第5章 ネットワークの設定

この章では、ネットワーク設定の変更方法や無線LANの設定方法について説明します。

Armadillo-300の/etc/configディレクトリ内にあるファイルを編集することで、起動時のネットワーク設定を変更することが可能です。変更した場合は、次のコマンドを実行して、変更内容を保存してください。

[armadillo ~]# flatfsd -s

図5.1 ネットワーク設定の保存


[警告]

ネットワークの設定に関して不明な点がありましたら、ネットワークの管理者へ相談してください。

5.1. IP設定を変更する

出荷時のネットワーク設定は、loインタフェースとeth0インタフェースが自動的に有効になります。eth0インタフェースは、DHCPに設定されているので、固定IPアドレスで使用される場合は以下の説明に従い変更してください。

ここでは、eth0デバイスを例にとって説明します。

5.1.1. 固定IPアドレスに設定する場合

表5.1「固定IPアドレス設定」に示す内容に設定変更してみます。viエディタで/etc/config/interfacesを編集します。

表5.1 固定IPアドレス設定

項目設定
IPアドレス192.168.10.10
ネットマスク255.255.255.0
ネットワークアドレス192.168.10.0
ブロードキャストアドレス192.168.10.255
デフォルトゲートウェイ192.168.10.1

[armadillo ~]# vi /etc/config/interfaces
# /etc/network/interfaces -- configuration file for ifup(8), ifdown(8)

auto lo eth0
iface lo inet loopback
iface eth0 inet static
        address 192.168.10.10
        netmask 255.255.255.0
	    network 192.168.10.0
        broadcast 192.168.10.255
	    gateway 192.168.10.1

図5.2 固定IPアドレス設定


5.1.2. DHCPに設定する場合

[armadillo ~]# vi /etc/config/interfaces
# /etc/network/interfaces -- configuration file for ifup(8), ifdown(8)

auto lo eth0
iface lo inet loopback
iface eth0 inet dhcp

図5.3 DHCP設定


5.2. DNSサーバを指定する場合

DNSサーバを指定する場合は、viエディタで/etc/config/resolv.confを編集します。

[armadillo ~]# vi /etc/config/resolv.conf
nameserver 192.168.10.1

図5.4 DNSサーバ設定


5.3. 無線LANを設定する

Armadillo-300に標準搭載している無線LANモジュールを利用できるように設定する手順を説明します。

5.3.1. 通信モードの設定

通信モードには、表5.2「通信モードの種類」のような種類のものがあります。

表5.2 通信モードの種類

通信モード指定子説明
Managedstaアクセスポイントを介して通信します。
Masterapアクセスポイントになることができます。
Ad-Hocadhocアクセスポイントを介さずに通信することができます。

wlanconfigコマンドでath0インタフェースを通信モード指定して再作成します。指定子はwlanmodeに続けて入力します。

[armadillo ~]# wlanconfig ath0 destroy
[armadillo ~]# wlanconfig ath0 create wlandev wifi0 wlanmode sta

図5.5 通信モードの設定


iwconfigコマンドで現在の通信モードを確認することができます。

[armadillo ~]# iwconfig ath0
ath0      IEEE 802.11b  ESSID:""
          Mode:Managed  Channel:0  Access Point: 00:00:00:00:00:00
          Bit Rate:0 kb/s   Tx-Power:0 dBm   Sensitivity=0/3
          Retry:off   RTS thr:off   Fragment thr:off
          Encryption key:off
          Power Management:off
          Link Quality:0  Signal level:0  Noise level:0
          Rx invalid nwid:0  Rx invalid crypt:0  Rx invalid frag:0
          Tx excessive retries:0  Invalid misc:0   Missed beacon:0

図5.6 通信モードの確認


5.3.2. ESSIDの設定

iwconfigコマンドを使用して、接続するアクセスポイントのESS-IDを設定します。ここでは使用するアクセスポイントのESS-IDが「MYESSID」であると仮定します。

[armadillo ~]# iwconfig ath0 essid MYESSID

図5.7 ESS-IDの設定


5.3.3. WEP-KEYの設定

WEP-KEYを使用する場合、iwconfigコマンドを使用して設定します。お使いの無線LANネットワークでWEP-KEYを使用しない場合、この設定は行わないで下さい。ここでは使用するアクセスポイントのWEP-KEYが「00-01-02-03-04-05-06-07-08-09-10-11-12」であると仮定します。

[armadillo ~]# iwconfig ath0 enc 00010203040506070809101112

図5.8 WEP-KEYの設定


5.3.4. 無線モードの設定

無線モードには、表5.3「無線モード一覧」に示す種類があります。デフォルトの無線モードはautoに設定されています。

表5.3 無線モード一覧

無線モード指定子説明
自動auto無線モードを自動で設定します。
11a11a無線モードをIEEE 802.11aに設定します。
11b11b無線モードをIEEE 802.11bに設定します。
11b/g11g無線モードをIEEE 802.11b/gに設定します。

無線モードの設定を設定する場合、iwprivコマンドを使用して設定します。 指定子はmodeに続けて入力します。

[armadillo ~]# iwpriv ath0 mode auto

図5.9 無線モードの設定


iwprivコマンドで現在の無線モードを確認することができます。

[armadillo ~]# iwpriv ath0 get_mode
ath0      get_mode:11b

図5.10 無線モードの確認


[ティップ]

無線モードが変わっていないように見える場合、無線LANインターフェースath0がdownしている可能性があります。 ifconfig ath0 upを実行後、再度確認してください。

[ティップ]

無線モードをIEEE 802.11b/gに設定後、iwpriv ath0 pureg 1 と実行すると、IEEE 802.11gのみで動作させることができます。

5.3.5. 通信レートの設定

通信レートには、表5.4「通信レート一覧」に示す値を指定できます。デフォルトの通信レートはautoに設定されています。

表5.4 通信レート一覧

通信レート指定子説明
自動auto通信レートを自動で設定します。
固定xxM通信レートを固定に設定します。xxに設定できる文字列は1, 2, 5.5, 11, 6, 9, 12, 18, 24, 36, 48, 54です。

通信レートの設定を設定する場合、iwconfigコマンドを使用して設定します。指定子はrateに続けて入力します。

[armadillo ~]# iwconfig ath0 rate 11M

図5.11 通信レートの設定


[ティップ]

iwconfig ath0 rate xxM auto と設定すると、自動設定時の最大レートをxxM以下に抑える事ができます。

iwconfigコマンドで現在の通信モードを確認することができます。

[armadillo ~]# iwconfig ath0
ath0      IEEE 802.11g  ESSID:"myap"
          Mode:Managed Channel:0  Access Point: 00:01:02:03:04:05
          Bit Rate:36 Mb/s   Tx-Power:0 dBm   Sensitivity=0/3
          Retry:off   RTS thr:off   Fragment thr:off
          Encryption key:off
          Power Management:off
          Link Quality:0  Signal level:0  Noise level:0
          Rx invalid nwid:0  Rx invalid crypt:0  Rx invalid frag:0
          Tx excessive retries:0  Invalid misc:0   Missed beacon:0

図5.12 通信レートの確認


5.3.6. Ad-Hocに設定する例

ここでは、ath0インタフェースをAd-Hocモードに設定し、通信可能な状態にするまでの一連の手順を説明します。本例では、ESS-IDを「myadhoc」、IPアドレスは192.168.10.100固定とします。

[ティップ]

Ad-Hocモードで通信を行うには、対向機器が必要です。対向機器についても同様の設定を行ってください。

[armadillo ~]# wlanconfig ath0 destroy
[armadillo ~]# wlanconfig ath0 create wlandev wifi0 wlanmode adhoc
[armadillo ~]# iwconfig ath0 essid myadhoc
[armadillo ~]# ifconfig ath0 192.168.10.100 up

図5.13 Ad-Hocに設定する例


5.3.7. Managedに設定する例

ここでは、ath0インタフェースをManagedモードに設定し、通信可能な状態にするまでの一連の手順を説明します。本例ではESS-IDを「myap」、無線モードをIEEE 802.11a、WEP-KEYを「00-01-02-03-04-05-06-07-08-09-10-11-12」、IPアドレスは192.168.10.100固定とします。

[armadillo ~]# wlanconfig ath0 destroy
[armadillo ~]# wlanconfig ath0 create wlandev wifi0 wlanmode sta
[armadillo ~]# iwconfig ath0 essid myap
[armadillo ~]# iwconfig ath0 enc 00010203040506070809101112
[armadillo ~]# iwpriv ath0 mode 11a
[armadillo ~]# ifconfig ath0 192.168.10.100 up

図5.14 Managedに設定する例


5.3.8. WPAの設定

ここでは、WPAを使用して無線LANアクセスポイントに接続する手順を説明します。 WPAを使用して接続するためには、wpa_passphraseコマンドで設定ファイルを生成後、wpa_supplicantコマンドで認証プロセスを起動します。 本例では、以下の設定を想定しています。

表5.5 WPA接続パラメータ例

項目設定
IPアドレス192.168.10.100
ESSIDwpa-ap
事前共有鍵0123456789ABC
設定ファイル名/etc/config/wpa_supplicant.conf

[armadillo ~]# wlanconfig ath0 destroy
[armadillo ~]# wlanconfig ath0 create wlandev wifi0 wlanmode sta
[armadillo ~]# wpa_passphrase wpa-ap 0123456789ABC > /etc/config/wpa_supplicant.conf
[armadillo ~]# wpa_supplicant -i ath0 -c /etc/config/wpa_supplicant.conf -Dmadwifi -Bw
[armadillo ~]# ifconfig ath0 192.168.10.100 up

図5.15 WPAを使用した接続例


[ティップ]

wpa_supplicantコマンドで指定する設定ファイル名(例では/etc/config/wpa_supplicant.conf)は、絶対パスで指定してください。

[ティップ]

無線LANアクセスポイントのSSIDステルス機能が有効になっている場合、/etc/config/wpa_supplicant.confの 2行目にscan_ssid=1を追記してください。

正常に接続できているか確認するには、iwconfigコマンドを使用します。 接続できていれば、Access Pointに接続先アクセスポイントのMACアドレスが表示されます。

[armadillo ~]# iwconfig ath0
ath0      IEEE 802.11g  ESSID:"wpa-ap"  
          Mode:Managed  Frequency:2.452 GHz  Access Point: 00:01:02:03:04:05
          Bit Rate:54 Mb/s   Tx-Power:12 dBm   Sensitivity=0/3  
          Retry:off   RTS thr:off   Fragment thr:off
          Encryption key:6B48-5F0D-2C40-A9F3-E06F-EE7E-5676-63E9   Security mode:restricted
          Power Management:off
          Link Quality=66/94  Signal level=-23 dBm  Noise level=-89 dBm
          Rx invalid nwid:44  Rx invalid crypt:0  Rx invalid frag:0
          Tx excessive retries:0  Invalid misc:0   Missed beacon:0

図5.16 WPA接続の確認


5.3.9. 無線LAN設定ファイルの作成

ここでは、無線LANの設定ファイルを作成する方法を説明します。 ファイルは、有線LANと同様に/etc/config/interfacesを使用します。 以下の例に従い、viエディタで/etc/config/interfacesを編集してください。

5.3.9.1. WEP接続(Managed)

WEPを使用してアクセスポイントに接続する場合の設定ファイル例を示します。

表5.6 WEP接続(Managed)パラメータ例

項目設定
IPアドレス192.168.10.100
ネットマスク255.255.255.0
ブロードキャストアドレス192.168.10.255
ESSIDwep-ap
WEP-KEY00010203040506070809101112

[armadillo ~]# vi /etc/config/interfaces
# /etc/network/interfaces -- configuration file for ifup(8), ifdown(8)

auto lo eth0 ath0
iface lo inet loopback
iface eth0 inet dhcp
iface ath0 inet static
        address 192.168.10.100
        netmask 255.255.255.0
        broadcast 192.168.10.255
        pre-up wlanconfig ath0 destroy
        pre-up wlanconfig ath0 create wlandev wifi0 wlanmode sta
        wireless-essid wep-ap
        wireless-enc 00010203040506070809101112

図5.17 WEP接続(Managed)の設定ファイル例


5.3.9.2. WEP接続(Ad-Hoc)

WEPを使用してAd-Hoc接続する場合の設定ファイル例を示します。

表5.7 WEP接続(Ad-Hoc)パラメータ例

項目設定
IPアドレス192.168.10.100
ネットマスク255.255.255.0
ブロードキャストアドレス192.168.10.255
ESSIDwep-adhoc
WEP-KEY未使用

[armadillo ~]# vi /etc/config/interfaces
# /etc/network/interfaces -- configuration file for ifup(8), ifdown(8)

auto lo eth0 ath0
iface lo inet loopback
iface eth0 inet dhcp
iface ath0 inet static
        address 192.168.10.100
        netmask 255.255.255.0
        broadcast 192.168.10.255
        pre-up wlanconfig ath0 destroy
        pre-up wlanconfig ath0 create wlandev wifi0 wlanmode adhoc
        wireless-essid wep-adhoc

図5.18 WEP接続(Ad-Hoc)の設定ファイル例


5.3.9.3. WPA-PSK接続(TKIP)

WPA-PSKを使用してアクセスポイントに接続する場合の設定ファイル例を示します。 暗号化にはTKIPを使用します。

表5.8 WPA-PSK接続(TKIP)パラメータ例

項目設定
IPアドレス192.168.10.100
ネットマスク255.255.255.0
ブロードキャストアドレス192.168.10.255
ESSIDwpa-tkip-ap
暗号化方式TKIP
事前共有鍵0123456789ABC

[armadillo ~]# vi /etc/config/interfaces
# /etc/network/interfaces -- configuration file for ifup(8), ifdown(8)

auto lo eth0 ath0
iface eth0 inet dhcp
iface ath0 inet static
        address 192.168.10.100
        netmask 255.255.255.0
        broadcast 192.168.10.255
        pre-up wlanconfig ath0 destroy
        pre-up wlanconfig ath0 create wlandev wifi0 wlanmode sta
        wpa-driver madwifi
        wpa-proto WPA
        wpa-key-mgmt WPA-PSK
        wpa-pairwise TKIP
        wpa-group TKIP
        wpa-ssid wpa-tkip-ap
        wpa-psk 0123456789ABC

図5.19 WPA-PSK接続(TKIP)の設定ファイル例


5.3.9.4. WPA-PSK接続(AES)

WPA-PSKを使用してアクセスポイントに接続する場合の設定ファイル例を示します。 暗号化にはAESを使用します。

表5.9 WPA-PSK接続(AES)パラメータ例

項目設定
IPアドレス192.168.10.100
ネットマスク255.255.255.0
ブロードキャストアドレス192.168.10.255
ESSIDwpa-aes-ap
暗号化方式AES
事前共有鍵0123456789ABC
SSIDステルス機能有効

[armadillo ~]# vi /etc/config/interfaces
# /etc/network/interfaces -- configuration file for ifup(8), ifdown(8)

auto lo eth0 ath0
iface lo inet loopback
iface eth0 inet dhcp
iface ath0 inet static
        address 192.168.10.100
        netmask 255.255.255.0
        broadcast 192.168.10.255
        pre-up wlanconfig ath0 destroy
        pre-up wlanconfig ath0 create wlandev wifi0 wlanmode sta
        wpa-driver madwifi
        wpa-proto WPA
        wpa-key-mgmt WPA-PSK
        wpa-pairwise CCMP
        wpa-group CCMP
        wpa-ssid wpa-aes-ap
        wpa-psk 0123456789ABC
        wpa-scan_ssid 1

図5.20 WPA-PSK接続(AES)の設定ファイル例


5.4. ネットワーク設定の有効化・無効化

ネットワーク設定を無効にする場合は、次のようにifdownコマンドの引数にインターフェース名を指定します。 インターフェース名一覧は、表5.10「インターフェース一覧」を参照してください。

表5.10 インターフェース一覧

インターフェース名説明
eth0有線LANインターフェース
ath0無線LANインターフェース

[armadillo ~]# ifdown eth0

図5.21 ネットワーク設定の無効化


「IP設定を変更する」で行ったネットワーク設定を有効にする場合は、次のようにifupコマンドの引数にインターフェース名を指定します。 インターフェース名一覧は、表5.10「インターフェース一覧」を参照してください。

[ティップ]

ネットワーク設定を有効化する場合は、先に無効化された状態にしておいてください。

[armadillo ~]# ifup eth0

図5.22 ネットワーク設定の有効化