第6章 フラッシュメモリの書き換え方法

フラッシュメモリの内容を書き換えることで、Armadilloの機能を変更することができます。この章ではフラッシュメモリの書き換え方法を説明します。

[警告]

何らかの原因により「書き換えイメージの転送」に失敗した場合、Armadilloが正常に起動しなくなる場合があります。書き換えの際は次の点に注意してください。

  • Armadilloの電源を切らない

  • Armadilloと開発用PCを接続しているシリアルケーブルとLANケーブルを外さない

6.1. ダウンローダのインストール

作業用PCにダウンローダをインストールします。

ダウンローダの種類には、表6.1「ダウンローダ一覧」のようなものがあります。

表6.1 ダウンローダ一覧

ダウンローダOSタイプ説明
hermit-atLinuxLinux用のCUIアプリケーションです。
shoehorn-atLinuxLinux用のCUIアプリケーションです。
hermit-at-winWindowsWindows用のGUIアプリケーションです。

[ティップ]

ATDE(Atmark Techno Development Environment)を利用する場合、ダウンローダパッケージはすでにインストールされているので、インストールする必要はありません。

6.1.1. 作業用PCがLinuxの場合

付属CDのdownloader/debディレクトリよりパッケージファイルを用意し、インストールします。必ずrootユーザで行ってください。

[PC ~]# dpkg --install hermit-at_[version]_i386.deb
[PC ~]# dpkg --install shoehorn-at_[version]_i386.deb

図6.1 ダウンローダのインストール(Linux)


6.1.2. 作業用PCがWindowsの場合

付属CDのdownloader/win32/hermit-at-win_[version].zipを任意のフォルダに展開します。

6.2. フラッシュメモリの書き込み領域について

フラッシュメモリの書き込み先頭アドレスは、領域(リージョン)名で指定することができます。書き込み領域毎に指定するイメージファイルは、表6.2「リージョン名と対応するイメージファイル 」のようになります。

表6.2 リージョン名と対応するイメージファイル

製品領域名ファイル名
Armadillo-210bootloaderloader-armadillo2x0-[version].bin
kernellinux-a210-[version].bin.gz
userland

romfs-a210-recover-[version].img.gz

romfs-a210-base-[version].img.gz

Armadillo-220/230/240bootloaderloader-armadillo2x0-eth-[version].bin
kernellinux-a2x0-[version].bin.gz
userland

romfs-a2x0-recover-[version].img.gz

romfs-a2x0-base-[version].img.gz

Armadillo-9bootloaderloader-armadillo9-[version].bin
kernellinux-[version].bin.gz
userlandromfs-[version].img.gz
Armadillo-300iplipl-a300.bin(※書き換え不可)
bootloaderloader-armadillo-3x0-[version].bin
kernellinux-a300-[version].bin.gz
userlandromfs-a300-[version].img.gz
Armadillo-500bootloaderloader-armadillo5x0-[version].bin
kernellinux-a500-[version].bin.gz
userlandromfs-a500-[version].img.gz
Armadillo-500 FXbootloaderloader-armadillo5x0-fx-[version].bin
kernellinux-a500-fx-[version].bin.gz
userlandromfs-a500-fx-[version].img.gz

[ティップ]

一部製品のユーザーランドには、RecoverとBaseという2種類のイメージファイルが用意されています。Recoverイメージは、出荷状態でオンボードフラッシュメモリに書き込まれていて、各製品の特徴や性能を利用するアプリケーションが含まれています。Baseイメージは、開発のベースとなるように、基本的なアプリケーションやツールのみが含まれています。

6.3. Hermit-Atダウンローダを使用してフラッシュメモリを書き換える

ここでは、Hermit-Atダウンローダを使用してフラッシュメモリを書き換える手順について説明します。「ダウンローダのインストール」でインストールしたHermit-Atダウンローダを使用します。これは、Armadilloのブートローダーと協調動作を行い、作業用PCからArmadilloのフラッシュメモリを書き換えることができます。

6.3.1. 準備

「ジャンパピンの設定」を参照し、Hermit-Atを起動してください。

Armadilloと接続している作業用PCのシリアルインターフェースが他のアプリケーションで使用されていないことを確認します。使用されている場合は、該当アプリケーションを終了するなどしてシリアルインターフェースを開放してください。

6.3.2. 作業用PCがLinuxの場合

図6.2「ダウンロードコマンド」のようにコマンドを実行します。

downloadはhermitのサブコマンドの一つです。--input-fileで指定されたファイルをターゲットボードに書き込む時に使用します。--regionは書き込み対象の領域を指定するオプションです。下記の例では、「kernel領域にlinux.bin.gzを書き込む」という命令になります。

[PC ~]$ hermit download --input-file linux.bin.gz --region kernel

図6.2 ダウンロードコマンド


シリアルインターフェースがttyS0以外の場合は、図6.3「ダウンロードコマンド(ポート指定) 」のように--portオプションを使用してポートを指定してください。

[PC ~]$ hermit download --input-file linux.bin.gz --region kernel --port ttyS1

図6.3 ダウンロードコマンド(ポート指定) [5]


bootloaderリージョンは、誤って書き換えることがないように簡易プロテクトされています。書き換える場合は、図6.4「ダウンロードコマンド(アンプロテクト)[5]」のように--force-lockedオプションを使用して、プロテクトの解除をしてください。

[PC ~]$ hermit download --input-file loader.bin --region bootloader --force-locked

図6.4 ダウンロードコマンド(アンプロテクト)[5]


[警告]

bootloaderリージョンに誤ったイメージを書き込んでしまった場合、オンボードフラッシュメモリからの起動ができなくなります。この場合は「ブートローダーを出荷状態に戻す」を参照してブートローダーを復旧してください。

6.3.3. 作業用PCがWindowsの場合

hermit-at-win.exeを実行します。図6.5「Hermit-At:Downloadウィンドウ」が表示されます。

Hermit-At:Downloadウィンドウ

図6.5 Hermit-At:Downloadウィンドウ


Armadilloと接続されているシリアルインターフェースを「Serial Port」に指定してください。ドロップダウンリストに表示されない場合は、直接ポートを入力してください。

Imageには書き込むファイルを指定してください。Regionには書き込み対象のリージョンを指定してください。allやbootloaderリージョンを指定する場合は、Force Lockedをチェックしてください。

すべて設定してから実行ボタンをクリックします。図6.6「Hermit-At:downloadダイアログ」が表示されます。

Hermit-At:downloadダイアログ

図6.6 Hermit-At:downloadダイアログ


ダウンロードの設定と進捗状況が表示されます。ダウンロードが完了するとダイアログはクローズされます。

6.4. netflashを使用してフラッシュメモリを書き換える

Linuxアプリケーションのnetflashを使用してフラッシュメモリを書き換えることができます。netflashは、所属するネットワークにあるHTTPサーバーやFTPサーバーが公開しているファイルをダウンロードしてフラッシュメモリを書き換えることができます。

Armadilloにログインし、図6.7「netflashコマンド例」のようにコマンドを実行します。

[armadillo ~]# netflash -k -n -u -r /dev/flash/kernel [URL]

図6.7 netflashコマンド例


オプションの"-r [デバイスファイル名]"で書き込み対象のリージョンを指定しています。表6.3「リージョンとデバイスファイルの対応」を参照してください。その他のオプションについては、netflash -hで詳細を確認する事ができます。

表6.3 リージョンとデバイスファイルの対応

リージョンデバイスファイル
カーネル/dev/flash/kernel
ユーザランド/dev/flash/userland

6.5. ブートローダーを出荷状態に戻す

loader-armadillo-2x0-nottyが書き込まれているArmadilloのブートローダーを書き換えるときや、不正なブートローダーを書き込んでしまいArmadilloがブートできなくなってしまった場合の対処方法について説明します。Armadillo-200シリーズのCPUにはオンチップブートROMが搭載されており、このROMに格納されているソフトウェアを使用して、ブートローダーを出荷状態に戻すことができます。以下にその手順を説明します。

6.5.1. ブートローダーの種類

Armadilloには複数のブートローダーが用意されています。ブートローダーの一覧は、「ブートローダーイメージのビルド」を参照してください。

6.5.2. 準備

Armadilloの電源が切断されていることを確認し、ArmadilloのジャンパJP1をショートに設定してください。

Armadilloと接続している作業用PCのシリアルインターフェースが他のアプリケーションで使用されていないことを確認します。使用されている場合は、該当アプリケーションを終了するなどしてシリアルインターフェースを開放してください。

6.5.3. 作業用PCがLinuxの場合

図6.8「shoehornコマンド例」のようにコマンド[6]を実行してから、Armadilloの電源を入れてください。

[PC ~]$ shoehorn --boot --terminal --initrd /dev/null
            --kernel /usr/lib/hermit/loader-armadillo2x0-boot.bin 
            --loader /usr/lib/shoehorn/shoehorn-armadillo2x0.bin 
            --initfile /usr/lib/shoehorn/shoehorn-armadillo2x0.init
            --postfile /usr/lib/shoehorn/shoehorn-armadillo2x0.post

図6.8 shoehornコマンド例


[ティップ]

上記は、作業用PCのシリアルインターフェース"/dev/ttyS0"にArmadilloを接続した場合の例です。他のシリアルインターフェースに接続した場合は、shoehornコマンドのオプションに

--port [シリアルインターフェース名]

を追加してください。

すぐにメッセージ表示が開始されます。正常に表示されない場合、Armadilloの電源を切断し、シリアルケーブルの接続やArmadilloのジャンパ設定を再度確認してください。

shoehorn コマンドが成功すると、ターゲットの Armadillo 上で Hermit At ブートローダーの UART ブートモード版 (loader-armadillo2x0-boot-[version].bin) が動作している状態になります。以降の手順は、ジャンパの設定変更や電源の切断をせずにおこなう必要があります。

Ctrl-Cを押してshoehornを終了してから、図6.9「ブートローダの書き込みコマンド例」のようにブートローダの書き込みを行ってください[6]

[PC ~]$ hermit erase --region bootloader download --input-file loader-armadillo2x0-[version].bin
        --region bootloader --force-locked

図6.9 ブートローダの書き込みコマンド例


6.5.4. 作業用PCがWindowsの場合

hermit.exeを実行し Shoehorn ボタンをクリックすると、図6.10「Hermit-At Win32:Shoehorn ウィンドウ」が表示されます。

Hermit-At Win32:Shoehorn ウィンドウ

図6.10 Hermit-At Win32:Shoehorn ウィンドウ


Targetにarmadillo2x0を選択して実行ボタンをクリックします。

Hermit-At Win32:shoehorn ダイアログ

図6.11 Hermit-At Win32:shoehorn ダイアログ


ダイアログが表示されます。Armadillo に電源を投入して起動してください。ダウンロードするための準備が完了すると自動的にダイアログはクローズされます。以降の手順は、ジャンパの設定変更や電源の切断をせずにおこなう必要があります。

ダウンロードをおこなう前に、一旦ブートローダリージョンを削除します。Eraseボタンをクリックすると、図6.12「Hermit-At Win32:Erase ウィンドウ」が表示されます。

[警告]

Eraseを実行するためには、Hermit-At Win32 v1.3.0 以降が必要です。Hermit-At Win32 v1.2.0 以前ではこの手順は適用できません。Eraseを実行しない場合でもダウンロードは可能ですが、setenvサブコマンドなどでフラッシュメモリに保存されたパラメータが削除されません。

Hermit-At Win32:Erase ウィンドウ

図6.12 Hermit-At Win32:Erase ウィンドウ


Regionにbootloaderリージョンを選択し、Force Lockedをチェックして実行ボタンをクリックします。ブートローダリージョンの削除中は、図6.13「Hermit-At Win32:Erase ダイアログ」が表示され、削除の設定と進捗状況を確認することができます。

Hermit-At Win32:Erase ダイアログ

図6.13 Hermit-At Win32:Erase ダイアログ


ブートローダリージョンの削除が完了すると、ダイアログはクローズされます。次にダウンロードをおこないます。Downloadボタンをクリックすると、図6.14「Hermit-At Win32:Download ウィンドウ(Erase後)」が表示されます。

Hermit-At Win32:Download ウィンドウ(Erase後)

図6.14 Hermit-At Win32:Download ウィンドウ(Erase後)


Imageにはブートローダイメージファイルを、Regionにはbootloaderを指定し、Force Lockedをチェックして実行ボタンをクリックします。ダウンロード中は、図6.15「Hermit-At Win32:Download ダイアログ(bootloader)」が表示され、ダウンロードの設定と進捗状況を確認することができます。

Hermit-At Win32:Download ダイアログ(bootloader)

図6.15 Hermit-At Win32:Download ダイアログ(bootloader)


ダウンロードが完了すると、ダイアログはクローズされます。



[5] コマンドは1 行で入力します。

[6] 書面の都合上折り返して表記しています。通常は1行のコマンドとなります。