本章では、ソースコードから工場出荷イメージと同じイメージを作成する手順について説明します。
使用するソースコードは、開発セット付属のDVDに収録されています。最新版のソースコードは、Armadilloサイトからダウンロードすることができます。新機能の追加や不具合の修正などが行われているため、DVDに収録されているものよりも新しいバージョンがリリースされているかを確認して、最新バージョンのソースコードを利用することを推奨します。
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開発作業では、基本ライブラリ・アプリケーションやシステム設定ファイルの作成・配置を行います。各ファイルは作業ディレクトリ配下で作成・配置作業を行いますが、作業ミスにより誤って作業用 PC 自体の OS を破壊しないために、すべての作業は root ユーザーではなく一般ユーザーで行ってください。
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11.1. Linuxカーネル/ユーザーランドをビルドする
ここでは、ソースコードディストリビューションである「Atmark Dist」と、「Linuxカーネル」のソースコードからイメージファイルを作成する手順を説明します。
手順11.1 Linuxカーネル/ユーザーランドをビルド
ソースコードの準備
ソースコードを準備します。Atmark DistとLinuxカーネルのソースコードアーカイブを準備し展開します。展開後、Atmark DistにLinuxカーネルのソースコードを登録するために、シンボリックリンクを作成します。
コンフィギュレーションの開始
Atmark Distディレクトリに入り、コンフィギュレーションを行います。ここでは、menuconfigを利用します。
ベンダー/プロダクト名の選択
メニュー項目は、上下キーで移動することができます。下部のSelect/Exit/Helpは左右キーで移動することができます。選択するにはEnterキーを押下します。
"Vendor/Product Selection --->"に移動してEnterキーを押下します。
Vendorには "AtmarkTechno" を選択し、AtmarkTechno Productsには "Armadillo-840" を選択します。
デフォルトコンフィギュレーションの適用
前のメニューに戻るには、"Exit"に移動してEnterキーを押下します。
続いて、"Kernel/Library/Defaults Selection --->"に移動してEnterキーを押下します。"Default all settings (lose changes)"に移動して"Y"キーを押下します。押下すると"[*]"のように選択状態となります。
コンフィギュレーションの終了
前のメニューに戻るため、"Exit"に移動してEnterキーを押下します。コンフィギュレーションを抜けるためにもう一度"Exit"に移動してEnterキーを押下します。
コンフィギュレーションの確定
コンフィギュレーションを確定させるために"Yes"に移動してEnterキーを押下します。
ビルド
コンフィギュレーションが完了するので、続いてビルドを行います。
ビルドは"make"コマンドを実行します。
ビルドログが表示されます。
ビルドするPCのスペックにもよりますが、数分から十数分程度かかります。
イメージファイルの生成確認
ビルドが終了すると、atmark-dist/images/ディレクトリ以下にイメージファイルが作成されています。Armadillo-840では圧縮済みのイメージ(拡張子が".gz"のもの)を利用します。
Armadillo-840では、ARMの2つのアーキテクチャに対応しています。
"armhf" (デフォルト) では、浮動小数点演算にVFPコプロセッサを利用します。
"armel"では、浮動小数点演算に専用のソフトウェアライブラリを利用します。
基本的には"armhf"の方が性能が高く、特に"armel"でなければならない場合以外は"armhf"
を利用してください。
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"armel"アーキテクチャを利用する場合は、SGX540ライブラリを利用することができません。そのため、QtなどのSGX540ライブラリを必要とする機能を利用することができなくなります。
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ATDEには、上記2つのアーキテクチャ用のツールチェーン(コンパイラやリンカ、クロスライブラリなど)を用意してあります。
Linuxカーネル及びユーザーランドのアーキテクチャを変更するには、Atmark Distのコンフィギュレーション時に、"Cross-dev"に利用したいアーキテクチャを選択します。次の例では、"armel"を指定している状態となります。"default"となっている場合は、Armadillo-840の場合では"armhf"が選択されます。
ここでは、ブートローダーである「Hermit-At」のソースコードからイメージファイルを作成する手順を説明します。
手順11.2 ブートローダーをビルド
ソースコードの準備
Hermit-Atのソースコードアーカイブを準備し展開します。展開後、hermit-atディレクトリに移動します。
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Armadillo-840 1GB版に対応したブートローダは hermit-at v3.7.0以降です。
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デフォルトコンフィギュレーションの適用
Armadillo-840用にコンフィギュレーションを行います。ここでは例としてフラッシュメモリ起動用イメージを作成します。デフォルトコンフィグには"armadillo840_nor_defconfig"を指定します。SDカード起動用イメージを作成する場合は、"armadillo840_mmcsd_defconfig"を指定してください。
ビルド
ビルドには"make"コマンドを利用します。
イメージファイルの生成確認
ビルドが終了すると、hermit-at/src/target/armadillo8x0/ディレクトリ以下にイメージファイルが作成されています。
Linuxカーネルとユーザーランドのアーキテクチャを変更するのと同様に、ブートローダーもアーキテクチャを変更することができます。ただし、特に動作に影響を与えないため、変更する必要はありません。
ブートローダーのビルド時にアーキテクチャを変更するには、CROSS_COMPILEオプションを利用します。"armel"を指定する場合は、ビルド時に "CROSS_COMPILE=arm-linux-gnueabi-"をつけてビルドしてください。