設計例

では、実際にモデル装置を使用して見積もりを行ってみましょう。

3.1. モデル装置の仕様

今回設計するモデル装置の仕様を表3.1「モデル装置の仕様」に示します。

表3.1 モデル装置の仕様

項目 内容

IoT ゲートウェイ

Armadillo-IoTゲートウェイ A6 U1モデル 開発セットAG6110-U01D0

モバイル通信

LTE-M

SIM

soracom plan-D nano SIM SMS あり

設置地域

北海道 札幌市

観測対象

温度、湿度、気圧

電源

太陽電池

無日照動作日数

10 日

満充電までの日数

3 日

間欠動作パターン

「シャットダウン間欠動作」

1時間おきに観測対象を測定し、1 日に 1 度 LTE 経由でサーバーに測定値をまとめて送信する

「スリープ間欠動作」

10 分おきに観測対象を測定し、1 日に 1 度 LTE 経由でサーバーに測定値をまとめて送信する

センサ

GROVE - 温湿度・気圧センサ (BME280)

型番

SEEED-101020193

メーカー

Seeed+

サブユニット CON3(拡張インターフェース)の I2C ポートに接続

太陽電池コントローラ

SolarAmp mini

型番

SA-MN05-8

メーカー

電菱

電圧レギュレータ

5V1A 電圧レギュレータ

型番

P78E05-1000

メーカー

CUI


間欠動作パターンに関して、動作モードとの混乱を防ぐために「」を付けて、「シャットダウン間欠動作」、「スリープ間欠動作」と表記します。

3.2. ブロック図

今回設計するモデル装置のブロック図は次のとおりです。

images/aiota6_environment_measure_block_diagram.png

図3.1 モデル装置のブロック図


3.3. 間欠動作仕様(動作モード)の決定

まずは、Armadillo-IoT ゲートウェイ A6 をどの動作モードでどの程度の時間動作させるかを決定します。

本章では、動作モードの説明、スリープ・シャットダウンモードから起床する為のトリガーに関する説明の後、実際に動作モードと起床トリガーの決定を行います。

3.3.1. 動作モードの説明

Armadillo-IoT ゲートウェイ A6 の動作モードに関して説明します。
動作モードの詳細は[製品マニュアル]を参照ください。

表3.2 動作モード

動作モード 説明

アクティブモード

Armadillo-IoT ゲートウェイ A6 の電源投入後 Linux カーネルが起動し、まずはアクティブモードに遷移します。
任意のアプリケーションの実行や、外部センサー・デバイスの制御、LTE-M や Ethernet での通信が可能ですが、最も電力を消費するモードです。
アクティブモードの時間をより短くすることで、消費電力を押さえることができます。

シャットダウンモード

CPU と LTE モジュールが停止している状態であり最も消費電力を抑えることのできるモードです。
その反面、CPU を停止させ、Linux カーネルをシャットダウンしている状態であるため、アクティブモードに起床するには Linux カーネルの起動分の時間(10秒程度)がかかります。
シャットダウンモードからアクティブモードに遷移するには、RTC のアラーム割り込みを使用するか、一度電源を切断・再接続を行う必要があります。

スリープモード

CPU(i.MX6ULL) はパワーマネジメントの Suspend-to-RAM 状態になり、Linux カーネルは Pause の状態になります。
シャットダウンモードと比較すると消費電力は高いですが、Linux カーネルの起動は不要であるため 1 秒未満でアクティブモードに遷移が可能です。
ユーザスイッチの投下、RTC アラーム割り込み、GPIO 割り込み、USB デバイスの接続、UART によるデータ受信、によってアクティブモードへの遷移ができます。


3.3.2. 起床トリガーの説明

前章で説明した各動作モードで使用可能な起床要因を表3.3「動作モードと起床要因」に示します。
各トリガーの設定方法などは、[製品マニュアル]を参照ください。

表3.3 動作モードと起床要因

起床要因 シャットダウンモード スリープモード 説明

RTC アラーム

指定時刻に起床します。周期的な動作や定時的な動作が必要な場合に使用ください。

SMS 受信

×

LTE 網からの SMS 受信時に起床します。遠方からの起床させる必要がある場合に使用できます。

SW1 押下

×

本体のスイッチ SW1 を押した時に起床します。このトリガーは設定していなくても必ず動作します。開発時スリープモードから復帰しない時に使用します。

GPIO 割り込み

×

GPIO に何かしらの入力があった時に起床します。外部スイッチのようなもので起床させる場合に使用できます。

USB デバイス接続

×

USB デバイスの抜き差しで起床します。

UART データ受信

×

UART に何かしらのデータを受信した時に起床します。


3.3.3. 動作モードを決定する

本モデル装置の仕様として、

「シャットダウン間欠動作」

1時間おきに観測対象を測定し、1 日に1 度 LTE 経由でサーバーに測定値をまとめて送信する

「スリープ間欠動作」

10 分おきに観測対象を測定し、1 日に 1 度 LTE 経由でサーバーに測定値をまとめて送信する

とありますので、

「シャットダウン間欠動作」では、待機時間が長いので シャットダウンモードアクティブモード を使用することにします。

「スリープ間欠動作」では、待機時間の間隔が「シャットダウン間欠動作」よりも短いので、 スリープモードアクティブモード を使用することにします。

起床トリガーには、シャットダウン・スリープ双方の間欠動作共に周期的な動作となっておりますので、RTC アラームでの起床のみとします。

表3.4 使用する動作モードと起床トリガー

使用する動作モード 起床トリガー

「シャットダウン間欠動作」

アクティブモード、シャットダウンモード

RTC アラーム

「スリープ間欠動作」

アクティブモード、スリープモード


3.4. 消費電力の見積もり

次に太陽電池と蓄電池の容量を決める為、モデル装置が消費する電力を見積もります。
電力を見積もる方法は以下の 2 とおりです。

  • 装置に使用する各部品のカタログスペックを元に理論値を算出する
  • 装置を実際に用意し動作させ、消費電力を計測する

今回は、 Armadillo-IoT ゲートウェイ A6 に関しては 5章(参考) 各動作モードでの消費電力 にある実測値を基に、それ以外のユニットに関しては、カタログスペックから算出を行います。

また、間欠動作パターン「シャットダウン間欠動作」と「スリープ間欠動作」に関してそれぞれ見積もりを実施します。

[ティップ]消費電力の表記について

本ドキュメントでは、消費電力に関して表3.5「消費電力の表記について」のように表記します。

表3.5 消費電力の表記について

最大定格消費電力

アクティブモード時の平均電力です。
太陽電池や蓄電池の容量を見積もる際や時間当たりの電力を算出する時に使用する値です。

瞬間最大消費電力

アクティブモード時のピーク電力です。
スイッチング電源ユニットを選定する際の選定基準に使用する値です。 ピーク電力が流れた際に動作電圧範囲を超える電圧低下が起きない電源を選定してください。


3.4.1. Armadillo-IoT ゲートウェイ A6 の消費電力を試算する

はじめに Armadillo-IoT ゲートウェイ A6 を間欠動作させた場合の消費電力を見積もります。
5章(参考) 各動作モードでの消費電力 に参考値がありますので、これを基に試算することとします。

Armadillo-IoT ゲートウェイA6 の消費電力算出手順は以下のとおりです。

  1. 各動作モードの稼働時間を決定する
  2. 各動作モードの稼働時間と消費電力から全体の消費電力を試算する

では、実際に試算を進めます。

3.4.2. 「シャットダウン間欠動作」の消費電力

「シャットダウン間欠動作」で使用する動作モードと消費電力とアクティブモードへの復帰時間を表3.6「動作モードと消費電力、復帰時間の関係(「シャットダウン間欠動作」)」に示します。

表3.6 動作モードと消費電力、復帰時間の関係(「シャットダウン間欠動作」)

動作モード CPU LTE通信 最大定格消費電力(mW) アクティブモードへの復帰時間(秒)

シャットダウン

OFF

OFF

1

10

アクティブ

動作

動作

1541

-


3.4.2.1. 動作モードの稼働時間を決める

「シャットダウン間欠動作」の仕様を確認します。

1 時間おきに観測対象を測定し、1 日に 1 度 LTE 経由でサーバーに測定値をまとめて送信する

間欠動作間隔は 1 時間なので、アクティブ時間を決めて 1 時間からアクティブ時間を差し引いた時間を待機時間とします。

アクティブ時間は起動時間を含めるとし、以下の式となります。

アクティブ時間(s) = 起動時間(s) + 測定時間(s)

起動時間を 10 秒、測定時間を 10 秒とします。

アクティブ時間(s) = 10 s + 10 s = 20 s

本モデル装置ではアクティブ時間が 20 秒となる為、待機時間は 3580 秒となります。

待機時間(s) = 間欠動作間隔(s) - アクティブ時間(s)
待機時間(s) = 3600 s - 20 s = 3580 s

また、 1 日に 1 度実施するサーバーへのデータ送信時間を 30 秒と定義します。送信時間は、送信するデータ量やネットワークの通信速度により変化します。

表3.7 動作モードの稼働時間(「シャットダウン間欠動作」)

項目

間欠動作間隔

3600 秒 (1 時間)

アクティブ時間

20 秒 / 回

待機時間(シャットダウンモード)

3580 秒 / 回

サーバーへの送信時間

30 秒 / 日


3.4.2.2. 消費電力を試算する

各動作モードの稼働時間と消費電力から「シャットダウン間欠動作」での消費電力を試算します。

まずは 1 周期の間欠動作消費電力量を計算します。先程計算した時間と Armadillo-IoT ゲートウェイ A6 の消費電力を式にあてはめます。

計算式は以下のとおりで、

間欠動作消費電力量(Wh) = 待機時間(h) x シャットダウン消費電力(W) + アクティブ時間(h) x アクティブ消費電力(W)

実際に計算した結果が以下です。

間欠動作消費電力量(Wh) = (3580 s x 1 mW + 20 s x 1541 mW) / 60 s/min / 60 min/h = 9.6 mWh

サーバへのデータ送信時間は 30 秒とします。送信時間は、送信するデータ量やネットワーク環境により変化します。
データ送信消費電力量は以下の通りです。

データ送信消費電力量(Wh) = (30 s / 60 s/min / 60 min/h) x 1541 mW = 12.8 mWh

1 日の消費電力量は以下の式となります。

1 日の消費電力量(Wh) = 間欠動作消費電力量(W) x 24(h) / 間欠動作間隔(h) + データ送信消費電力量(Wh)

計算した結果が以下です。

1 日の消費電力量(Wh) = 9.6 mWh x 24 h / 1 h + 12.8 mWh = 243.2 mWh

「シャットダウン間欠動作」での消費電力量の試算結果は、以下のとおりです。

1日の消費電力量(Wh) = 243.2 mWh

3.4.3. 「スリープ間欠動作」の消費電力

「スリープ間欠動作」で使用する動作モードと消費電力とアクティブモードへの復帰時間を表3.8「動作モードと消費電力、復帰時間の関係(「スリープ間欠動作」)」に示します。

表3.8 動作モードと消費電力、復帰時間の関係(「スリープ間欠動作」)

動作モード CPU LTE通信 最大定格消費電力(mW) アクティブモードへの復帰時間(秒)

スリープ

待機

待機

91

1

アクティブ

動作

動作

1541

-


3.4.3.1. 動作モードの稼働時間を決める

各動作モードの稼働時間を決めます。
「スリープ間欠動作」の内容を確認します。

10分おきに観測対象を測定し、1 日に 1 度 LTE 経由でサーバーに測定値をまとめて送信する

間欠動作時間は 10 分間隔なので、アクティブ時間を決めて 10 分からアクティブ時間を差し引いた時間を待機時間とします。
起動時間を 10 秒、測定時間は 10 秒とします。

本モデル装置ではアクティブ時間が 20 秒となる為、待機時間は 580 秒となります。

また、 1 日に 1 度実施するサーバーへのデータ送信時間を 30 秒と定義します。送信時間は、送信するデータ量やネットワークの通信速度により変化します。

表3.9 動作モードの稼働時間(「スリープ間欠動作」)

項目

間欠動作間隔

600 秒 (10 分)

アクティブ時間

20 秒 / 回

待機時間(スリープモード)

580 秒 / 回

サーバーへの送信時間

30 秒 / 日


3.4.3.2. 消費電力を試算する

各動作モードの稼働時間と消費電力から「スリープ間欠動作」での消費電力を試算します。

まずは 1 周期の間欠動作消費電力量を計算します。先程計算した時間と Armadillo-IoT ゲートウェイ A6 の消費電力を式にあてはめます。

計算式は以下のとおりで、

間欠動作消費電力量(Wh) = 待機時間(h) x シャットダウン消費電力(W) + アクティブ時間(h) x アクティブ消費電力(W)

計算結果は以下のとおりです。

間欠動作消費電力量(Wh) = (580 s x 91 mW + 20 s x 1541 mW) x / 60 s/min / 60 min/h = 23.2 mWh

サーバーへのデータ送信時間は 30 秒ですので、サーバーのデータ送信による消費電力は以下のとおりです。

データ送信消費電力量(Wh) = (30 s / 60 s/min / 60 min/h) x 1541 mW = 12.8 mWh

1 日の消費電力量は以下の式となります。

1 日の消費電力量(Wh) = 間欠動作消費電力量(W) x 24(h) / 間欠動作間隔(h) + データ送信消費電力量(Wh)

計算結果は以下のとおりです。

1 日の消費電力量 (Wh) = 23.2 mWh x 24 h / (10 min / 60 min/h) + 12.8 mWh = 3353.6 mWh

「スリープ間欠動作」での消費電力量の試算結果は、以下のとおりです。

1日の消費電力量(Wh) = 3353.6 mWh

3.4.4. その他ユニットの消費電力

Armadillo-IoT ゲートウェイ A6 以外にも電力を消費するユニットがあります。
これらのユニットは運用中絶えず電力を消費するため、消費電力の少ないものを選定しましょう。

今回使用したユニットの各消費電力を表3.10「ユニットの消費電力」に示します。

表3.10 ユニットの消費電力

ユニット名 型番 電源電圧(V) 最大定格出力(mA) 最大定格出力(mW)

太陽電池コントローラ

SA-MN05-8

12

1

12.0

5V電圧レギュレータ

P78E05-1000

12

1

12.0

環境センサ

BME280

3.3

0.714

2.4


各消費電力を合算して電力量を算出します。計算式は以下のとおりで、

消費電力量(W) = 太陽電池コントローラ消費電力(W) + 5 V 電圧レギュレータ消費電力(W) + 環境センサ消費電力(W)

計算結果は以下のとおりです。

消費電力量(W) = 12 mW + 12 mW + 2.4 mW = 26.4 mW

消費電力量から、1日の消費電力量を求めます。計算式は以下のとおりで、

1日の消費電力量(Wh) = 消費電力量(W) x 24 時間

計算結果は以下のとおりです。

1日の消費電力量(Wh) = 26.4 mW x 24 h = 633.6 mWh

消費電力量の試算結果は以下になります。

1日の消費電力量(Wh) = 633.6 mWh

3.4.5. 消費電力試算結果まとめ

Armadillo-IoT ゲートウェイ A6の消費電力量にその他ユニットの消費電力量を加算して最終的な電力量を確認します。

1日の消費電力量(Wh) = ゲートウェイ消費電力量(Wh) + その他ユニットの消費電力量(Wh)

試算結果を表3.11「消費電力試算結果」にまとめます。

表3.11 消費電力試算結果

ゲートウェイ消費電力量(mWh) その他ユニットの消費電力量(mWh) 1日の消費電力量(mWh)

「シャットダウン間欠動作」

243.2

633.6

876.8

「スリープ間欠動作」

3353.6

633.6

3987.2


3.5. 蓄電池及び太陽電池の容量見積もり

「発電量と蓄電容量の関係」に説明したことを考慮しながら、蓄電池と太陽電池の容量を見積もります。

3.5.1. 蓄電池の容量見積もり

無日照動作日数から必要とする蓄電池の容量を求めます。

必要とする蓄電池の容量(Wh) = 1 日の消費電力量(Wh) x 無日照動作日数(日)

仕様では無日照動作日数は 10 日ですので、 10 日分の蓄電量が必要となります。

  • 「シャットダウン間欠動作」
必要とする蓄電池の容量(Wh) = 876.8 mWh x 10 日 = 8768 mWh
  • 「スリープ間欠動作時」
必要とする蓄電池の容量(Wh) = 3987.2 mWh x 10 日 = 39872 mWh

蓄電池のスペックシートで容量は (Wh) ではなく (Ah) で記載されていますので変換します。
DC12Vの蓄電池を使いますので、必要とする蓄電池の容量 (Ah) は以下のとおりです。

  • 「シャットダウン間欠動作」
8.768 Wh / 12 V = 0.730 Ah
12 V 1 Ah 以上の蓄電池が必要
  • 「スリープ間欠動作」
39.872 Wh / 12 V = 3.323 Ah
12 V 4 Ah 以上の蓄電池が必要

今回は参考例として、株式会社 電菱の JC シリーズから表3.12「蓄電池の例」に示す蓄電池を選定しました。

表3.12 蓄電池の例

項目

型番

JC5-12

電圧

12 V

定格容量(20時間率)

5 Ah


[警告]

蓄電池の寿命を延ばすためには日々の放電で全放電しないように容量を多めに見積もる必要があります。
具体的には無日照日数を 10 日以上とすることを推奨します。

3.5.2. 太陽電池の容量見積もり

1 日あたりに必要な電力を求めます。
太陽電池が賄うべき電力は以下の 2 つです。

  1. 装置全体の使用電力
  2. 蓄電池への充電

装置全体の使用電力はすでに「消費電力の見積もり」で算出済みですので、ここでは蓄電池への充電について考えます。

蓄電池の容量見積もりで選定した蓄電池の容量は 5 Ah でした。 Ah を Wh に換算する計算式は以下のとおりで、

蓄電池の容量(Wh) = 蓄電池の容量(Ah) x 蓄電池の電圧(V)

計算結果は 60 Wh となります。

蓄電池の容量(Wh) = 5 Ah x 12 V = 60 Wh

1 日当たりの日照時間を 6 時間、満充電までの日数を 3 日とします。
その場合、容量ゼロから 3 日間で満充電にする為には、18 時間必要です。

満充電までの時間(h) = 1 日当たりの日照時間(h) x 満充電までの日数(日)
満充電までの時間(h) = 6 h x 3 日 = 18 h

18 時間で 60Wh の容量を満充電にするために必要な太陽電池の出力電力は、

満充電にするために必要な太陽電池の出力電力(W) = 蓄電池容量(Wh) / 充電時間(h)

以下のとおり 3.3 W となります。

満充電にするために必要な太陽電池の出力電力(W) = 60 Wh / 18 h = 3.3 W

3 日で 60 Wh の容量を満充電にするために必要な 1 日の発電量は、

1 日あたりに必要な発電量(充電分)(Wh) = 蓄電池の容量(Wh) / 充電日数(日)

以下のとおり 20 Wh となります。

1 日あたりに必要な発電量(充電分)(Wh) = 60 Wh / 3 日 = 20 Wh
[ティップ]

ここで満充電までの期間を 3 日としていますが、実際には天気の変動がある為 1 週間程度で満充電になる想定です。

以上より、 1 日に必要な発電量を各動作モード別に算出します。

  • 「シャットダウン間欠動作」
1 日あたりに必要な発電量(消費電力分)(Wh) = 9 Wh
1 日あたりに必要な発電量(充電分+消費電力分)(Wh) = 20 Wh + 9 Wh = 29 Wh
  • 「スリープ間欠動作」
1 日あたりに必要な発電量(消費電力分)(Wh) = 40 Wh
1 日あたりに必要な発電量(充電分+消費電力分)(Wh) = 20 Wh + 40 Wh = 60 Wh

1日の必要な発電量から、太陽電池の出力電力を求めます。

太陽電池に影響するパラメータとしては、以下の 2 つです。

  1. 1 日当たりの年平均日射量
  2. 損失係数

    • 年平均セルの温度上昇による損失
    • パワーコンディショナによる損失
    • 配線、受光面の汚れなどの損失

1 日辺りの年平均日射量は札幌市で 3.81 (kWh/㎡/日) です。

損失係数は以下のとおりとします。

  • 年平均セルの温度上昇による損失 = 約 15 %
  • パワーコンディショナによる損失 = 約 8 %
  • 配線、受光面の汚れなどの損失 = 約 7 %
損失係数 = 年平均セルの温度上昇による損失 x パワーコンディショナによる損失 x 配線、受光面の汚れなどの損失 = 0.27(約27%)
[ティップ]

1 日当たりの年平均日射量は NEDO の MONSOLA11 より、 損失係数は NEDO 太陽光発電導入ガイドブックの参考値を使用しました。 NEDO 日射に関するデータベース

太陽電池の出力電力の計算式は以下のとおりです。

太陽電池の出力電力(W) = 1日あたりに必要な発電量(充電分+消費電力分)(Wh) / (設置面の1日あたりの年平均日射量(kWh/㎡/日)x (1 - 損失係数)

最終的に太陽電池の必要出力電力は、以下の試算結果となります。

  • 「シャットダウン間欠動作」
太陽電池の出力電力(W) = 29 Wh / (3.81 kWh/㎡/日 x (1 - 0.27)) = 10 W
  • 「スリープ間欠動作」
太陽電池の出力電力(W) = 60 Wh / (3.81 kWh/㎡/日 x (1 - 0.27)) = 21 W

3.6. まとめ

本モデル装置の見積もり結果をまとめます。

3.6.1. 「シャットダウン間欠動作」

表3.13 「シャットダウン間欠動作」見積もり結果

項目

動作条件

1 時間に 1 度計測、1 日 1 回 LTE でデータ送信

動作モード

アクティブとシャットダウンを使用

消費電力

876.8 mWh / 日

蓄電池の容量

0.730 Ah 以上

太陽電池の出力電力

10 W 以上


3.6.2. 「スリープ間欠動作」

表3.14 「スリープ間欠動作」見積もり結果

項目

動作条件

10 分に 1 度計測、1 日 1 回 LTE でデータ送信

動作モード

アクティブとスリープを使用

消費電力

3990.4 mWh / 日

蓄電池の容量

3.325 Ah 以上

太陽電池の出力電力

21 W 以上