Armadillo-IoT で利用することができるデバイスドライバについて説明します。
各ドライバで利用しているソースコードの内主要なファイルのパスや、コンフィギュレーションに必要な情報、及びデバイスファイルなどについて記載します。
8.3.1. Armadillo-IoT ゲートウェイG3L
Armadillo-IoT ゲートウェイG3Lのハードウェアの構成情報やピンマルチプレクスの情報、i.MX 7Dualの初期化手順などが定義されています。
- 関連するソースコード
arch/arm/mach-imx/ |
arch/arm/mach-imx/armadillo_x1l_extboard/ |
arch/arm/boot/dts/armadillo_iotg_g3l.dts |
arch/arm/boot/dts/armadillo_x1l.dts |
arch/arm/boot/dts/armadillo_x1l_extboard.dtsi |
arch/arm/boot/dts/imx7s.dtsi |
arch/arm/boot/dts/imx7d.dtsi |
Armadillo-IoT では、フラッシュメモリを制御するソフトウェアとして MTD(Memory Technology Device) を利用しています。MTDのキャラクタデバイスまたはブロックデバイスを経由して、ユーザーランドからアクセスすることができます。
Armadillo-IoT のシリアルは、i.MX 7Dual の UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter) を利用しています。
Armadillo-IoT で利用している シリアルインターフェースと、接続先を次に示します。
表8.3 UARTの接続先
シリアルインターフェース | 接続先 |
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UART2 | メインユニット CON4 |
UART3 | サブユニット CON2 |
UART4 | サブユニット WL1837MODモジュール |
UART5 | メインユニット CON5 |
UART7 | サブユニット ELS31-J |
- フォーマット
データビット長: 7 or 8ビット |
ストップビット長: 1 or 2ビット |
パリティ: 偶数 or 奇数 or なし |
フロー制御: CTS/RTS or XON/XOFF or なし |
最大ボーレート: 1.5Mbps(UART3/5/7), 4.0Mbps(UART2/4) |
- 関連するソースコード
drivers/tty/ |
drivers/tty/serial/ |
Armadillo-IoT のEthernet(LAN)は、i.MX 7Dual の ENET(Ethernet MAC)を利用しています。
- 機能
通信速度: 100Mbps(100BASE-TX), 10Mbps(10BASE-T) |
通信モード: Full-Duplex(全二重), Half-Duplex(半二重) |
Auto Negotiationサポート |
キャリア検知サポート |
リンク検出サポート |
- 関連するソースコード
drivers/net/ |
drivers/net/phy/ |
drivers/net/ethernet/freescale/ |
Armadillo-IoT には、Telit 製 ELS31-J が搭載されています。
ELS31-J は、「USBホスト」に示すOTG2と、「UART」に示すUART7に接続されています。
- デバイスファイル
/dev/ttyACM0[][] |
/dev/ttymxc6 |
- 関連するソースコード
drivers/net/usb/usbnet.c |
drivers/net/usb/cdc_ether.c |
drivers/usb/class/cdc-acm.c |
Armadillo-IoT には、TEXAS INSTRUMENTS社製WL1837MODが搭載されています。
WL1837MOD のWLAN機能は、「SDホスト」に示すuSDHC2に接続されています。
- 機能
IEEE 802.11a/b/g/n 準拠 |
最大リンク速度: 150Mbps |
動作モード: インフラストラクチャモード(STA/AP) |
チャンネル(2.4GHz): 1-14 |
チャンネル(5GHz): 36-48, 52-64, 100-140 |
- 関連するソースコード
drivers/net/wireless/ti/wl18xx/ |
drivers/net/wireless/ti/wlcore/ |
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WL1837MODのファームウェアは、ATDEにインストールされているatmark-firmwareパッケージに含まれています。ファームウェアはLinuxカーネルイメージ内に改変無く配置されます。
atmark-firmwareの著作権およびライセンス情報については、ATDE上で/usr/share/doc/atmark-firmware/copyright を参照してください。
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Armadillo-IoT には、TEXAS INSTRUMENTS社製WL1837MODが搭載されています。
WL1837MOD のBT機能は、「UART」に示すUART4に接続されており、LE(Low Energy)、BR/EDR(Basic Rate/Enhanced Data Rate)が利用できます。
- 関連するソースコード
drivers/misc/ti-st/ |
drivers/bluetooth/hci_ldisc.c |
drivers/bluetooth/hci_ll.c |
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WL1837MODのファームウェアは、ATDEにインストールされているatmark-firmwareパッケージに含まれています。ファームウェアはLinuxカーネルイメージ内に改変無く配置されます。
atmark-firmwareの著作権およびライセンス情報については、ATDE上で/usr/share/doc/atmark-firmware/copyright を参照してください。
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Armadillo-IoT のSDホストは、i.MX 7Dual の uSDHC(Ultra Secured Digital Host Controller)を利用しています。
Armadillo-IoT で利用している SDホストと、接続先を次に示します。
表8.4 SDホストの接続先
SDホスト | 接続先 |
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uSDHC1 | メインユニットCON12 |
uSDHC2 | サブユニット WL1837MODモジュール |
- 機能(メインユニットCON12)
カードタイプ: microSD/microSDHC/microSDXC/microSDIO |
バス幅: 1bit or 4bit |
スピードモード: Default Speed(24MHz), High Speed(48MHz), UHS-I(196.36MHz) |
カードディテクトサポート |
ライトプロテクトサポート |
- デバイスファイル
メモリカードの場合は、カードを認識した順番で/dev/mmcblkN (Nは'0'または'1')となります。 |
I/Oカードの場合は、ファンクションに応じたデバイスファイルとなります。 |
- 関連するソースコード
drivers/mmc/card/ |
drivers/mmc/core/ |
drivers/mmc/host/ |
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SDIOカードを利用する場合は、arch/arm/boot/dts/armadillo_x1l.dts の"usdhc1"ノードに"use-sdio"プロパティを追加してください。
&usdhc1 {
pinctrl-names = "default", "state_100mhz", "state_200mhz",
"state_power_off";
pinctrl-0 = <&pinctrl_usdhc1>;
pinctrl-1 = <&pinctrl_usdhc1_100mhz>;
pinctrl-2 = <&pinctrl_usdhc1_200mhz>;
pinctrl-3 = <&pinctrl_usdhc1_power_off>;
cd-gpios = <&gpio5 0 GPIO_ACTIVE_LOW>;
wp-gpios = <&gpio5 1 GPIO_ACTIVE_HIGH>;
pinctrl-assert-gpios = <&gpio5 4 GPIO_ACTIVE_LOW>, /* SD1_CMD */
<&gpio5 5 GPIO_ACTIVE_LOW>, /* SD1_DATA0 */
<&gpio5 6 GPIO_ACTIVE_LOW>, /* SD1_DATA1 */
<&gpio5 7 GPIO_ACTIVE_LOW>, /* SD1_DATA2 */
<&gpio5 8 GPIO_ACTIVE_LOW>; /* SD1_DATA3 */
tuning-step = <2>;
vmmc-supply = <®_sd1_vmmc>;
enable-sdio-wakeup;
bus-width = <4>;
keep-power-in-suspend;
support-clk-limit;
fsl,no-ddr50-support;
use-sdio;
status = "okay";
};
"use-sdio"プロパティを追加しない場合、Advanced DMAエラーが発生する場合があります。
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Armadillo-IoT のUSBホストは、i.MX 7Dual の USB-PHY(Universal Serial Bus 2.0 Integrated PHY) および USB(Universal Serial Bus Controller) を利用しています。
Armadillo-IoT で利用している USBインターフェースと、接続先を次に示します。
表8.5 USBインターフェースの接続先
USBインターフェース | 接続先 |
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OTG1 | メインユニットCON3 |
OTG2 | サブユニット ELS31-J |
- 機能(メインユニットCON3)
Universal Serial Bus Specification Revision 2.0 準拠 |
Enhanced Host Controller Interface (EHCI)準拠 |
転送レート: USB2.0 High-Speed (480Mbps), Full-Speed (12Mbps), Low-Speed (1.5Mbps) |
- デバイスファイル
メモリデバイスの場合は、デバイスを認識した順番で/dev/sdN (Nは'a'からの連番)となります。 |
I/Oデバイスの場合は、ファンクションに応じたデバイスファイルとなります。 |
- 関連するソースコード
drivers/usb/chipidea/ |
drivers/usb/host/ |
drivers/usb/phy/ |
Armadillo-IoT のリアルタイムクロックは、i.MX 7DualのRTC機能を利用しています。
アラーム割り込みは、sysfs RTCクラスディレクトリ以下のファイルから利用できます。
wakealarm
ファイルにUNIXエポックからの経過秒数、または先頭に+を付けて現在時刻からの経過秒数を書き込むと、アラーム割り込み発生時刻を指定できます。アラーム割り込み発生時刻を変更するにはwakealarm
ファイルに"+0"を書き込み、アラーム割り込みのキャンセル後に再設定する必要があります。アラーム割り込みの利用例を次に示します。
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デバイスファイル(/dev/rtc0 )経由でもアラーム割り込みを利用することができます。より詳細な情報については、Linuxカーネルのソースコードに含まれているドキュメント(Documentation/rtc.txt )やサンプルプログラム(tools/testing/selftests/timers/rtctest.c )を参照してください。
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date コマンドを利用して、UNIXエポックからの経過秒数を日時に変換することができます。
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Armadillo-IoT の温度センサーは、i.MX 7Dualの TEMPMON(Temperature Monitor)を利用しています。
起動直後の設定では、i.MX 7Dualの測定温度が 100℃以上になった場合、Linuxカーネルが/sbin/poweroff
コマンドを実行し、システムを停止します。
システム停止後、温度が低下しても自動的には復旧はせずシステムが停止した状態となります。
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i.MX 7Dual の製品仕様では105℃が上限となっていますが、Linux-6.1では温度センサーの個体差を考慮し、100℃を上限としています。
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- sysfsディレクトリ
/sys/class/thermal/thermal_zone1/ |
Armadillo-IoTに搭載されたBoard Management ICのADコンバーター機能を利用することができます。
Board Management ICのADコンバーター機能は、I2C4(I2Cノード: 3-0012)に接続されています。Armadillo-IoTの電源電圧を測定することができます。
- 機能(Board Management IC)
分解能: 12bit |
測定範囲: 0V 〜 3.3V(Board Management ICの電源電圧) |
- sysfsディレクトリ
デバイスを認識した順番で /sys/bus/iio/devices/iio:deviceN (Nは'0'からの連番)となります。 |
- デバイスファイル
デバイスを認識した順番で /dev/iio:deviceN (Nは'0'からの連番)となります。 |
- 関連するソースコード
drivers/iio/industrialio-buffer.c |
drivers/iio/industrialio-core.c |
drivers/iio/industrialio-event.c |
drivers/iio/industrialio-trigger.c |
drivers/iio/inkern.c |
drivers/iio/adc/bmic_adc.c |
Armadillo-IoT に搭載されているソフトウェア制御可能なLEDには、GPIOが接続されています。Linuxでは、GPIO接続用LEDドライバ(leds-gpio)で制御することができます。
- sysfs LEDクラスディレクトリ
/sys/class/leds/led3 |
/sys/class/leds/led4 |
/sys/class/leds/led5 |
- 関連するソースコード
drivers/leds/led-class.c |
drivers/leds/led-core.c |
drivers/leds/led-triggers.c |
drivers/leds/leds-gpio.c |
drivers/leds/trigger/ledtrig-backlight.c |
drivers/leds/trigger/ledtrig-default-on.c |
drivers/leds/trigger/ledtrig-gpio.c |
drivers/leds/trigger/ledtrig-heartbeat.c |
drivers/leds/trigger/ledtrig-oneshot.c |
drivers/leds/trigger/ledtrig-timer.c |
Armadillo-IoT に搭載されているユーザースイッチには、GPIOが接続されています。GPIOが接続されユーザー空間でイベント(Press/Release)を検出することができます。Linuxでは、GPIO接続用キーボードドライバ(gpio-keys)で制御することができます。
ユーザースイッチには、次に示すキーコードが割り当てられています。
表8.6 キーコード
ユーザースイッチ | キーコード | イベントコード |
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SW2 | /dev/input/event1 | code 356 (KEY_POWER2) |
Armadillo-IoT のI2Cインターフェースは、i.MX 7Dual の I2C(I2C Controller) を利用します。また、GPIOを利用したI2Cバスドライバ(i2c-gpio)を利用することで、I2Cバスを追加することができます。
Armadillo-IoT で利用しているI2Cバスと、接続されるI2Cデバイスを次に示します。
表8.7 I2Cデバイス
I2Cバス | I2Cデバイス |
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アドレス | デバイス名 |
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3(I2C4) | 0x09 | PF3000 パワーマネジメントIC |
0x10〜0x17 | Board Management IC |
0x50 | M24C01-W EEPROM |
Armadillo-IoT の標準状態では、CONFIG_I2C_CHARDEVが有効となっているためユーザードライバでI2Cデバイスを制御することができます。ユーザードライバを利用する場合は、LinuxカーネルでI2Cデバイスに対応するデバイスドライバを無効にする必要があります。
- 関連するソースコード
drivers/i2c/ |
drivers/i2c/algos/i2c-algo-bit.c |
drivers/i2c/busses/i2c-gpio.c |
drivers/i2c/busses/i2c-imx.c |
Armadillo-IoT のSPIインターフェースは、i.MX 7Dual の ECSPI(Enhanced Configurable SPI)を利用します。
- 関連するソースコード
drivers/spi/spi-bitbang.c |
drivers/spi/spi-imx.c |
drivers/spi/spi.c |
drivers/spi/spidev.c |
Armadillo-IoT のウォッチドッグタイマーは、i.MX 7Dual の WDOG(Watchdog Timer) を利用しています。
ウォッチドッグタイマーは、U-Bootによって有効化されます。標準状態でタイムアウト時間は10秒に設定されます。Linuxカーネルは、ウォッチドッグタイマードライバの初期化時にタイムアウト時間を10秒に再設定します。
何らかの要因でウォッチドッグタイマーのキックができなくなりタイムアウトすると、システムリセットが発生します。
- 関連するソースコード
drivers/watchdog/imx2_wdt.c |
drivers/watchdog/watchdog_core.c |
drivers/watchdog/watchdog_dev.c |
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i.MX 7Dual の WDOG は、一度有効化すると無効化することができません。そのため、halt コマンドなどを実行してLinux カーネルを停止した場合は、ウォッチドッグタイマーのキックができなくなるためシステムリセットが発生します。
WDOGドライバーの終了処理では、タイムアウト時間をWDOGの最大値である128秒に設定します。
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Armadillo-IoTのパワーマネジメント機能は、LinuxのSPM(System Power Management)およびDPM(Device Power Management)を利用しています。パワーマネジメント状態を省電力モードに遷移させることにより、Armadillo-IoTの消費電力を抑えることができます。
パワーマネジメント状態を省電力モードに遷移させると、アプリケーションの実行は一時停止し、Linuxカーネルはサスペンド状態となります。起床要因が発生すると、Linuxカーネルのリジューム処理が行われた後、アプリケーションの実行を再開します。
Armadillo-IoTが対応するパワーマネジメント状態と、/sys/power/state
に書き込む文字列の対応を次に示します。
表8.8 対応するパワーマネジメント状態
パワーマネジメント状態 | 文字列 | 説明 |
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Power-On Suspend | standby | Suspend-to-RAMよりも短時間で復帰することができる。 |
Suspend-to-RAM | mem | Power-On Suspendよりも消費電力を抑えることができる。 |
起床要因として利用可能なデバイスは次の通りです。
表8.9 起床要因として利用可能なデバイス
デバイス | 起床要因の有効化 | 起床要因 |
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UART2(メインユニットCON4) |
| データ受信 |
UART5(メインユニットCON5) |
| データ受信 |
Ethernet(メインユニットCON2) |
| Wake-on-LANのマジックパケットを受信 |
USBホスト(メインユニットCON11) |
| USBデバイスの挿抜 |
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Ethernetから起床要因であるWake-on-LANのマジックパケットを、ATDEから送信する例を次に示します。
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