SDブートの活用

本章では、microSDカードから直接起動(以降「SDブート」と表記します)する手順を示します。 SDブートを活用すると、SDカードを取り替えることでシステムイメージを変更することができます。 本章に示す手順を実行するためには、容量が2Gbyte以上のmicroSDカードを必要とします。 例としてDebian GNU/Linux 10(コードネームbuster)をSDブートする手順を示しますが、他のOSをSDブートすることも可能です。

[ティップ]

SDブートを行った場合、ブートローダーの設定はeMMCに保存されます。

microSDカードに対する作業は、ATDEで行います。そのため、ATDEにmicroSDカードを接続する必要があります。詳しくは「取り外し可能デバイスの使用」を参照してください。

ATDEにmicroSDカードを接続すると、自動的に/media/ディレクトリにマウントされます。本章に記載されている手順を実行するためには、次のようにmicroSDカードをアンマウントしておく必要があります。

[ATDE ~]$ mount
(省略)
/dev/sdb1 on /media/52E6-5897 type ext2 (rw,nosuid,nodev,relatime,uid=1000,gid=1000,fmask=0022,dmask=0077,codepage=cp437,iocharset=utf8,shortname=mixed,showexec,utf8,flush,errors=remount-ro,uhelper=udisks)
[ATDE ~]$ sudo umount /dev/sdb1

図14.1 自動マウントされたmicroSDカードのアンマウント


本章で使用するブートローダーイメージファイルの最新版ファイルは、Armadilloサイトでダウンロードすることができます。新機能の追加や不具合の修正などが行われているため、最新バージョンを利用することを推奨します。

14.1. ブートディスクの作成

ATDEでブートディスクを作成します。ブートディスクの作成に使用するファイルを次に示します。

表14.1 ブートディスクの作成に使用するファイル

ファイルファイル名

ブートローダーイメージ

u-boot-a600-v2018.03-at[version].imx


表14.2「ブートディスクの構成例」に示します。

表14.2 ブートディスクの構成例

パーティション番号パーティションサイズファイルシステム説明

1

128MByte

FAT32

第2パーティションにルートファイルシステムを構築するため、第1パーティションを作成します。

2

残り全て

ext4

ルートファイルシステムを構築するためにext4ファイルシステムを構築しておきます。


14.1.1. 手順:ブートディスクの作成例

  1. ブートローダーイメージファイルを取得し、ATDE内に配置しておきます。

    [ATDE ~]$ ls
    u-boot-a600-v2018.03-at[version].imx
  1. SDカードに2つのプライマリパーティションを作成します。

    [ATDE ~]$ sudo fdisk /dev/sdb  1
    
    Welcome to fdisk (util-linux 2.25.2).
    Changes will remain in memory only, until you decide to write them.
    Be careful before using the write command.
    
    
    Command (m for help): o  2
    Created a new DOS disklabel with disk identifier 0x2b685734.
    
    Command (m for help): n  3
    Partition type
       p   primary (0 primary, 0 extended, 4 free)
       e   extended (container for logical partitions)
    Select (default p):   4
    
    Using default response p.
    Partition number (1-4, default 1):   5
    First sector (2048-7761919, default 2048):   6
    Last sector, +sectors or +size{K,M,G,T,P} (2048-7761919, default 7761919): +128M  7
    
    Created a new partition 1 of type 'Linux' and of size 128 MiB.
    
    Command (m for help): n  8
    Partition type
       p   primary (1 primary, 0 extended, 3 free)
       e   extended (container for logical partitions)
    Select (default p):   9
    
    Using default response p.
    Partition number (2-4, default 2):   10
    First sector (264192-7761919, default 264192):   11
    Last sector, +sectors or +size{K,M,G,T,P} (264192-7761919, default 7761919):   12
    
    Created a new partition 2 of type 'Linux' and of size 3.6 GiB.
    
    Command (m for help): t  13
    Partition number (1,2, default 2): 1  14
    Hex code (type L to list all codes): b  15
    
    If you have created or modified any DOS 6.x partitions, please see the fdisk documentation for additional information.
    Changed type of partition 'Linux' to 'W95 FAT32'.
    
    Command (m for help): w  16
    The partition table has been altered.
    Calling ioctl() to re-read partition table.
    Syncing disks.
    
    [ATDE ~]$

    1

    SDカードのパーティションテーブル操作を開始します。USBメモリなどを接続している場合は、SDカードのデバイスファイルがsdcやsddなど本実行例と異なる場合があります。

    2

    新しく空のDOSパーティションテーブルを作成します。

    3

    新しくパーティションを追加します。

    4

    パーティション種別にはデフォルト値(p: プライマリ)を指定するので、そのまま改行を入力してください。

    5

    パーティション番号にはデフォルト値(1)を指定するので、そのまま改行を入力してください。

    6

    開始セクタにはデフォルト値(使用可能なセクタの先頭)を使用するので、そのまま改行を入力してください。

    7

    最終シリンダは、128MByte分を指定します。

    8

    新しくパーティションを追加します。

    9

    パーティション種別にはデフォルト値(p: プライマリ)を指定するので、そのまま改行を入力してください。

    10

    パーティション番号にはデフォルト値(2)を指定するので、そのまま改行を入力してください。

    11

    開始セクタにはデフォルト値(第1パーティションの最終セクタの次のセクタ)を使用するので、そのまま改行を入力してください。

    12

    最終セクタにはデフォルト値(末尾セクタ)を使用するので、そのまま改行を入力してください。

    13

    パーティションのシステムタイプを変更します。

    14

    第1パーティションを指定します。

    15

    パーティションのシステムタイプに0xb(Win95 FAT32)を指定します。

    16

    変更をSDカードに書き込みます。

  2. パーティションリストを表示し、2つのパーティションが作成されていることを確認してください。

    [ATDE ~]$ sudo fdisk -l /dev/sdb
    
    Disk /dev/sdb: 3.7 GiB, 3974103040 bytes, 7761920 sectors
    Units: sectors of 1 * 512 = 512 bytes
    Sector size (logical/physical): 512 bytes / 512 bytes
    I/O size (minimum/optimal): 512 bytes / 512 bytes
    Disklabel type: dos
    Disk identifier: 0x2b685734
    
    Device     Boot  Start     End Sectors  Size Id Type
    /dev/sdb1         2048  264191  262144  128M  b W95 FAT32
    /dev/sdb2       264192 7761919 7497728  3.6G 83 Linux
  3. それぞれのパーティションにファイルシステムを構築します。

    [ATDE ~]$ sudo mkfs.vfat -F 32 /dev/sdb1  1
    mkfs.fat 3.0.27 (2014-11-12)
    [ATDE ~]$ sudo mkfs.ext4 /dev/sdb2  2
    mke2fs 1.42.12 (29-Aug-2014)
    Creating filesystem with 937216 4k blocks and 234320 inodes
    Filesystem UUID: AAAAAAAA-BBBB-CCCC-DDDD-EEEEEEEEEEEE
    Superblock backups stored on blocks:
            32768, 98304, 163840, 229376, 294912, 819200, 884736
    
    Allocating group tables: done
    Writing inode tables: done
    Creating journal (16384 blocks): done
    Writing superblocks and filesystem accounting information: done
    
    [ATDE ~]$

    1

    第1パーティションにFAT32ファイルシステムを構築します。

    2

    第2パーティションにext4ファイルシステムを構築します。

  4. ブートローダーイメージファイルをmicroSDカードに書き込みます。

    [ATDE ~]$ ls
    u-boot-a600-v2018.03-at[version].imx
    [ATDE ~]$ sudo dd if=u-boot-a600-v2018.03-at[version].imx of=/dev/sdb bs=1k seek=1 conv=fsync

14.2. ルートファイルシステムの構築

「ブートディスクの作成」で作成したブートディスクにルートファイルシステムを構築します。 Debian GNU/Linuxのルートファイルシステムを構築することができます。ルートファイルシステムの構築に使用するファイルを次に示します。

表14.3 ルートファイルシステムの構築に使用するファイル

Linuxディストリビューションファイル名ファイルの説明

Debian GNU/Linux

debian-buster-armhf-a600-[version].tar.gz

ARM(armhf)アーキテクチャ用Debian GNU/Linux 10(コードネームbuster)のルートファイルシステムアーカイブ


14.2.1. Debian GNU/Linuxのルートファイルシステムを構築する

Debian GNU/Linuxルートファイルシステムアーカイブから、ルートファイルシステムを構築する手順を次に示します。

14.2.1.1. 手順:Debian GNU/Linuxルートファイルシステムアーカイブからルートファイルシステムを構築する

  1. ルートファイルシステムをブートディスクの第2パーティションに構築します。

    [ATDE ~]$ mkdir sd  1
    [ATDE ~]$ sudo mount -t ext4 /dev/sdb2 sd  2
    [ATDE ~]$ sudo tar zxf debian-buster-armhf-a600-[version].tar.gz -C sd  3
    [ATDE ~]$ sudo umount sd  4
    [ATDE ~]$ rmdir sd 5

    1

    SDカードをマウントするためのsd/ディレクトリを作成します。

    2

    第2パーティションをsd/ディレクトリにマウントします。

    3

    ルートファイルシステムアーカイブをsd/ディレクトリに展開します。

    4

    sd/ディレクトリにマウントしたブートディスクの第2パーティションをアンマウントします。

    5

    sd/ディレクトリを削除します。

[警告]

アンマウントが完了する前にSDカードを作業用PCから取り外すと、SDカードのデータが破損する場合があります。

14.3. LinuxカーネルイメージとDTBの配置

「ブートディスクの作成」で作成したブートディスクにLinuxカーネルイメージおよびDTB(Device Tree Blob)を配置します。使用するファイルを次に示します。 以降、DTB(Device Tree Blob)をDTBと表記します。

表14.4 ブートディスクの作成に使用するファイル

ファイルファイル名

Linuxカーネルイメージ

uImage-a600-v4.14-at[version]

DTB

armadillo-610-extboard-eva-grove-v4.14-at[version].dtb


microSDカードにLinuxカーネルイメージおよびDTBを配置する際は、次の条件を満たすようにしてください。 この条件から外れた場合、ブートローダーがLinuxカーネルイメージまたはDTBを検出することができなくなる場合があります。

表14.5 ブートローダーがLinuxカーネルを検出可能な条件

項目条件

ファイルシステム

ext4

圧縮形式

非圧縮

Linuxカーネルイメージファイル名

uImage

DTBファイル名

a610.dtb


LinuxカーネルイメージおよびDTBをブートディスクに配置する手順を次に示します。

14.3.1. 手順:LinuxカーネルイメージおよびDTBの配置

  1. LinuxカーネルイメージおよびDTBを準備しておきます。

    [ATDE ~]$ ls
    uImage-a600-v4.14-at[version]  armadillo-610-extboard-eva-grove-v4.14-at[version].dtb
  2. Linuxカーネルイメージをブートディスクの第2パーティションに配置します。

    [ATDE ~]$ mkdir sd  1
    [ATDE ~]$ sudo mount -t ext4 /dev/sdb2 sd  2
    [ATDE ~]$ sudo cp uImage-a600-v4.14-at[version] sd/boot/uImage  3
    [ATDE ~]$ sudo cp armadillo-610-extboard-eva-grove-v4.14-at[version].dtb sd/boot/a610.dtb  4
    [ATDE ~]$ sudo umount sd  5
    [ATDE ~]$ rmdir sd  6

    1

    SDカードをマウントするためのsd/ディレクトリを作成します。

    2

    第2パーティションをsd/ディレクトリにマウントします。

    3

    Linuxカーネルイメージをsd/ディレクトリにコピーします。

    4

    DTBをsd/ディレクトリにコピーします。

    5

    sd/ディレクトリにマウントしたブートディスクの第2パーティションをアンマウントします。

    6

    sd/ディレクトリを削除します。

    [警告]

    アンマウントが完了する前にSDカードを作業用PCから取り外すと、SDカードのデータが破損する場合があります。

14.4. SDブートの実行

「ブートディスクの作成」で作成したブートディスクから起動する方法を説明します。

  1. Armadilloに電源を投入する前に、ブートディスクをmicroSDスロット(Armadillo-610: CON1)に挿入します。また、Armadillo-610 拡張ボード上のJP1をジャンパでショートします。
  2. 電源を投入します。

    U-Boot 2018.03-at8 (Feb 17 2020 - 19:19:11 +0900)
    
    CPU:   Freescale i.MX6ULL rev1.1 at 396 MHz
    Reset cause: POR
    I2C:   ready
    DRAM:  512 MiB
    MMC:   FSL_SDHC: 0, FSL_SDHC: 1
    Loading Environment from MMC... OK
    In:    serial
    Out:   serial
    Err:   serial
    PMIC: PFUZE3000 DEV_ID=0x30 REV_ID=0x11
    Net:   FEC
    =>
  3. ブートディスク上のLinuxカーネルを起動します。

    => setenv bootcmd run setup_mmcargs\; ext4load mmc 1:2 \${loadaddr} /boot/uImage\; ext4load mmc 1:2 0x83000000 /boot/\${fdt_file}\; bootm \${loadaddr} - 0x83000000\;  1
    => setenv setup_mmcargs setenv bootargs root=/dev/mmcblk1p2 rootwait \${optargs}\; 2
    => saveenv  3
    => boot  4

    1

    ブートディスク上のLinuxカーネルイメージとDTBを使用するように bootcmd を設定します。

    2

    ブートディスク上のルートファイルシステムを使用するように setup_mmcargs を設定します。

    3

    環境変数を保存します。

    4

    起動します。

[ティップ]bootcmdとsetup_mmcargsをデフォルトの設定に戻す方法

bootcmdとsetup_mmcargsをデフォルトの設定に戻すには、次のコマンドを実行します。

=> env default bootcmd setup_mmcargs
=> saveenv