第18章 Howto

本章では、Armadillo-EVA 1500の Linuxカーネルイメージをカスタマイズをする方法や、オプション品を使用する方法について説明します。

18.1. Linuxカーネルイメージをカスタマイズする

コンフィギュレーションを変更して、Linuxカーネルイメージをカスタマイズする方法を説明します。

手順18.1 Linuxカーネルイメージのカスタマイズ

  1. ソースコードの準備

    Linuxカーネルのソースコードアーカイブを準備し展開します。展開後、linux-3.4-ae1500ディレクトリに移動します。

    [ATDE ~]$ ls
    linux-3.4-ae1500-at.tar.gz
    [ATDE ~]$ tar zxf linux-3.4-ae1500-at.tar.gz
    [ATDE ~]$ ls
    linux-3.4-ae1500-at  linux-3.4-ae1500-at.tar.gz
    [ATDE ~]$ cd linux-3.4-ae1500-at
    [ATDE ~/linux-3.4-ae1500-at]$ 
  2. デフォルトコンフィギュレーションの適用

    Armadillo-EVA 1500 のデフォルトコンフィギュレーションを適用します。

    [ATDE ~/linux-3.4-ae1500-at]$ make ARCH=arm armadilloeva1500_defconfig
  3. コンフィギュレーションの開始

    Linuxカーネルコンフィギュレーションを開始します。

    [ATDE ~/linux-3.4-ae1500-at]$ make ARCH=arm menuconfig
  4. カーネルコンフィギュレーションの変更

    Linuxカーネルコンフィギュレーションメニューが表示されます。カーネルコンフィギュレーションを変更後、"Exit"を選択して「Do you wish to save your new kernel configuration ? <ESC><ESC> to continue.」で"Yes"とし、カーネルコンフィギュレーションを確定します。

      ------------ Linux/arm 3.4.81-ae1500-at1 Kernel Configuration -------------
         Arrow keys navigate the menu.  <Enter> selects submenus --->.
         Highlighted letters are hotkeys.  Pressing <Y> includes, <N> excludes,
         <M> modularizes features.  Press <Esc><Esc> to exit, <?> for Help, </>
         for Search.  Legend: [*] built-in  [ ] excluded  <M> module  < >
        -----------------------------------------------------------------------
             [*] Patch physical to virtual translations at runtime
                 General setup  --->
             [*] Enable loadable module support  --->
             [*] Enable the block layer  --->
                 System Type  --->
                 Bus support  --->
                 Kernel Features  --->
                 Boot options  --->
                 CPU Power Management  --->
                 Floating point emulation  --->
       -------------------------------------------------------------------------
                           <Select>    < Exit >    < Help >
    [ティップ]

    Linux Kernel Configurationメニューで"/"キーを押下すると、カーネルコンフィギュレーションの検索を行うことができます。カーネルコンフィギュレーションのシンボル名(の一部)を入力して"Ok"を選択すると、部分一致するシンボル名を持つカーネルコンフィギュレーションの情報が一覧されます。

  5. ビルド

    コンフィギュレーションの確定後にビルドを行います。

    [ATDE ~/linux-3.4-ae1500-at]$ make ARCH=arm CROSS_COMPILE=arm-linux-gnueabihf-
  6. イメージファイルの生成確認

    ビルドが終了すると、カスタマイズされたイメージファイル(arch/arm/boot/Image)が作成されています。

    [ATDE ~/linux-3.4-ae1500-at]$ ls arch/arm/boot/Image
    arch/arm/boot/Image

18.2. Armadillo-EVA 1500 LCD拡張ボードを使用する

オプション品の Armadillo-EVA 1500 LCD オプションセットに含まれる Armadillo-EVA 1500 LCD拡張ボードを使用する方法について説明します。以降の説明では、Armadillo-EVA 1500 LCD拡張ボードをLCD拡張ボードと表記します。

LCD拡張ボードを使用するためには、コンフィギュレーションを変更したLinuxカーネルイメージファイルを作成する必要があります。

18.2.1. 接続方法

Armadillo-EVA 1500 と周辺装置の接続例を次に示します。

1

Armadillo-EVA 1500

2

Armadillo-EVA 1500 LCD拡張ボード

3

AC アダプタ(12V/5A)[29]

4

USB 2.0 ケーブル(A-B タイプ)[29]

5

作業用PC

18.2.2. ビルド手順

カーネルコンフィギュレーションを変更して、LCD拡張ボードに対応したLinuxカーネルイメージファイルを作成します。

18.2.2.1. LCD拡張ボード対応イメージのビルド

カーネルコンフィギュレーションを変更して、LCD拡張ボードを使用可能にします。「Linuxカーネルイメージをカスタマイズする」を参照して次のコンフィギュレーションを有効化します。

    Device Drivers  --->
        Misc devices  --->
            <*> R-Car PWM driver                                          <CONFIG_RCAR_PWM>
        Input device support  --->
            -*- Generic input layer (needed for keyboard, mouse, ...)        <CONFIG_INPUT>
            <*>   Event interface                                      <CONFIG_INPUT_EVDEV>
                  *** Input Device Drivers ***
            [*]   Touchscreens  --->                             <CONFIG_INPUT_TOUCHSCREEN>
                <*>   Sitronix ST1232 touchscreen controllers   <CONFIG_TOUCHSCREEN_ST1232>
                [ ]     Enable single touch event for ST1232
                                                    <CONFIG_TOUCHSCREEN_ST1232_SINGLETOUCH>
        Graphics support  --->
            <*> Direct Rendering Manager (XFree86 4.1.0 and higher DRI support)  --->
                                                                               <CONFIG_DRM>
            [*] Enable FBDev CRTC select                            <CONFIG_DRM_FBDEV_CRTC>
            (1)   FBDev CRTC number                             <CONFIG_DRM_FBDEV_CRTC_NUM>
            <*> DRM Support for R-Car Display Unit                     <CONFIG_DRM_RCAR_DU>
            [*]   R-Car DU LCD Support                                <CONFIG_DRM_RCAR_LCD>
            (800)   Horizontal screen resolution
            (480)   Vertical screen resolution
            [*] Backlight & LCD device support  --->         <CONFIG_BACKLIGHT_LCD_SUPPORT>
                <*>   Lowlevel Backlight controls           <CONFIG_BACKLIGHT_CLASS_DEVICE>
                <*>     Generic PWM based Backlight Driver           <CONFIG_BACKLIGHT_PWM>

カーネルコンフィギュレーションの確定後、ビルドしてイメージファイルを作成します。

18.2.3. インストール

「eMMCへの書き込み方法」を参照して、「ビルド手順」で作成した Linuxカーネルイメージを、eMMC にインストールします。

18.2.4. 動作確認方法

18.2.4.1. LCDへの画像表示

Armadillo-EVA 1500 に電源を投入すると、次のように LCD に Linuxカーネルの起動ロゴが表示されます。

[注記]

表示されるペンギンの数はCPUの数を現しています。機能選択スイッチのJTAG設定を Coresightデバックポート(SW1.5をOFF、SW1.6をON)に設定した場合は CPU がシングルコアで動作するため、ペンギンが1匹のみ表示されます。

18.2.4.2. バックライトの輝度調整

LCD拡張ボード LCD のバックライトは、ソフトウェアで輝度を調整することができます。LCDのバックライトは、バックライトクラスとして実装されています。バックライトの輝度を変更するには、/sys/class/backlight/pwm-backlightディレクトリ以下の次の表に示すsysfsファイルを使用します。

表18.1 輝度設定に使用するsysfsファイル

ファイル説明
brightness0(最高輝度) 〜 max_brightness(消灯)までの数値を書き込むことで輝度を変更することができます。
max_brightnessbrightnessに書きこむ数値の最大値が読み出せます。

次に、バックライトの輝度を調整する場合のコマンド例を示します。

brightnessに書きこむ数値の最大値を取得する
[armadillo ~]# cat /sys/class/backlight/pwm-backlight/max_brightness
255
最高輝度で点灯させる
[armadillo ~]# echo 0 > /sys/class/backlight/pwm-backlight/brightness
任意の輝度に変更する (ここでは 128 に設定)
[armadillo ~]# echo 128 > /sys/class/backlight/pwm-backlight/brightness

18.2.4.3. タッチスクリーンのイベント確認

タッチイベントは、インプットデバイスファイルから取得することができます。ここでは、evtestコマンドを利用してイベントを確認します。evtestを停止するには、Ctrl+c を入力してください。

[armadillo ~]# evtest /dev/input/event0
Input driver version is 1.0.1
Input device ID: bus 0x18 vendor 0x0 product 0x0 version 0x0
Input device name: "st1232-touchscreen"
Supported events:
  Event type 0 (EV_SYN)
  Event type 1 (EV_KEY)
  Event type 3 (EV_ABS)
    Event code 48 (ABS_MT_TOUCH_MAJOR)
      Value      0
      Min        0
      Max      255
    Event code 53 (ABS_MT_POSITION_X)
      Value      0
      Min        0
      Max      799
    Event code 54 (ABS_MT_POSITION_Y)
      Value      0
      Min        0
      Max      479
Properties:
Testing ... (interrupt to exit)
Event: time 946694115.241012, type 3 (EV_ABS), code 48 (ABS_MT_TOUCH_MAJOR), value 42 1
Event: time 946694115.241016, type 3 (EV_ABS), code 53 (ABS_MT_POSITION_X), value 511 2
Event: time 946694115.241019, type 3 (EV_ABS), code 54 (ABS_MT_POSITION_Y), value 259 3
Event: time 946694115.241022, ++++++++++++++ SYN_MT_REPORT ++++++++++++
Event: time 946694115.241025, -------------- SYN_REPORT ------------
                 :
[armadillo ~]#

1

タッチされている楕円の直径を表すイベントの表示。

2

タッチされているポイントのX座標を表すイベントの表示。

3

タッチされているポイントのY座標を表すイベントの表示。

図18.1 タッチスクリーンのイベント確認


18.3. Armadillo-WLAN(AWL13)を使用する

オプション品の Armadillo-WLAN(AWL13)を使用する方法について記載します。以降の説明では、Armadillo-WLAN(AWL13)を AWL13 と表記します。

AWL13を使用するためには、Armadillo-EVA 1500 に電源を投入する前に機能選択スイッチの SD/WLAN 設定(SW2.5)をOFFに設定する必要があります。

[ティップ]

WLAN インターフェース(CON5)とSD インターフェース(CON4)は排他になっており、どちらか一方しか使用することができません。

18.3.1. 接続方法

Armadillo-EVA 1500 と周辺装置の接続例を次に示します。

1

Armadillo-EVA 1500

2

Armadillo-WLAN(AWL13)

3

AC アダプタ(12V/5A)[30]

4

USB 2.0 ケーブル(A-B タイプ)[30]

5

作業用PC

18.3.2. ビルド手順

AWL13用 Linux デバイスドライバをビルドします。AWL13用Linux デバイスドライバのビルドには、ビルド済みのLinuxカーネルソースコードが必要です。「Linuxカーネルをビルドする」を参照してLinuxカーネルをビルドしてください。

使用するソースコードは、評価セット付属の DVD に収録されています。最新版のソースコードは、Armadillo サイトからダウンロードすることができます。ビルド手順を次に示します。

手順18.2 AWL13 Linux デバイスドライバをビルド

  1. ソースコードの準備

    AWL13デバイスドライバのソースコードアーカイブを準備し展開します。次の例では、Linuxカーネルと同じディレクトリに展開しています。展開後、awl13ディレクトリに移動します。

    [ATDE ~]$ ls
    awl13-[version].tar.gz  linux-3.4-ae1500-at[version]  linux-3.4-ae1500-at[version].tar.gz
    [ATDE ~]$ tar zxf awl13-[version].tar.gz
    [ATDE ~]$ ls
    awl13-[version]  awl13-[version].tar.gz  linux-3.4-ae1500-at[version]  linux-3.4-ae1500-at[version].tar.gz
    [ATDE ~]$ cd awl13-[version]
  2. ビルド

    AWL13デバイスドライバをビルドします。

    [ATDE ~/awl13-[version]]$ AWL13_DEVICE=SDIO make ARCH=arm CROSS_COMPILE=arm-linux-gnueabi- KERNELDIR=../linux-3.4-ae1500-at[version]/
  3. イメージファイルの生成確認

    ビルドが終了すると、AWL13デバイスドライバ(src/awl13_sdio.ko)が作成されています。

    [ATDE ~/awl13-[version]]$ ls src/awl13_sdio.ko
    src/awl13_sdio.ko

18.3.3. AWL13デバイスドライバのインストール

AWL13デバイスドライバをインストールします。次のようにコマンドを実行します。

[armadillo ~]$ ls
awl13_sdio.ko
[armadillo ~]$ insmod awl13_sdio.ko
awl13: RX Transmission mode SDINT HT
mmc2: registerd "awl13" device as awlan0
awl13: Version 3.0.2 Load.

18.3.4. ファームウェアのロード

AWL13ファームウェアをロードします。事前にファームウェアのロードに使用する Wireless Tools をインストールしておきます。

[armadillo ~]# apt-get install wireless-tools

AWL13ファームウェア(SDIO用STAモード対応)をロードします。次のようにコマンドを実行します。

[armadillo ~]$ ls
fwimage[version]_STA_SDIO.bin
[armadillo ~]$ cat fwimage[version]_STA_SDIO.bin > /sys/module/awl13_sdio/awlan0/firmware
[armadillo ~]$ iwpriv awlan0 fwload
[armadillo ~]$ iwpriv awlan0 fwsetup
[armadillo ~]$ cat /sys/module/awl13_sdio/awlan0/firmware_version
[version]

18.3.5. 無線設定

インフラストラクチャモードの無線設定について記載します。より詳細な設定方法については、「Armadillo-WLAN(AWL13) ソフトウェアマニュアル」を参照してください。

[ティップ]

有線LANインターフェースを使用してネットワークに接続している場合、ネットワーク通信時に AWL13 が使用されない場合があります。確実に無線通信を行いたい場合は、図6.2「ifdownコマンドによる有線LANの無効化」を参照して有線LANインターフェースを無効にしてください。

[ティップ]

使用環境によっては、無線LAN通信が不安定になる場合があります。そのような環境下では、外付けアンテナを取り付けることで問題が改善する場合があります。外付けアンテナに関する情報は、「Armadillo-WLAN(AWL13) ハードウェアマニュアル」を参照してください。

18.3.5.1. インフラストラクチャモード設定例

AWL13 をインフラストラクチャモードに設定し、アクセスポイントに接続する設定例を示します。

「AWL13デバイスドライバのインストール」および「ファームウェアのロード」が完了している場合は、Linuxの無線LANインターフェースawlan0を通してAWL13の無線LAN機能が使用できます。

以降の設定は、アクセスポイントの暗号化方式が WPA-PSK、または WPA2-PSKの場合は「インフラストラクチャモード: WPA-PSK/WPA2-PSK」を、WEPの場合は「インフラストラクチャモード: WEP」を参照してください。

18.3.5.1.1. インフラストラクチャモード: WPA-PSK/WPA2-PSK

WPA-PSK/WPA2-PSKに設定されたアクセスポイントに接続する例として、設定パラメーターを表18.2「インフラストラクチャモード: WPA-PSK/WPA2-PSKパラメーター例」に、設定手順を図18.2「インフラストラクチャモード: WPA2-PSK(AES)設定手順」に示します。

表18.2 インフラストラクチャモード: WPA-PSK/WPA2-PSKパラメーター例

項目設定値
ESSIDmyessid
パスフレーズmypassphrase
暗号化方式WPA2-PSK(AES)
IPアドレス192.168.0.1

[armadillo ~]# iwconfig awlan0 essid myessid  1
[armadillo ~]# iwconfig awlan0 mode Managed  2
[armadillo ~]# iwpriv awlan0 set_psk mypassphrase  3
[armadillo ~]# iwpriv awlan0 set_cryptmode WPA2-AES  4
[armadillo ~]# ifconfig awlan0 192.168.0.1 up  5

1

SSID にmyessid を設定します。

2

通信モードをインフラストラクチャモードに設定します。

3

パスフレーズに mypassphrase を設定します。

4

暗号化方式に WPA2-PSK(AES) を設定します。

5

無線LANインターフェースを有効化します。IPアドレスは 192.168.0.1 を設定します。

図18.2 インフラストラクチャモード: WPA2-PSK(AES)設定手順


設定確認手順を図18.3「インフラストラクチャモード: WPA2-PSK(AES)設定確認手順」に示します。 iwconfig コマンドの結果で、Access Point:に BSSID(アクセスポイントの MAC アドレス)が表示されていれば、アクセスポイントへの接続は完了です。

[armadillo ~]# iwconfig awlan0  1
awlan0    IEEE 802.11bgn  ESSID:"myessid"
          Mode:Managed  Frequency:2.412 GHz  Access Point: XX:XX:XX:XX:XX:XX
          Bit Rate=65 Mb/s
          Encryption key:off
          Power Management:off
          Link Signal level=-37 dBm
          Rx invalid nwid:0  Rx invalid crypt:0  Rx invalid frag:0
          Tx excessive retries:0  Invalid misc:0   Missed beacon:0
[armadillo ~]# ifconfig awlan0  2
awlan0    Link encap:Ethernet  HWaddr 00:1d:12:xx:xx:xx
          inet addr:192.168.0.1  Bcast:192.168.0.255  Mask:255.255.255.0
          UP BROADCAST RUNNING MULTICAST  MTU:1500  Metric:1
          RX packets:47 errors:0 dropped:0 overruns:0 frame:0
          TX packets:8 errors:0 dropped:0 overruns:0 carrier:0
          collisions:0 txqueuelen:1000
          RX bytes:6760 (6.6 KiB)  TX bytes:1196 (1.1 KiB)

1

無線LAN固有の状態を表示します。

2

無線LANインターフェースの状態を表示します。

図18.3 インフラストラクチャモード: WPA2-PSK(AES)設定確認手順


18.3.5.1.2. インフラストラクチャモード: WEP

WEPに設定されたアクセスポイントに接続する例として、設定パラメーターを表18.3「インフラストラクチャモード: WEPパラメーター例」に、設定手順を図18.4「インフラストラクチャモード: WEP設定手順」に示します。

表18.3 インフラストラクチャモード: WEPパラメーター例

項目設定値
ESSIDmyessid
WEPキー(WEP-64ビット)1234567890
IPアドレス192.168.0.1

[armadillo ~]# iwconfig awlan0 essid myessid  1
[armadillo ~]# iwconfig awlan0 mode Managed  2
[armadillo ~]# iwconfig awlan0 enc 1234567890  3
[armadillo ~]# ifconfig awlan0 192.168.0.1 up  4

1

SSID にmyessid を設定します。

2

通信モードをインフラストラクチャモードに設定します。

3

WEPキーに 1234567890 を設定します。暗号化方式は、キー長に応じて適切に設定されます。

4

無線LANインターフェースを有効化します。IPアドレスは 192.168.0.1 を設定します。

図18.4 インフラストラクチャモード: WEP設定手順


設定確認手順を図18.5「インフラストラクチャモード: WEP設定確認手順」に示します。 iwconfig コマンドの結果で、Access Point:に BSSID(アクセスポイントの MAC アドレス)が表示されていれば、アクセスポイントへの接続は完了です。

[armadillo ~]# iwconfig awlan0  1
awlan0    IEEE 802.11bgn  ESSID:"myessid"
          Mode:Managed  Frequency:2.412 GHz  Access Point: XX:XX:XX:XX:XX:XX
          Bit Rate=65 Mb/s
          Encryption key:1234-5678-90
          Power Management:off
          Link Signal level=-37 dBm
          Rx invalid nwid:0  Rx invalid crypt:0  Rx invalid frag:0
          Tx excessive retries:0  Invalid misc:0   Missed beacon:0
[armadillo ~]# ifconfig awlan0  2
awlan0    Link encap:Ethernet  HWaddr 00:1d:12:xx:xx:xx
          inet addr:192.168.0.1  Bcast:192.168.0.255  Mask:255.255.255.0
          UP BROADCAST RUNNING MULTICAST  MTU:1500  Metric:1
          RX packets:47 errors:0 dropped:0 overruns:0 frame:0
          TX packets:8 errors:0 dropped:0 overruns:0 carrier:0
          collisions:0 txqueuelen:1000
          RX bytes:6760 (6.6 KiB)  TX bytes:1196 (1.1 KiB)

1

無線LAN固有の状態を表示します。

2

無線LANインターフェースの状態を表示します。

図18.5 インフラストラクチャモード: WEP設定確認手順


18.3.6. 動作確認方法

同じネットワーク内にある通信機器とPING通信を行います。次の例では、通信機器が「192.168.0.10」というIPアドレスを持っていると想定しています。

[armadillo ~]# ping 192.168.0.10
[注記]

eth0またはusb0を使用してネットワークに接続している場合、ネットワーク通信時にawlan0が使用されない場合があります。確実にawlan0を使用させる場合は、awlan0以外のネットワークインターフェースを無効化してください。

[警告]

awlan0を使用した無線通信を行った場合、Linuxカーネルが次のような警告メッセージを出力する場合があります。

sh_mobile_sdhi sh_mobile_sdhi.1: timeout waiting for SD bus idle

これは、SDHIレジスタへのアクセスが正しいシーケンスとならない場合があるためです。警告メッセージが出力された場合でもデータ化けなどの通信不具合は確認されていません。

18.4. USBガジェットを使用する

USBガジェットを使用する方法について説明します。USBデバイス機能を提供するUSBガジェットドライバには様々な種類のものが用意されていますが、ここでは例としてイーサネットガジェットドライバ[31]を有効化した Linuxカーネルイメージファイルを作成し、Armadillo-EVA 1500 を USB デバイスとして使用する方法を紹介します。

USBガジェットをを使用するためには、Armadillo-EVA 1500 に電源を投入する前に機能選択スイッチの USB 2.0 設定(SW2.4)をOFFに設定する必要があります。

[ティップ]

USB 2.0 ファンクションインターフェース(CON9)とUSB 2.0 ホストインターフェース(CON8)は排他になっており、どちらか一方しか使用することができません。

18.4.1. 接続方法

Armadillo-EVA 1500と周辺装置の接続例を次に示します。

1

Armadillo-EVA 1500

2

USB2.0ケーブル(A-Bタイプ)

3

AC アダプタ(12V/5A)[32]

4

USB2.0ケーブル(A-Bタイプ)[32]

5

作業用PC

18.4.2. ビルド手順

カーネルコンフィギュレーションを変更して、イーサネットガジェットに対応したLinuxカーネルイメージファイルを作成します。

18.4.2.1. イーサネットガジェット対応イメージのビルド

カーネルコンフィギュレーションを変更して、イーサネットガジェットを使用可能にします。「Linuxカーネルイメージをカスタマイズする」を参照して次のようにコンフィギュレーションを変更します。

    Device Drivers  --->
    [*] USB support  --->                                              <CONFIG_USB_SUPPORT>
              *** USB Miscellaneous drivers ***
        <*>   USB Gadget Support  --->                                  <CONFIG_USB_GADGET>
            <*>   USB Peripheral Controller (Renesas R8A66597 USB Peripheral Controller)  --->
                (X) Renesas R8A66597 USB Peripheral Controller        <CONFIG_USB_R8A66597>
            [*]       on-chip USBHS type with extended bulk endpoints support
                                                   <CONFIG_USB_R8A66597_TYPE_BULK_PIPES_12>
            <*>   USB Gadget Drivers (Ethernet Gadget (with CDC Ethernet support)
                (X) Ethernet Gadget (with CDC Ethernet support)            <CONFIG_USB_ETH>
                ( ) Serial Gadget (with CDC ACM and CDC OBEX support) <CONFIG_USB_G_SERIAL>
                    :
              *** OTG and related infrastructure ***
        <*>   GPIO based peripheral-only VBUS sensing 'transceiver'  <CONFIG_USB_GPIO_VBUS>

カーネルコンフィギュレーションの確定後、makeコマンドを実行してイメージファイルを作成します。

18.4.3. インストール

「eMMCへの書き込み方法」を参照して、「ビルド手順」で作成した Linuxカーネルイメージを、eMMC にインストールします。

18.4.4. 動作確認方法

ATDE5 と Armadillo-EVA 1500で、イーサネットガジェットを使用したPING通信を行います。

事前に「取り外し可能デバイスの使用」を参照して、ATDE5 に Armadillo-EVA 1500を接続する必要があります。Armadillo-EVA 1500のデバイス名は「Netchip RNDIS/Ethernet Gadget」と表示されます。

接続が完了すると、ATDE5では自動的にネットワークインターフェース"usb0"が有効化されます。有効化が完了し、リンクローカルアドレス[33]が割り当てられると、"ifconfig"コマンドの出力結果は次のように表示されます。

[ATDE ~]$ LANG=C sudo ifconfig
(省略)
usb0      Link encap:Ethernet  HWaddr a2:e4:92:6f:c6:54  1
          inet6 addr: fe80::a0e4:92ff:fe6f:c654/64 Scope:Link
          UP BROADCAST RUNNING MULTICAST  MTU:1500  Metric:1
          RX packets:0 errors:0 dropped:0 overruns:0 frame:0
          TX packets:0 errors:0 dropped:0 overruns:0 carrier:0
          collisions:0 txqueuelen:1000
          RX bytes:0 (0.0 B)  TX bytes:0 (0.0 B)

usb0:avahi Link encap:Ethernet  HWaddr a2:e4:92:6f:c6:54  2
          inet addr:169.254.9.18  Bcast:169.254.255.255  Mask:255.255.0.0
          UP BROADCAST RUNNING MULTICAST  MTU:1500  Metric:1

1

イーサネットガジェットを認識すると"usb0"が表示されます

2

リンクローカルアドレスが割り当てられると"usb0:avahi"が表示されます

Armadillo-EVA 1500では、手動でネットワークインターフェース"usb0"を有効化する必要があります。まずリンクローカルアドレスを割り当てるための avahi-autoipd パッケージをインストールします。

[armadillo ~]# ifup eth0
[armadillo ~]# apt-get update
[armadillo ~]# apt-get install avahi-autoipd

avahi-autoipdを実行し、ネットワークインターフェース"usb0"を有効化します。有効化が完了し、リンクローカルアドレスが割り当てられると、"ifconfig"コマンドの出力結果は次のように表示されます。

[armadillo ~]# avahi-autoipd usb0 &
[armadillo ~]# ifconfig
(省略)
usb0      Link encap:Ethernet  HWaddr b2:d7:79:24:c7:83
          UP BROADCAST RUNNING MULTICAST  MTU:1500  Metric:1
          RX packets:58 errors:0 dropped:27 overruns:0 frame:0
          TX packets:10 errors:0 dropped:0 overruns:0 carrier:0
          collisions:0 txqueuelen:1000
          RX bytes:8443 (8.2 KiB)  TX bytes:588 (588.0 B)

usb0:avahi Link encap:Ethernet  HWaddr b2:d7:79:24:c7:83
          inet addr:169.254.8.225  Bcast:169.254.255.255  Mask:255.255.0.0
          UP BROADCAST RUNNING MULTICAST  MTU:1500  Metric:1

Armadillo-EVA 1500からATDE5に、イーサネットガジェットを使用したPING通信を行う例を次に示します。

[armadillo ~]# ping 169.254.9.18
[注記]

eth0またはawlan0を使用してネットワークに接続している場合、ネットワーク通信時にusb0が使用されない場合があります。確実にusb0を使用させる場合は、usb0以外のネットワークインターフェースを無効化してください。



[29] Armadillo-EVA 1500 評価セットに同梱されているもの

[30] Armadillo-EVA 1500 評価セットに同梱されているもの

[31] イーサネット機能を提供するUSBガジェットドライバ

[32] Armadillo-EVA 1500 評価セットに同梱されているもの

[33] IPv4LLという機構によって割り当てられる特定のアドレス範囲(169.254.0.1~169.254.255.254)のIPアドレス。