Armadillo-WLANモジュール(AWL13)と温度補償高精度リアルタイムクロック(RTC)を搭載したオプションモジュールです。
チップアンテナと外付けアンテナ接続用の同軸コネクタ、時刻データを保持するための電池ホルダも搭載しています。
Armadillo-640のCON9(拡張インターフェース)に接続して使用することが可能です。
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Armadillo-600シリーズ WLANオプションモジュールの回路図、部品表は「アットマークテクノ ユーザーズサイト」からダウンロード可能です。 |
表18.17 Armadillo-600シリーズ WLANオプションモジュールについて
商品名 | Armadillo-600シリーズ WLANオプションモジュール |
型番 | OP-A600-AWLMOD-00 |
内容 | WLANオプションモジュール、ネジ、スペーサ |
表18.18 WLANオプションモジュールの仕様
無線LANモジュール | 型番 | AWL13-U00Z |
メーカー | アットマークテクノ |
無線LAN規格 | IEEE 802.11b/g/n対応(最大通信速度72.2Mbps/理論値) |
リアルタイムクロック | 型番 | NR3225SA |
メーカー | 日本電波工業 |
バックアップ | 電池ホルダ、外部バッテリ接続コネクタ搭載(対応電池: CR2016、CR2032 WK11等) |
平均月差(参考値) | 約21秒@-20℃、約8秒@25℃、約21秒@70℃ |
電源電圧 | DC 3.3V±6%(メイン電源)、DC 2.0〜3.5V(RTCバックアップ) |
使用温度範囲 | -20~+70℃(結露なきこと) [] |
外形サイズ | 42 x 50 mm |
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Armadillo-WLANモジュール(AWL13)の詳細な仕様については、Armadilloサイトで公開しているArmadillo-WLAN(AWL13)の各種ドキュメントをご参照ください。 |
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RTCの時間精度は周囲温度に大きく影響を受けますので、ご使用の際には十分に特性の確認をお願いします。 |
WLANオプションモジュールのインターフェース仕様について説明します。
表18.19 WLANオプションモジュール インターフェース一覧 []
部品番号 | インターフェース名 | 型番 | メーカー |
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CON1 | Armadillo-600シリーズ接続インターフェース | PPPC072LFBN-RC | Sullins Connector Solutions |
CON2 [] | WLANインターフェース | AXK6F34347YG | Panasonic |
CON4 | RTCバックアップインターフェース | DF13A-2P-1.25H(21) | HIROSE ELECTRIC |
CON5 | B2B-EH(LF)(SN) | J.S.T.Mfg. |
CON6 | BLP2016SM-G | Memory Protection Devices |
18.6.3.1. CON1(Armadillo-600シリーズ接続インターフェース)
CON1はArmadillo-600シリーズの基板と接続するためのインターフェースです。
Armadillo-640のCON9(拡張インターフェース)の11ピンから24ピンに接続して使用します。
表18.20 CON1 信号配列
ピン番号 | ピン名 | I/O | 説明 |
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1 | ONOFF | Out | JP1を経由してRTCの割り込みピンに接続、オープンドレイン出力
[] |
2 | NC | - | 未接続 |
3 | I2C_SCL | In | RTCのI2Cクロックに接続、基板上で2kΩプルアップ(VCC_3.3V)されています。 |
4 | I2C_SDA | In/Out | RTCのI2Cデータピンに接続、基板上で2kΩプルアップ(VCC_3.3V)されています。 |
5 | WLAN_PWREN_B | In | WLANモジュールのパワースイッチのイネーブルピンに接続、基板上で2kΩプルダウンされています。
(High: WLANモジュールへの電源切断、Low: WLANモジュールに電源供給) |
6 | RTC_INT_B | Out | RTCの割り込みピンに接続、オープンドレイン出力、基板上で2kΩプルアップ(VCC_3.3V)されています。 |
7 | NC | - | 未接続 |
8 | USB2_PORT_EN | In | CON1の14ピン(USB2_EN_B)に接続されているバッファのイネーブルピンに接続
(High: USB2_EN_BがHi-Z、Low: USB2_EN_BがLow) |
9 | GND | Power | 電源(GND) |
10 | VCC_3.3V | Power | 電源(VCC_3.3V) |
11 | USB2_DN | In/Out | USBのマイナス側信号、CON3の2ピン(D-)に接続 |
12 | USB2_DP | In/Out | USBのプラス側信号、CON3の3ピン(D+)に接続 |
13 | USB2_VBUS | Power | 電源(VBUS)、CON3の1ピン(VBUS)に接続 |
14 | USB2_EN_B | Out | バッファの出力ピンに接続、CON1の8ピン(USB_PORT_EN)で設定した値が出力されます |
18.6.3.2. CON2(WLANインターフェース)
CON2にはArmadillo-WLANモジュール(AWL13)が接続されています。
Armadillo-WLANモジュール(AWL13)は、USB起動モードに設定されています。
CON1の8ピン(USB2_PORT_EN)からUSBコントローラ(USB OTG2)の接続先を変更して使用します。
Lowレベルを入力するとWLANオプションモジュールのCON2、Highレベルを入力するとArmadillo-640のCON5の上段にUSB OTG2が接続されます。
CON1の5ピン(WLAN_PWREN_B)からArmadillo-WLANモジュール(AWL13)への電源のON/OFF制御をすることが可能です。
Lowレベルを入力すると電源が供給され、Highレベルを入力すると電源が切断されます。
詳細については、「CON5(USBホストインターフェース)」および回路図をご確認ください。
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WLANオプションモジュールのCON2とArmadillo-640 CON5上段は
同じUSBコントローラ(USB_OTG2)に接続されているので、同時に使用できません。
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18.6.3.3. CON4、CON5、CON6(RTCバックアップインターフェース)
CON4、CON5、CON6はRTCのバックアップ電源供給用のインターフェースです。
別途バックアップ用のバッテリを接続することで、電源(VCC_3.3V)が切断された場合でも、時刻データを保持することが可能です。
3つの形状のインターフェースがありますので、お使いのバッテリに合わせてご使用ください。
表18.21 対応バッテリ例
部品番号 | 対応電池 | バックアップ時間(参考値) |
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CON4 | CR2032 WK11 | 6.2年 |
CON5 [] | - | - |
CON6 | CR2016 | 2.5年 |
表18.22 CON4、CON5、CON6 信号配列
ピン番号 | ピン名 | I/O | 説明 |
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1 | RTC_BAT | Power | 電源(RTC_BAT)、リアルタイムクロックの電源ピンに接続 |
2 | GND | Power | 電源(GND) |
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CON4、CON5、CON6は共通の端子に接続されており、同時に使用することはできません。 |
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CON4、CON5、CON6はリチウムコイン電池からの電源供給を想定したインターフェースです。
リチウムコイン電池以外から電源を供給する場合、回路図、部品表にて搭載部品をご確認の上、絶対定格値を超えない範囲でご使用ください。 |
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CON6に搭載している電池ホルダは、大変破損しやすい部品となっております。
電池の取り付け、取り外しの手順について、「電池の取り付け、取り外し」をご確認ください。 |
18.6.3.4. JP1(ONOFFピン接続ジャンパ)
JP1は RTC のアラーム割り込み端子と Armadillo-640 の ONOFF ピン(Armadillo-640 CON9 11ピン)を接続するジャンパです。
JP1をショートすることで、RTC のアラーム割り込みによる i.MX6ULL の電源制御が可能になります。
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JP1は、はんだジャンパになります。
半分に割れたパッドになっておりますので、はんだごてでパッドを熱し、はんだを盛ってショートしてください。 |
Armadillo-600シリーズ WLANオプションモジュールには、次のバージョンのソフトウェアが対応しています。
表18.23 Armadillo-600シリーズ WLANオプションモジュール対応ソフトウェアバージョン
名称 | 対応バージョン | イメージファイル名 |
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ブートローダー | at1 以降 | u-boot-a600-v2018.03-at[version].imx |
Linuxカーネル | at7 以降 | uImage-a600-v4.14-at[version] |
WLAN/RTCオプションモジュール用 Device Tree Blob | at7 以降 | armadillo-640_con9_awl13_rtc-v4.14-at[version].dtb |
Debian GNU/Linuxルートファイルシステム | 20180411 以降 | debian-stretch-armhf-a600-[version].tar.gz |
対応前のソフトウェアをご利用の場合は、イメージファイルの書き換えを行ってください。イメージファイルの書き換え方法については11章イメージファイルの書き換え方法を参照してください。
ここではArmadillo-600シリーズ WLANオプションモジュールの動作確認を行います。
18.6.7.1. AWL13を使用するための準備
AWL13を使用するためには、AWL13の起動後にファームウェアをロードし、その後で通信設定を行う必要があります。
そのため、次のパッケージをArmadillo-640にインストールします。
表18.24 AWL13に使用する際に必要なパッケージ
パッケージ名 | 説明 |
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awl13-usb-firmwares | AWL13にファームウェアやAWL13の認識時にファームウェアを自動的にロードするスクリプトを含んだパッケージ |
wireless-tools | AWL13に無線LANの設定を行うツールを含んだパッケージ |
18.6.7.2. AWL13を使用して無線LANアクセスポイントに接続する
AWL13を使用して無線LANアクセスポイントに接続するには、AWL13に"STA"(ステーション用ファームウェア)がロードされている必要があります。
AWL13に"STA"をロードするには、次のように /etc/awlan/awl13.conf を修正し、Armadilloを再起動します。
AWL13に"STA"がロードされるよう設定を変更する
[armadillo ~]# vi /etc/awlan/awl13.conf
AWL13_MODE=STA
#AWL13_MODE=AP
Armadilloを再起動する
[armadillo ~]# reboot
AWL13に"STA"をロードしたらネットワーク設定を行います。
AWL13のネットワークデバイスは awlan0 となります。設定方法は「ネットワーク」と変わりません。
「固定IPアドレスに設定する」と同じ設定をAWL13で行う場合、 /etc/network/interfaces の末尾に次のように設定を追加します。
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iface に awlan0 を指定します。
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PSK を設定します。
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暗号化方式 WPA2-AES に設定します。
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ESSID を設定します。
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無線をアクティブにします。
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ネットワークの設定が完了後、インターフェースを有効化することで、無線LANアクセスポイントに接続できます。
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AWL13には、通信レートや出力調整の変更、WPS プッシュボタン(PBC)方式による無線設定機能などもあります。 詳しくはArmadillo-WLAN(AWL13) ソフトウェアマニュアルをご参照ください。 Armadillo-WLAN(AWL13) ソフトウェアマニュアルを参照する際には、AWL13のSYSFSインターフェースのパスを読み替えてご利用ください。
Armadillo-WLAN(AWL13) ソフトウェアマニュアルに記載のSYSFSインターフェースのパス
/sys/module/awl13_[mode]/awlan0/
Armadillo-640でAWL13利用時のSYSFSインターフェースのパス
/sys/class/net/awlan0/awl13/firmware
Armadillo-WLAN(AWL13) ソフトウェアマニュアルは、ユーザーズサイト - Armadillo-WLAN 製品マニュアル・ドキュメントからご利用いただけます。 |
18.6.7.3. AWL13を使用して無線LANアクセスポイントを作成する
AWL13を使用して無線LANアクセスポイントを作成するには、AWL13に"AP"(アクセスポイント用ファームウェア)がロードされている必要があります。
AWL13に"AP"をロードするには、次のように /etc/awlan/awl13.conf を修正し、Armadilloを再起動します。
AWL13に"AP"がロードされるよう設定を変更する
[armadillo ~]# vi /etc/awlan/awl13.conf
#AWL13_MODE=STA
AWL13_MODE=AP
Armadilloを再起動する
[armadillo ~]# reboot
AWL13に"AP"をロードしたらネットワーク設定を行います。
AWL13のネットワークデバイスは awlan0 となります。設定方法は「ネットワーク」と変わりません。
無線LANアクセスポイントを表18.25「無線LANアクセスポイント設定例」の内容に設定する例を、以下に示します。
表18.25 無線LANアクセスポイント設定例
項目 | 設定 |
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ESSID | myap |
チャンネル | 1 |
PSK パスフレーズ | mypresharedkey |
暗号化方式 | WPA2-PSK(AES) |
IPアドレス | 192.0.2.30 |
ネットマスク | 255.255.255.0 |
ネットワークアドレス | 192.0.2.0 |
ブロードキャストアドレス | 192.0.2.255 |
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iface に awlan0 を指定します。
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PSK を設定します。
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暗号化方式を設定します。
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ESSID を設定します。
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チャンネルを設定します。
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無線をアクティブにします。
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ネットワークの設定が完了後、インターフェースを有効化することで、無線LANアクセスポイントを作成できます。
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AWL13には、通信レートや出力調整の変更、WPS プッシュボタン(PBC)方式による無線設定機能などもあります。 詳しくはArmadillo-WLAN(AWL13) ソフトウェアマニュアルをご参照ください。 Armadillo-WLAN(AWL13) ソフトウェアマニュアルを参照する際には、AWL13のSYSFSインターフェースのパスを読み替えてご利用ください。
Armadillo-WLAN(AWL13) ソフトウェアマニュアルに記載のSYSFSインターフェースのパス
/sys/module/awl13_[mode]/awlan0/
Armadillo-640でAWL13利用時のSYSFSインターフェースのパス
/sys/class/net/awlan0/awl13/firmware
Armadillo-WLAN(AWL13) ソフトウェアマニュアルは、ユーザーズサイト - Armadillo-WLAN 製品マニュアル・ドキュメントからご利用いただけます。 |
hwclock コマンドでRTCから時刻を取得することができます。
[armadillo ~]# hwclock
2018-11-19 09:51:53.743739+0900
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RTC オプションモジュールに接続した電池残量が少ない状態 (厳密には電源電圧が 1.3V 以上 1.5V 未満の状態) で Armadillo を起動すると、RTC オプションモジュールから時刻を取得できなくなります。 [armadillo ~]# hwclock
[ 44.986529] rtc-nr3225sa 5-0032: Voltage low, data is invalid.
hwclock: ioctl(RTC_RD_TIME) to /dev/rtc to read the time failed: Invalid argument この状態になった場合は、以下のどちらかの方法を実施すると取得可能になります。 -
Armadilloの電源をOFFにして古い電池を取り外し、10 秒以上経過した後に新しい電池を取り付ける。
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RTC に時刻を再設定する。
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「RTC」と同様の手順でRTCに時刻を設定することができます。システムクロックの設定方法については「RTC」をご参照ください。
システムクロックを設定後、ハードウェアクロックを hwclock コマンドを用いて設定します。
[armadillo ~]# hwclock
2000-01-01 00:00:00.000000+0900
[armadillo ~]# hwclock --utc --systohc
[armadillo ~]# hwclock --utc
2018-11-19 15:41:00.213911+0900
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現在のハードウェアクロックを表示します。
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ハードウェアクロックを協定世界時(UTC)で設定します。
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ハードウェアクロックが UTC で正しく設定されていることを確認します。
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18.6.7.6. RTCのアラーム割り込みを使用する
アラーム割り込みは、sysfs RTC クラスディレクトリ以下の wakealarm ファイルから利用できます。
wakealarm ファイルに UNIX エポックからの経過秒数、または先頭に+を付けて現在時刻からの経過秒数を書き込むと、アラーム割り込み発生時刻を指定できます。
3600 秒後、アラーム割り込みを発生させるには、次のようにコマンドを実行します。
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WLAN/RTC オプションモジュールに搭載されている RTC NR3225SAは、毎分 0 秒にしかアラーム割り込みを発生させることができません。 0時 0分 30秒の時に、1秒後にアラームが鳴るように設定しても、実際にアラーム割り込みが発生するのは 0時 1分 0秒となります。 |
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sysfs RTC クラスディレクトリ以下の wakealarm ファイルからアラーム割り込みを発生させるには、Linux カーネル linux-v4.14-at10 以降である必要があります。 |
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linux-v4.14-at10 以前のLinux カーネルでも、ioctl RTC_ALM_SET, ioctl RTC_AIE_ONを使用してアラーム割り込みを発生させることができます。 詳しくは、RTC の man ページを参照してください。 |