製品概要

3.1. 製品の特長

3.1.1. Armadilloとは

「Armadillo(アルマジロ)」は、ARMコアプロセッサ搭載・Linux対応の組み込みプラットフォームのブランドです。 Armadilloブランド製品には以下の特長があります。

  • ARMプロセッサ搭載・省電力設計

    ARMコアプロセッサを搭載しています。1~数ワット程度で動作する省電力設計で、 発熱が少なくファンを必要としません。

  • 小型・手のひらサイズ

    CPUボードは名刺サイズ程度の手のひらサイズが主流です。 名刺の1/3程度の小さなCPUモジュールや無線LANモジュール等、超小型のモジュールもラインアップしています。

  • 標準OSとしてLinuxをプリインストール

    標準OSにLinuxを採用しており、豊富なソフトウェア資産と実績のある安定性を提供します。 ソースコードをオープンソースとして公開しています。

  • 開発環境

    Armadilloの開発環境として、「Atmark Techno Development Environment ATDE)」を無償で提供しています。 ATDEは、VMwareなど仮想マシン向けのデータイメージです。 このイメージには、Linuxデスクトップ環境をベースにGNUクロス開発ツールやその他の必要なツールが事前にインストールされています。 ATDEを使うことで、開発用PCの用意やツールのインストールなどといった開発環境を整える手間を軽減することができます。

3.1.2. Armadillo-610とは

  • 50mm×50mmの小型モジュール型組み込みプラットフォーム

    Armadillo-610は、Arm Cortex-A7コアのSoC「i.MX6ULL」(NXPセミコンダクターズ製)を搭載した、小型CPUモジュール型の組み込みプラットフォームです。 ユーザー自身が新たに拡張ボードを開発して機器に組み込むことを想定しており、 設計が煩雑になりがちなCPU周りはArmadillo-610をそのまま使い、開発セット用拡張ボードの回路図(購入者向けに無償で提供)を参考にして 設計開発が比較的簡単なインターフェース部分だけを拡張設計することにより、設計時間を節約しつつさまざまな形状の基板を実現することができます。

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図3.1 Armadillo-610とは


  • Armadillo-640と同等の機能を搭載

    Armadillo-610は、シングルボード型の組み込みプラットフォーム「Armadillo-640」の姉妹製品で、 Armadillo-640と同等のインターフェースを拡張することができます。

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図3.2 拡張ボードの例


  • 耐環境性能に配慮・省電力、産業用途向け

    Armadillo-610は動作温度範囲-20℃~+70℃までをカバーする産業用途向けの仕様です。 また、わずか数W程度で動作するので、低消費電力が必須条件となるバッテリ駆動の機器にも適しています。

  • Debian GNU/Linuxプリインストール

    Armadillo-610はDebian GNU/Linuxをプリインストールしており、 ユーザーが開発したアプリケーションを書き込んで、さまざまな機能を実現します。

  • Device Tree Blob(DTB)作成ツール「at-dtweb」

    使いたいインターフェースをブラウザ上のGUIで選択指定するだけでDevice Tree Blob(DTB)を作成できるツールです。Linuxカーネルのソースコードを手動で変更することなくGUIで選択したインターフェースを利用できます。

3.2. 製品ラインアップ

Armadillo-610の製品ラインアップは次のとおりです。

表3.1 Armadillo-610ラインアップ

名称 型番

Armadillo-610量産ボード

A6100-U00Z

Armadillo-610開発セット

A6100-D00Z


3.2.1. Armadillo-610開発セット

Armadillo-610開発セット(型番: A6100-D00Z)は、Armadillo-610を使った開発がすぐに開始できるように、USBシリアル変換アダプタやACアダプタなど、開発に必要なものを一式にしています。また、拡張ボードの回路図は製品購入者向けに無償で公開しています。

表3.2 Armadillo-610開発セットのセット内容

Armadillo-610

Armadillo-610拡張ボード

USB(Aオス-miniB)ケーブル

USBシリアル変換アダプタ

スピーカー

ACアダプタ(12V/2.0A)

ジャンパソケット

ねじ

スペーサ


3.2.2. Armadillo-610量産ボード

Armadillo-610量産ボード(型番: A6100-U00Z)は、量産向けのラインアップです。

3.3. 仕様

Armadillo-610の主な仕様は次のとおりです。

表3.3 仕様

プロセッサ

NXP Semiconductors i.MX6ULL

ARM Cortex-A7 x 1

・命令/データキャッシュ 32KByte/32KByte

・L2 キャッシュ 128KByte

・内部 SRAM 128KByte

・メディアプロセッシングエンジン(NEON)搭載

・Thumb code(16bit 命令セット)サポート

システムクロック

CPU コアクロック(ARM Cortex-A7): 528MHz

DDR クロック: 396MHz

源発振クロック: 32.768kHz, 24MHz

RAM

DDR3L: 512MByte

バス幅: 16bit

ROM

eMMC: 約3.8GB(約3.6GiB)

SD

microSDスロット x 1 [a]

拡張インターフェース

LANx1、USBx2、UARTx8、SDx1 [a]、LCDx1、I2Sx2、S/PDIFx1、MQSx1、I2Cx2、SPIx4、CANx2、A/Dx7、PWMx8、GPIOx66等 [b]

カレンダー時計

SoC内蔵リアルタイムクロック [c]

LED

黄色(面実装) x 1

電源電圧

DC 3.6〜4.5V

消費電力(参考値)

約0.8W(待機時)、約1W(LAN通信時) [d]

使用温度範囲

-20~+70℃(結露なきこと)

外形サイズ

50×50mm

[a] microSDスロットと拡張インターフェース側のSDは排他利用となります。

[b] i.MX6ULLのピンマルチプクレスの設定で、優先的に機能を割り当てた場合に拡張可能な最大数を記載しています。

[c] 電池は付属していません。

[d] Armadillo-610拡張ボードとの組み合わせでLAN、シリアルコネクタにケーブルを接続した状態での消費電力です。外部接続機器の消費分は含みません。


3.4. ブロック図

Armadillo-610のブロック図は次のとおりです。

images/block.svg

図3.3 Armadillo-610ブロック図


3.5. ソフトウェア構成

Armadillo-610で動作するソフトウェアの構成について説明します。 Armadillo-610で利用可能なソフトウェアを表3.4「Armadillo-610で利用可能なソフトウェア」に示します。

表3.4 Armadillo-610で利用可能なソフトウェア

ソフトウェア説明

U-Boot

ブートローダーです。工場出荷状態ではブートローダーはeMMCに配置されています[a]。microSDカードに配置することもできます。ブートローダーが使う環境変数は常にeMMCに保存されます。

Linux カーネル

uImage形式のLinuxカーネルイメージが利用可能です。 工場出荷状態ではLinuxカーネルイメージはeMMCに配置されています[a]。ブートローダーの機能によりmicroSDカードに配置することもできます。

Debian GNU/Linux

Debian Project によって作成された Linux ディストリビューションです。パッケージ管理システムを備えているため、Debian Project が提供する豊富なソフトウェアパッケージを簡単に追加することができます。工場出荷状態では Debian GNU/Linux のルートファイルシステムは eMMC に配置されていますが[a]、Linux カーネルがサポートしている microSDカードなどのストレージデバイスに配置することもできます。

[a] 工場出荷状態でソフトウェアが配置されているのは、Armadillo-610 開発セット(A6100-D00Z)のみです。


Armadillo-610のeMMCのメモリマップを表3.5「eMMCメモリマップ」に示します。

表3.5 eMMCメモリマップ

ディスクデバイス サイズ 説明

/dev/mmcblk0p1

30.6MByte

予約領域

/dev/mmcblk0p2

3.4GByte

Linuxカーネルイメージ, Device Tree Blob, Debian GNU/Linux

/dev/mmcblk0p3

122.1MByte

予約領域


Armadillo-610のeMMC(GPP)のメモリマップを表3.6「eMMC(GPP)メモリマップ」に示します。

表3.6 eMMC(GPP)メモリマップ

ディスクデバイス サイズ 説明

/dev/mmcblk0gp0

8.389 MByte

ライセンス情報等の保存

/dev/mmcblk0gp1

8.389 MByte

予約領域

/dev/mmcblk0gp2

8.389 MByte

ユーザー領域

/dev/mmcblk0gp3

8.389 MByte

ユーザー領域