第1章 はじめに

Armadillo シリーズは、ARM コアを搭載した高性能・低消費電力な小型汎用 CPUボードです。標準 OS に Linux を採用しており、豊富なソフトウェア資産と実績のある安定性を提供します。また、全ての製品が標準でネットワークインターフェースを搭載し、Linux のネットワークプロトコルスタックと組み合わせて、容易にネットワーク対応機器の開発を実現します。

Armadillo-400 シリーズは、同クラスの従来製品より性能を向上しつつも、低消費電力を実現したモデルです。Armadillo-400 シリーズには、低価格の Armadillo-420 と拡張ボードによってマルチメディア機能を追加可能な Armadillo-440、PC/104 拡張バス互換モードまたは3.3V 高速拡張バスモードが選択可能な拡張バスを搭載したArmadillo-460 の 3 種類の製品があります。

Armadillo-400 シリーズは、基本機能としてシリアル、Ethernet、USB、ストレージ(microSD/SD)、GPIO など組み込み機器に必要とされる機能を備えています。Armadillo-440 と Armadillo-460 はそれらに加え、LCD、タッチスクリーン、オーディオなどのマルチメディア機能を、拡張ボードによって追加可能です。さらに、Armadillo-400 シリーズでは、オプションモジュールによってリアルタイムクロックや無線 LAN などの機能を追加することができます。

Armadillo-400 シリーズは単体モデルの他に、拡張ボードやオプションモジュールをセットにしたモデルも用意しており、すぐに試作開発用や評価をおこなうことが可能です。各モデルの名称と構成を、表1.1「Armadillo-400 シリーズのモデル」に示します。

表1.1 Armadillo-400 シリーズのモデル

名称構成
Armadillo-420 ベーシックモデルArmadillo-420 + Armadillo-400シリーズ RTCオプションモジュール
Armadillo-420 WLANモデル(AWL12対応)Armadillo-420 + Armadillo-400シリーズ WLANオプションモジュール(AWL12対応)
Armadillo-420 WLANモデル(AWL13対応)Armadillo-420 + Armadillo-400シリーズ WLANオプションモジュール(AWL13対応)
Armadillo-440 液晶モデルArmadillo-440 + Armadillo-400シリーズ LCD拡張ボード
Armadillo-460 ベーシックモデルArmadillo-460

本書には、 Armadillo-400 シリーズのソフトウェアをカスタマイズするために必要な情報が記載されています。

出荷状態のソフトウェアの操作方法およびハードウェア仕様が記載されているマニュアルは、モデルにより異なります。各モデルの名称と対応するマニュアルを、表1.2「各モデルとマニュアルの対応」に示します。

表1.2 各モデルとマニュアルの対応

名称ソフトウェアの操作方法ハードウェア仕様
Armadillo-420 ベーシックモデルArmadillo-420 ベーシックモデル 開発セット スタートアップガイドArmadillo-400 シリーズ ハードウェアマニュアル
Armadillo-420 WLANモデル(AWL12対応)Armadillo-420 WLAN モデル開発セット スタートアップガイドArmadillo-400 シリーズ ハードウェアマニュアル
Armadillo-WLAN ソフトウェアマニュアルArmadillo-WLAN ハードウェアマニュアル
Armadillo-420 WLANモデル(AWL13対応)Armadillo-420 WLAN モデル開発セット(AWL13対応) スタートアップガイドArmadillo-400 シリーズ ハードウェアマニュアル
Armadillo-WLAN(AWL13) ソフトウェアマニュアルArmadillo-WLAN(AWL13) ハードウェアマニュアル
Armadillo-440 液晶モデルArmadillo-440 液晶モデル 開発セット スタートアップガイドArmadillo-400 シリーズ ハードウェアマニュアル
Armadillo-460 ベーシックモデルArmadillo-460 ベーシックモデル 開発セット スタートアップガイドArmadillo-400 シリーズ ハードウェアマニュアル

以降、本書では他の Armadillo シリーズにも共通する記述については、製品名を Armadillo と表記します。

1.1. 本書および関連ファイルのバージョンについて

本書を含めた関連マニュアル、ソースファイルやイメージファイルなどの関連ファイルは最新版を使用することをおすすめいたします。本書を読み進める前に、Armadilloサイト(http://armadillo.atmark-techno.com)から最新版の情報をご確認ください。

1.2. 対象となる読者

本書は、Armadillo を使用して組み込みシステムを開発される方のうち、 Armadillo のソフトウェアをカスタマイズされる方を対象としています。

1.3. 本書の構成

本書は、1章から8章および Appendix から構成されています。

1章から4章で、開発を始めるための準備について取り上げます。

5章から7章で、開発環境を構築し、ブートローダー、カーネル、ユーザーランドのソースコードから一連のイメージファイルを作成する方法と、イメージファイルをターゲットとなる Armadillo に書き込む方法について説明します。

8章では、カーネルとユーザーランドを Armadillo の内蔵 フラッシュメモリ以外の場所に配置する方法について説明します。

9章では、Armadillo 独自の Linux カーネルデバイスドライバーの仕様について記述します。

10章では、Armadillo-460 に搭載されている拡張バスについて説明します。

最後に、Appendix ではブートローダーの機能について説明します。

1.4. 表記について

1.4.1. フォント

本書では以下のような意味でフォントを使いわけています。

表1.3 使用しているフォント

フォント例説明
本文中のフォント本文
[PC ~]$ lsプロンプトとユーザ入力文字列
text編集する文字列や出力される文字列。またはコメント

1.4.2. コマンド入力例

本書に記載されているコマンドの入力例は、表示されているプロンプトによって、それぞれに対応した実行環境を想定して書かれています。「/」の部分はカレントディレクトリによって異なります。各ユーザのホームディレクトリは「~」で表わします。

表1.4 表示プロンプトと実行環境の関係

プロンプトコマンドの実行環境
[PC /]#作業用PC上のrootユーザで実行
[PC /]$作業用PC上の一般ユーザで実行
[armadillo /]#Armadillo上のrootユーザで実行
[armadillo /]$Armadillo上の一般ユーザで実行
hermit>Armadillo上の保守モードで実行

コマンド中で、変更の可能性のあるものや、環境により異なるものに関しては以下のように表記します。適時読み替えて入力してください。

表1.5 コマンド入力例での省略表記

表記説明
[version]ファイルのバージョン番号

1.4.3. アイコン

本書では以下のようにアイコンを使用しています。

[警告]

注意事項を記載します。

[ティップ]

役に立つ情報を記載します。

1.5. 謝辞

Armadilloで使用しているソフトウェアは Free Software / Open Source Softwareで構成されています。Free Software / Open Source Softwareは世界中の多くの開発者の成果によってなりたっています。この場を借りて感謝の意を表します。