この章では、ネットワークの初期設定の説明や設定の変更方法、ネットワークを使用するアプリケーションの使用方法について説明します。
初期状態のArmadilloは、DHCP接続またはZeroconf接続という手法で自動的にIPアドレスが割り振られ、ネットワークに接続できるように設定されています。PC側のネットワーク接続についても、Armadilloが自動的に接続したネットワークに適切に接続されるよう設定する必要があります。
Armadilloがネットワークに自動接続する際、最初にDHCP接続を試します。ネットワーク内にDHCPサーバーがある場合、ArmadilloはDHCPサーバーからの応答に従ってIPアドレスが割り振られます。
PCは、同じようにDHCP接続することにより、必ずArmadilloと同じネットワークに接続されることになります。
ArmadilloがDHCPサーバーを見つけられなかった場合、Zeroconf(IPv4LL)という機構を使ってIPアドレスを割り当てます。
こうして設定されたArmadilloと接続するために、PCも同じネットワークに接続しなければなりません。PC側でもZeroconf使うことができれば、当然問題なく接続できます。
※Zeroconfは、Windowsでは自動プライベートIPアドレシング(APIPA)とも呼ばれており、Zeroconfでは、特定のアドレス範囲(169.254.0.1~169.254.255.254)内のアドレスを使用し、サブネットマスクを255.255.0.0に設定します。なお、この範囲のIPアドレスはIANA(Internet Assigned Numbers Authority)によって予約されています。
もう1つの方法は、Zeroconf接続と同じネットワークになるような設定を、固定IPアドレス設定で行うという方法があります。169.254.0.1~169.254.255.254の任意のIPアドレスとサブネットマスク255.255.0.0の組み合わせをPCのネットワーク設定に使用することで、Zeroconfと同じネットワークに接続することができます。
こうして設定した任意のIPアドレスが、たまたまArmadilloが設定したIPアドレスと重なることがありますが、これについては問題になりません。ArmadilloのZeroconfは、自身と同一のIPを持つ個体からの発信を見つけると、すぐに自らIPアドレスを変更しますので、一定時間後にはお互いを認識可能になります。
ここでは、Armadilloのネットワーク設定の変更方法について説明します。
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ネットワーク接続に関する不明な点については、ネットワークの管理者へ相談してください。
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6.2.2. Armadilloにログインしてネットワーク設定を変更する
Armadillo上の「/etc/config
」以下にあるファイルを編集し、コンフィグ領域に保存することにより起動時のネットワーク設定を変更することができます。コンフィグ領域の保存については、12章コンフィグ領域 − 設定ファイルの保存領域を参照してください。
表6.1「固定IPアドレス設定例」に示す内容に設定変更するには、viエディタで/etc/config/interfaces
を、図6.1「固定IPアドレス設定」のように編集します。
表6.1 固定IPアドレス設定例
項目 | 設定 |
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IPアドレス | 192.168.10.10 |
ネットマスク | 255.255.255.0 |
ネットワークアドレス | 192.168.10.0 |
ブロードキャストアドレス | 192.168.10.255 |
デフォルトゲートウェイ | 192.168.10.1 |
DHCPに設定するには、viエディタで/etc/config/interfaces
を、図6.2「DHCP設定」のように編集します。
DNSサーバーを指定する場合は、viエディタで/etc/config/resolv.conf
を編集します。
ここでは、変更したIP設定で正常に通信が可能か確認します。
まず、設定を反映させます。設定後、コンフィグ領域を保存し再起動した場合は必要ありません。
同じネットワーク内にある通信機器とPING通信を行ってみます。
Armadilloでは、簡易ファイアーウォールが動作しています。設定されている内容を参照するには、図6.6「iptables」のようにコマンドを実行してください。
ここでは、出荷時のデフォルトユーザーランドに収録されているソフトウェアのうちネットワークに関するアプリケーションの操作方法を説明します。
telnetを使用して、他のPCにリモートログインすることができます。telnet使用するには、図6.7「telnet」のようにコマンドを実行します。
ftpを使用して、他のPCとファイル転送ができます。ftpを使用するには、図6.8「ftp」のようにコマンドを実行してください。
他のPCからネットワーク経由でログインし、安全にリモート操作が可能となります。sshサーバーは、自動起動しないように設定されています。sshサーバーを起動する場合は図6.9「sshdの起動」のようにコマンドを実行します。
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sshdを使用するには公開鍵が必要です。公開鍵を作成していない場合には自動的に鍵生成が行なわれます。この処理には数分程度の時間がかかります。
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ログイン可能なユーザーは表6.4「sshでログイン可能なユーザー」を参照してください。
sshを使用して、安全に他のPCへリモートログインすることができます。sshを使用するには、図6.10「ssh」のようにコマンドを実行します。
Armadilloでは、Webサーバーが動作しています。PCなどのWebブラウザからArmadilloのURL(http://[ArmadilloのIPアドレス])[]にアクセスすると、Webサーバーのトップページが表示されます。
NTP(Network Time Protocol)クライアントを使用して、タイムサーバーから時刻情報を取得することができます。図6.11「ntpclient」のようにコマンドを実行します。
SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)クライアントを使用してメールを送信することができます。図6.12「mail」のようにコマンドを実行します。
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/etc/hostsに現在のホスト名の記述が無い場合はメールを送信することができません。以下のコマンドを実行して現在の設定を確認してください。
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他のPCのWebブラウザから、ネットワークの設定や、ファームウェアの管理を行うことができます。
http://[ArmadilloのIPアドレス]/index.cgiにアクセスすると、Webブラウザに
図6.13「AT Admin: Overview」
のようにat-cgiのトップページが表示されます。
at-cgiのトップページは、AT adminの「Overview」です。AT adminには「Overview」、「System」が用意されています。
これら2つの機能は、必ずページ上方のメニュー内に表示されます。文字列をクリックすることで、各ページを開くことができます。
6.4.7.3. AT Admin: Overview
Overview画面の各部位について説明します。Overviewには大きくわけて3つの情報が表示されます。
Networkでは現在のネットワーク設定の概要が表示されます。表示される項目は以下の3つです。
- IP Address
現在のIPアドレスが表示されます。IPアドレスの後ろに「(auto)」と書かれている場合は、DHCPまたはZeroconfにより自動的にIPアドレスの設定がされていることを示します。「(static)」となっている場合は固定IPアドレスが設定されていることを示します。
- MAC Address
割り振られている固有のMACアドレスが表示されます。
- Host name
設定されているホスト名が表示されます。初期状態はarmadillo440-0です。
Armadilloが起動してからの経過時間が表示されます。時間表示は、日(days)、時(hours)、分(min)、秒(sec)で表されます。
現在動作しているファームウェアについて表示されます。
- Dist
使用しているディストリビューションのバージョンとプロファイル名が表示されます。
- Kernel
Linuxカーネルのバージョンが表示されます。
6.4.7.4. AT Admin: System
6.4.7.4.1. AT Admin: System - System Overview
System OverviewではArmadilloに関する情報の設定および確認を行います。System Overviewには大きく分けて3つの情報が表示されます。
Network Info
System State
Firmware
6.4.7.4.1.1. Network Info
Network Infoにはネットワーク設定の詳細が表示されます。
- IP Address
現在のIPアドレスが表示されます。IP番号の後ろに表示される文字列の意味は以下の通りです。
- MAC Address
Armadillo固有に割り振られているMACアドレスが表示されます。
- Host name
設定されているホスト名が表示されます。初期状態はarmadillo440-0です。
- Traffic
システム起動後にネットワーク送受信されたパケット数が表示されます。
- Zeroconf
Bonjourによる自動的なデバイス検出が有効であるかどうかが表示されます。
また、さらに詳しいネットワーク情報は「show ifconfig」から参照することができます。show ifconfigのページは ifconfigコマンドの出力をそのまま表示します。表示内容の詳細については ifconfigのマニュアルを参照してください。
6.4.7.4.1.2. System State
現在のシステム状況を確認することができます。確認できる情報は以下の3つです。
- Load
システム負荷状態(Load Average)が表示されます。
- Memory
メモリの使用状態が表示されます。
- Uptime
Armadilloシステム起動時点からの経過時間が表示されます。
また、「show meminfo」および「show syslog」から、meminfoの情報とシステムログファイルの情報をそのままの状態で確認することができます。
現在動作しているファームウェアについて表示されます。
- Dist
ディストリビューションと使用プロファイルについての情報です。ユーザーランド(アプリケーション群)ソフトウェアのバージョンと種類について表示されます。
- Kernel
Linuxカーネルのバージョンについて表示されます。
6.4.7.4.2. AT Admin: System - Network
Networkでは、ネットワークに関する各種設定を変更することができます。
Networkでは大きく分けて2つの設定を行うことができます。
- AUTO IP
自動でIPアドレスの取得・設定を行いたい場合に選択します。初期状態ではこちらが選択されています。
ネットワーク内にDHCPサーバーがある場合、DHCP接続を行います。DHCPサーバーが見つからなかった場合、Zeroconfによって自動でIPが割り振られます。詳細については
6章ネットワーク
を参照してください。
- STATIC IP
固定でIPアドレスを設定する場合に選択します。
以下の項目について、手動で入力設定する必要があります。
- Address
設定するIPアドレスを入力します。
- Netmask
設定するサブネットマスクを入力します。
- Gateway
設定するゲートウェイサーバーのIPアドレスを入力します。ゲートウェイを使用しない場合は、空欄にしてください。
- DNS Server
設定するDNS(ドメインネームシステム)サーバーのIPアドレスを入力します。DNSを使用しない場合は、空欄にしてください。
ホスト名の変更確認を行います。変更する場合はテキストボックス内に新しいホスト名を入力してください。初期状態では「armadillo440-0」となっています。Bonjourでは、この設定とデフォルトのネットワーク名である「.local」の組み合わせを使用するため、初期状態では「armadillo440-0.local」がArmadilloの名称となります。この名称は、Webブラウザのアドレスで確認することができます。詳細については
「Bonjour上のホスト名について」
を参照してください。
設定を入力後「Update」ボタンを押すと、以下のような画面が表示された後、Armadilloは新しいネットワーク設定で動作を開始します。
ネットワーク設定を変更している間は、ArmadilloのLED(赤)が点灯します。数秒~十数秒後に消灯します。消灯を確認してからArmadilloのトップページにアクセスしてください。
6.4.7.4.3. AT Admin: System - Password
Passwordでは、Packet ScanとSystem画面の認証で使用するユーザー名とパスワードの変更を行います。
6.4.7.4.3.1. User and Password Details
- Username
管理ユーザーの名前を入力します。初期状態では「admin」です。
- Current password
現在のパスワードを確認のため入力します。初期状態では「admin」です。
- New password
新しいパスワードを入力します。
- Confirm new password
確認のため、もう一度新しいパスワードを入力します。
6.4.7.4.3.2. ユーザー名・パスワード設定の適用
設定を入力後「Update」ボタンを押すと、変更内容が適用されます。
6.4.7.4.4. AT Admin: System - Firmware
Firmwareでは、ユーザーランド(アプリケーション群)およびLinuxカーネルのファームウェア更新を行うことができます。
公式WEBサイトで公開されているイメージファイルに更新する場合
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、まず「Get firmware options」ボタンを押してください。その下の「Applications(Userland)」「Kernel」の各ボックスに、存在するイメージファイルが表示されます。
6.4.7.4.4.1. Applications(Userland)
ユーザーランド(アプリケーション群)更新を行う項目です。
- イメージ選択ボックス
サーバーに存在するユーザーランドイメージが登録されています。更新したいイメージを選択します。
- URL入力ボックス
ダウンロードするユーザーランドイメージファイルのURLが表示されます。ボックス右側の「Edit」にチェックを入れると、このボックスに任意のURLを直接入力することが可能になります。
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「Edit」にチェックを入れた場合、URL入力ボックスへの直接入力が優先され、イメージ選択ボックスによる選択は無視されます。 |
「Update userland」ボタンを押すと、ユーザーランドイメージのダウンロードが始まり、その後フラッシュメモリの更新が開始されます。また、現在と異なるモデルのユーザーランドイメージに更新する場合は、「Update userland」ボタンを押す前に、「Allow all image types」にチェックを入れてください。
Linuxカーネル更新を行う項目です。
- イメージ選択ボックス
サーバーに存在するカーネルイメージが登録されています。更新したいイメージを選択します。
- URL入力ボックス
ダウンロードするLinuxカーネルイメージファイルのURLが表示されます。ボックス右側の「Edit」にチェックを入れると、このボックスにURLを直接入力することが可能になります。
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「Edit」にチェックを入れた場合、URL入力ボックスへの直接入力が優先され、イメージ選択ボックスによる選択は無視されます。 |
「Update kernel」ボタンを押すと、Linuxカーネルイメージのダウンロードが始まり、その後フラッシュメモリの更新が開始されます。
6.4.7.4.5. AT Admin: System - Save & Load
Save & Loadでは、変更した各種システム設定のフラッシュメモリへの保存や、以前の設定状態の回復・初期化、システムの再起動などを行うことができます。
6.4.7.4.5.1. Save & Load System Settings
システム設定の保存・回復を行うための項目です。
- 現在の設定をフラッシュに保存する(Save)
Network SettingsやPasswordで適用した設定をフラッシュメモリに保存します。保存した設定は、一旦Armadilloの電源を切断した後、次回以降の起動時にも有効になります。
- 現在のシステム設定を破棄し、フラッシュに保存されている元の設定に戻す(Reload)
現在動作している設定を破棄し、フラッシュメモリに保存されている設定を読み出して以前の状態に戻します。以下のような画面が表示された後、Armadilloは新しい(フラッシュメモリから読み出された)ネットワーク設定で動作を開始します。
以前の設定に戻した結果、ネットワーク接続が変更された場合は、ArmadilloのLED(赤)が点灯します。LED(赤)の消灯を確認してから、Armadilloのトップページにアクセスしてください。
- 現在のシステム設定を破棄し、初期状態の設定にする(Restore Defaults)
現在動作している設定を破棄し、システム設定を動作中のファームウェアにおける初期状態にします。フラッシュメモリに保存されている設定についても初期化されます。
6.4.7.4.5.2. System Reboot
システムの再起動を行うための項目です。
再起動後、ネットワーク接続を変更している間は、ArmadilloのLED(赤)が点灯します。10秒~数分後に消灯しますので、これを確認してから改めてArmadilloトップページにアクセスしてください。
Armadilloは、Bonjourに対応しています。このため、同じネットワーク上のBonjourに対応するPCから、Armadilloを容易に見つけ出すことができます。
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(Apple社Webサイトより引用)
| 「Bonjour」について |
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「Bonjour」は、ゼロコンフィギュレーション・ネットワークとも呼ばれていますが、IPネットワーク上のコンピュータ、デバイス、およびサービスを自動的に検出するサービスです。「Bonjour」では、業界標準のIPプロトコルが使用されているので、IPアドレスを入力したりDNS サーバーを設定しなくても、デバイスが相互に自動的に検出されます。 |
WindowsでBonjourを利用するには、Bonjour SDK for Windowsをインストールする必要があります。このソフトウェアは二次配布が許可されていないため、開発セットに付属していません。アップル社のWEBサイトからダウンロードしてください。
Bonjour for Developers
ダウンロードした「bonjoursdksetup.exe」を実行し、表示される画面に従って適切にインストールしてください。
Mac OS XではBonjourは標準搭載されています。
Linuxでは、Avahiおよびnss-mdnsライブラリを利用して、Bonjourを扱うことができます。詳しくは、お使いのディストリビューションのドキュメントなどを参照してください。
Bonjourを使ってArmadilloの検出を行います。ここでは例としてWindows環境を使います。他のOSで作業する場合はそれぞれの環境のマニュアルを参照してください。
Windows PCでInternet Explorerを起動します。
Bonjourがインストールされると、Internet Explorer(以下、IE)のエクスプローラー バーにBonjourの表示をすることが可能になります。メニューバーの「表示(V)」→「エクスプローラー バー(E)」→「Bonjour」にチェックを入れてください。
IE左側のエクスプローラー バー「Bonjour」を見てください。
1行目は、Bonjourについて書かれたApple社WEBサイトへのリンクになっています。
その下に「AT Admin on armadillo440-0 [00:11:0C:XX:XX:XX]」,「http on armadillo440-0 [00:11:0C:XX:XX:XX]」と表示されています。これが、Armadilloへのリンクです。「AT Admin on armadillo440-0 [00:11:0C:XX:XX:XX]」をダブルクリックすると、ブラウザにat-cgiのトップページが表示されます。詳しくは「at-cgi」を参照してください。「http on armadillo440 [00:11:0C:XX:XX:XX]」をダブルクリックすると、ブラウザにWebサーバーのトップページが表示されます。
エクスプローラー バーに「http on armadillo440 [00:11:0C:XX:XX:XX]」が表示されない場合は、
「BonjourからArmadilloを発見できない」
を参照してください。「AT Admin」が表示されない場合、
「初期状態でのネットワーク接続機構」
を参照してPCのネットワーク設定を適切に行ってください。
Bonjourによるホスト名の表示は、Armadilloに設定されたホスト名(初期状態では「armadillo440-0」)と同じになります。また、Bonjourのネットワーク名は「.local」となっています。このため、Bonjourから開いたWebブラウザのURLは通常「http://armadillo440-0.local/」となります。
ただし、同じネットワーク上に同一のホスト名が存在した場合(初期状態のArmadilloを複数接続するなど)、この2台目以降のホスト名は、末尾の数字が変化します。例えば、初期状態の名称でこのような状態になると、2台目は「http://armadillo440-1.local/」、3台目は「http://armadillo440-2.local/」…となります。この場合2台目以降のArmadilloは、結果的に「AT Admin」上で設定されたホスト名とBonjourホスト名が一致しないことになりますので、注意してください。
このような場合でも、MACアドレスによって固体を判別することは可能です。Internet ExplorerのBonjourリストにはMACアドレスが表示されますので、S/Nシールに記載されているMACアドレスとの比較で特定することができます。
図6.25「エクスプローラー バー "Bonjour"」
を参照してください。