SWU イメージや HTTP サーバー上の SWU イメージを Armadillo にインストールすることができます。

SWU イメージについては、「SWU イメージとは」を参照してください。

ABOS Web のトップページから、"SWU インストール"をクリックすると、図6.74「SWU インストール」の画面に遷移します。

images/abos-images/abos-web/swu-select_image.png

図6.74 SWU インストール


この画面では、PC 上の SWU イメージファイルまたは、HTTP サーバー上の SWU イメージファイルの URL を指定して、Armadillo にインストールすることができます。 Armadillo のソフトウェアのアップデート用に最初に行う設定で作成する initial_setup.swu が、まだ Armadillo にインストールされていなければ、"mkswu --init で作成した initial_setup.swu をインストールしてください。" というメッセージを画面上部に表示します。

SWU イメージのインストール動作を実行する時には、進行状況を示すログを表示します。 "現在の SWU で管理されているバージョン" 欄には、ABOS の各ソフトウェアコンポーネントの名前とバージョン情報を一覧表示します。

images/abos-images/abos-web/swu-curr_vers.png

図6.75 SWU 管理対象ソフトウェアコンポーネントの一覧表示


6.10. ssh 経由で Armadillo Base OS にアクセスする

Armadillo-640 にはopensshがインストールされていますが、デフォルトではSSHサーバーが起動していません。

SSHサーバーを自動的に起動するようにするためには、以下のコマンドを実行してください。

[armadillo:~]# rc-update add sshd
 * service sshd added to runlevel default
[armadillo ~]# persist_file /etc/runlevels/default/sshd
[ 2819.277066] EXT4-fs (mmcblk2p1): re-mounted. Opts: (null)
[armadillo ~]# reboot

上記の例では、再起動後も設定が反映されるように、 persist_file コマンドでeMMCに設定を保存しています。

6.11. コマンドラインからネットワーク設定をする

基本的に、 Armadillo-640 のネットワーク設定は、「ネットワーク設定」で紹介したとおり、 ABOS Web で行います。 しかし、 ABOS Webで対応できない複雑なネットワーク設定を行いたい場合などは、コマンドラインからネットワークの設定を行うことも可能です。

ここでは、コマンドラインからネットワークを設定する方法について説明します。

6.11.1. 接続可能なネットワーク

Armadillo-640 は、1つの Ethernet ポートが搭載されています。 Linuxからは、 eth0 に見えます。

表6.3 ネットワークとネットワークデバイス

ネットワーク ネットワークデバイス 出荷時の設定

Ethernet

eth0

DHCP


6.11.2. IP アドレスの確認方法

Armadillo-640 の IP アドレスを確認するには、ip addr コマンドを使用します。

[armadillo ~]# ip addr
1: lo: <LOOPBACK,UP,LOWER_UP> mtu 65536 qdisc noqueue state UNKNOWN qlen 1000
    link/loopback 00:00:00:00:00:00 brd 00:00:00:00:00:00
    inet 127.0.0.1/8 scope host lo
       valid_lft forever preferred_lft forever
    inet6 ::1/128 scope host
       valid_lft forever preferred_lft forever
2: eth0: <BROADCAST,MULTICAST,UP,LOWER_UP> mtu 1500 qdisc mq state UP qlen 1000
    link/ether 00:11:0c:00:0b:79 brd ff:ff:ff:ff:ff:ff
    inet 172.16.1.84/16 brd 172.16.255.255 scope global dynamic noprefixroute eth0
       valid_lft 28786sec preferred_lft 28786sec
    inet6 fe80::e9c0:7b3c:c0c9:3c4/64 scope link noprefixroute
       valid_lft forever preferred_lft forever

図6.76 IP アドレスの確認


inet となっている箇所が IP アドレスです。 特定のインターフェースのみを表示したい場合は、以下のようにします。

[armadillo ~]# ip addr show dev eth0
2: eth0: <BROADCAST,MULTICAST,UP,LOWER_UP> mtu 1500 qdisc mq state UP qlen 1000
    link/ether 00:11:0c:00:0b:79 brd ff:ff:ff:ff:ff:ff
    inet 172.16.1.84/16 brd 172.16.255.255 scope global dynamic noprefixroute eth0
       valid_lft 28656sec preferred_lft 28656sec
    inet6 fe80::e9c0:7b3c:c0c9:3c4/64 scope link noprefixroute
       valid_lft forever preferred_lft forever

図6.77 IP アドレス(eth0)の確認


6.11.3. ネットワークの設定方法

Armadillo-640 では、通常の Linux システムと同様、ネットワークインターフェースの設定は NetworkManager を使用します。 NetworkManager はすべてのネットワーク設定をコネクションとして管理します。コネクションには「どのようにネットワークへ接続するか」、 「どのようにネットワークを作成するか」を記述し、 /etc/NetworkManager/system-connections/ に保存します。 また、1つのデバイスに対して複数のコネクションを保存することは可能ですが、1つのデバイスに対して有効化にできるコネクションは1つだけです。

NetworkManager は、従来の /etc/network/interfaces を使った設定方法もサポートしていますが、本書では nmcli を用いた方法を中心に紹介します。

6.11.3.1. nmcli について

nmcli は NetworkManager を操作するためのコマンドラインツールです。 図6.78「nmcli のコマンド書式」nmcli の書式を示します。このことから、 nmcli は「オブジェクト (OBJECT) というものが存在し、 それぞれのオブジェクトに対してコマンド (COMMAND) を実行する。」という書式でコマンドを入力することがわかります。 また、オブジェクトそれぞれに help が用意されていることもここから読み取れます。

nmcli [ OPTIONS ] OBJECT { COMMAND | help }

図6.78 nmcli のコマンド書式


6.11.4. nmcli の基本的な使い方

ここでは nmcli の、基本的な使い方を説明します。

6.11.4.1. コネクションの一覧

登録されているコネクションの一覧を確認するには、次のようにコマンドを実行します。 [10]

[armadillo ~]# nmcli connection
NAME                UUID                                  TYPE      DEVICE
Wired connection 1  a6f99120-b4ed-3823-a6f0-0491d4b6101e  ethernet  eth0

図6.79 コネクションの一覧


表示された NAME については、以降 [ID] として利用することができます。

6.11.4.2. コネクションの有効化・無効化

コネクションを有効化するには、次のようにコマンドを実行します。

[armadillo ~]# nmcli connection up [ID]

図6.80 コネクションの有効化


コネクションを無効化するには、次のようにコマンドを実行します。

[armadillo ~]# nmcli connection down [ID]

図6.81 コネクションの無効化


6.11.4.3. コネクションの作成

コネクションを作成するには、次のようにコマンドを実行します。

[armadillo ~]# nmcli connection add con-name [ID] type [type] ifname [interface name]

図6.82 コネクションの作成


[ID] にはコネクションの名前(任意)、[type] には ethernet、wifi といった接続タイプ、 [interfacename] にはインターフェース名(デバイス)を入力します。 これにより /etc/NetworkManager/system-connections/ に[ID]の名前でコネクション ファイルが作成されます。このファイルを vi などで編集し、コネクションを修正する ことも可能です。

Armadillo-640 を再起動したときにコネクションファイルが消えてしまわないように、 persist_file コマンドで永続化する必要があります。 persist_file コマンドに関する詳細は「persist_file について」を参照してください。

[armadillo ~]# persist_file /etc/NetworkManager/system-connections/<コネクションファイル名>

図6.83 コネクションファイルの永続化


[注記]

別の Armadillo-640 からコネクションファイルをコピーした場合は、コネクションファイルの パーミッションを 600 に設定してください。 600 に設定後、 nmcli c reload コマンドでコネクションファイルを再読込します。

[armadillo ~]# chmod 600 /etc/NetworkManager/system-connections/<コネクションファイル名>
[armadillo ~]# persist_file /etc/NetworkManager/system-connections/<コネクションファイル名>
[armadillo ~]# nmcli c reload

swu イメージを使用してコネクションファイルのアップデートを行う場合は、 swu イメージに含めるコネクションファイルのパーミッションを 600 に設定してから、 swu イメージを作成してください。 アップデート実行時には swu イメージ作成時のパーミッションが維持されるため、 上記のコマンド実行手順は不要です。 swu イメージに関しては 「アップデート機能について」 を参考にしてください。

6.11.4.4. コネクションの削除

コネクションを削除するには、次のようにコマンドを実行します。

[armadillo ~]# nmcli connection delete [ID]

図6.84 コネクションの削除


これにより /etc/NetworkManager/system-connections/ のコネクションファイルも同時に削除されます。 コネクションの作成と同様に persist_file コマンドで永続化する必要があります。

[armadillo ~]# persist_file -d /etc/NetworkManager/system-connections/<コネクションファイル名>

図6.85 コネクションファイル削除時の永続化


6.11.4.5. 固定IPアドレスに設定する

表6.4「固定 IP アドレス設定例」の内容に設定する例を、 図6.86「固定 IP アドレス設定」に示します。

表6.4 固定 IP アドレス設定例

項目設定

IP アドレス

192.0.2.10

マスク長

24

デフォルトゲートウェイ

192.0.2.1


[armadillo ~]# nmcli connection modify [ID] \
ipv4.method manual ipv4.addresses 192.0.2.10/24 ipv4.gateway 192.0.2.1

図6.86 固定 IP アドレス設定


6.11.4.6. DNS サーバーを指定する

DNS サーバーを指定する例を、図6.87「DNS サーバーの指定」に示します。

[armadillo ~]# nmcli connection modify [ID] ipv4.dns 192.0.2.1

図6.87 DNS サーバーの指定


6.11.4.7. DHCP に設定する

DHCP に設定する例を、図6.88「DHCP の設定」に示します。

[armadillo ~]# nmcli connection modify [ID] ipv4.method auto

図6.88 DHCP の設定


[注記]

-ipv4.addresses のように、プロパティ名の先頭に "-" を付けることで設 定したプロパティを削除することができます。反対に "+" を付けることで プロパティを追加することができます。

6.11.4.8. コネクションの修正を反映する

有効化されているコネクションを修正した場合、かならず修正したコネクションを再 度有効化してください。

[armadillo ~]# nmcli connection down [ID]
[armadillo ~]# nmcli connection up [ID]

図6.89 コネクションの修正の反映


6.11.4.9. デバイスの一覧

デバイスの一覧(デバイス名、タイプ、状態、有効なコネクション)を確認するには、次のようにコマン ドを実行します。

[armadillo ~]# nmcli device
DEVICE  TYPE      STATE        CONNECTION
eth0    ethernet  connected    Wired connection 1
lo      loopback  unmanaged    --

図6.90 デバイスの一覧


6.11.4.10. デバイスの接続

デバイスを接続するには、次のようにコマンドを実行します。

[armadillo ~]# nmcli device connect [ifname]

図6.91 デバイスの接続


[注記]

デバイスを接続するには、接続しようとしているデバイスの有効なコネク ションが必要です。"Error: neither a valid connection nor device given" というメッセージが表示された場合には、 nmcli connection など で有効なコネクションがあるかを確認してください。

6.11.4.11. デバイスの切断

デバイスを切断するには、次のようにコマンドを実行します。

[armadillo ~]# nmcli device disconnect [ifname]

図6.92 デバイスの切断


6.11.5. 有線 LAN

有線 LAN で正常に通信が可能か確認します。設定を変更した場合、必ず変更したインターフェースを再度有効化してください。

同じネットワーク内にある通信機器と PING 通信を行います。以下の例では、通信機器が「192.0.2.20」という IP アドレスを持っていると想定しています。

[armadillo ~]# ping -I eth0 -c 3 192.0.2.20 1
PING 192.0.2.20 (192.0.2.20): 56 data bytes
64 bytes from 192.0.2.20: seq=0 ttl=64 time=3.056 ms
64 bytes from 192.0.2.20: seq=1 ttl=64 time=1.643 ms
64 bytes from 192.0.2.20: seq=2 ttl=64 time=1.633 ms

--- 192.0.2.20 ping statistics ---
3 packets transmitted, 3 packets received, 0% packet loss
round-trip min/avg/max = 1.633/2.110/3.056 ms

図6.93 有線 LAN の PING 確認


1

-I オプションでインターフェースを指定できます。

[注記]

有線 LAN 以外のインターフェースが有効化されている場合、ルーティングの設定などにより、ネットワーク通信に有線 LAN が使用されない場合があります。 設定を必ず確認してください。確実に有線 LAN の接続確認をする場合は、有線 LAN 以外のインターフェースを無効化してください。

6.12. ストレージの操作

ここでは、microSDHC カードを接続した場合を例にストレージの使用方法を説明します。 以降の説明では、共通の操作が可能な場合に、microSD/microSDHC/microSDXCカードを microSD カードと表記します。

6.12.1. ストレージ内にアクセスする

Linux では、アクセス可能なファイルやディレクトリは、一つの木構造にまとめられています。あるストレージデバイスのファイルシステムを、 この木構造に追加することを、マウントするといいます。マウントを行うコマンドは、 mount です。

mount コマンドの典型的なフォーマットは、次の通りです。

mount [-t fstype] device dir

図6.94 mount コマンド書式


-t オプションに続く fstype には、ファイルシステムタイプを指定します。ファイルシステムタイプの指定は省略可能です。 省略した場合、mount コマンドはファイルシステムタイプを推測します。この推測は必ずしも適切なものとは限りませんので、 事前にファイルシステムタイプが分かっている場合は明示的に指定してください。 FAT32 ファイルシステムの場合は vfat 、EXT3 ファイルシステムの場合は ext3 を指定します。

[注記]

通常、購入したばかりの microSDHC カードは FAT32 または exFAT ファイルシステムでフォーマットされています。

device には、ストレージデバイスのデバイスファイル名を指定します。microSD カードのパーティション1の場合は /dev/mmcblk1p1 、 パーティション2の場合は /dev/mmcblk1p2 となります。

dir には、ストレージデバイスのファイルシステムをマウントするディレクトリを指定します。

SD インターフェース (CON1) に microSD カードを挿入し、以下に示すコマンドを実行すると、 /mnt ディレクトリに microSD カードのファイルシステムをマウントすることができます。 microSDカード内のファイルは、/mnt ディレクトリ以下に見えるようになります。

[armadillo ~]# mount -t vfat /dev/mmcblk1p1 /mnt
[armadillo ~]# ls /mnt
  :
  :

図6.95 ストレージのマウント


6.12.2. ストレージを安全に取り外す

ストレージを安全に取り外すには、アンマウントという作業が必要です。アンマウントを行うコマンドは、 umount です。 オプションとして、アンマウントしたいデバイスがマウントされているディレクトリを指定します。

[armadillo ~]# umount /mnt

図6.96 ストレージのアンマウント


6.12.3. ストレージのパーティション変更とフォーマット

通常、購入したばかりの microSD カードや USB メモリは、一つのパーティションを持ち、FAT32ファイルシステムでフォーマットされています。

パーティション構成を変更したい場合、 fdisk コマンドを使用します。 fdisk コマンドの使用例として、 一つのパーティションで構成されている microSD カードのパーティションを、2つに分割する例を図6.97「fdiskコマンドによるパーティション変更」に示します。 一度、既存のパーティションを削除してから、新たにプライマリパーティションを二つ作成しています。先頭のパーティションには 100MByte、 二つめのパーティションに残りの容量を割り当てています。先頭のパーティションは /dev/mmcblk1p1 、二つめは /dev/mmcblk1p2 となります。

[armadillo ~]# fdisk /dev/mmcblk1

Welcome to fdisk (util-linux 2.37.2).
Changes will remain in memory only, until you decide to write them.
Be careful before using the write command.


Command (m for help): d
Selected partition 1
Partition 1 has been deleted.

Command (m for help): n
Partition type
   p   primary (0 primary, 0 extended, 4 free)
   e   extended (container for logical partitions)
Select (default p): p
Partition number (1-4, default 1): 1
First sector (2048-15138815, default 2048):
Last sector, +/-sectors or +/-size{K,M,G,T,P} (2048-15138815, default 15138815): +100M

Created a new partition 1 of type 'Linux' and of size 100 MiB.

Command (m for help): n
Partition type
   p   primary (1 primary, 0 extended, 3 free)
   e   extended (container for logical partitions)
Select (default p): p
Partition number (2-4, default 2): 2
First sector (206848-15138815, default 206848):
Last sector, +/-sectors or +/-size{K,M,G,T,P} (206848-15138815, default 15138815):

Created a new partition 2 of type 'Linux' and of size 7.1 GiB.

Command (m for help): w
The partition table has been altered.
Calling ioctl() to re-read partition table.
[  305.798606]  mmcblk1: p1 p2
Syncing disks.

図6.97 fdiskコマンドによるパーティション変更


FAT32 ファイルシステムでストレージデバイスをフォーマットするには、 mkfs.vfat コマンドを使用します。 また、EXT2 や EXT3、EXT4 ファイルシステムでフォーマットするには、mkfs.ext2mkfs.ext3mkfs.ext4 コマンドを使用します。 microSD カードのパーティション1を EXT4 ファイルシステムでフォーマットするコマンド例を次に示します

[armadillo ~]# mkfs.ext4 /dev/mmcblk1p1

図6.98 EXT4 ファイルシステムの構築


自分のアプリケーションで直接入力の処理ができない場合に Base OS から簡単な処理ができます。

buttond サービスで指定されたイベントでコマンドを実行します。

/etc/atmark/buttond.confBUTTOND_ARGS を指定することで、動作を指定することができます:

  • -s <key> -a "command" : 短押しの設定。キーを 1 秒以内に離せば短押しと認識し "command"を実行します。認識する時間は -t <time_ms> オプションで変更可能です。
  • -l <key> -s "command" : 長押しの設定。キーを 5 秒押し続けたタイミングで "command" を実行します。長押しと認識する時間は -t <time_ms> オプションで変更可能です。
  • 1 つのキーに対して複数の設定が可能です。長押しの設定が複数ある場合、押したままの状態だと一番長い時間に設定されている "command" を実行します。途中でキーを離した場合は、キーを離した時間に応じた "command" を実行します。(例:buttond -s <key> -a "cmd1" -l <key> -t 2000 -a "cmd2" -l <key> -t 10000 -a "cmd3" <file> を実行した場合、1 秒以内に離すと "cmd1"、2 秒以上 10 秒以内に離すと "cmd2"、10 秒を越えたら "cmd3" を実行します)。

    • 短押し設定を複数指定する場合、時間の短い設定を先に指定してください。 0.5秒、1 秒を設定したい場合、1 秒 → 0.5 秒の順番で指定すると 0.5秒が無視されます。

以下にデフォルトを維持したままで SW1 の早押しと長押しにそれぞれの場合にコマンドを実行させます。

[armadillo ~]# vi /etc/atmark/buttond.conf 1
BUTTOND_ARGS="$BUTTOND_ARGS -s prog1 -a 'date >> /tmp/shortpress'"
BUTTOND_ARGS="$BUTTOND_ARGS -l prog1 -t 5000 -a 'date >> /tmp/longpress'"
[armadillo ~]# persist_file /etc/atmark/buttond.conf 2
[armadillo ~]# rc-service buttond restart 3
buttond          | * Stopping button watching daemon ...                                         [ ok ]
buttond          | * Starting button watching daemon ...                                         [ ok ]
[armadillo ~]# cat /tmp/shortpress 4
Tue Mar 22 17:16:42 JST 2022
Tue Mar 22 17:16:43 JST 2022
[armadillo ~]# cat /tmp/longpress
Tue Mar 22 17:16:48 JST 2022

図6.99 buttond で SW1 を扱う


1

buttond の設定ファイルを編集します。この例では、短押しの場合 /tmp/shotpress に、5 秒以上の長押しの場合 /tmp/longpress に日付を出力します。

2

設定ファイルを保存します。

3

buttond サービスを再起動させます。ここでは再起動後短押しを 2 回、長押しを 1 回行ったとします。

4

押された回数を確認します。

USB キーボードや他の入力デバイスにも対応できます。

  1. デバイスを接続してから、 buttond でデバイス名とキーコードを確認します。

    [armadillo ~]# buttond -vvv /dev/input/* /dev/input/by-*/* 1
    Skipping directory /dev/input/by-id
    Skipping directory /dev/input/by-path
    [78972.042] /dev/input/event2 4 4 458976: non-keyboard event ignored
    [78972.042] /dev/input/event2 LEFTCTRL (29) pressed: ignored 2
    [78972.042] /dev/input/by-id/usb-0566_3029-event-kbd 4 4 458976: non-keyboard event ignored
    [78972.042] /dev/input/by-id/usb-0566_3029-event-kbd LEFTCTRL (29) pressed: ignored
    [78972.042] /dev/input/by-path/platform-xhci-hcd.1.auto-usb-0:1:1.0-event-kbd 4 4 458976: non-keyboard event ignored
    [78972.042] /dev/input/by-path/platform-xhci-hcd.1.auto-usb-0:1:1.0-event-kbd LEFTCTRL (29) pressed: ignored
    [78972.130] /dev/input/event2 4 4 458976: non-keyboard event ignored
    [78972.130] /dev/input/event2 LEFTCTRL (29) released: ignored
    [78972.130] /dev/input/by-id/usb-0566_3029-event-kbd 4 4 458976: non-keyboard event ignored
    [78972.130] /dev/input/by-id/usb-0566_3029-event-kbd LEFTCTRL (29) released: ignored
    [78972.130] /dev/input/by-path/platform-xhci-hcd.1.auto-usb-0:1:1.0-event-kbd 4 4 458976: non-keyboard event ignored
    [78972.130] /dev/input/by-path/platform-xhci-hcd.1.auto-usb-0:1:1.0-event-kbd LEFTCTRL (29) released: ignored

    1

    buttond-vvv で冗長出力にして、すべてのデバイスを指定します。

    2

    希望のキーを押すと、LEFTCTRL が三つのパスで認識されました。 一番安定する by-id のパスを控えておきます。

  2. USB デバイスを外すこともありますので、-i (inotify) で管理されてる入力デバイスとして追加します。 そうしないとデバイスを外したときにbuttondが停止します。

    [armadillo ~]# vi /etc/atmark/buttond.conf
    BUTTOND_ARGS="$BUTTOND_ARGS -i /dev/input/by-id/usb-0566_3029-event-kbd"
    BUTTOND_ARGS="$BUTTOND_ARGS -s LEFTCTRL -a 'podman_start button_pressed_container'"
    [armadillo ~]# persist_file /etc/atmark/buttond.conf
    [armadillo ~]# rc-service buttond restart

6.13. 動作中の Armadillo の温度を測定する

この章では、Armadillo Base OS 搭載製品を組み込んだユーザー製品の熱設計時に役立つ温度プロファイラツールである「atmark-thermal-profiler」について紹介します。

6.13.1. 温度測定の重要性

Armadillo は製品ごとに動作温度範囲が設定されていますが、それらはあくまでも標準筐体に放熱材と共に取り付けて使用した場合の目安であり、実運用時には自作の筐体の使用や放熱の有無などで記載のスペック通りにならない場合があります。 また、 Armadillo には CPU または SoC が特定の温度以上になると、自動的にシャットダウンするサーマルシャットダウン機能が搭載されています。 そのため、現実的には Armadillo を組み込んだ製品を運用時と同等の環境で動作させつつ、実際に温度を計測して実運用時の CPU 及び SoC 温度がどの程度まで上がるか、サーマルシャットダウンは起こらないかを確かめる必要があります。

Armadillo Base OS 搭載製品では、動作中の Armadillo の各種温度等を取得しCSV形式で出力する atmark-thermal-profiler を利用することができますので、温度測定に役立てることができます。

6.13.2. atmark-thermal-profiler をインストールする

atmark-thermal-profiler は apk パッケージで公開されていますので、apk add コマンドでインストールすることが可能です。

[armadillo ~]# apk upgrade
[armadillo ~]# apk add atmark-thermal-profiler

図6.100 atmark-thermal-profiler をインストールする


[警告]

atmark-thermal-profiler はデバッグ(開発)用途で温度情報を収集及び解析するツールです。 atmark-thermal-profiler は、他の apk パッケージと同様に persist_file -a コマンドで永続的にインストールしておくことが可能ですが、 ログの保存のために Armadillo が起動している間 eMMC への書き込みを続けるので、 Armadillo を組み込んだ製品の運用時に動かしたままにしておくことは推奨しません。

atmark-thermal-profiler を永続的にインストールする場合は、運用時には必ず削除してください。

6.13.3. atmark-thermal-profiler を実行・停止する

図6.101「atmark-thermal-profiler を実行する」に示すコマンドを実行することで、 atmark-thermal-profiler が動作を開始します。

[armadillo ~]# rc-service atmark-thermal-profiler start

図6.101 atmark-thermal-profiler を実行する


図6.102「atmark-thermal-profiler を停止する」に示すコマンドを実行することで、 atmark-thermal-profiler が動作を停止します。

[armadillo ~]# rc-service atmark-thermal-profiler stop

図6.102 atmark-thermal-profiler を停止する


6.13.4. atmark-thermal-profiler が出力するログファイルを確認する

atmark-thermal-profiler は、インストール直後から自動的に温度やCPU負荷率、Load Averageなどの情報を30秒に1度の周期で集め、/var/log/thermal_profile.csvに追記していきます。

[armadillo ~]# head /var/log/thermal_profile.csv
DATE,ONESHOT,CPU_TMEP,SOC_TEMP,LOAD_AVE,CPU_1,CPU_2,CPU_3,CPU_4,CPU_5,USE_1,USE_2,USE_3,USE_4,USE_5
2022-11-30T11:11:05+09:00,0,54,57,0.24,/usr/sbin/rngd -b -p /run/rngd.pid -q -O jitter:buffer_size:4133 -O jitter:refill_thresh:4133 -O jitter:thread_count:1,/usr/sbin/chronyd -f /etc/chrony/chrony.conf,[kworker/1:3H-kb],podman network inspect podman,/usr/sbin/NetworkManager -n,22,2,2,0,0,
: (省略)

図6.103 ログファイルの内容例


thermal_profile.csv の1行目はヘッダ行です。 各列についての説明を表6.5「thermal_profile.csvの各列の説明」に記載します。

表6.5 thermal_profile.csvの各列の説明

ヘッダ 説明

DATE

その行のデータ取得日時です。 "年-月-日T時:分:秒+タイムゾーン" の形式で出力されます。

ONESHOT

この列が1の行のデータは、サーマルシャットダウンを含むシャットダウンが実行された時に取得されたことを示します。

CPU_TEMP

計測時点の CPU 温度を示します。単位は℃です。

SOC_TEMP

計測時点の SoC 温度を示します。単位は℃です。製品よっては非対応で、その場合は空白になります。

LOAD_AVE

計測時点から直近1分間のLoad Averageです。

CPU_1

計測時点のCPU使用率1位のプロセスです。

CPU_2

計測時点のCPU使用率2位のプロセスです。

CPU_3

計測時点のCPU使用率3位のプロセスです。

CPU_4

計測時点のCPU使用率4位のプロセスです。

CPU_5

計測時点のCPU使用率5位のプロセスです。

USE_1

計測時点のCPU使用率1位のプロセスのCPU使用率です。

USE_2

計測時点のCPU使用率2位のプロセスのCPU使用率です。

USE_3

計測時点のCPU使用率3位のプロセスのCPU使用率です。

USE_4

計測時点のCPU使用率4位のプロセスのCPU使用率です。

USE_5

計測時点のCPU使用率5位のプロセスのCPU使用率です。


6.13.5. 温度測定結果の分析

atmark-thermal-profiler を使用して得られたログファイルの内容を分析してみます。

6.13.5.1. サーマルシャットダウン温度の確認

予め、使用している Armadillo が何℃でサーマルシャットダウンするか確認しておきます。 ここでは、 Armadillo Base OS を搭載している Armadillo-IoT ゲートウェイ G4 を例とします。 他の製品では得られる結果が異なる場合があることに注意してください。

[armadillo ~]# cat /sys/class/thermal/thermal_zone0/trip_point_1_temp
105000 1
[armadillo ~]# cat /sys/class/thermal/thermal_zone1/trip_point_1_temp
105000 2

図6.104 サーマルシャットダウン温度の確認(Armadillo-IoT ゲートウェイ G4を例に)


1

CPU のサーマルシャットダウン温度です。ミリ℃で表記されているので、105℃でサーマルシャットダウンすることがわかります。

2

SoC のサーマルシャットダウン温度です。ミリ℃で表記されているので、105℃でサーマルシャットダウンすることがわかります。

6.13.5.2. 温度測定結果のグラフ化

atmark-thermal-profiler が出力するログ(thermal_profile.csv)はCSVファイルなので、各種表計算ソフトでインポートしてグラフ化することが可能です。 これにより Armadillo 動作中の温度の変化が可視化され、得られる情報が見やすくなります。

図6.105「Armadillo-IoT ゲートウェイ G4で取得した温度のグラフ」は Armadillo-IoT ゲートウェイ G4上で一定期間 atmark-thermal-profiler を実行して取得した thermal_profile.csv を Google スプレッドシートでグラフ化したものです。 例のために、途中で stress-ng コマンドを実行して CPU に負荷を与えた後、 stress-ng コマンドを停止して CPU と SoC の温度が下がるのを待った際のデータです。

images/abos-images/thermal_profiler_graph.png

図6.105 Armadillo-IoT ゲートウェイ G4で取得した温度のグラフ


グラフの縦軸は温度(℃)で、横軸は時間です。青い線は CPU の温度、赤い線は SoC の温度を表しています。 このグラフと、「サーマルシャットダウン温度の確認」で得たサーマルシャットダウン温度を見比べると、 CPU に負荷をかけた際であっても SoC の温度は 60℃ 前後ほどまでしか上がらず、 この条件で動く Armadillo が温度的にどれほど余裕を持っているかをひと目で確認できます。

6.13.5.3. CPU使用率の確認

atmark-thermal-profiler は、時間毎の温度だけでなく CPU 使用率と CPU 使用率の高いプロセスについても取得して記録します。 CPU 使用率については thermal_profile.csv の CPU_1〜CPU_5 列と、 USE_1〜USE_5 列を参照してください。 各列について詳しくは表6.5「thermal_profile.csvの各列の説明」にまとまっています。

一般的に CPU 使用率が高くなると、 CPU 周辺の温度も高くなります。 そのため、測定した温度が高い場合は、 CPU 使用率の高いプロセスに注目して、 CPU を無駄に使用している意図しない処理が行なわれていないかなどを確認することをおすすめします。

6.13.6. 温度センサーの仕様

Armadillo-640の温度センサーは、i.MX6ULLのTEMPMON(Temperature Monitor)を利用しています。

起動直後の設定では、ARMまたはSoCの測定温度が 105°C以上になった場合、Linuxカーネルはシステムを停止します。

機能
  • 測定温度範囲: -40〜+105°C
sysfs thermalクラスディレクトリ
  • /sys/class/thermal/thermal_zone0

6.14. Armadillo Base OS をアップデートする

Armadillo Base OS は SWUpdate によってアップデートすることができます。

アップデートする際には、rootfs ファイルシステムにインストールされたファイルをすべて消して、アップデートの中身と /etc/swupdate_preserve_files に記載されているファイルで新しい rootfs を作ります。「swupdate_preserve_files について」 を参照してください。

アップデートでファイルを削除してしまった場合に abos-ctrl mount-old で前のシステムを read-only でマウントして、 削除されたファイルをコピーすることもできます。

6.15. ロールバック状態を確認する

Armadillo Base OS の ルートファイルシステムが壊れて起動できなくなった場合に自動的に前のバージョンで再起動します。

自分で確認する必要がある場合に abos-ctrl status でロールバックされてるかどうかの確認ができます。

必要な場合(例えば、自分のアプリケーションがアップデート直後に問題があった場合)、 abos-ctrl rollback で手動のロールバックも可能です。ロールバックにエラーがなければ、再起動してロールバックを完了します。

なお、/var/at-log/atlog に切り替えの際に必ずログを書きますので、調査の時に使ってください。

[armadillo ~]# cat /var/at-log/atlog
Mar 17 14:51:35 armadillo NOTICE swupdate: Installed update to /dev/mmcblk0p2: \
extra_os.sshd: unset -> 1, extra_os.initial_setup: unset -> 1
Mar 17 16:48:52 armadillo NOTICE swupdate: Installed update to /dev/mmcblk0p1: \
boot: 2020.04-at5 -> 2020.04-at6, base_os: 3.15.0-at.3 -> 3.15.0-at.4
Mar 17 17:42:15 armadillo NOTICE swupdate: Installed update to /dev/mmcblk0p2: \
other_boot: 2020.04-at5 -> 2020.04-at6, container: unset -> 1, extra_os.container: unset -> 1

図6.106 /var/at-log/atlog の内容の例


6.16. Armadillo 起動時にコンテナの外でスクリプトを実行する

起動時に何かスクリプトを走らせるためにはコンテナとして実行することを推奨します。 「コンテナ起動設定ファイルを作成する」 を参照してください。

コンテナで実行不可能な場合に、「local」サービスを使うことができます: /etc/local.d ディレクトリに .start ファイルを置いておくと起動時に実行されて、 .stop ファイルは終了時に実行されます。

[armadillo ~]# vi /etc/local.d/date_test.start 1
#!/bin/sh

date > /tmp/boottest
[armadillo ~]# chmod +x /etc/local.d/date_test.start 2
[armadillo ~]# persist_file /etc/local.d/date_test.start 3
[armadillo ~]# reboot
: (省略)
[armadillo ~]# cat /tmp/boottest 4
Tue Mar 22 16:36:12 JST 2022

図6.107 local サービスの実行例


1

スクリプトを作ります。

2

スクリプトを実行可能にします。

3

スクリプトを保存して、再起動します。

4

実行されたことを確認します。

6.17. u-boot の環境変数の設定

u-boot の環境変数を変更するには /boot/uboot_env.d/ ディレクトリに環境変数が書かれた設定ファイルを配置します。

ファイルの構文は fw_setenv が扱うことができるもので、以下のとおりです:

  • # で始まる行はコメントと扱われる為、無視されます。また、 環境変数への代入を示す = がない場合も無視されます。
  • [変数]=[値] で変数を設定します。スペースや引用符を含め他の文字は有効ですので、変数の名前と値に不要な文字を入れないように注意してください。
  • [変数]= で変数を消します。値がない場合に変数が消去されます。

このファイルによるアップデート内容は swupdate でアップデートする際に適用されます。

実行中のシステムに影響がありませんので、設定ファイルを swupdate で転送しない場合はファイル永続化後に fw_setenv -s /boot/uboot_env.d/[ファイル名] で変数を書き込んでください。

swupdate でファイルを転送した場合には、変数はすぐに利用されます。

[armadillo ~]# vi /boot/uboot_env.d/no_prompt 1
# bootdelay を -2 に設定することで u-boot のプロンプトを無効化します
bootdelay=-2
[armadillo ~]# persist_file -v /boot/uboot_env.d/no_prompt 2
'/boot/uboot_env.d/no_prompt' -> '/mnt/boot/uboot_env.d/no_prompt'
[armadillo ~]# fw_setenv -s /boot/uboot_env.d/no_prompt 3
Environment OK, copy 0
[armadillo ~]# fw_printenv | grep bootdelay 4
bootdelay=-2

図6.108 uboot_env.d のコンフィグファイルの例


1

コンフィグファイルを生成します。

2

ファイルを永続化します。

3

変数を書き込みます。

4

書き込んだ変数を確認します。

[ティップ]

mkswu バージョン 4.4 以降が必要です。必要な場合はアップデートしてください。

[ATDE ~]$ sudo apt update && sudo apt upgrade

書き方は、 /usr/share/mkswu/examples/uboot_env.desc を参考にしてください。

[警告]

「ブートローダーをビルドする」 の際に u-boot のデフォルトを変更した場合や、u-boot のプロンプトで「setenv」や「saveenv」を実行しても、 /boot/uboot_env.d/00_defaults によって変更がアップデートの際にリセットされます。

00_defaults のファイルは Base OS の一部で更新されることもありますので、変更を望む場合は別のファイルを作って設定してください。 ファイルはアルファベット順で処理されます。 00_defaults にある変数を後のファイルにも設定した場合はそのファイルの値だけが残ります。

主要なu-bootの環境変数を以下に示します。

表6.6 u-bootの主要な環境変数

環境変数説明デフォルト値

console

コンソールのデバイスノードと、UARTのボーレート等を指定します。

ttymxc0,115200

bootcount

起動回数を示します。初回起動時に1となり、起動に失敗する度にインクリメントされます。ユーザーランドのbootcountサービスが起動されると、この値はクリアされます。この値が"bootlimit"を越えた場合はロールバックします。ロールバックの詳細については、「ロールバック(リカバリー)」を参照してください。

1

bootlimit

"bootcount"のロールバックを行うしきい値を指定します。

3

bootdelay

保守モードに遷移するためのキー入力を待つ時間を指定します(単位:秒)。次の値は特別な意味を持ちます。

  • -1: キー入力の有無に関らず保守モードに遷移します。
  • -2: キー入力の有無に関らず保守モードに遷移しません。

0

image

Linuxカーネルイメージファイルのパスです。"mmcdev"で指定されたデバイスの、"mmcpart"で指定されたパーティションのルートディレクトリからの相対パスで指定します。

boot/Image

fdt_file

DTBファイルのパスです。"mmcdev"で指定されたデバイスの、"mmcpart"で指定されたパーティションのルートディレクトリからの相対パスで指定します。

boot/armadillo.dtb

overlays_list

DT overlayの設定ファイルのパスです。"mmcdev"で指定されたデバイスの、"mmcpart"で指定されたパーティションのルートディレクトリからの相対パスで指定します。DT overlayの詳細については、「DT overlay によるカスタマイズ」を参照してください。

boot/overlays.txt

mmcautodetect

mmcデバイスの自動検出機能の有効/無効を指定します。yesを指定した場合のみ、u-bootが起動されたmmcデバイスが自動的にmmcdevとして利用されます。

yes

mmcdev

"image"や"fdt_file"で指定されたファイルが配置してあるmmcデバイスのインデックスを指定します。インデックスとmmcデバイスの対応は次の通りです。

  • 0: eMMC
  • 1: microSD/microSDHC/microSDXC カード

"mmcautodetect"にyesが指定されている場合は、u-bootの起動時に上書きされます。

0

mmcpart

"image"や"fdt_file"で指定されたファイルが配置してある、"mmcdev"で指定されたmmcデバイスのパーティション番号を指定します。"mmcautodetect"にyesが指定されている場合は、u-bootの起動時に上書きされます。

1

mmcroot

ルートファイルシステムが配置されているデバイスノードと、マウントオプションを指定します。"mmcautodetect"にyesが指定されている場合は、u-bootの起動時に上書きされます。overlayfsが正しく機能しなくなる場合があるので、roの指定は変更しないでください。

/dev/mmcblk0p1 rootwait ro

optargs

Linuxカーネル起動時パラメータを指定します。"quiet"を削除すると、コンソールに起動ログが出力されるようになりますが、起動時間が長くなります。nokaslrを削除すると、KASLR(Kernel Adress Space Layout Randomization)が有効となり、Linuxカーネルの仮想アドレス空間がランダム化されます。

quiet nokaslr

loadaddr

LinuxカーネルがRAMにロードされる物理アドレスを指定します。

0x80800000

fdt_addr

DTBがRAMにロードされる物理アドレスを指定します。

0x83500000

overlay_addr

DT overlayのワーク領域として利用されるRAMの物理アドレスを指定します。

0x83520000


6.18. SDブートの活用

本章では、microSDカードから直接起動(以降「SDブート」と表記します)する手順を示します。 SDブートを活用すると、microSDカードを取り替えることでシステムイメージを変更することができます。 本章に示す手順を実行するためには、容量が8Gbyte以上のmicroSDカードを必要とします。

[ティップ]

SDブートを行った場合、ブートローダーの設定は microSDカード に保存されます。

6.18.1. ブートディスクの作成

  1. ブートディスクイメージのビルドします

    「Alpine Linux ルートファイルシステムをビルドする」 で説明されているソースツリー alpine/build-rootfs にあるスクリプト build_image「ブートローダーをビルドする」 でビルドした u-boot-dtb.imx を利用します。

    [ATDE ~/build-rootfs-[VERSION]]$ sudo ./build_image.sh --board a600 \
              --boot ~/u-boot-[VERSION]/u-boot-dtb.imx
    : (省略)
    [ATDE ~/build-rootfs-[VERSION]]$ ls baseos-640*img
    baseos-640-[VERSION].img
  2. ATDE に microSD カードを接続します。詳しくは「取り外し可能デバイスの使用」を参考にしてください。
  3. microSD カードのデバイス名を確認します

    [ATDE ~]$ ls /dev/sd?
    /dev/sda  /dev/sdb
    [ATDE ~]$ sudo fdisk -l /dev/sdb
    Disk /dev/sdb: 7.22 GiB, 7751073792 bytes, 15138816 sectors
    Disk model: SD/MMC
    : (省略)
  4. microSD カードがマウントされている場合、アンマウントします。

    [ATDE ~]$ mount
    : (省略)
    /dev/sdb1 on /media/52E6-5897 type ext2 (rw,nosuid,nodev,relatime,uid=1000,gid=1000,fmask=0022,dmask=0077,codepage=cp437,iocharset=utf8,shortname=mixed,showexec,utf8,flush,errors=remount-ro,uhelper=udisks)
    [ATDE ~]$ sudo umount /dev/sdb1

    図6.109 自動マウントされたmicroSDカードのアンマウント


  5. ブートディスクイメージの書き込み

    [ATDE ~]$ sudo dd if=~/build-rootfs-[VERSION]/baseos-640-[VERSION].img \
                      of=/dev/sdb bs=1M oflag=direct status=progress

    microSDカードの性能にもよりますが、書き込みには5分程度かかります。

[ティップ]

microSDカードのパーティション構成は次のようになっています。

表6.7 microSDカードのパーティション構成

パーティション オフセット サイズ 説明

-

0

10MiB

ブートローダー

1

10MiB

300MiB

A/B アップデートのA面パーティション

2

310MiB

300MiB

A/B アップデートのB面パーティション

3

610MiB

50MiB

ログ用パーティション

4

660MiB

200MiB

ファームウェア

5

860MiB

残り

アプリケーション用パーティション


gdiskで確認すると次のようになります。

[ATDE ~]$ sudo gdisk -l /dev/sdb
GPT fdisk (gdisk) version 1.0.8

Partition table scan:
  MBR: protective
  BSD: not present
  APM: not present
  GPT: present

Found valid GPT with protective MBR; using GPT.
Disk /dev/mmcblk1: 15319040 sectors, 7.3 GiB
Sector size (logical/physical): 512/512 bytes
Disk identifier (GUID): 309AD967-470D-4FB2-835E-7963578102A4
Partition table holds up to 128 entries
Main partition table begins at sector 2 and ends at sector 33
First usable sector is 34, last usable sector is 15319006
Partitions will be aligned on 2048-sector boundaries
Total free space is 20446 sectors (10.0 MiB)

Number  Start (sector)    End (sector)  Size       Code  Name
   1           20480          634879   300.0 MiB   8300  rootfs_0
   2          634880         1249279   300.0 MiB   8300  rootfs_1
   3         1249280         1351679   50.0 MiB    8300  logs
   4         1351680         1761279   200.0 MiB   8300  firm
   5         1761280        60485632   28.0 GiB    8300  app

6.18.2. SDブートの実行

「ブートディスクの作成」で作成したブートディスクから起動する方法を説明します。

  1. Armadillo-640に電源を投入する前に、ブートディスクをCON1(microSD スロット)に挿入します。 また、JP1と JP2 を共にジャンパでショートします。
  2. 電源を投入します。

    U-Boot 2020.04-at15 (Jun 09 2023 - 18:46:32 +0900)
    
    CPU:   i.MX6ULL rev1.1 at 396 MHz
    Model: Atmark Techno {product}
    DRAM:  512 MiB
    setup_rtc_disarm_alarm: Can't find bus
    WDT:   Started with servicing (10s timeout)
    PMIC: PFUZE3000 DEV_ID=0x30 REV_ID=0x11
    MMC:   FSL_SDHC: 0, FSL_SDHC: 1
    Loading Environment from MMC... OK
    In:    mxc_serial
    Out:   mxc_serial
    Err:   mxc_serial
    switch to partitions #0, OK
    mmc1 is current device
    flash target is MMC:1
    Net:   eth0: ethernet@2188000
    Fastboot: Normal
    Saving Environment to MMC... Writing to MMC(1)... OK
    Normal Boot
    Hit any key to stop autoboot:  0
    switch to partitions #0, OK
    mmc1 is current device
    Cannot lookup file boot/boot.scr
    6859976 bytes read in 1420 ms (4.6 MiB/s)
    Booting from mmc ...
    37363 bytes read in 93 ms (391.6 KiB/s)
    Loading fdt boot/armadillo.dtb
    Cannot lookup file boot/overlays.txt
    ## Booting kernel from Legacy Image at 80800000 ...
       Image Name:   Linux-5.10.180-2-at
       Created:      2023-06-09   9:48:24 UTC
       Image Type:   ARM Linux Kernel Image (uncompressed)
       Data Size:    6859912 Bytes = 6.5 MiB
       Load Address: 82000000
       Entry Point:  82000000
       Verifying Checksum ... OK
    ## Flattened Device Tree blob at 83500000
       Booting using the fdt blob at 0x83500000
       Loading Kernel Image
       Loading Device Tree to 9ef1d000, end 9ef49fff ... OK
    
    Starting kernel ...
    
    ...中略...
    
    Welcome to Alpine Linux 3.17
    Kernel 5.10.180-2-at on an armv7l (/dev/ttymxc0)
    
    armadillo login:

6.19. Armadilloのソフトウェアをビルドする

ここでは、Armadillo-640で使用するソフトウェアのビルド方法を説明します。

6.19.1. ブートローダーをビルドする

ここでは、Armadillo-640向けのブートローダーイメージをビルドする方法を説明します。

  1. ソースコードの取得

    Armadillo Base OS対応 Armadillo-640 ブートローダー から 「ブートローダー ソース」ファイル (u-boot-[VERSION].tar.gz) を次のようにダウンロードします。

    [ATDE ~]$ wgets https://armadillo.atmark-techno.com/files/downloads/armadillo-640/source/u-boot-[VERSION].tar.gz
    [ATDE ~]$ tar xf u-boot-[VERSION].tar.gz
    [ATDE ~]$ cd u-boot-[VERSION]
  2. デフォルトコンフィギュレーションの適用

    図6.110「デフォルトコンフィギュレーションの適用」に示すコマンドを実行します。

    [ATDE ~/u-boot-[VERSION]]$ make ARCH=arm armadillo-640_defconfig
      HOSTCC  scripts/basic/fixdep
      HOSTCC  scripts/kconfig/conf.o
      YACC    scripts/kconfig/zconf.tab.c
      LEX     scripts/kconfig/zconf.lex.c
      HOSTCC  scripts/kconfig/zconf.tab.o
      HOSTLD  scripts/kconfig/conf
    #
    # configuration written to .config
    #

    図6.110 デフォルトコンフィギュレーションの適用


  3. ビルド

    次のコマンドを実行します。

    [ATDE ~/u-boot-[VERSION]]$ make CROSS_COMPILE=arm-linux-gnueabihf-
    :
    : (省略)
    :
      LD      u-boot
      OBJCOPY u-boot-nodtb.bin
      CAT     u-boot-dtb.bin
      MKIMAGE u-boot-dtb.imx
      OBJCOPY u-boot.srec
      COPY    u-boot.bin
      SYM     u-boot.sym
      CFGCHK  u-boot.cfg
  4. インストール

    ビルドしたブートローダーは、以下に示すどちらかの方法でインストールしてください。

    • swupdate でインストールする

      mkswu の初期化を行った後に 提供されているスクリプトを使ってSWUイメージを作成してください。

      [ATDE ~/u-boot-[VERSION]]$ echo 'swdesc_boot u-boot-dtb.imx' > boot.desc
      [ATDE ~/u-boot-[VERSION]]$ mkswu boot.desc
      boot.swu を作成しました。

      作成された boot.swu のインストールについては 「SWU イメージのインストール」 を参照ください。

    • 「ブートディスクの作成」 でインストールする

      手順を参考にして、ビルドされた u-boot-dtb.imx を使ってください。

6.19.2. Linux カーネルをビルドする

ここでは、Armadillo-640向けのLinuxカーネルイメージをビルドする方法を説明します。

[ティップ]

Armadillo-640では、 基本的にはLinuxカーネルイメージをビルドする必要はありません。 「Alpine Linux ルートファイルシステムをビルドする」の手順を実施することで、 標準のLinuxカーネルイメージがルートファイルシステムに組み込まれます。

標準のLinuxカーネルイメージは、アットマークテクノが提供する linux-at というAlpine Linux用のパッケージに含まれています。

カスタマイズしたLinuxカーネルイメージを利用する場合は、 以下に示す手順を参照してください。

  1. ソースコードの取得

    Armadillo Base OS対応 Armadillo-640 Linuxカーネル から 「Linuxカーネル」ファイル (linux-at-a6-[VERSION].tar) をダウンロードして、次のコマンドを実行します。

    [ATDE ~]$ tar xf linux-at-a6-[VERSION].tar
    [ATDE ~]$ tar xf linux-at-a6-[VERSION]/linux-[VERSION].tar.gz
    [ATDE ~]$ cd linux-[VERSION]
  2. デフォルトコンフィギュレーションの適用

    次のコマンドを実行します。

    [ATDE ~/linux-[VERSION]]$ make ARCH=arm armadillo-640_defconfig
  3. カーネルコンフィギュレーションの変更

    次のコマンドを実行します。 カーネルコンフィギュレーションの変更を行わない場合はこの手順は不要です。

    [ATDE ~]$ make ARCH=arm menuconfig

    コマンドを実行するとカーネルコンフィギュレーション設定画面が表示されます。 カーネルコンフィギュレーションを変更後、"Exit"を選択して 「Do you wish to save your new kernel configuration? (Press <ESC><ESC> to continue kernel configuration.)」で"Yes"とし、 カーネルコンフィギュレーションを確定します。

     .config - Linux/arm 5.10.145 Kernel Configuration
     ─────────────────────────────────────────────
      ┌──────────  Linux/arm 5.10.145 Kernel Configuration   ──────────┐
      │  Arrow keys navigate the menu.  <Enter> selects submenus ---> (or empty submenus   │
      │  ----).  Highlighted letters are hotkeys.  Pressing <Y> includes, <N> excludes, <M>│
      │  modularizes features.  Press <Esc><Esc> to exit, <?> for Help, </> for Search.    │
      │  Legend: [*] built-in  [ ] excluded  <M> module  < > module capable                │
      │ ┌───────────────────────────────────────┐ │
      │ │         General setup  --->                                                  │ │
      │ │         System Type  --->                                                    │ │
      │ │         Bus support  --->                                                    │ │
      │ │         Kernel Features  --->                                                │ │
      │ │         Boot options  --->                                                   │ │
      │ │         CPU Power Management  --->                                           │ │
      │ │         Floating point emulation  --->                                       │ │
      │ │         Power management options  --->                                       │ │
      │ │         Firmware Drivers  --->                                               │ │
      │ │     [ ] ARM Accelerated Cryptographic Algorithms  ----                       │ │
      │ │         General architecture-dependent options  --->                         │ │
      │ │     [*] Enable loadable module support  --->                                 │ │
      │ │     [*] Enable the block layer  --->                                         │ │
      │ │         IO Schedulers  --->                                                  │ │
      │ │         Executable file formats  --->                                        │ │
      │ │         Memory Management options  --->                                      │ │
      │ │     [*] Networking support  --->                                             │ │
      │ │         Device Drivers  --->                                                 │ │
      │ │         File systems  --->                                                   │ │
      │ │         Security options  --->                                               │ │
      │ │     -*- Cryptographic API  --->                                              │ │
      │ │         Library routines  --->                                               │ │
      │ │         Kernel hacking  --->                                                 │ │
      │ │                                                                              │ │
      │ └───────────────────────────────────────┘ │
      ├──────────────────────────────────────────┤
      │              <Select>    < Exit >    < Help >    < Save >    < Load >              │
      └──────────────────────────────────────────┘
    [ティップ]

    Linux Kernel Configuration メニューで"/"キーを押下すると、カーネルコンフィギュレーションの検索を行うことができます。 カーネルコンフィギュレーションのシンボル名(の一部)を入力して"Ok"を選択すると、 部分一致するシンボル名を持つカーネルコンフィギュレーションの情報が一覧されます。

  4. ビルド

    次のコマンドを実行します。

    [ATDE ~/linux-[VERSION]]$ make ARCH=arm CROSS_COMPILE=arm-linux-gnueabihf-
    [ATDE ~/linux-[VERSION]]$ make ARCH=arm CROSS_COMPILE=arm-linux-gnueabihf- LOADADDR=0x82000000 uImage
  5. インストール

    ビルドしたカーネルは、以下に示すどちらかの方法でインストールしてください。

    • swupdate でインストールする

      mkswu の初期化を行った後に 提供されているスクリプトを使ってSWUイメージを作成してください。

      [ATDE ~/linux-[VERSION]]$ /usr/share/mkswu/examples/kernel_update_plain.install.sh ~/mkswu/kernel.desc
      Installing kernel in /home/atmark/mkswu/kernel ...
      'arch/arm/boot/uImage' -> '/home/atmark/mkswu/kernel/uImage'
      'arch/arm/boot/dts/armadillo-640-at-dtweb.dtb' -> '/home/atmark/mkswu/kernel/armadillo-610-at-dtweb.dtb'
      : (省略)
        INSTALL arch/arm/crypto/chacha-neon.ko
        INSTALL arch/arm/crypto/curve25519-neon.ko
      : (省略)
        DEPMOD  [VERSION]
      Updated /home/atmark/mkswu/kernel.desc version from [PREV_VERSION] to [VERSION]
      Done installing kernel, run `mkswu "/home/atmark/mkswu/kernel.desc"` next.
      [ATDE ~/linux-[VERSION]]$ mkswu ~/mkswu/kernel.desc
      /home/atmark/mkswu/kernel.swu を作成しました

      図6.111 Linux カーネルを SWU でインストールする方法


      作成された kernel.swu のインストールについては 「SWU イメージのインストール」 を参照ください。

      [注記]

      この kernel.swu をインストールする際は /etc/swupdate_preserve_files の更新例 の様に /boot/lib/modules を維持するように追加します。 カーネルをインストールした後に Armadillo Base OS を更新しても、この kernel.swu のカーネルが維持されます。

      標準のカーネルに戻りたいか、以下の 図6.112「Linux カーネルを build_rootfs でインストールする方法」 で Armadillo Base OS の更新のカーネルを使用したい場合は /etc/swupdate_preserve_files から /boot/lib/modules の行を削除してください。

    • build_rootfs で新しいルートファイルシステムをビルドする場合は build_rootfs を展開した後に以下のコマンドでインストールしてください。

      [ATDE ~/linux-[VERSION]]$ BROOTFS=$HOME/build-rootfs-[VERSION] 1
      [ATDE ~/linux-[VERSION]]$ sed -i -e '/^linux-at-a6/d' "$BROOTFS/a600/packages" 2
      [ATDE ~/linux-[VERSION]]$ cp -v arch/arm/boot/uImage "$BROOTFS/a600/resources/boot/"
      'arch/arm/boot/uImage' -> '/home/atmark/build-rootfs-v3.17-at.7/a600/resources/boot/uImage'
      [ATDE ~/linux-[VERSION]]$ cp -v arch/arm/boot/dts/armadillo*.{dtb,dtbo} "$BROOTFS/a600/resources/boot/"
      'arch/arm/boot/dts/armadillo-640-at-dtweb.dtb' -> '/home/atmark/build-rootfs-v3.17-at.7/a600/resources/boot/armadillo-640-at-dtweb.dtb'
      : (省略)
      [ATDE ~/linux-[VERSION]]$ rm -rfv "$BROOTFS/a600/resources/lib/modules" 3
      [ATDE ~/linux-[VERSION]]$ make ARCH=arm CROSS_COMPILE=arm-linux-gnueabihf- INSTALL_MOD_PATH="$BROOTFS/a600/resources" -j5 modules_install
        INSTALL arch/arm/crypto/chacha-neon.ko
        INSTALL arch/arm/crypto/curve25519-neon.ko
      : (省略)
        DEPMOD  [VERSION]

      図6.112 Linux カーネルを build_rootfs でインストールする方法


      1

      build_rootfs のディレクトリ名を設定します。これによって、長いディレクトリ名を何度も入力する必要が無くなります。

      2

      アットマークテクノが提供するカーネルをインストールしない様に、 linux-at-a6@atmark と記載された行を削除します。

      3

      別のカーネルをすでにインストールしている場合は、新しいモジュールをインストールする前に古いモジュールを削除する必要があります。

6.19.3. Alpine Linux ルートファイルシステムをビルドする

ここでは、alpine/build-rootfsを使って、 Alpine Linux ルートファイルシステムを構築する方法を説明します。

alpine/build-rootfs は、ATDE 上で Armadillo-640 用の Alpine Linux ルートファイルシステムを構築することができるツールです。

  1. ルートファイルシステムのビルドに必要な Podman のインストール

    次のコマンドを実行します。

    [ATDE ~]$ sudo apt install podman btrfs-progs xxhash
  2. alpine/build-rootfsの入手

    Armadillo Base OS対応 Armadillo-640 開発用ツール から 「Alpine Linuxルートファイルシステムビルドツール」 ファイル (build-rootfs-[VERSION].tar.gz) を次のようにダウンロードします。

    [ATDE ~/]$ wget https://armadillo.atmark-techno.com/files/downloads/armadillo-640/tool/build-rootfs-latest.tar.gz
    [ATDE ~/]$ tar xf build-rootfs-latest.tar.gz
    [ATDE ~/]$ cd build-rootfs-[VERSION]
  3. Alpine Linux ルートファイルシステムの変更

    a600ディレクトリ以下のファイルを変更することで、 ルートファイルシステムをカスタマイズすることができます。

    [ティップ]

    commonとa600 ディレクトリ直下にあるfixupやpackagesなどの同名ファイルは、それぞれのファイルを連結して利用されます。パッケージの削除などを行う場合は、commonディレクトリ以下のファイルも確認してください。

    commonとa600内のサブディレクトリにある同名ファイルは、a600のファイルが利用されます。

    build-rootfsに含まれるファイルの説明は次の通りです。

    表6.8 build-rootfsのファイル説明

    ファイル説明

    a600/resources/*

    配置したファイルやディレクトリは、そのままルートファイルシステム直下にコピーされます。 ファイルを追加する場合は、このディレクトリに入れてください。

    a600/packages

    このファイルに記載されているパッケージはルートファイルシステムにインストールされます。 パッケージを追加する場合はこのファイルに追加してください。

    a600/fixup

    このファイルに記載されているコマンドはパッケージのインストールが完了した後に実行されます。

    a600/image_firstboot/*

    配置したファイルやディレクトリは、「ブートディスクの作成」「初期化インストールディスクの作成」の手順 のようにブートディスクイメージを作成する際、そのままルートファイルシステム直下にコピーされます。

    a600/image_installer/*

    配置したファイルやディレクトリは、「初期化インストールディスクの作成」の手順 のようにインストールディスクイメージを作成する際、 そのままインストーラーにコピーされます。ルートファイルシステムに影響はありません。

    a600/image_common/*

    配置したファイルやディレクトリは、ブートディスクイメージおよびインストールディスクイメージを 作成する際、ルートファイルシステム、インストーラにそれぞれコピーされます。


    [注記]

    利用可能なパッケージは以下のページで検索することができます。

    Alpine Linuxルートファイルシステムを起動している Armadilloでも検索することができます。

    [armadillo ~]# apk update
    [armadillo ~]# apk search ruby
    ruby-test-unit-rr-1.0.5-r0
    ruby-rmagick-5.1.0-r0
    ruby-public_suffix-5.0.0-r0
    :
    : (省略)
    :
    ruby-mustache-1.1.1-r5
    ruby-nokogiri-1.13.10-r0
  4. ビルド

    次のコマンドを実行します。

    パッケージをインターネット上から取得するため回線速度に依存しますが、 ビルドには数分かかります。

    [ATDE ~/build-rootfs-[VERSION]]$ sudo ./build_rootfs.sh -b a600
    use default(outdir=/home/atmark/git/build-rootfs)
    use default(output=baseos-600-ATVERSION.tar.zst)
    :
    : (略)
    :
    > Creating rootfs archive
    -rw-r--r--    1 root     root     231700480 Nov 26 07:18 rootfs.tar
    ERROR: No such package: .make-alpine-make-rootfs
    ============================================
    footprint[byte]  tarball[byte]  packages
          229904000       74942331  alpine-base coreutils chrony ...(省略)
    ============================================
    done.
    [注記]

    リリース時にバージョンに日付を含めたくないときは --release を引数に追加してください。

    [ティップ]

    インターネットに接続できない環境か、テスト済みのソフトウェアのみをインストールしたい場合は Armadillo Base OS対応 Armadillo-640 開発用ツール から キャッシュアーカイブもダウンロードして、 build_rootfs.sh --cache baseos-600-[VERSION].cache.tar で使ってください。

    [ティップ]

    任意のパス、ファイル名で結果を出力することもできます。

    [ATDE ~/build-rootfs-[VERSION]]$ ./build_rootfs.sh -b a600 ~/alpine.tar.zst
    :
    : (略)
    :
    [ATDE ~/build-rootfs-[VERSION]]$ ls ~/alpine.tar.zst
    ~/alpine.tar.zst
  5. インストール

    ビルドしたルートファイルシステムは、以下に示すどちらかの方法でインストールしてください。

    • swupdate でインストールする

      mkswu の初期化を行った後に 提供されているスクリプトを使ってSWUイメージを作成してください。

      [ATDE ~/build-rootfs-[VERSION]]$ vi OS_update.desc
      swdesc_tar --version base_os [VERSION] \
          --preserve-attributes baseos-600-[VERSION].tar.zst
      [ATDE ~/build-rootfs-[VERSION]]$ mkswu OS_update.desc
      OS_update.swu を作成しました。

      作成された OS_update.swu のインストールについては 「SWU イメージのインストール」 を参照ください。

    • 「ブートディスクの作成」 でインストールする

      手順を実行すると、ビルドされた baseos-600-[VERSION].tar.zst が自動的に利用されます。

6.20. Network Time Protocol (NTP, ネットワーク・タイム・プロトコル)

Armadillo Base OS では chronyd を使っています。

デフォルトの設定(使用するサーバーなど)は /etc/chrony/conf.d/ にあり、 変更用に /etc/atmark/chrony.conf.d/ のファイルも読み込みます。 /etc/atmark/chrony.conf.d ディレクトリに /etc/chrony/conf.d/ と同じファイル名の 設定ファイルを置いておくことで、デフォルトのファイルを読まないようになります。

例えば、 NTP サーバーの設定は servers.conf に記載されてますので、変更する際はに /etc/atmark/chrony.conf.d/servers.conf のファイルに記載します:

[armadillo ~]# vi /etc/atmark/chrony.conf.d/servers.conf 1
pool my.ntp.server iburst
[armadillo ~]# persist_file /etc/atmark/chrony.conf.d/servers.conf 2
[armadillo ~]# rc-service chronyd restart 3
chronyd          | * Stopping chronyd ... [ ok ]
chronyd          | * Starting chronyd ... [ ok ]
armadillo:~# chronyc sources 4
MS Name/IP address         Stratum Poll Reach LastRx Last sample
===============================================================================
^? my.ntp.server                 1   6     3     2    +88ms[  +88ms] +/-  173ms

図6.113 chronyd のコンフィグの変更例


1

コンフィグファイルを作ります。

2

ファイルを保存します

3

chronyd サービスを再起動します。

4

chronyc で新しいサーバーが使用されていることを確認します。

6.21. eMMC の GPP(General Purpose Partition) を利用する

GPP に squashfs イメージを書き込み、Armadillo の起動時に自動的にマウントする方法を紹介します。

6.21.1. squashfs イメージを作成する

この作業は ATDE 上で行います。

squashfs-tools パッケージに含まれている mksquashfs コマンドを使用して squashfs イメージを作成します。

[ATDE]$ mkdir sample
[ATDE]$ echo "complete mounting squashfs on eMMC(GPP)" > sample/README
[ATDE]$ mksquashfs sample squashfs.img

図6.114 squashfs イメージの作成


6.21.2. squashfs イメージを書き込む

以降の作業は Armadillo 上で行います。

「squashfs イメージを作成する」で作成した squashfs イメージを、USB メモリ利用するなどして Armadillo-640 にコピーし、GPP に書き込みます。

[警告]

ユーザー領域として使用可能なGPPは /dev/mmcblk0gp3 のみです。

GPPへの書き込みを行う際は、誤って /dev/mmcblk0gp0 などに書き込みを行わないよう、十分に注意してください。

[armadillo]# mount /dev/sda1 /mnt
[armadillo]# dd if=/mnt/squashfs.img of=/dev/mmcblk0gp3 conv=fsync
[armadillo]# umount /mnt

6.21.3. GPP への書き込みを制限する

GPP の全ブロックに対して Temporary Write Protection をかけることにより、GPP への書き込みを制限することができます。 Temporary Write Protection は電源を切断しても解除されません。

Temporary Write Protection をかけるには、mmc-utils パッケージに含まれている mmc コマンドを使用します。

[armadillo]# apk add mmc-utils

図6.115 mmc-utilsのインストール


GPP の全ブロックに対して Temporary Write Protection をかけるには、次のようにコマンドを実行します。

[armadillo]# mmc writeprotect user get /dev/mmcblk0gp3  1
Write Protect Group size in blocks/bytes: 16384/8388608
Write Protect Groups 0-0 (Blocks 0-16383), No Write Protection
[armadillo]# mmc writeprotect user set temp 0 16384 /dev/mmcblk0gp3  2

図6.116 eMMC の GPP に Temporary Write Protection をかける


1

/dev/mmcblk0gp3 のブロック数を確認します。コマンドの出力を見ると /dev/mmcblk0gp3 が 16384 ブロックあることがわかります。

2

/dev/mmcblk0gp3 の全ブロックに Temporary Write Protection をかけます。

[ティップ]

Temporary Write Protection を解除するには、次のコマンド実行します。

[armadillo]# mmc writeprotect user set none 0 16384 /dev/mmcblk0gp3

6.21.4. 起動時に squashfs イメージをマウントされるようにする

/etc/fstab を変更し、起動時に squashfs イメージがマウントされるようにします。

[armadillo]# mkdir -p /opt/sample  1
[armadillo]# persist_file /opt/sample/
[armadillo]# vi /etc/fstab
:
:(省略)
:
/dev/mmcblk0gp3 /opt/sample squashfs defaults,nofail 0 0  2
[armadillo]# persist_file /etc/fstab

1

squashfs イメージをマウントするディレクトリを作成します

2

最終行にこの行を追加します。これで、/dev/mmcblk0gp3/opt/sample にマウントされるようになります。

Armadillo の再起動後、 /opt/sample/README の内容が正しければ完了です。

[armadillo]# reboot
:
: (省略)
:
[armadillo]# ls /opt/sample
README
[armadillo]# cat /opt/sample/README
complete mounting squashfs on eMMC(GPP)

6.21.5. ウォッチドッグタイマー

Armadillo-640のウォッチドッグタイマーは、i.MX6ULLのWDOG(Watchdog Timer)を利用しています。

ウォッチドッグタイマーは、U-Boot によって有効化されます。標準状態でタイムアウト時間は10秒に設定されます。

何らかの要因でウォッチドッグタイマーのキックができなくなりタイムアウトすると、システムリセットが発生します。

ウォッチドッグタイマーの設定変更は、ioctlシステムコール経由で行うことができます。詳細な情報については、Linux カーネルのソースコードに含まれているドキュメント(Documentation/watchdog/watchdog-api.rst)を参照してください。

[ティップ]

ウォッチドッグタイマーを停止することはできません。

6.22. 動作ログ

6.22.1. 動作ログについて

Armadillo-640 ではシステムが出力するログの一部は、 一般的な /var/log ディレクトリではなく、/var/at-log ディレクトリに出力されます。 /var/at-log は、ルートファイルシステムとは別のパーティションになっているので、 ルートファイルシステムに障害が発生した場合でも、/var/at-log のパーティションが無事であれば、 ログファイルを取り出して、不具合等の解析に利用することができます。

[ティップ]

通常のログは /var/log/messages に出力されます。

/var/log/messages はファイルサイズが 4MB になるとローテートされ /var/log/messages.0 に移動されます。

/var/log/messages.0 が存在する状態で、更に /var/log/messages のファイルサイズが 4MB になった場合は、 /var/log/messages の内容が /var/log/messages.0 に上書きされます。 /var/log/messages.1 は生成されません。

6.22.2. 動作ログを取り出す

ログファイルは /var/at-log ディレクトリ内に atlog というファイル名で作成されているので、 これを任意のディレクトリにコピーすることで取り出せます。 もし、eMMC 上のルートファイルシステムが壊れてしまい起動できない場合は、 microSD カードから起動することでログファイルを取り出すことができます。

[ティップ]

/var/at-log/atlog はファイルサイズが 3MB になるとローテートされ /var/at-log/atlog.1 に移動されます。

/var/at-log/atlog.1 が存在する状態で、更に /var/at-log/atlog のファイルサイズが 3MB になった場合は、 /var/at-log/atlog の内容が /var/at-log/atlog.1 に上書きされます。 /var/at-log/atlog.2 は生成されません。

6.22.3. ログファイルのフォーマット

ログファイルの内容はテキストデータであり、以下のようなフォーマットになっています。

日時 armadillo ログレベル 機能: メッセージ

図6.117 動作ログのフォーマット


atlog には以下の内容が保存されています。

  • インストール状態のバージョン情報
  • swupdate によるアップデートの日付とバージョン変更
  • abos-ctrl / uboot の rollback 日付
  • uboot で wdt による再起動が合った場合にその日付

6.22.4. ログ用パーティションについて

ログ出力先である /var/at-log ディレクトリには、 GPP である /dev/mmcblk0gp1 パーティションがマウントされています。 このパーティションに論理的な障害が発生した場合は、/dev/mmcblk0gp1 の データを /dev/mmcblk0gp2 にコピーし、/dev/mmcblk0gp1 は FAT ファイルシステムで フォーマットされます。 このパーティションの障害チェックはシステム起動時に自動的に実行されます。

6.23. viエディタを使用する

viエディタは、Armadilloに標準でインストールされているテキストエディタです。本書では、Armadilloの設定ファイルの編集などにviエディタを使用します。

viエディタは、ATDEにインストールされてるgeditやemacsなどのテキストエディタとは異なり、モードを持っていることが大きな特徴です。viのモードには、コマンドモードと入力モードがあります。コマンドモードの時に入力した文字はすべてコマンドとして扱われます。入力モードでは文字の入力ができます。

本章で示すコマンド例はATDEで実行するよう記載していますが、Armadilloでも同じように実行することができます。

6.23.1. viの起動

viを起動するには、以下のコマンドを入力します。

[ATDE ~]# vi [file]

図6.118 viの起動


file にファイル名のパスを指定すると、ファイルの編集(+file+が存在しない場合は新規作成)を行います。viはコマンドモードの状態で起動します。

6.23.2. 文字の入力

文字を入力するにはコマンドモードから入力モードへ移行する必要があります。コマンドモードから入力モードに移行するには、表6.9「入力モードに移行するコマンド」に示すコマンドを入力します。入力モードへ移行後は、キーを入力すればそのまま文字が入力されます。

表6.9 入力モードに移行するコマンド

コマンド動作

i

カーソルのある場所から文字入力を開始

a

カーソルの後ろから文字入力を開始


入力モードからコマンドモードに戻りたい場合は、ESCキーを入力することで戻ることができます。現在のモードが分からなくなった場合は、ESCキーを入力し、一旦コマンドモードへ戻ることにより混乱を防げます。

[警告]

日本語変換機能をOFFに

viのコマンドを入力する時はATDEの日本語入力システム(Mozc)をOFFにしてください。日本語入力システムのON/OFFは、半角/全角キーで行うことができます。

「i」、「a」それぞれのコマンドを入力した場合の文字入力の開始位置を図6.119「入力モードに移行するコマンドの説明」に示します。

images/common-images/vi-insert-command.svg

図6.119 入力モードに移行するコマンドの説明


[ティップ]

viでの文字削除

コンソールの環境によってはBS(Backspace)キーで文字が削除できず、「^H」文字が入力される場合があります。その場合は、「文字の削除」で説明するコマンドを使用し、文字を削除してください。

6.23.3. カーソルの移動

方向キーでカーソルの移動ができますが、コマンドモードで表6.10「カーソルの移動コマンド」に示すコマンドを入力することでもカーソルを移動することができます。

表6.10 カーソルの移動コマンド

コマンド動作

h

左に1文字移動

j

下に1文字移動

k

上に1文字移動

l

右に1文字移動


6.23.4. 文字の削除

文字を削除する場合は、コマンドモードで表6.11「文字の削除コマンド」に示すコマンドを入力します。

表6.11 文字の削除コマンド

コマンド動作

x

カーソル上の文字を削除

dd

現在行を削除


「x」コマンド、「dd」コマンドを入力した場合に削除される文字を図6.120「文字を削除するコマンドの説明」に示します。

images/common-images/vi-delete-command.svg

図6.120 文字を削除するコマンドの説明


6.23.5. 保存と終了

ファイルの保存、終了を行うコマンドを表6.12「保存・終了コマンド」に示します。

表6.12 保存・終了コマンド

コマンド動作

:q!

変更を保存せずに終了

:w[file]

ファイルを+file+に指定して保存

:wq

ファイルを上書き保存して終了


保存と終了を行うコマンドは「 : 」(コロン)からはじまるコマンドを使用します。" : "キーを入力すると画面下部にカーソルが移り入力したコマンドが表示されます。コマンドを入力した後Enterキーを押すことで、コマンドが実行されます。

6.24. eFuse を変更する

Armadillo-640 で採用している CPU (i.MX6ULL) には、一度しか書き込むことのできない eFuse が搭載されています。 eFuse には、 CPUがブートする時の設定や MAC アドレスなどが書かれます。Armadillo-640 は組み込み機器を作り込むエンジニアを対象にした製品ですので、 eFuse もユーザーに開放し、細かな制御を可能にしています。しかし eFuse はその性質上、一度書き間違うと直すことができません。十分に注意してください。

[警告]

eFUSEは一度書き込むと元に戻すことができません。eFUSEの設定によってはArmadillo-640が正常に動作しなくなる可能性がありますので、書き込みを行う際には細心の注意を払うようお願いいたします。eFUSEの設定によって異常が起こった場合は保証対象外となります。

MACアドレスは Armadillo-640 の出荷時に書き込まれているので、新たに書き込む必要はありません。この章では U-Boot を使って eFuse の書き換えを行い、ブートモードを制御する方法を説明します。

eFuse を変更する場合は、必ず「i.MX 6ULL Applications Processor Reference Manual」を参照してください。重要な章は、以下の 4つです。

  • Chapter 5: Fusemap
  • Chatper 8: System Boot
  • Chapter 37: On-Chip OTP Controller
  • Chapter 58: Ultra Secured Digital Host Controller

以降、本章では i.MX 6ULL Applications Processor Reference Manual を「リファレンスマニュアル」と呼びます。

[注記]

章番号や章タイトルは、i.MX 6ULL Applications Processor Reference Manual Rev. 1, 11/2017 現在の情報です。異るリビジョンのリファレンスマニュアルでは、章番号およびタイトルが異なる場合があります。

6.24.1. ブートモードとジャンパーピン

6.24.1.1. ブートモードと JP2

i.MX6ULL にはブートモードを決める BOOT_MODE0BOOT_MODE1 というピンがあります。 BOOT_MODE0 は GND になっているので必ず 0 になります。BOOT_MODE1 は JP2 に接続されています。 JP2 がショートされていると BOOT_MODE1 は 1 になり Internal Boot モードになります。開放されていると 0 となり、 Boot From Fuses というモードになります。

Internal Bootモードでは、 on-chip boot ROMに書き込まれているコードが実行し、ブート可能なデバイスを検索します。リファレンスマニュアル「8.5 Boot devices (internal boot)」に、i.MX6ULL がブートできるデバイスの一覧が記載されています。Armadillo-640 では、そのうちオンボードeMMC と microSDカードに対応しています。Internal Bootモードでは、GPIO によって eFuseの設定を上書き (override) できるようになっています。つまり eFuse の設定がどうなっていようと、GPIO のピンでブートデバイスを決めることができます。

Boot From Fusesモードでは、単純に言えば GPIO による override が禁止され eFuse に書き込まれた状態でしかブートしません。この機能を有効にすることで、フィールドに出した製品が悪意ある人によって意図していないブートをし、被害が出ることを防ぐことができます。(もちろん、ブート後に root アカウントを乗っ取られるような作りでは、意味がありませんが…)

6.24.1.2. ブートデバイスと JP1

Internal Bootモードでは、GPIO によって eFuseの設定を上書き (override) できるようになってると紹介しましたが、JP1 はまさにこの機能を使っています。 JP1 は LCD1_DATA05LCD1_DATA11 の制御をしていますが、これらのピンはそれぞれ BOOT_CFG1[5]BOOT_CFG2[3] を override しています。「8.3.2 GPIO boot overrides」の 表「8-3. GPIO override contact assignments」を確認してください。

ややこしい事に、この BOOT_CFG で始まる eFUSE は、リファレンスマニュアルの中では eFuse のアドレスでも表記されています。 BOOT_CFG1 は eFuse のアドレスで言うと 0x450 の下位 8 bit つまり 0x450[7:0] であり、 BOOT_CFG2 は上位 8 bit つまり 0x450[15:8] にあたります。これは「5.1 Boot Fusemap」の表「5-5. SD/eSD Boot Fusemap」または表「5-6. MMC/eMMC Boot Fusemap」を確認することでわかります。

さらにややこしい事に、eFuse を書き込む場合にはこれら全ての値が使えず、On-Chip OTP Controller の bank と word の値が必要になります。これらの値は リファレンスマニュアルの「On-Chip OTP Controller」を参照してください。後で出てきますが Boot From Fuses で使用する BT_FUSE_SEL という eFuse のように GPIO による override ができないものもあります。

表6.13 GPIO override と eFuse

信号名 eFuse名 eFuseアドレス OCOTP名 Bank Word

LCD1_DATA05

BOOT_CFG1[5]

0x450[5]

OCOTP_CFG4

0

5

LCD1_DATA11

BOOT_CFG2[3]

0x450[11]

OCOTP_CFG4

0

5

N/A

BT_FUSE_SEL

0x460[4]

OCOTP_CFG5

0

6


Armadillo-640 ではmicroSDカード または eMMC からのブートになるので、ブートデバイスを選択する eFuse BOOT_CFG1[7:4] は、010x または 011x になります。

リファレンスマニュアル「8.5.3.1 Expansion device eFUSE configuration」には、さらに詳しく SD/MMCデバイスの設定について記載されています。テーブル「8-15. USDHC boot eFUSE descriptions」によれば、eFuse の 0x450[7:6]01 の場合に SD/MMC デバイスからブートすることを決めています。さらに 0x450[5]0 なら SDが、 0x450[5]1 なら MMC が選択されます。つまり、4から 7 bit までの間で 5 bit 目だけが MMC か SD かを決めています。 BOOT_CFG1[5]0 の場合はコントローラーは SDデバイスが繋がっている前提で、 BOOT_CFG1[5]1 の場合は MMCデバイスが繋っている前提で動作します。

i.MX6ULL には、SD/MMC のコントローラーである uSDHC が 2つ搭載されています。 Armadillo-640では、eMMC が uSDHC1に、 microSDカードが uSDHC2 に接続されています。ブート時にどちらのコントローラーからブートするかを決めている eFuse が 0x450[12:11] です。 0x450[12:11]00 であれば uSDHC1 つまりオンボード eMMC から、01 であれば uSDHC2 つまり microSDカードからブートします。言い換えると Armadillo-640 でオンボード eMMC からブートしたい場合は、0x450[5]1 に、 0x450[12:11]00 にします。逆に microSDカードから起動したい場合は 0x450[5]0 に、0x450[12:11]01 にします。

表6.14 ブートデバイスと eFuse

ブートデバイス eFuse 0x450[5] 0x450[12:11]

オンボード eMMC

1

00

microSDカード

0

01


6.24.2. eFuse の書き換え

Armadillo-640 では、U-Boot のコマンドによって eFuseの書き換えをサポートしています。 「スライドスイッチの設定について」 を参照してU-Boot を保守モードで起動してください。

eFuse の書き換えは、 fuse コマンドを使います。

[注記]

U-Boot の fuse コマンドのソースコードは、以下の 2つです。

  • cmd/fuse.c
  • drivers/misc/mxc_ocotp.c
=> help fuse
fuse - Fuse sub-system

Usage:
fuse read <bank> <word> [<cnt>] - read 1 or 'cnt' fuse words,
    starting at 'word'
fuse sense <bank> <word> [<cnt>] - sense 1 or 'cnt' fuse words,
    starting at 'word'
fuse prog [-y] <bank> <word> <hexval> [<hexval>...] - program 1 or
    several fuse words, starting at 'word' (PERMANENT)
fuse override <bank> <word> <hexval> [<hexval>...] - override 1 or
    several fuse words, starting at 'word'
=>
fuse read
eFuse の値を Shadow Registerから読み出します。i.MX6ULL の eFuse は、すべて Shadow Register を持ち、起動時に eFuse から Shadow Register に値がコピーされます。詳しくはリファレンスマニュアル「37.3.1.1 Shadow Register Reload」を確認してください。
fuse sense
eFuse の値を eFuse から読み出します
fuse prog
eFuse の値を書き換えます

fuse コマンドは、 bankwordcnthexval を引数に取ります。

bank
eFuse のバンク番号
word
eFuse のワード番号
cnt
eFuse を読み出す個数
hexval
書き込む値

6.24.3. Boot From Fusesモード

6.24.3.1. BT_FUSE_SEL

Boot From Fuses を有効にするには、 eFuse に書き込んだ値が正しいことを i.MX6ULL に教える必要があります。そのための eFuse が BT_FUSE_SEL (0x460[4]) です。BOOT_MODE00 、つまり JP2 がオープンで、且つこのビットが 1 であれば Boot From Fuses モードになります。 BOOT_MODE00 でも このビットが 0 であれば Boot From Fusesモードにはならず、 SD/MMC マニュファクチャリングモードやシリアルダウンロードモードになってしまいます。SD/MMCマニュファクチャリングモードについては 「8.12 SD/MMC manufacture mode」に、シリアルダウンロードモードについては「8.9 Serial Downloader」に記載されています。

[警告]

Armadillo-640 では BOOT_MODE00 で、且つ BT_FUSE_SEL0 の場合は SD/MMC マニュファクチャリングモードで eMMC から起動します。Internal Boot モードで起動する場合は、JP2 をショートしてください。

6.24.3.2. eMMC からのブートに固定

オンボード eMMC からだけブートさせたい場合は、ブートデバイスの種類で MMC と、コントローラーで uSDHC1 を選択することで可能です。忘れずに BT_FUSE_SEL1 にします。

オンボード eMMC のスペックは、以下の通りです。リファレンスマニュアル 8.5.3 Expansion device および 表「5-6. MMC/eMMC Boot Fusemap」を確認してください。「可変」列が「不」となっている値は、変更しないでください。例えば、オンボード eMMC は 1.8 V に対応していません。 bit 9 の SD Voltage Selection で 1 の 1.8 V では動作しません。

表6.15 オンボード eMMC のスペック

名前 Bit eFuse bit列 可変

BOOT_CFG2

[15:13]

Bus Width

8 bit

010

[12:11]

Port Select

uSDHC1

00

[10]

Boot Frequencies

500 / 400 MHz

00

[9]

SD Voltage Selection

3.3 V

0

[8]

-

-

0

-

BOOT_CFG1

[7:5]

eMMC

-

011

[4]

Fast Boot

Regular

0

[3]

SD/MMC Speed

High

0

[2]

Fast Boot Acknowledge Disable

Enabled

0

[1]

SD Power Cycle Enable

Enabled

1

[0]

SD Loopback Clock Source Sel

SD Pad

0


値を見易いように、 BOOT_CFG2 を上にしています。 BOOT_CFG1BOOT_CFG2 は、OCOTP_CFG4 にマップされており Bank 0 Word 5 です。つまり 010000000 01100010 の 16 bit (0x4062) を Bank 0 Word 5 に書き込めば良いことが分ります。 BOOT_CFG3BOOT_CFG4 はここでは無視します。

BT_FUSE_SEL は Bank 0 Word 6 の 4 bit 目になるので 0x10 を書き込みます。

=> fuse read 0 5
Reading bank 0:

Word 0x00000005: 00000000
=> fuse prog 0 5 0x4060
Programming bank 0 word 0x00000005 to 0x00004060...
Warning: Programming fuses is an irreversible operation!
         This may brick your system.
         Use this command only if you are sure of what you are doing!

Really perform this fuse programming? <y/N>
y
=> fuse read 0 6
Reading bank 0:

Word 0x00000006: 00000000
=> fuse prog -y 0 6 0x10
Programming bank 0 word 0x00000006 to 0x00000010...
=> fuse read 0 6
Reading bank 0:

Word 0x00000006: 00000010

(電源入れなおしても、SDからブートしない)
[注記]

fuse prog にオプション -y を付けると 「 Really perform this fuse programming? <y/N> 」と聞かれません。

これで eMMC からしか起動しない Armadillo-640 ができあがりました。

[警告]

eMMC からしか起動しないので、あやまって eMMCに書き込まれている U-Boot を消してしまうと、二度と起動しないようになります。注意してください。

[注記]

eMMC Fast Boot機能を使う場合や Power Cycle を Enable にする場合は、当該ビットを 1 に変更してください。

同じ要領で、SDからだけしかブートしないようにすることも可能です。しかし eFuse によるブートデバイスの固定は、意図しないブートを防ぐことが目的です。 Armadillo-640 で microSDからのブートに固定することは可能ですが、別の microSDカードを挿入されてしまうと、その別の microSDカードからブートしてしまうので目的を達成できません。理解してお使いください。

6.24.3.3. eFuse のロック

書き込んだ eFuse の値を変更されてしまっては、Boot From Fuseモードにしている意味がありません。i.MX6ULLでは eFuse を変更できなくするビットも用意されています。

リファレンスマニュアル「5.3 Fusemap Descriptions Table」を確認してください。

6.25. 電気的仕様

6.25.1. 絶対最大定格

表6.16 絶対最大定格

項目 記号 Min. Max. 単位 備考

電源電圧

VCC_5V

-0.3

6.0

V

-

入出力電圧(USB信号以外)

VI,VO

-0.3

OVDD+0.3

V

OVDD=VCC_3.3V

入力電圧(USB信号)

VI_USB

-0.3

3.63

V

USB_OTG1_DP, USB_OTG1_DN, USB_OTG2_DP, USB_OTG2_DN

RTCバックアップ電源電圧

RTC_BAT

-0.3

3.6

V

-

使用温度範囲

Topr

-20

70

結露なきこと


[警告]

絶対最大定格は、あらゆる使用条件や試験状況において、瞬時でも超えてはならない値です。上記の値に対して余裕をもってご使用ください。

6.25.2. 推奨動作条件

表6.17 推奨動作条件

項目 記号 Min. Typ. Max. 単位 備考

電源電圧

VCC_5V

4.75

5

5.25

V

-

RTCバックアップ電源電圧

RTC_BAT

2.75 [a]

-

3.3

V

Topr=+25℃

使用温度範囲

Ta

-20

25

70

V

結露なきこと

[a] S/N: 009C00010001~009C00060102のArmadillo-640では、下限電圧2.95Vです。


6.25.3. 入出力インターフェースの電気的仕様

表6.18 入出力インターフェース(電源)の電気的仕様

項目 記号 Min. Typ. Max. 単位 備考

5V 電源電圧

VCC_5V USB_OTG1_VBUS USB_OTG2_VBUS

4.75

5

5.25

V

-

3.3V 電源電圧

VCC_3.3V

3.102

3.3

3.498

V

-


表6.19 入出力インターフェースの電気的仕様(OVDD = VCC_3.3V)

項目 記号 Min. Max. 単位 備考

ハイレベル出力電圧

VOH

OVDD-0.15

OVDD

V

IOH = -0.1mA, -1mA

ローレベル出力電圧

VOL

0

0.15

V

IOL = 0.1mA, 1mA

ハイレベル入力電圧[a]

VIH

0.7×OVDD

OVDD

V

-

ローレベル入力電圧[a]

VIL

0

0.3×OVDD

V

-

ローレベル入力電圧(ONOFF信号)

VIL

0

0.9

V

-

ローレベル入力電圧(PWRON信号 )

VIL

0

0.5

V

-

ローレベル入力電圧(EXT_RESET_B 信号)

VIL

0

0.19

V

-

入力リーク電流(no Pull-up/Pull-down)

IIN

-1

1

μA

-

Pull-up抵抗(5kΩ)

-

4

6

-

Pull-up抵抗(47kΩ)

-

37.6

56.4

-

Pull-up抵抗(100kΩ)

-

80

120

-

Pull-down抵抗(100kΩ)

-

80

120

-

[a] オーバーシュートとアンダーシュートは0.6V以下でかつ4nsを超えないようにしてください。


6.25.4. 電源回路の構成

電源回路の構成は次のとおりです。 電源入力インターフェース(CON12またはCON13)からの入力電圧をパワーマネジメントIC(PMIC)で各電圧に変換し、 内部回路および各インターフェースに供給しています。 各インターフェースやスイッチング・レギュレータの最大出力電流値を超えないように、 外部機器の接続、供給電源の設計を行なってください。

images/block-power.svg

図6.121 電源回路の構成


電源シーケンスは次のとおりです。

images/power-sequence.svg

図6.122 電源シーケンス


6.25.5. 外部からの電源制御

Armadillo-640は、拡張インターフェースのピンを制御することにより電源をオンまたはオフに切り替えることができます。

ここでは、外部からの電源制御に必要な以下の項目を説明します。

  • ONOFFピンの制御
  • PWRONピンの制御
  • RTC_BATピン

6.25.5.1. ONOFFピンの制御について

ONOFFピンは、一定時間以上GNDとショートすることで、Armadillo-640の電源をオフまたはオンすることができます。 外部からONOFFピンを制御する場合、電圧の印加はできませんのでオープンドレインなどの出力を接続しGNDとショートする回路を接続してください。

  • 電源オンから電源オフに切り替える方法

    • ONOFFピンを5秒以上GNDとショートすることで、電源がオフになります。
  • 電源オフから電源オンに切り替える方法

    • ONOFFピンを500ミリ秒以上GNDとショートすることで、電源がオンになります。
[警告]

連続して電源を切り替える場合、確実に動作させるため5秒以上空けてからONOFFピンをGNDとショートしてください。

[警告]

電源のオンまたはオフの状況はi.MX6ULLの低消費電力ドメイン(SNVS_LP)で保持されているため、 電源オフの状態で5V電源入力を切ってもしばらくは電源オフであることを保持しています。 そのため、すぐに電源を再入力した場合電源が入らない状態になる可能性があります。 電源オフの状態で5V電源を再入力する場合は、確実に電源を入れるため、5秒以上間隔を空けてから5V電源を入れてください。

[警告]

電源のオンまたはオフの状況はRTC_BATピンからのバックアップ電源により保持されるため、 RTC_BATピンにバックアップ電源を入力した状態で5V電源を切ったのち5V電源を再入力しても、 5V電源切断前の電源のオンまたはオフの状況が継続されます。

6.25.5.2. PWRONピンの制御について

PWRONピンは、GNDとショートすることで、Armadillo-640の電源を即座にオフすることができます。 外部からPWRONピンを制御する場合、電圧の印加はできませんのでオープンドレインなどの出力を接続しGNDとショートする回路を接続してください。

  • 電源オンから電源オフに切り替える方法

    • PWRONピンをGNDとショートすることで、即座に電源がオフになります。
  • 電源オフから電源オンに切り替える方法

    • PWRONピンをオープンにすることで、電源がオンになります。

6.25.5.3. RTC_BATピンについて

RTC_BATピンは、i.MX6ULLの低消費電力ドメインにあるSRTC(Secure Real Time Clock)の外部バックアップインターフェースです。 長時間電源が切断されても時刻データを保持させたい場合にご使用ください。

6.26. 形状図

6.26.1. 基板形状図

images/a640-hole-dimension.svg

図6.123 基板形状および固定穴寸法


images/a640-connector-center-dimension.svg

図6.124 コネクタ中心寸法


images/a640-connector-hole-dimension.svg

図6.125 コネクタ穴寸法


[警告]

基板改版や部品変更により、基板上の部品位置、高さは変更になることがあります。 ケースや拡張基板を設計する場合、ある程度の余裕をもった寸法での設計をお願いいたします。

[ティップ]

DXF形式の形状図を「アットマークテクノ Armadilloサイト」から「購入者向けの限定公開データ」としてダウンロード可能です。

6.27. オプション品

本章では、Armadillo-640のオプション品について説明します。

表6.20 Armadillo-640関連のオプション品

名称型番備考

USBシリアル変換アダプタ(Armadillo-640用)

SA-SCUSB-10

Armadillo-640ベーシックモデル開発セットに付属

Armadillo-600シリーズ オプションケース(樹脂製)

OP-CASE600-PLA-00

Armadillo-640ベーシックモデル開発セットに付属

Armadillo-600シリーズ オプションケース(金属製)

OP-CASE600-MET-00

LCDオプションセット(7インチタッチパネルWVGA液晶)

OP-LCD70EXT-L00

Armadillo-600シリーズ RTCオプションモジュール

OP-A600-RTCMOD-00

Armadillo-600シリーズ WLANコンボオプションモジュール

OP-A600-AWLMOD-20

Armadillo-600シリーズ BT/THオプションモジュール

OP-A600-BTTHMOD-20

Armadillo-600シリーズBT/THオプションモジュールWLANコンボ対応

OP-A600-BTTHMOD-21

D-Sub9/10ピン シリアル変換ケーブル(ロックなし)

OP-SCDSUB-00

ACアダプタ 05(5V/2.0A EIAJ#2)

OP-AC5V5-00

Armadillo-640ベーシックモデル開発セットに付属

無線LAN用 外付けアンテナセット 08

OP-ANT-WLAN-08K

Sterling LWB5+用

外付けアンテナ固定金具 00

OP-MNT-ANT-MET-00


6.27.1. USBシリアル変換アダプタ(Armadillo-640用)

6.27.1.1. 概要

FT232RLを搭載したUSB-シリアル変換アダプタです。シリアルの信号レベルは3.3V CMOSです。

images/usb2seri-qi.svg

図6.126 USBシリアル変換アダプタの配線


images/common-images/callouts/1.svg
オープン
images/common-images/callouts/2.svg
GNDショート

Armadillo-640のCON9の「1、3、5、7、9」または「2、4、6、8、10」ピンに接続して使用することが可能です。

各ピンに対応するUARTコントローラは以下のとおりです。

表6.21 各ピンに対応するUARTコントローラ

CON9ピン番号 UART名

1、3、5、7、9

UART1

2、4、6、8、10

UART5


images/a640-uart.svg

図6.127 Armadillo-640のシリアル信号線


ご使用の際は、USBシリアル変換アダプタの5ピンコネクタ(青いケーブル側)をArmadillo-640 CON9の1ピンもしくは2ピンに合わせて接続してください。 UART1側で使用した場合、USBシリアル変換アダプタのスイッチで、電源投入時の起動モードを設定することが可能です。 スライドスイッチの状態に対応した起動モードは以下のとおりです。

表6.22 USBシリアル変換アダプタのスライドスイッチによる起動モードの設定

スライドスイッチ 起動モード

オープン

オートブートモード

GNDショート

保守モード


[警告]

USBシリアル変換アダプタは、Armadillo-640の電源を切断した状態で接続してください。 故障の原因となる可能性があります。

[警告]

USBシリアル変換アダプタは、試作・開発用の製品です。外観や仕様を予告なく変更する場合がありますので、ご了承ください。

6.27.2. Armadillo-600シリーズ オプションケース(樹脂製)

6.27.2.1. 概要

Armadillo-640用のプラスチック製小型ケースです。 Armadillo-640の基板を収めた状態で、DCジャック、シリアルインターフェース(D-Sub9ピン)、 USBインターフェース、LANインターフェースにアクセス可能となっています。

取り外しが可能なパーツにより、CON9(拡張インターフェース)等の機能を外部に取り出すための開口部も用意しています。

[ティップ]

Armadillo-600シリーズ オプションケース(樹脂製)はArmadillo-640ベーシックモデル開発セットに付属しています。 樹脂ケースのみ必要なお客様のためにオプション品として別売りもしています。

表6.23 Armadillo-600シリーズ オプションケース(樹脂製)について

商品名

Armadillo-600シリーズ オプションケース(樹脂製)

型番

OP-CASE600-PLA-00

内容

樹脂ケース、ネジ、ゴム足


表6.24 Armadillo-600シリーズ オプションケース(樹脂製)の仕様

材質

難燃ABS樹脂

難燃性

UL94 V-0

使用温度範囲

-10〜50℃


[警告]

最高使用温度よりも高い温度で保管または使用した場合、樹脂ケースが変形する可能性があります。

6.27.2.2. 組み立て

images/a640-pla-case-assembly.svg

図6.128 Armadillo-600シリーズ オプションケース(樹脂製)の組み立て


images/common-images/callouts/1.svg
タッピングねじ(M2.6、L=20mm) x 3
images/common-images/callouts/2.svg
タッピングねじ(M3、L=12mm) x 1
images/common-images/callouts/3.svg
飾りねじ x 1
[警告]

ネジをきつく締め過ぎると、ケースが破損する恐れがありますので、十分にご注意ください。

[警告]

飾りネジはボンド止めされておりますので、無理に取り外さないで下さい。

6.27.2.3. 形状図

images/a640-pla-case-dimension.svg

図6.129 樹脂ケース形状図


6.27.3. Armadillo-600シリーズ オプションケース(金属製)

6.27.3.1. 概要

Armadillo-640用のアルミ製小型ケースです。 Armadillo-640の基板を収めた状態で、DCジャック、シリアルインターフェース(D-Sub9ピン)、 USBインターフェース、LANインターフェースにアクセス可能となっています。 ケース固定ネジを利用して、ACアダプタ固定用パーツおよびアース線を接続することが可能です。

[ティップ]

金属ケースはオプション品として別売りしています。

表6.25 Armadillo-600シリーズ オプションケース(金属製)について

商品名

Armadillo-600シリーズ オプションケース(金属製)

型番

OP-CASE600-MET-00

内容

アルミケース、ネジ、ゴム足、ACアダプタケーブル固定用パーツ


6.27.3.2. 組み立て

images/a640-metal-case-assembly.svg

図6.130 Armadillo-600シリーズ オプションケース(金属製)の組み立て


images/common-images/callouts/1.svg
なべ小ネジ、スプリングワッシャ付き(M3、L=5mm) x 4
images/common-images/callouts/2.svg
皿ネジ(M2.6、L=4mm) x 3
images/common-images/callouts/3.svg
トラス小ネジ(M3、L=5mm) x 1

6.27.3.3. 形状図

images/a640-metal-case-upper-dimension.svg

図6.131 金属ケース(上板)寸法図


images/a640-metal-case-lower-dimension.svg

図6.132 金属ケース(下板)寸法図


6.27.4. LCDオプションセット(7インチタッチパネルWVGA液晶)

6.27.4.1. 概要

ノリタケ伊勢電子製のタッチパネルLCDとフレキシブルフラットケーブル(FFC)のセットです。 Armadillo-640のCON11(LCD拡張インターフェース)に接続して使用することが可能です。

ソフトウェアからの利用方法については、「LCD を使用する」を参照してください。

表6.26 LCDオプションセット(7インチタッチパネルWVGA液晶)について

商品名

LCDオプションセット(7インチタッチパネルWVGA液晶)

型番

OP-LCD70EXT-L00

内容

7インチ タッチパネルLCD、FFC


表6.27 LCDの仕様

型番

GT800X480A-1013P

メーカー

ノリタケ伊勢電子

タイプ

TFT-LCD

表示サイズ

7インチ

外形サイズ

164.8 x 99.8 mm

解像度

800 x 480 pixels

表示色数

約1677万色

使用温度範囲

-20〜+70℃

輝度

850cd/m2 (Typ.) 25℃

電源

DC 5V±5%/500mA (Typ.), DC 3.3V±3%/35mA (Typ)

映像入力インターフェース

RGBパラレル(18bit/24bit)[a]

タッチパネルインターフェース

I2C(HID準拠)

タッチ方式

投影型静電容量方式

マルチタッチ

最大10点対応

[a] Armadillo-640は18bit対応です。


[警告]

タッチパネルLCDをご使用になる前に、『GT800X480A-1013P 製品仕様書』にて注意事項、詳細仕様、取扱方法等をご確認ください。

『GT800X480A-1013P 製品仕様書』は「アットマークテクノ Armadilloサイト」の「[オプション] LCDオプションセット (7インチタッチパネルWVGA液晶) 製品仕様書」からダウンロード可能です。

6.27.4.2. 組み立て

「LCD を使用する」を参照してください。

6.27.5. Armadillo-600シリーズ RTCオプションモジュール

6.27.5.1. 概要

温度補償高精度リアルタイムクロック(RTC)とUSBコネクタを搭載したオプションモジュールです。 時刻データを保持するための電池ホルダも搭載しています。 Armadillo-640のCON9(拡張インターフェース)に接続して使用することが可能です。

[ティップ]

Armadillo-600シリーズ RTCオプションモジュールの回路図、部品表は「アットマークテクノ Armadilloサイト」からダウンロード可能です。

表6.28 Armadillo-600シリーズ RTCオプションモジュールについて

商品名

Armadillo-600シリーズ RTCオプションモジュール

型番

OP-A600-RTCMOD-00

内容

RTCオプションモジュール、ネジ、スペーサ


6.27.5.2. 仕様

RTCオプションモジュールの仕様は次のとおりです。

表6.29 RTCオプションモジュールの仕様

リアルタイムクロック

型番

NR3225SA

メーカー

日本電波工業

バックアップ

電池ホルダ、外部バッテリ接続コネクタ搭載(対応電池: CR2016、CR2032 WK11等)

平均月差(参考値)

約21秒@-20℃、約8秒@25℃、約21秒@70℃

USB

Type Aコネクタ搭載

電源電圧

DC 3.3V±6%(RTC)、DC 2.0〜3.5V(RTCバックアップ)、DC 5V±5%(USB)

使用温度範囲

-20~+70℃(結露なきこと) [a]

外形サイズ

42 x 50 mm

[a] Armadillo-600シリーズ オプションケースセット(樹脂製)を組み合わせた場合、USBデバイスの発熱量によっては、使用温度範囲が狭くなる可能性があります。


[警告]

RTCの時間精度は周囲温度に大きく影響を受けますので、ご使用の際には十分に特性の確認をお願いします。

6.27.5.3. ブロック図

RTCオプションモジュールのブロック図は次のとおりです。

images/rtc-mod-block.svg

図6.133 RTCオプションモジュールのブロック図


6.27.5.4. インターフェース一覧

RTCオプションモジュールのインターフェースについて説明します。

images/rtc-mod-interface-layout.svg

図6.134 RTCオプションモジュールのインターフェース


表6.30 RTCオプションモジュール インターフェース一覧 [11]

部品番号 インターフェース名 型番 メーカ

CON1

Armadillo-600シリーズ接続インターフェース

PPPC072LFBN-RC

Sullins Connector Solutions

CON3

USBホストインターフェース

SS-52100-001

Stewart Connector

CON4

RTCバックアップインターフェース

DF13A-2P-1.25H(21)

HIROSE ELECTRIC

CON5

B2B-EH(LF)(SN)

J.S.T.Mfg.

CON6

BLP2016SM-G

Memory Protection Devices

[11] 部品の実装、未実装を問わず、搭載可能な部品型番を記載しています。


6.27.5.5. CON1(Armadillo-600シリーズ接続インターフェース)

CON1はArmadillo-600シリーズの基板と接続するためのインターフェースです。 Armadillo-640のCON9(拡張インターフェース)の11ピンから24ピンに接続して使用します。

表6.31 CON1 信号配列

ピン番号 ピン名 I/O 説明

1

ONOFF

Out

JP1を経由してRTCの割り込みピンに接続、オープンドレイン出力 [a]

2

NC

-

未接続

3

I2C_SCL

In

RTCのI2Cクロックに接続、基板上で2kΩプルアップ(VCC_3.3V)されています。

4

I2C_SDA

In/Out

RTCのI2Cデータピンに接続、基板上で2kΩプルアップ(VCC_3.3V)されています。

5

Reserved

-

-

6

RTC_INT_B

Out

RTCの割り込みピンに接続、オープンドレイン出力、基板上で2kΩプルアップ(VCC_3.3V)されています。

7

NC

-

未接続

8

USB2_PORT_EN

In

CON1の14ピン(USB2_EN_B)に接続されているバッファのイネーブルピンに接続

(High: USB2_EN_BがHi-Z、Low: USB2_EN_BがLow)

9

GND

Power

電源(GND)

10

VCC_3.3V

Power

電源(VCC_3.3V)

11

USB2_DN

In/Out

USBのマイナス側信号、CON3の2ピン(D-)に接続

12

USB2_DP

In/Out

USBのプラス側信号、CON3の3ピン(D+)に接続

13

USB2_VBUS

Power

電源(VBUS)、CON3の1ピン(VBUS)に接続

14

USB2_EN_B

Out

バッファの出力ピンに接続、CON1の8ピン(USB_PORT_EN)で設定した値が出力されます

[a] 出荷時JP1はオープンですので、使用する場合はJP1をショートする必要があります。


6.27.5.6. CON3(USBホストインターフェース)

CON3はUSBホストインターフェースです。

CON1の8ピン(USB2_PORT_EN)からUSBコントローラ(USB OTG2)の接続先を変更して使用します。 Lowレベルを入力するとRTCオプションモジュールのCON3、Highレベルを入力するとArmadillo-640のCON5の上段にUSB OTG2が接続されます。 詳細については、「USB デバイスを使用する」および回路図をご確認ください。

[警告]

RTCオプションモジュール CON3とArmadillo-640 CON5上段は 同じUSBコントローラ(USB_OTG2)に接続されており、同時に使用できません。

images/unuse-con5-upper.svg

図6.135 Armadillo-640 CON5上段とRTCオプションモジュール CON3は排他利用


[警告]

CON3は活線挿抜非対応となっております。 ユースケースとして活線挿抜を想定していないため、突入電流に耐えるだけのコンデンサを搭載しておらず、活線挿抜した場合にはArmadillo本体の電圧が降下してしまいます。 そのため、電源を切断した状態でデバイスを挿抜してください。

表6.32 CON3 信号配列

ピン番号 ピン名 I/O 説明

1

VBUS

Power

電源(VBUS)

2

D-

In/Out

USBのマイナス側信号、CON1の11ピンに接続

3

D+

In/Out

USBのプラス側信号、CON1の12ピンに接続

4

GND

Power

電源(GND)


6.27.5.7. CON4、CON5、CON6(RTCバックアップインターフェース)

CON4、CON5、CON6はRTCのバックアップ電源供給用のインターフェースです。 別途バックアップ用のバッテリを接続することで、電源(VCC_3.3V)が切断された場合でも、時刻データを保持することが可能です。 3つの形状のインターフェースがありますので、お使いのバッテリに合わせてご使用ください。

表6.33 対応バッテリ例

部品番号 対応電池 バックアップ時間(参考値)

CON4

CR2032 WK11

6.2年

CON5 [a]

-

-

CON6

CR2016

2.5年

[a] CON5には部品が実装されていません。2.5mmピッチのコネクタを実装してご使用ください。


表6.34 CON4、CON5、CON6 信号配列

ピン番号 ピン名 I/O 説明

1

RTC_BAT

Power

電源(RTC_BAT)、リアルタイムクロックの電源ピンに接続

2

GND

Power

電源(GND)


[警告]

CON4、CON5、CON6は共通の端子に接続されており、同時に使用できません。

[警告]

CON4、CON5、CON6はリチウムコイン電池からの電源供給を想定したインターフェースです。 リチウムコイン電池以外から電源を供給する場合、回路図、部品表にて搭載部品をご確認の上、絶対定格値を超えない範囲でご使用ください。

[警告]

CON6に搭載している電池ホルダは、大変破損しやすい部品となっております。 電池の取り付け、取り外しの手順について、「電池の取り付け、取り外し」をご確認ください。

6.27.5.8. JP1(ONOFFピン接続ジャンパ)

JP1は RTC のアラーム割り込み端子と Armadillo-640 の ONOFF ピン(Armadillo-640 CON9 11ピン)を接続するジャンパです。 JP1をショートすることで、RTC のアラーム割り込みによる i.MX6ULL の電源制御が可能になります。

[ティップ]

JP1は、はんだジャンパになります。 半分に割れたパッドになっておりますので、はんだごてでパッドを熱し、はんだを盛ってショートしてください。

6.27.5.9. Armadillo-640とRTCオプションモジュールの組み立て

RTCオプションモジュールはArmadillo-640のCON9の11ピンから24ピンに接続します。図6.136「RTCオプションモジュールの組み立て」のようにコネクタ接続後、金属スペーサで固定してください。

[警告]

Armadillo-640 CON1(microSDスロット)にmicroSDカードを挿抜する際には、RTCオプションモジュールを取り外してください。組み立て後は、RTCオプションモジュールとArmadillo-640の間隔が狭いため、無理に挿抜した場合、microSDカードが正常に挿入されないなどの原因で、動作不良を起こす場合があります。

images/rtc-mod-assembly.svg

図6.136 RTCオプションモジュールの組み立て


images/common-images/callouts/1.svg
なべ小ネジ、スプリングワッシャー、小径平ワッシャー付(M2、L=6mm) x 4
images/common-images/callouts/2.svg
金属スペーサ(M2、L=11mm) x 2

6.27.5.10. 電池の取り付け、取り外し

RTCオプションモジュールのCON6(RTCバックアップインターフェース)にはCR2016等のリチウムコイン電池を搭載可能です。電池を取り付ける手順は以下のとおりです。

  1. プラス端子側に電池を入れる
  2. 電池ホルダのツメの下に電池を押し込む
images/rtc-battery-insert.svg

図6.137 電池ホルダに電池を取り付ける


電池を取り外す手順は以下のとおりです。

  1. プラスチック製もしくは絶縁テープを巻き付けたマイナスドライバー(2mm)を用意する
  2. 電池を軽く押さえる
  3. 電池ホルダの縁の中央部分と電池の間にマイナスドライバーを挿入する
  4. マイナスドライバーで電池を持ち上げる
images/rtc-battery-remove.svg

図6.138 電池ホルダから電池を取り外す


6.27.5.11. 形状図

images/rtc-mod-dimension.svg

図6.139 RTCオプションモジュール形状


6.27.6. Armadillo-600シリーズ WLANコンボ、BT/THオプションモジュール

6.27.6.1. 概要

Laird Connectivity製の無線LAN/BTコンボモジュール Sterling LWB5+、 加賀FEI製のBT/THモジュール EYSKBNZWBの実装/未実装で、3種類のオプションモジュールがあります。

表6.35 Armadillo-640 WLANコンボ、BT/THオプションモジュールの搭載デバイス

名称 型番 搭載デバイス

Armadillo-600シリーズ WLANコンボオプションモジュール

OP-A600-AWLMOD-20

Sterling LWB5+

Armadillo-600シリーズ BT/THオプションモジュール

OP-A600-BTTHMOD-20

EYSKBNZWB

Armadillo-600シリーズ BT/THオプションモジュール WLANコンボ対応

OP-A600-BTTHMOD-21

Sterling LWB5+およびEYSKBNZWB


無線LANおよびBT機能を使用したい場合は、Sterling LWB5+を搭載したオプションモジュール、 BT機能もしくはThread機能を使用したい場合は、 EYSKBNZWBを搭載したオプションモジュールを選択してください。

ソフトウェアからの利用方法については、Sterling LWB5+搭載のオプションモジュールを利用している場合は「WLAN を使用する」を、EYSKBNZWB搭載のオプションモジュールを利用している場合は「BT デバイスを使用する」または、「Thread デバイスを扱う」を参照してください。

WLANコンボ、BT/THオプションモジュールの同梱物は表6.36「WLANコンボ、BT/THオプションモジュールの同梱物」のとおりです。 Sterling LWB5+を使う場合は、外付けアンテナが必須となりますので別途ご用意ください。

表6.36 WLANコンボ、BT/THオプションモジュールの同梱物

内容物 個数用途

なべ小ネジ、スプリングワッシャー、小径平ワッシャー付(M2、L=6mm)

4

Armadillo-640との固定

金属スペーサ(M2、L=11mm)

2

Armadillo-640との固定

USBコネクタ用キャップ

1

Armadillo-640 CON5上段の穴隠し用


表6.37 推奨外付けアンテナ

商品名

無線LAN用 外付けアンテナセット 08

型番

OP-ANT-WLAN-08K

セット内容

アンテナ(WAND2DBI-SMA-2NB/OxfordTEC)、アンテナケーブル(ケーブル長60mm)


[ティップ]

Sterling LWB5+で使用可能なアンテナにつきましては、 「アットマークテクノ Armadilloサイト」で公開している アンテナリストをご確認ください。

WLANコンボ、BT/THオプションモジュールはArmadillo-640のCON14(拡張インターフェース)、 CON9(拡張インターフェース)に接続して使用します。

WLANコンボ、BT/THオプションモジュールがArmadillo-640のUSBコントローラ(USB OTG2)を使用するため、 Armadillo-640のCON5(USBホストインターフェース)の上段は使用できなくなります。 詳細については、「USB デバイスを使用する」および回路図をご確認ください。

images/unuse-con5-upper.svg

図6.140 WLANコンボ、BT/THオプションモジュール接続時にArmadillo-640 CON5上段は使用不可


[ティップ]

Armadillo-600シリーズ WLAN、BT/THオプションモジュールの回路図、部品表は 「アットマークテクノ Armadilloサイト」からダウンロード可能です。

また、「USBシリアル変換アダプタ(Armadillo-640用)」をCON9に接続することができなくなります。 シリアルコンソールが必要な場合、WLANコンボ、BT/THオプションモジュールのCON2(拡張インターフェース)かArmadillo-640のCON3もしくはCON4(シリアルインターフェース)をご使用ください。 詳細につきましては、「シリアルコンソールの使用方法」をご確認ください。

[ティップ]

Armadillo-640は量産向けに、搭載するモジュールやケースの有無、 部品実装の一部変更、ROMイメージの書き込みなどを選択・指定できる BTOサービスを提供しています。詳細につきましては、 「アットマークテクノ BTOサービス」をご確認ください。

6.27.6.2. 仕様

WLANコンボ、BT/THオプションモジュールの仕様は次のとおりです。

表6.38 WLANコンボ、BT/THオプションモジュールの仕様

無線LAN/BTコンボモジュール

型番

Sterling LWB5+

メーカー

Laird Connectivity

無線規格

IEEE 802.11a/b/g/n/ac and Bluetooth 5.2

BT/THモジュール

型番

EYSKBNZWB

メーカー

加賀FEI

無線規格

Bluetooth 5.0 or IEEE 802.15.4(Thread) [a]

電源電圧

DC 5V±5%

使用温度範囲(基板単体)

-20~+70℃(結露なきこと) [b]

外形サイズ

41 x 49.7 mm

[a] ファームウェアの書き換えにより、どちらか一方を利用することができます。

[b] Armadillo-600シリーズ オプションケースセット(樹脂製)を組み合わせた場合の使用温度範囲は-10℃~+50℃です。


[ティップ]

Laird Connectivity製Sterling LWB5+および加賀FEI製EYSKBNZWBの詳細な仕様については、 デバイスのメーカーサイトにてご確認ください。

6.27.6.3. ブロック図

WLANコンボ、BT/THオプションモジュールのブロック図は次のとおりです。

images/wlbtth-mod-block.svg

図6.141 WLANコンボ、BT/THオプションモジュールのブロック図


6.27.6.4. インターフェース一覧

WLANコンボ、BT/THオプションモジュールのインターフェースについて説明します。

images/wlbtth-mod-interface-layout.svg

図6.142 WLANコンボ、BT/THオプションモジュールのインターフェース


表6.39 WLANコンボ、BT/THオプションモジュール インターフェース一覧 [12]

部品番号 インターフェース名 型番 メーカー

CON1

Armadillo-600シリーズ接続インターフェース

PPPC142LFBN-RC

Sullins Connector Solutions

CON2

拡張インターフェース

61300511021

Wurth Electronics

[12] 部品の実装、未実装を問わず、搭載可能な代表型番を記載しています。


6.27.6.5. CON1(Armadillo-600シリーズ接続インターフェース)

CON1はArmadillo-600シリーズの基板と接続するためのインターフェースです。

表6.40 CON1 信号配列

ピン番号 ピン名 I/O 説明

1

VCC_3.3V

Power

電源(VCC_3.3V)

2

GND

Power

電源(GND)

3

NC

-

未接続

4

NC

-

未接続

5

UBOOT_EN_B

In/Out

CON2の1ピンに接続されています。

6

SWDCLK

In

BT/THモジュールのSWDCLKに接続されています。

7

UART1_RX

In/Out

CON2の2ピンに接続されています。

8

SWDIO

In/Out

BT/THモジュールのSWDIOに接続されています。

9

UART1_TX

In/Out

CON2の3ピンに接続されています。

10

HUB_RST_B

In

USB HUBをリセットするための信号です。 (High: リセット解除、Low: リセット)

11

VCC_3.3V

Power

電源(VCC_3.3V)

12

VCC_3.3V

Power

電源(VCC_3.3V)

13

GND

Power

電源(GND)

14

GND

Power

電源(GND)

15

NC

-

未接続

16

NC

-

未接続

17

WLAN_RST

In

WLAN/BTコンボモジュールのWL_REG_ON信号に接続されています。

18

BT_RST

In

WLAN/BTコンボモジュールのBT_REG_ON信号に接続されています。

19

WLAN_BT_PWREN_B

In

WLAN/BTコンボモジュールの電源をON/OFF制御するための信号です。 (High: 電源切断、Low: 電源供給)

20

TH_RST

In

BT/THモジュールをリセットするための信号です。 (High: リセット、Low: リセット解除)

21

TH_PWREN_B

In

BT/THモジュールの電源をON/OFF制御するための信号です。 (High: 電源切断、Low: 電源供給)

22

NC

-

未接続

23

GND

Power

電源(GND)

24

VCC_3.3V

Power

電源(VCC_3.3V)

25

USB2_DN

In/Out

USBのマイナス側信号です。

26

USB2_DP

In/Out

USBのプラス側信号です。

27

USB2_VBUS

Power

電源(VBUS)

28

USB2_EN_B

Out

Armadillo-640のUSB OTG2の接続先を切り替えるための信号です。GNDに接続されています。


6.27.6.6. CON2(拡張インターフェース)

CON2は機能拡張用インターフェースです。 Armadillo-640と接続した場合、UART1の信号線が利用可能です。

表6.41 CON2 信号配列

ピン番号 ピン名 I/O 説明 Armadillo-640 CON9接続ピン名

1

UBOOT_EN_B

In/Out

拡張入出力

GPIO1_IO22

2

UART1_RX

In/Out

拡張入出力

GPIO1_IO17

3

UART1_TX

In/Out

拡張入出力

GPIO1_IO16

4

VCC_3.3V

Power

電源(VCC_3.3V)

-

5

GND

Power

電源(GND)

-


コネクタは実装されておりませんので、必要であればコネクタを実装してください。表6.42「CON2 搭載コネクタ例」に記載したコネクタ等が実装可能です。 61300511021等のピンヘッダを実装すると、「USBシリアル変換アダプタ(Armadillo-640用)」を接続してシリアルコンソールとして使用することができます。 S5B-XH-A、S5B-EHを使用する場合、実装面によってはArmadillo-600シリーズ オプションケースセット(樹脂製)の 蓋が閉まらなくなりますので、オプションケースへの収納を検討している場合はご注意ください。

表6.42 CON2 搭載コネクタ例

型番 メーカー

61300511021

Wurth Electronics

S5B-XH-A

J.S.T.Mfg.

S5B-EH

J.S.T.Mfg.


6.27.6.7. 形状図

images/wlbtth-mod-dimension.svg

図6.143 WLANコンボ、BT/THオプションモジュール形状図


6.27.6.8. オプションボードの組み立て

WLANコンボ、BT/THオプションモジュールはArmadillo-640のCON14(拡張インターフェース)の1ピンから4ピン、CON9(拡張インターフェース)の1ピンから24ピンに接続します。 電波強度等に影響がでますので、Armadillo-640とWLANコンボ、BT/THオプションモジュールは、金属スペーサで固定してください。

images/wlbtth-mod-assembly.svg

図6.144 WLANコンボ、BT/THオプションモジュールの組み立て


images/common-images/callouts/1.svg
なべ小ネジ、スプリングワッシャー、小径平ワッシャー付(M2、L=6mm) x 4
images/common-images/callouts/2.svg
金属スペーサ(M2、L=11mm) x 2
images/common-images/callouts/3.svg
USBコネクタキャップ
[警告]

Armadillo-640 CON1(microSDスロット)にmicroSDカードを挿抜する際には、WLANコンボ、BT/THオプションモジュールを取り外すことを推奨します。組み立てたまま挿抜した場合、microSDカードが正常に挿入されないなどの原因で、動作不良を起こす可能性があります。

[警告]

付属のUSBコネクタキャップは一度嵌めると簡単に取り外すことができません。 取り付け箇所に間違いがないか、十分にご確認の上ご使用ください。

6.27.6.9. アンテナの組み立て

Sterling LWB5+を使用する場合、外付けアンテナが必要になります。 アンテナケーブルコネクタはSterling LWB5+上のコネクタに接続します。

アンテナは外付けアンテナ固定金具 00(OP-MNT-ANT-MET-00)でArmadillo-640のねじ穴に固定することが可能です。

images/wlbtth-mod-assembly-ant1.svg

図6.145 外付けアンテナの組み立て(OP-MNT-ANT-MET-00使用)


CON3に実装されているD-Sub9ピンコネクタの替わりにオプションケース対応のアンテナ固定金具を装着して、 アンテナを固定することも可能です。

images/wlbtth-mod-assembly-ant2.svg

図6.146 外付けアンテナの組み立て(オプションケース対応のアンテナ固定金具使用)


[ティップ]

BTOサービスで、オプションケース対応のアンテナ固定金具を、 D-Sub9ピンコネクタの替わりに装着することが可能です。詳細につきましては、 「アットマークテクノ BTOサービス」をご確認ください。

6.27.6.10. ケースの組み立て

オプションケース対応のアンテナ固定金具を使用した場合、組み立て後でも Armadillo-600シリーズ オプションケース(樹脂製)に収めることが可能です。

images/wlbtth-mod-assembly-case.svg

図6.147 ケースの組み立て


images/common-images/callouts/1.svg
タッピングねじ(M2.6、L=20mm) x 3
images/common-images/callouts/2.svg
タッピングねじ(M3、L=12mm) x 1
images/common-images/callouts/3.svg
飾りねじ x 1

6.27.6.11. シリアルコンソールの使用方法

シリアルコンソールが必要な場合、WLANコンボ、BT/THオプションモジュールを Armadillo-640のCON9に接続するため、「USBシリアル変換アダプタ(Armadillo-640用)」を接続することができません。

これらの信号線はWLANコンボ、BT/THオプションモジュールのCON2(拡張インターフェース)から使用可能です。 CON2に5ピンのピンヘッダを実装することで、「USBシリアル変換アダプタ(Armadillo-640用)」を接続することができます。

images/wlbtth-mod-serial-con2.svg

図6.148 オプションモジュールのCON2をシリアルコンソールとして使用する場合の接続例


CON3のD-Sub9ピンコネクタの替わりにオプションケース対応のアンテナ固定金具を装着している場合、 CON4(シリアルインターフェース)に10ピンのピンヘッダを実装することで、シリアルコンソールとして使用することができます。 CON4を使用する場合は、シリアルクロスケーブルとD-Sub9/10ピンシリアル変換ケーブルが必要になります。

images/wlbtth-mod-serial-con4.svg

図6.149 CON4をシリアルコンソールとして使用する場合の接続例


アンテナの固定が不要な場合は、Armadillo-640のCON3(シリアルインターフェース)をシリアルコンソールとして使用すると Armadillo-600シリーズ オプションケース(樹脂製)に入れたままでも、 シリアルコンソールを利用することが可能です。 CON3を使用する場合は、シリアルクロスケーブルが必要になります。

images/wlbtth-mod-serial-con3.svg

図6.150 CON3をシリアルコンソールとして使用する場合の接続例


6.27.7. 無線LAN用 外付けアンテナセット 08

6.27.7.1. 概要

無線LAN用 外付けアンテナセット 08は、 Armadillo-600シリーズ WLANコンボ、BT/THオプションモジュールに搭載している Laird Connectivity製の無線LAN/BTコンボモジュール Sterling LWB5+対応のアンテナセットです。

表6.43 無線LAN用 外付けアンテナセット 08について

商品名

無線LAN用 外付けアンテナセット 08

型番

OP-ANT-WLAN-08K

セット内容

アンテナ(WAND2DBI-SMA-2NB/OxfordTEC)、アンテナケーブル(ケーブル長100mm)

対応製品

OP-A600-AWLMOD-20, OP-A600-BTTHMOD-21


[ティップ]

BTOサービスで、ケーブル長60mmのアンテナケーブルを選択することが可能です。 オプションケースおよびオプションケース対応のアンテナ固定金具を使用する場合は、 ケーブルの挟み込みによる断線や、意図しないコネクタ外れを防ぐため、 ケーブル長60mmのアンテナケーブルの使用を推奨いたします。 詳細につきましては、 「アットマークテクノ BTOサービス」をご確認ください。

6.27.7.2. アンテナケーブルコネクタの嵌合

アンテナケーブルコネクタは、Sterling LWB5+上のコネクタに接続します。

images/wlbtth-ant-con.svg

図6.151 Sterling LWB5+上のコネクタの位置


アンテナケーブルコネクタは、挿抜治具(90609-0001/IPEX)を使用して嵌合するか、手で直接嵌合します。

挿抜治具による嵌合

アンテナケーブルコネクタのストッパーに当たるまで挿抜治具をスライドさせ、コネクタ全体を抱えるようにします。アンテナケーブルコネクタが基板に対し平行になっていることを確認し、垂直に挿抜治具を押してコネクタを嵌合します。

images/ant-wlan-08k-insert3.svg

図6.152 挿抜治具によるアンテナケーブルコネクタの嵌合


[警告]

アンテナケーブルコネクタは基板に対して平行してから嵌合してください。 曲がったまま嵌合すると、コネクタ破損の原因となります。

手で直接嵌合

アンテナケーブルを持ち、Sterling LWB5+上のアンテナコネクタにアンテナケーブルのコネクタをセットします。セットしたら前後に軽く動かし、動かないことを確認します。

images/ant-wlan-08k-insert1.svg

図6.153 アンテナケーブルコネクタのセット


コネクタのセンターを真上から押し、カチッという音がすると嵌合完了です。

images/ant-wlan-08k-insert2.svg

図6.154 アンテナケーブルコネクタの嵌合


6.27.7.3. アンテナケーブルコネクタの抜去

アンテナのケーブルコネクタは、ケーブルコネクタ首部へのストレスを避けるため、挿抜治具(90609-0001/IPEX)を使用して抜去してください。

ケーブルコネクタのストッパーに当たるまで挿抜治具をスライドさせ、ケーブルコネクタ全体を抱えるようにします。基板と垂直に挿抜治具を引き上げてコネクタを抜去します。

images/ant-wlan-08k-remove.svg

図6.155 挿抜治具によるアンテナケーブルコネクタの抜去


[警告]

挿抜治具は必ず基板と垂直に引き上げてください。 ひねったり、ななめに引き上げたりした場合、コネクタ破損の原因となります。

6.27.7.4. 形状図

images/ant-wlan-08k-dimension.svg

図6.156 無線LAN用 外付けアンテナ08形状図


images/ant-wlan-08k-cable-dimension.svg

図6.157 無線LAN用 外付けアンテナケーブル08形状図


images/ant-wlan-08k-hole-dimension.svg

図6.158 無線LAN用 外付けアンテナ 取り付け穴寸法


6.27.8. 外付けアンテナ固定金具 00

6.27.8.1. 概要

アンテナを固定する金具です。

images/about-ant-mnt-00.svg

図6.159 外付けアンテナ固定金具 00の外観


アンテナ固定金具を使用すると、Armadillo-640のUSBコネクタ横のねじ穴に アンテナを固定することができます。

images/ant-mnt-00-assembly-pattern.svg

図6.160 Armadillo-640へのアンテナ固定金具の固定


表6.44 外付けアンテナ固定金具 00について

商品名

外付けアンテナ固定金具 00

型番

OP-MNT-ANT-MET-00

セット内容

アンテナ固定金具本体[a]

[a] 固定用のねじ、スペーサはセットに含まれません。別途ご準備ください。Armadillo-640 ベーシックモデル 開発セットに含まれるねじ、スペーサで固定することができます。


表6.45 外付けアンテナ固定金具 00の仕様

材質

板厚

1.0mm


[警告]

オプションケース対応のアンテナ固定金具とは違う金具です。 オプションケース対応のアンテナ固定金具が必要な場合は、BTOサービスをご利用ください。

6.27.8.2. 組み立て

図6.161「Armadillo-640へのアンテナ固定金具の固定」のようにM3のねじとスペーサでArmadillo-640のねじ穴に固定します。

images/ant-mnt-00-assembly.svg

図6.161 Armadillo-640へのアンテナ固定金具の固定


images/common-images/callouts/1.svg
なべ小ねじ(M3、L=5)
images/common-images/callouts/2.svg
アンテナ固定金具
images/common-images/callouts/3.svg
スペーサ(M3、L=8mm)

アンテナは図6.162「アンテナ固定金具へのアンテナの固定」のように固定します。

images/ant-mnt-00-assembly-ant.svg

図6.162 アンテナ固定金具へのアンテナの固定


6.27.8.3. 形状図

images/ant-mnt-00-dimension.svg

図6.163 アンテナ固定金具 形状図




[10] nmcli connection show [ID] によって、より詳細な情報を表示することもできます。