第7章 Linux無線LANインターフェースから使う

本章では、Linux無線LANインターフェースを通してAWL13を使用する方法について説明します。

7.1. 無線LANに繋いでみる

表5.1「アクセスポイントの設定」で調べたアクセスポイントの設定に合わせて、無線LAN接続の設定をします。

暗号化方式が、WPA-PSKまたはWPA2-PSKの場合は、図7.1「アクセスポイントの設定(暗号化方式がWPA-PSK、またはWPA2-PSKの場合)」を、暗号化方式がWEPの場合は、図7.2「アクセスポイントの設定(暗号化方式がWEPの場合)」を参考に無線LANの設定を行ってください。

[PC ~]# iwconfig awlan0 essid [essid]                     1
[PC ~]# iwconfig awlan0 mode Managed                      2
[PC ~]# iwpriv awlan0 set_psk [passphrase]                3
[PC ~]# iwpriv awlan0 set_cryptmode [encryption]          4

1

接続するアクセスポイントのESSIDを設定します。[essid]は、接続するアクセスポイントのESSIDに置き換えてください。

2

接続モードをインフラストラクチャモード(STA)に設定します。

3

PSK(暗号化キー)を設定します。[passphrase]は、接続するアクセスポイントの暗号化キーに置き換えてください。

4

暗号化方式を設定します。[encryption]は、暗号化方式に合わせて置き換えてください。暗号化方式に対応する設定値は表7.1「暗号化方式の設定値」をご参照ください。

図7.1 アクセスポイントの設定(暗号化方式がWPA-PSK、またはWPA2-PSKの場合)


[PC ~]# iwconfig awlan0 essid [essid]                     1
[PC ~]# iwconfig awlan0 mode Managed                      2
[PC ~]# iwpriv awlan0 set_cryptmode [encryption]          3
[PC ~]# iwconfig awlan0 enc [key]                         4

1

接続するアクセスポイントのESSIDを設定します。[essid]は、接続するアクセスポイントのESSIDに置き換えてください。

2

接続モードをインフラストラクチャモード(STA)に設定します。

3

暗号化方式を設定します。[encryption]は、暗号化方式に合わせて置き換えてください。暗号化方式に対応する設定値は表7.1「暗号化方式の設定値」をご参照ください。

4

WEPキー(暗号化キー)を設定します。[key]は、接続するアクセスポイントの16進数の暗号化キーに置き換えてください。

図7.2 アクセスポイントの設定(暗号化方式がWEPの場合)


表7.1 暗号化方式の設定値

暗号化方式設定値
WEP(キー長: 64bits)WEP64
WEP(キー長: 128bits)WEP128
WPA-PSK(TKIP)WPA-TKIP
WPA-PSK(AES)WPA-AES
WPA2-PSK(TKIP)WPA2-TKIP
WPA2-PSK(AES)WPA2-AES

アクセスポイントに接続できていることを確認します。

[PC ~]# iwconfig awlan0
awlan0    IEEE 802.11bgn  ESSID:"access-point-essid"
          Mode:Managed  Frequency:2.412 GHz  Access Point: XX:XX:XX:XX:XX:XX
          Bit Rate:65 Mb/s   Sensitivity:-37 dBm
          Encryption key:off
          Power Management:off
          Link Signal level=-35 dBm
          Rx invalid nwid:0  Rx invalid crypt:0  Rx invalid frag:0
          Tx excessive retries:0  Invalid misc:0   Missed beacon:0

図7.3 アクセスポイントに接続できているかの確認例


iwconfigコマンドの結果で、Access Point:にBSSID(アクセスポイントのMACアドレス)が表示されていれば、アクセスポイントへの接続は完了です。

続いてネットワークの設定を行ないます。接続の確認に設定が必要なIPアドレスとネットマスクの設定します。IPアドレスとネットマスクの設定を行うには、ifconfigコマンドを使用します。

[PC ~]# ifconfig [interface] [ip address] up

図7.4 IPアドレスの設定


[interface]は、AWL13のインターフェース名(例. awlan0)に書き換えてください。[ip address]はAWL13に設定するIPアドレスに置き換えてください。

接続確認用PCまでネットワークがつながっているか、pingコマンドを使用して確認します。

[PC ~]$ ping -c 4 192.168.0.1
PING 192.168.0.1 (192.168.0.1) 56(84) bytes of data.
64 bytes from 192.168.0.1: icmp_req=1 ttl=128 time=1.72 ms
64 bytes from 192.168.0.1: icmp_req=2 ttl=128 time=1.77 ms
64 bytes from 192.168.0.1: icmp_req=3 ttl=128 time=2.91 ms
64 bytes from 192.168.0.1: icmp_req=4 ttl=128 time=1.77 ms

--- 192.168.0.1 ping statistics ---
4 packets transmitted, 4 received, 0% packet loss, time 3005ms
rtt min/avg/max/mdev = 1.723/2.045/2.916/0.503 ms

図7.5 pingを使用してAWL13がネットワークに接続されているかの確認例(宛先IPアドレスが192.168.0.1の場合)


[ティップ]ホストPCをAWL13以外のネットワークに接続している場合の注意点

ホストPCが、AWL13以外のネットワークに接続している場合、接続確認時にAWL13以外のネットワークが使用されてしまうことがあります。その場合、正しく接続確認ができないため、AWL13以外のネットワークへの接続を無効にしてから、接続確認を行ってください。

これで一通り無線LANによる通信が確認できました。無線LANにはこれ以外にも多くの設定項目があります。次の章からは、暗号化方式別の設定や、WPSの設定方法、省電力モードなど、AWL13で設定可能な機能について説明します。

7.2. 各種機能

7.2.1. 通信設定

7.2.1.1. インフラストラクチャモード(STA):暗号化なし

インフラストラクチャモード(STA)で暗号化なしのアクセスポイントと接続するための手順を示します。

ここで設定している無線パラメータは以下の通りです。

項目設定値
ESSIDmyessid

[PC ~]# cat fwimage[version]_STA_[mode].bin > /sys/module/awl13_[mode]/awlan0/firmware
[PC ~]# iwpriv awlan0 fwload            1
[PC ~]# iwpriv awlan0 fwsetup           2
[PC ~]# iwconfig awlan0 essid myessid   3
[PC ~]# iwconfig awlan0 enc off         4
[PC ~]# iwconfig awlan0 mode Managed    5
[PC ~]# ifconfig awlan0 192.168.0.1 up  6

1

ファームウェアをロードします。

2

ファームウェアを起動します。

3

ESSIDを設定します。

4

WEPキーを無効にします。

5

無線をアクティブにします。

6

IPアドレスを設定します。

図7.6 インフラストラクチャモード(STA):暗号化なしで接続する手順


7.2.1.2. インフラストラクチャモード(STA):WEP-64ビット

インフラストラクチャモード(STA)でWEP-64ビットのアクセスポイントに接続するための手順を示します。

ここで設定している無線パラメータは以下の通りです。

項目設定値
ESSIDmyessid
WEPキー1234567890

[PC ~]# cat fwimage[version]_STA_[mode].bin > /sys/module/awl13_[mode]/awlan0/firmware
[PC ~]# iwpriv awlan0 fwload               1
[PC ~]# iwpriv awlan0 fwsetup              2
[PC ~]# iwconfig awlan0 essid myessid      3
[PC ~]# iwpriv awlan0 set_cryptmode WEP64  4
[PC ~]# iwconfig awlan0 enc 1234567890     5
[PC ~]# iwconfig awlan0 mode Managed       6
[PC ~]# ifconfig awlan0 192.168.0.1 up     7

1

ファームウェアをロードします。

2

ファームウェアを起動します。

3

ESSIDを設定します。

4

暗号化方式を設定します。

5

WEPキーを設定します。

6

無線をアクティブにします。

7

IPアドレスを設定します。

図7.7 インフラストラクチャモード(STA):WEP-64ビットで接続する手順


7.2.1.3. インフラストラクチャモード(STA):WPA (TKIP)

インフラストラクチャモード(STA)でWPA-PSK(TKIP)のアクセスポイントに接続するための手順を示します。

ここで設定している無線パラメータは以下の通りです。

項目設定値
ESSIDmywpatkip
PSKパスフレーズmypresharedkey
暗号化方式WPA-PSK(TKIP)

[PC ~]# cat fwimage[version]_STA_[mode].bin > /sys/module/awl13_[mode]/awlan0/firmware
[PC ~]# iwpriv awlan0 fwload                  1
[PC ~]# iwpriv awlan0 fwsetup                 2
[PC ~]# iwconfig awlan0 essid mywpatkip       3
[PC ~]# iwpriv awlan0 set_psk mypresharedkey  4
[PC ~]# iwpriv awlan0 set_cryptmode WPA-TKIP  5
[PC ~]# iwconfig awlan0 mode Managed          6
[PC ~]# ifconfig awlan0 192.168.0.1 up        7

1

ファームウェアをロードします。

2

ファームウェアを起動します。

3

ESSIDを設定します。

4

PSKを設定します。

5

暗号化方式を設定します。

6

無線をアクティブにします。

7

IPアドレスを設定します。

図7.8 インフラストラクチャモード(STA):WPA-PSK(TKIP)で接続する手順


7.2.1.4. インフラストラクチャモード(STA):WPA2(AES)

インフラストラクチャモード(STA)でWPA2-PSK(AES)のアクセスポイントに接続するための手順を示します。

ここで設定している無線パラメータは以下の通りです。

項目設定値
ESSIDmywpa2aes
PSKパスフレーズmypresharedkey
暗号化方式WPA2-PSK(AES)

[PC ~]# cat fwimage[version]_STA_[mode].bin > /sys/module/awl13_[mode]/awlan0/firmware
[PC ~]# iwpriv awlan0 fwload                  1
[PC ~]# iwpriv awlan0 fwsetup                 2
[PC ~]# iwconfig awlan0 essid mywpa2aes       3
[PC ~]# iwpriv awlan0 set_psk mypresharedkey  4
[PC ~]# iwpriv awlan0 set_cryptmode WPA2-AES  5
[PC ~]# iwconfig awlan0 mode Managed          6
[PC ~]# ifconfig awlan0 192.168.0.1 up        7

1

ファームウェアをロードします。

2

ファームウェアを起動します。

3

ESSIDを設定します。

4

PSKを設定します。

5

暗号化方式を設定します。

6

無線をアクティブにします。

7

IPアドレスを設定します。

図7.9 インフラストラクチャモード(STA):WPA2-PSK(AES)で接続する手順


7.2.1.5. アドホックモード:WEP-64ビット

アドホックモードでWEP-64ビット接続するための手順を示します。

ここで設定している無線パラメータは以下の通りです。

項目設定値
ESSIDmyadhoc
WEPキー1234567890
チャンネル1

[PC ~]# cat fwimage[version]_STA_[mode].bin > /sys/module/awl13_[mode]/awlan0/firmware
[PC ~]# iwpriv awlan0 fwload               1
[PC ~]# iwpriv awlan0 fwsetup              2
[PC ~]# iwconfig awlan0 mode Ad-Hoc        3
[PC ~]# iwconfig awlan0 essid myadhoc      4
[PC ~]# iwpriv awlan0 set_cryptmode WEP64  5
[PC ~]# iwconfig awlan0 enc 1234567890     6
[PC ~]# iwconfig awlan0 channel 1          7
[PC ~]# ifconfig awlan0 192.168.0.1 up     8

1

ファームウェアをロードします。

2

ファームウェアを起動します。

3

接続モードを「Ad-Hoc」に設定します。

4

ESSIDを設定します。

5

暗号化方式を設定します。

6

WEPキーを設定します。

7

チャンネルを設定します。

8

IPアドレスを設定します。

図7.10 アドホックモード:WEP-64ビットで接続する手順


7.2.1.6. インフラストラクチャモード(AP)

インフラストラクチャモード(AP)として使用する場合の手順を示します。

ここで設定している無線パラメータは以下の通りです。

項目設定値
ESSIDmyap
チャンネル1
PSKパスフレーズmypresharedkey
暗号化方式WPA2-PSK(AES)

[PC ~]# cat fwimage[version]_AP_[mode].bin > /sys/module/awl13_[mode]/awlan0/firmware
[PC ~]# iwpriv awlan0 fwload               1
[PC ~]# iwpriv awlan0 fwsetup              2
[PC ~]# iwconfig awlan0 essid myap      3
[PC ~]# iwpriv awlan0 set_psk mypresharedkey     4
[PC ~]# iwpriv awlan0 set_cryptmode WPA2-AES  5
[PC ~]# iwconfig awlan0 channel 1          6
[PC ~]# iwconfig awlan0 mode Master        7
[PC ~]# ifconfig awlan0 192.168.0.1 up     8

1

ファームウェアをロードします。

2

ファームウェアを起動します。

3

ESSIDを設定します。

4

PSKを設定します。

5

暗号化方式を設定します。

6

チャンネルを設定します。

7

無線をアクティブにします。

8

IPアドレスを設定します。

図7.11 インフラストラクチャモード(AP):WPA2(AES)で使用する手順


7.2.2. WPSの使用方法

WPS(Wi-Fi Protected Setup)機能は、無線LAN機器との接続やセキュリティに関する設定を簡単にすることができます。アクセスポイントとステーションの双方がWPSに対応していれば、必要最低限の操作で無線LAN接続を実現することが可能です。

WPSには、プッシュボタン(PBC)方式とPIN(personal identification number)コード方式の2通りの仕組みがあります。プッシュボタン方式では、アクセスポイントとステーションのそれぞれに搭載した専用ボタンを押すか、専用のコマンドを実行することで、ステーションがアクセスポイントに接続するための設定が完了します。PINコード方式では、PINコードと呼ばれる8桁の数字を使用し、設定を行います。

また、WPSの認証の結果、クレデンシャルと呼ばれるセキュリティ情報を取得します。WLANモジュールでは、このクレデンシャルを、WLANモジュールで管理するか、ホストで管理するかを選択することができます。WLANモジュールでクレデンシャルを管理するモードをスタンドアロンモードと言います。ホストでクレデンシャルを管理するモードをホスト管理モードと言います。

AWL13では、以下の方式に対応しています。

  • プッシュボタン方式(スタンドアロンモード)

  • プッシュボタン方式(ホスト管理モード)

  • PINコード方式(スタンドアロンモード)

  • PINコード方式(ホスト管理モード)

7.2.2.1. プッシュボタン方式(スタンドアロンモード)の使用方法

本章では、WPS(プッシュボタン方式/スタンドアロンモード)の使用方法について説明します。

以下に、WPS(プッシュボタン方式/スタンドアロンモード)を使用するには、以下の手順を行ってください。

  1. AWL13のWPS(プッシュボタン方式/スタンドアロンモード)を開始

    ホストPCで、以下のコマンドを実行してください。

    [PC ~]# iwconfig awlan0 mode Managed   1
    [PC ~]# iwpriv awlan0 set_wpsdmd 0     2
    [PC ~]# iwpriv awlan0 set_wpsst 2      3

    1

    通信モードをインフラストラクチャモード(STA)に設定

    2

    スタンドアロンモードに設定

    3

    WPS(プッシュボタン方式)開始

    図7.12 WPS(プッシュボタン方式/スタンドアロンモード)開始


  2. アクセスポイントのWPS(プッシュボタン方式)を開始

    アクセスポイントのWPS(プッシュボタン方式)を開始してください。具体的な方法はアクセスポイントのマニュアルを参照してください。

  3. WPSの終了を確認

    WPSの設定が終了したことを確認します。

    [PC ~]# iwpriv awlan0 get_wpsst   1
    0                                 2

    1

    WPSの状態を確認するためのコマンドを実行

    2

    iwprivコマンドの実行結果が、WPSが終了していることを示す0であることを確認

    図7.13 WPSの終了確認


[ティップ]AWL13に保存したクレデンシャルを使用した接続について

WPS(スタンドアロンモード)で接続した場合は、接続した時のクレデンシャルがAWL13内のEEPROMに保存されます。AWL13再起動後、EEPROMに保存したクレデンシャルを使用してアクセスポイントに接続するには、iwpriv [interface] set_wpsdmdコマンドを使用して、起動時のデフォルトである、ホスト管理モードから、スタンドアロンモードに切り替えてください。

7.2.2.2. プッシュボタン方式(ホスト管理モード)の使用方法

プッシュボタン方式(ホスト管理モード)の使用方法について説明します。

ホスト管理モードとは、クレデンシャをホストPCで保存、管理するモードです。

  1. AWL13のWPS(プッシュボタン方式/スタンドアロンモード)を開始

    ホストPCで、以下のコマンドを実行してください。

    [PC ~]# iwconfig awlan0 mode Managed   1
    [PC ~]# iwpriv awlan0 set_wpsdmd 1     2
    [PC ~]# iwpriv awlan0 set_wpsst 2      3 

    1

    通信モードをインフラストラクチャモード(STA)に設定

    2

    ホスト管理モードに設定

    3

    WPS(プッシュボタン方式)開始

    図7.14 プッシュボタン方式(ホスト管理モード)開始


  2. アクセスポイントのWPS(プッシュボタン方式)を開始

    アクセスポイントのWPS(プッシュボタン方式)を開始してください。具体的な方法はアクセスポイントのマニュアルを参照してください。

  3. WPSの終了を確認

    WPSの設定が終了したことを確認します。ホスト管理モードではスタンドアロンモードと違い、この時点では、アクセスポイントへの接続は行いません。

    [PC ~]# iwpriv awlan0 get_wpsst   1
    0                                 2

    1

    WPSの状態を確認するためのコマンドを実行

    2

    iwprivコマンドの実行結果が、WPSが終了していることを示す0であることを確認

    図7.15 WPSの終了確認


  4. クレデンシャルの取得

    以下のコマンドを実行してください。クレデンシャルを取得し、ファイルとして保存します。

    [PC ~]# iwpriv awlan0 get_wpslist permit                                             1
    [PC ~]# cat /sys/module/awl13_[mode]/awlan0/wps_cred_list > /tmp/wps_cred_list.bin   2

    1

    クレデンシャルをAWL13の内部バッファに読み込む。

    2

    AWL13の内部バッファに読み込んだクレデンシャルをファイルに書きだす。

    図7.16 クレデンシャルの取得


  5. クレデンシャルの設定

    ファイルとして保存してあるクレデンシャルの設定を基に、無線LANの設定を行い、アクセスポイントへ接続します。

    [PC ~]# cat /tmp/wps_cred_list.bin > /sys/module/awl13_[mode]/awlan0/wps_cred_list   1
    [PC ~]# iwpriv awlan0 set_wpslist permit                                             2

    1

    クレデンシャルをAWL13の内部バッファに書き込む。

    2

    AWL13の内部バッファに書き込んだクレデンシャルを使用して無線LANの設定を行い、接続する。

    図7.17 クレデンシャルの設定


7.2.2.3. PINコード方式(スタンドアロンモード)の使用方法

WPS(PINコード方式/スタンドアロンモード)を用いて、無線LAN設定を行う方法について説明します。

  1. AWL13のWPS(PINコード方式/スタンドアロンモード)の準備

    ホストPCで、以下のコマンドを実行してください。

    [PC ~]# iwconfig awlan0 mode Managed        1
    [PC ~]# iwpriv awlan0 set_wpsdmd 0          2 
    [PC ~]# iwpriv awlan0 set_wpspin 77613110   3

    1

    通信モードをインフラストラクチャモード(STA)に設定

    2

    スタンドアロンモードに設定

    3

    PINコードを設定[14]

    図7.18 WPS(PINコード方式/スタンドアロンモード)準備


  2. アクセスポイントのWPS(PINコード方式)を開始

    アクセスポイントのWPS(PINコード方式)を開始してください。具体的な方法はアクセスポイントのマニュアルを参照してください。

  3. AWL13のWPS(PINコード方式/スタンドアロンモード)を開始

    ホストPCで、以下のコマンドを実行してください。

    [PC ~]# iwpriv awlan0 set_wpsst 1   1

    1

    WPS(PINコード方式)開始

    図7.19 AWL13のWPS(PINコード方式/スタンドアロンモード)開始


  4. WPSの終了を確認

    WPSの設定が終了したことを確認します。

    [PC ~]# iwpriv awlan0 get_wpsst   1
    0                                 2

    1

    WPSの状態を確認するためのコマンドを実行

    2

    iwprivコマンドの実行結果が、WPSが終了していることを示す0であることを確認

    図7.20 WPSの終了確認


[ティップ]AWL13に保存したクレデンシャルを使用した接続について

WPS(スタンドアロンモード)で接続した場合は、接続した時のクレデンシャルがAWL13内のEEPROMに保存されます。AWL13再起動後、EEPROMに保存したクレデンシャルを使用してアクセスポイントに接続するには、iwpriv [interface] set_wpsdmdコマンドを使用して、起動時のデフォルトである、ホスト管理モードから、スタンドアロンモードに切り替えてください。

7.2.2.4. PINコード方式(ホスト管理モード)の使用方法

PINコード方式(ホスト管理モード)を用いて、WPSをの使用方法について説明します。 WPS(PINコード方式/スタンドアロンモード)を用いて、無線LAN設定を行う方法について説明します。

  1. AWL13のWPS(PINコード方式/ホスト管理モード)の準備

    ホストPCで、以下のコマンドを実行してください。

    [PC ~]# iwconfig awlan0 mode Managed        1
    [PC ~]# iwpriv awlan0 set_wpsdmd 1          2 
    [PC ~]# iwpriv awlan0 set_wpspin 77613110   3

    1

    通信モードをインフラストラクチャモード(STA)に設定

    2

    スタンドアロンモードに設定

    3

    PINコードを設定[15]

    図7.21 WPS(PINコード方式/ホスト管理モード)準備


  2. アクセスポイントのWPS(PINコード方式)を開始

    アクセスポイントのWPS(PINコード方式)を開始してください。具体的な方法はアクセスポイントのマニュアルを参照してください。

  3. AWL13のWPS(PINコード方式/ホスト管理モード)を開始

    ホストPCで、以下のコマンドを実行してください。

    [PC ~]# iwpriv awlan0 set_wpsst 1    1

    1

    WPS(PINコード方式)開始

    図7.22 WPS(PINコード方式/ホスト管理モード)開始


  4. WPSの終了を確認

    WPSの設定が終了したことを確認します。ホスト管理モードではスタンドアロンモードと違い、この時点では、アクセスポイントへの接続は行いません。

    [PC ~]# iwpriv awlan0 get_wpsst   1
    0                                 2

    1

    WPSの状態を確認するためのコマンドを実行

    2

    iwprivコマンドの実行結果が、WPSが終了していることを示す0であることを確認

    図7.23 WPSの終了確認


  5. クレデンシャルの取得

    以下のコマンドを実行してください。クレデンシャルを取得し、ファイルとして保存します。

    [PC ~]# iwpriv awlan0 get_wpslist permit                                             1
    [PC ~]# cat /sys/module/awl13_[mode]/awlan0/wps_cred_list > /tmp/wps_cred_list.bin   2

    1

    クレデンシャルをAWL13の内部バッファに読み込む。

    2

    AWL13の内部バッファに読み込んだクレデンシャルをファイルに書きだす。

    図7.24 クレデンシャルリストの取得


  6. クレデンシャルの設定

    ファイルとして保存してあるクレデンシャルの設定を基に、無線LANの設定を行い、アクセスポイントへ接続します。

    [PC ~]# cat /tmp/wps_cred_list.bin > /sys/module/awl13_[mode]/awlan0/wps_cred_list   1
    [PC ~]# iwpriv awlan0 set_wpslist permit                                             2

    1

    クレデンシャルをAWL13の内部バッファに書き込む。

    2

    AWL13の内部バッファに書き込んだクレデンシャルを使用して無線LANの設定を行い、接続する。

    図7.25 クレデンシャルリストの設定


7.2.2.5. PINコードの生成方法

WPS(PINコード方式)で無線LAN接続の設定を行う場合は、PINコードを使用する必要があります。AWL13は、デフォルトPINコードとして、「39494962」を保持していますが、PINコードを変更する場合は、別途生成する必要があります。

PINコードは8桁の数字が使用されますが、この中にはチェックサムが含まれています。チェックサムを含むPINコードを生成する場合は、以下の生成ルールに従う必要があります。

8桁PINコードの構成は、以下のようになっています。

【7桁のランダム番号】+【1桁のチェックサム値】

チェックサム値は、7桁のランダム番号から、以下の計算で導きだすことが可能です。

10 - mod[16]((7桁目の数字 * 3 + 6桁目の数字 + 5桁目の数字 * 3 + 4桁目の数字 + 3桁目の数字 * 3 + 2桁目の数字 + 1桁目の数字 * 3),10)

例えば7桁のランダム番号が「4747697」だった場合のチェックサム値は、以下のような計算になります。

10 - mod((4 * 3 + 7 + 4 * 3 + 7 + 6 * 3 + 9 + 7 * 3),10) = 4

上記の計算の結果、1桁のチェックサム値が「4」のため、PINコードは「47476974」になります。

7.2.3. 省電力モードの使用方法

WLANモジュールは、いくつかの省電力機能を搭載しています。使用できる省電力機能を以下に示します。

  • パワーマネージメント機能

  • スリープ機能

[ティップ]USBハブの使用について

USBハブを使用してAWL13を接続した場合、省電力モードは使用できません。

7.2.3.1. パワーマネージメント

AWL13は、IEEE802.11 規格のパワーマネージメント機能を利用することができます。パワーマネージメント機能が有効になると、消費電力低減を実現しながら アクセスポイントとの接続は維持したままデータ通信が可能です(ただし、通信パフォーマンスは低下します)。

パワーマネージメント機能は、USBモードでは使用できません。SDIOモード、またはUARTモードで使用することができます。本章では、SDIOモードの場合の使用方法について説明します。

IEEE802.11 規格のパワーマネージメントでは、以下の方法があります。

  • 高速パワーマネージメント(Normal)

  • 高速パワーマネージメント(Max)

  • PS-POLLパワーマネージメント(Normal)

  • PS-POLLパワーマネージメント(Max)

高速パワーマネージメントは、APからデータを送信したいことを通知されると、一時的に省電力状態から抜け出して、APからの送信データをまとめて受信した後、再び省電力状態に戻るという方式です。

PS-POLLパワーマネージメントは、APからデータを送信したいことを通知されると、省電力状態を維持したままPS-POLLと呼ばれるデータ要求フレームをステーションからアクセスポイントに送信して、アクセスポイントにバッファされているフレームを1つずつ受信する一般的な方式です。したがって、複数のフレームがアクセスポイントにバッファされている場合は、高速パワーマネージメント方式の方が応答性は高くなります。

[ティップ]パワーマネージメント機能実行中の注意点
  • アクセスポイントスキャン時の処理が間欠動作に変更されます。スキャン時以外の時は休止状態に移行します。

  • パワーマネージメント(Max)を設定すると、アクセスポイントの DTIM 周期を無視します。従って使用するアプリケーションによっては通信に問題が発生する場合があります。

[ティップ]SDIOインターフェースを使用している場合の注意点

パワーマネージメント機能が有効な場合でも、スリープ機能を実行することができます。この場合、一時的にパワーマネージメント機能が無効になり、スリープ機能が解除された時点で、パワーマネージメント機能が再度有効になります。

以下のコマンドでパワーマネージメントを設定します。

[PC ~]# iwpriv awlan0 set_power_man <設定値>

設定値は、以下の数値に置き換えてください。

表7.2 パワーマネージメント設定値

設定値説明
0パワーマネージメント無効
1高速パワーマネージメント(Normal)
2高速パワーマネージメント(Max)
3PS-POLLパワーマネージメント(Normal)
4PS-POLLパワーマネージメント(Max)

7.2.3.2. スリープ

AWL13にはローム独自方式のスリープ機能が搭載されています。

ローム独自仕様の省電力機能の設定・参照をします。長時間 WLAN を停止したい場合に利用できます。SDIOインターフェースを利用している場合のみ有効です。

スリープを使用した場合、即座に休止状態に移行します。アクセスポイントに接続中でも休止状態に移行するため、それ以降に送られてきたデータは破棄される可能性があります。また休止状態から復帰した後の回線接続は保証されません。アクセスポイントがすでに回線を切断している場合は、再接続を行います。

[PC ~]# iwpriv awlan0 set_pow_save <設定値>

設定値は、以下の数値に置き換えてください。

表7.3 スリープ設定値

設定値説明
0アクティブ
2スリープ

[ティップ]

スリープ中に、アクティブ状態に移行する設定以外のコマンドを発行しないで下さい(動作が保証されません)。また、再度スリープ状態を設定しないようにしてください。必ず一旦アクティブに移行させてから、再びスリープを発行するようにしてください。

7.3. Linux無線LANインターフェースを使うツール

ワイヤレスネットワークインタフェースの設定を行うツールについて簡単に説明します。もしお使いの作業用PCにツールがインストールされていない場合は、ここで紹介されているツールをインストールしてからお使いください。

7.3.1. Wireless Tools

Wireless Toolsに含まれる代表的なコマンドの書式と、パラメータの説明をします。

7.3.1.1. iwconfig

ワイヤレスネットワークインタフェースの参照・設定を行います。

構文

iwconfig [インタフェース名] [パラメータ]

代表的なパラメータの設定値について、以下に示します。

表7.4 パラメータの一覧

パラメータ説明
mode通信モード
essidSSID
encWEPキー
channelチャンネル
rate通信レート
txpower出力調整[18]

7.3.1.2. iwlist

ワイヤレスネットワークインタフェースの詳細情報を表示します。

構文

iwlist [インタフェース名] [パラメータ]

代表的なパラメータについて、以下に示します。

表7.5 パラメータ一覧


7.3.1.3. iwpriv

ワイヤレスネットワークインタフェースのプライベートパラメータを設定、取得します。

構文

iwpriv [インタフェース名] [プライベートコマンド][19]

パラメータの設定値について、以下に示します。

表7.6 パラメータ一覧

パラメータ説明
set_cryptmode/get_cryptmode暗号化方式
set_psk/get_psk事前共有キー(PSK)
set_power_man/power_manパワーマネージメント
set_pow_save/pow_saveスリープ
get_macaddrMACアドレス
set_log_level/get_log_levelログレベル
fwloadファームウェアのロード
fwsetupファームウェアの起動
set_wpspin/get_wpspinPINコード
set_auth_type/auth_type認証方式
set_scan_chmode/scan_chmodeサイトサーベイのモード
set_join_reqネットワークへの参加
set_11i_mode/11i_mode暗号化方式
set_scan_type/scan_typeスキャニング方法
set_beacon_int/beacon_intビーコン間隔
set_listen_int/listen_intビーコン受信間隔
set_dtim_period/dtim_periodDTIM通知周期
set_bcast_ssid/bcast_ssidブロードキャストSSIDオプション
set_scan_filter/scan_filterサイトサーベイ時のフィルター
set_wpsdmd/get_wpsdmdWPSのデバイスモード
set_wpsst/get_wpsstWPS認証動作モード
fw_verファームウェアのバージョン
driver_verデバイスドライバーのバージョン
set_wpslist/get_wpslistWPS クレデンシャル
set_rmt_wkup/rmt_wkupRemote Wakeup 信号出力時間

7.3.2. sysfs

sysfsで設定、取得できる項目について説明します。




[14] 設定するPINコードについては、「PINコードの生成方法」を参照してください。

[15] 設定するPINコードについては、「PINコードの生成方法」を参照してください。

[16] mod(x,y)は、xをyで割った余りを示します。

[17] ファームウェア v4.3.2以降で有効です。対応するデバイスドライバーは v3.0.2 以降です。

[18] AWL13デバイスドライバ v3.0.2以降で有効です。

[19] プライベートコマンドは、iwpriv [インタフェース名]を実行することで一覧されます。

[20] TU(Time Unit) = 1024 us

[21] ファームウェア v4.3.2以降で有効です。対応するデバイスドライバーは v3.0.2 以降です。