はじめに

電力自給型のシステムを開発・運用するには、ソーラーパネルで自己発電し、蓄電池に蓄えた電力でアプリケーションが停止することなく動作し続けることができるように設計を行う必要があります。

発電量の多いソーラーパネルや、大容量の蓄電池を選定することで、システムが停止するリスクを下げることができますが、発電量や蓄えられる容量が上がれば上がるほど機材が大きくなり、コストアップの要因にもなります。コスト・サイズとのバランスをとりながら、最適な設計を行う必要があります。

本ガイドでは、電力自給型 IoT ゲートウェイの設計を実施する為、以下を明確にするドキュメントです。

  1. 間欠動作により消費電力を削減する方法
  2. ゲートウェイ消費電力の試算方法
  3. 上記で試算した消費電力でシステムが動作継続する為に必要なソーラーパネル・蓄電池の発電量・蓄電容量の試算・選定方法

1.1. 間欠動作について

Armadillo-IoT ゲートウェイ A6 は元々省電力で動作するゲートウェイですが、間欠動作を実行することで更なる省電力を実現でき、消費電力を減少させることが可能です。

ゲートウェイの消費電力は図1.1「ゲートウェイの消費電力」に示す通り、ゲートウェイの稼働状態に応じて変化します。図1.1「ゲートウェイの消費電力」内の色が付いている部分が消費電力となりますので、この面積を小さくするように間欠動作を設計・実行します。

図1.1「ゲートウェイの消費電力」の場合、 2,400 秒(40 分) シャットダウン状態で 1mW 以下の消費電力、そこから 12 秒程度で Linux と LTE モデムを起動し 30 秒間ゲートウェイ内の処理と LTE 通信を実施後 CPU はスリープモードへ LTE モデムも間欠動作へと移行し、以降 10 分周期または何かしらのトリガーにて起床し動作を実施します。

このように、 間欠動作を用いることで常時動作状態でいるよりも消費電力を削減することができます。

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図1.1 ゲートウェイの消費電力


ゲートウェイをどの状態 (本ガイドでは「動作モード」と表現しています) でどの程度の時間動作させるかは、消費電力、起動時間、選択可能な起動要因(トリガー)のトレードオフとなります。例えば、

  • 動作可能な状態を長く設定すると、消費電力が大きくなりますが即座に動作できます。
  • シャットダウンしている時間を長くすると、消費電力は小さくなりますが、起動手段が RTC による指定時刻の起動のみであり、起動までの時間も 10 秒程度必要となります。
  • CPU をスリープした状態にするとシャットダウンの状態よりは消費電力は大きくなりますが、1秒程度で起動可能です。また、起動手段として RTC 以外も使用可能となります。LTE モジュールを網に接続した状態にしておけば、 SMS での遠隔起動も可能となります。

これらの条件と要求される動作仕様から動作モードと動作時間を決定し、システムに最適な間欠動作を作り上げます。

間欠動作仕様(動作モードの決定)に関する具体的な手順は「間欠動作仕様(動作モード)の決定」で説明します。

また、間欠動作仕様が決定しますと、消費電力も試算ができます。試算の具体的な手順は「消費電力の見積もり」で説明します。

1.2. 発電量と蓄電容量の関係

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図1.2 発電量と蓄電容量の関係


太陽電池と蓄電池を使った電源を設計するにあたり、以下の 2 つを意識する必要があります。

  • 発電した電力は蓄電池の容量以上蓄えることはできない
  • 夜間は必ず蓄電池の容量から使用電力を賄う必要がある

図1.2「発電量と蓄電容量の関係」 のように電力は常に消費し、発電するのは陽の当たっている時間帯だけとなります。

日中の発電は、使用電力の供給と蓄電池への充電に使われますが、充電については蓄電池の容量が満タンになった時点で蓄電池の過充電による劣化を防ぐため、充電は停止します。極端に発電量の多い太陽電池を搭載しても蓄電池の容量以上は蓄えることができませんので、蓄電池の容量や使用電力に見合った物を選定する必要があります。

夜間は発電が行われません、そのため電力は蓄電池から供給されるため、少なくとも 1 日のサイクル内で必ず放電する時間が発生します。蓄電池の定格容量に対する放電した量の割合を放電深度といいます。 放電深度は蓄電池の寿命に大きく影響し、放電深度が深いと寿命が短くなります。 そのため、夜間の放電深度は少なくとも 50 % 以下で設計する必要があります。 また、蓄電池は経年劣化により定格容量が減少します。一般的には容量 70 % 程度が寿命と言われています。寿命間近の蓄電池でも仕様で決めた性能で運用できるように容量を選定しましょう。

1.2.1. 陽の当たっている時間帯

陽の当たっている時間帯は太陽電池が発電します。 発電した電力は2つの役割を担います。

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図1.3 ゲートウェイへの電源供給


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図1.4 蓄電池への充電


1.2.2. 夜間や雨天時などの時間帯

夜間や雨天時は太陽電池は発電をしません。
ゲートウェイへの電力供給は蓄電池からのみとなります。
蓄電池に蓄えていた電力を消費してしまうため、陽の当たっている時間帯は必ず蓄電池への充電をおこなう必要があります。

1.2.3. 太陽電池容量と蓄電池容量の決定

これらを考慮した上で、太陽電池容量と蓄電池容量を決定します。具体的な手順は「蓄電池及び太陽電池の容量見積もり」で説明します。