(参考) 各動作モードでの消費電力

Armadillo-IoT ゲートウェイ A6 をソーラーパワーやバッテリーで駆動させる場合、 必要な発電量やバッテリー容量を算出する為に、Armadillo-IoT ゲートウェイ A6 と付随する機器類の消費電力を見積もる必要があります。本章では、参考値としてある条件で計測した消費電力を掲載します。

[警告]

本章の測定値は、2021 年 8 月時点の測定結果となります。
今後のアップデートにより同一条件で測定を実施しても同じ結果とならない可能性があります。
参考値としてご利用ください。

[ティップ]実機で消費電力を計測する際の注意点

ゲートウェイは、図5.1「ゲートウェイの消費電力」に示すように一定の電力を消費しない為、測定器の記録間隔はパルス周期の半分以下(5 ms)に対応したものを使用する必要があります。

images/aiota6_power_measurement.png

図5.1 ゲートウェイの消費電力


  • ピーク電流パルス幅(t): 4i ms
  • パルス周期(T): 10 ms

通信中のLTEモジュールの消費電流を計測した波形を図5.2「通信中の LTE モジュール消費電流」に示します。

images/aiota6_waveform01.png

図5.2 通信中の LTE モジュール消費電流


LTEモジュールの消費電流パルスの時間を図5.3「LTE モジュールの消費電流パルス」に示します。

images/aiota6_waveform02.png

図5.3 LTE モジュールの消費電流パルス


5.1. 測定環境

5.1.1. Armadillo-IoT ゲートウェイ A6

測定対象の Armadillo-IoT ゲートウェイ A6 を表5.1「測定対象の Armadillo-IoT ゲートウェイ A6」に示します。

表5.1 測定対象の Armadillo-IoT ゲートウェイ A6

名称 メーカー 型番

Armadillo-IoTゲートウェイ A6 U1モデル 開発セット

アットマークテクノ

AG6110-U01D0


5.1.1.1. 測定時の Armadillo ソフトウェアバージョン

測定対象の Armadillo-IoT ゲートウェイ A6 には、インストールディスクイメージ install-disk-buster-aiota6-20210830.img をインストールしました。
測定時のソフトウェアバージョンを表5.2「測定対象の Armadillo ソフトウェアバージョン」に示します。

表5.2 測定対象の Armadillo ソフトウェアバージョン

名称 バージョン

u-boot

aiotg-a6-v2018.03-at9

カーネル

v4.14-at36

ユーザーランド

debian-buster-armhf-aiota6-20210830.tar.gz


5.1.2. 測定機器

使用した測定機器を表5.3「計測に使用した機器類」に示します。

表5.3 計測に使用した機器類

名称 メーカー 型番

データロガー

T&D Corporation

MCR-4V

電流測定モジュール

ストロベリー・リナックス

LTC6102HV-0.5


5.1.3. メディア類

使用したメディアと SIM カード/料金プランを表5.4「計測に使用したメディア類」に示します。

表5.4 計測に使用したメディア類

名称 メーカー 型番、プラン名 数量

microSD メモリカード

Lexar

LSDMI16GBBEU300

1

USB メモリ

KIOXIA

LU202W016GG4

2

SIM カード

soracom

soracom plan-D nano SIM SMS あり

1


5.2. 動作モードの定義

本章で測定する動作モードを表5.5「動作モードの定義」に定義します。動作モードの名称は本章内で使用する名称となります。
本ドキュメント内の他章と違う名称となっておりますのでご注意ください。

表5.5 動作モードの定義

モード名 説明

Shutdown

もっとも消費電力が少ない状態です。
RTC 割り込みにより Active モードへ遷移可能です。

Sleep

CPU やメモリが一時停止している状態です。
少ない時間で Active モードへ遷移可能です。
LTEモジュールは電源 OFF 状態です。

Sleep-SMS

CPU やメモリが一時停止している状態です。
少ない時間で Active モードへ遷移可能です。
SMS 受信により Active モードへ遷移します。

Active

Linux のプロンプトで待機している状態です。
LTE モジュールは電源 OFF 状態です。

Active-PPP

Linux のプロンプトで待機している状態です。
LTE モジュールは PPP コネクションを確立した状態で通信を行っていません。

Active-Data

LTE の通信コマンドを実行している状態です。
LTE モジュールはデータ送受信をおこなっています。

Stress

LTE の通信コマンドを実行している状態です。
CPU に負荷を与えるコマンドを実行しています。
LTE モジュールはデータ送受信をおこなっています。

Full

LTE の通信コマンドを実行している状態です。
CPU に負荷を与えるコマンドを実行しています。
LTE モジュールはデータ送受信をおこなっています。
USB/SD/eMMC へのアクセスを行っています。
LAN はサーバーからファイルをダウンロードしています。


表5.6 動作モードに応じたデバイスの稼働状況

モード名 CPU LTE eMMC LAN USB1 USB2 microSD RS232C

Shutdowm

OFF

Sleep

待機

OFF

待機

未接続

Sleep-SMS

待機

未接続

Active

動作

OFF

待機

未接続

Active-PPP

動作

待機

未接続

Active-Data

動作

待機

未接続

Stress

動作

待機

未接続

Full

動作


5.2.1. 各動作モードへ遷移する為のコマンド

5.2.1.1. Shutdown モードへ遷移

他の全モードから、以下のように poweroff コマンドで Shutdown モードへ遷移可能です。

RTC トリガーで起床させる手順に関しては[製品マニュアル]を参照ください。

[armadillo ~]# poweroff

5.2.1.2. Sleep モードへ遷移

Active、Active-PPP モードから Sleep モードへは以下のコマンドで遷移できます。

[armadillo ~]# aiot-modem-control poweroff
[armadillo ~]# aiot-sleep

5.2.1.3. Sleep-SMS へ遷移

Active モードから Sleep-SMS モードへは以下のコマンドで遷移できます。

[armadillo ~]# aiot-modem-control poweron
[armadillo ~]# aiot-sleep-sms

Active-PPP モードから Sleep-SMS モードへは以下のコマンドで遷移できます。

[armadillo ~]# aiot-sleep-sms

5.2.1.4. Active モードへ遷移

Sleep モードから起床後 Active モードへは以下のコマンドで遷移できます。

[armadillo ~]# aiot-modem-control poweron

Active-PPP モードから Active モードへは以下のコマンドで遷移できます。

[armadillo ~]# aiot-modem-control poweroff

5.2.1.5. Active-PPP モードへ遷移

Active モードから Active-PPP モードへは以下のコマンドで遷移できます。

[armadillo ~]# aiot-modem-control poweron
[armadillo ~]# aiot-modem-control dial

5.2.1.6. Active-Data モードへ遷移

Active-PPP モードから Active-Data モードへは以下のコマンドで遷移できます。 以降 [ip-address] には導通可能な IP アドレスを設定します。

[armadillo ~]# ping [ip-address]

上記のコマンドを終了することで、Active-PPP モードへ遷移できます。

5.2.1.7. Stress モードへ遷移

Active-PPP モードから Stress モードへは以下のコマンドで遷移できます。

[armadillo ~]# stress -c 1 -i 1 -m 1 & ping [ip-address]

上記のコマンドを終了することで、Active-PPP モードへ遷移できます。

stress コマンドがインストールされていない場合、以下のコマンドでインストールできます。

[armadillo ~]# apt update
[armadillo ~]# apt install stress

5.2.1.8. Full モードへ遷移

Active-PPP モードから Full モードへは以下のコマンドで遷移できます。

シェルスクリプト file_access.sh は 「ファイル書き込み手順」 を lan_traffic.sh は 「LAN 通信手順」 を参照ください。

[armadillo ~]# stress -c 1 -i 1 -m 1 & ping [ip-address] & ./file_access.sh & ./lan_traffic.sh

上記のコマンドを終了することで Active-PPP モードへ遷移します。

5.2.1.9. ファイル書き込み手順

ファイル書き込み手順は以下のとおりです。
本章では、これらの処理をまとめたシェルスクリプトを file_access.sh と定義します。

  1. cp コマンドを使用し、10M バイトのバイナリファイルをメディアに書き込みます。
  2. md5sum コマンドを使用し、書き込んだファイルを読み出します。
  3. rmコマンドを使用し、書き込んだファイルを削除します。
  4. sleepコマンドを使用し、5秒待機します。
  5. 最初に戻ります。

5.2.1.10. LAN 通信手順

ファイル書き込み手順は以下のとおりです。
本章では、これらの処理をまとめたシェルスクリプトを lan_traffic.sh と定義します。

  1. wget コマンドを使用し、10M バイトのバイナリファイルを web サーバからダウンロードします。
  2. md5sum コマンドを使用し、ダウンロードしたファイルを読み出します。
  3. rm コマンドを使用し、ダウンロードしたファイルを削除します。
  4. sleep コマンドを使用し、5秒待機します。
  5. 最初に戻ります。

5.3. 測定方法

「各動作モードへ遷移する為のコマンド」 に示したコマンドで各動作モードへ遷移し、AC アダプタと Armadillo-IoT ゲートウェイ A6 本体との間に接続した電流測定モジュールとデータロガーで各動作モードの消費電力を測定しました。
ブロック図を図5.4「測定箇所を示すブロック図」に示します。

指定モード遷移してから 2 分の間 5ms 間隔で電圧値と電流値を測定し、そこから電力の平均値と最大値を算出しております。

images/aiota6_current_measure_block_diagram.png

図5.4 測定箇所を示すブロック図


5.4. 計測結果

上記条件にて計測した結果を表5.7「動作モードでの消費電力(参考値)」に示します。

表5.7 動作モードでの消費電力(参考値)

モード名 最大定格消費電力(mW) 瞬間最大消費電力(mW)

Shutdowm

0.5

1.9

Sleep

90.6

95.3

Sleep-SMS

178.7

1011.0

Active

557.0

1030.1

Active-PPP

643.9

2611.5

Active-Data

1090.9

2559.8

Stress

1540.2

3311.8

Full

2745.4

4380.3