第3章 製品概要

3.1. 製品の特長

3.1.1. Armadilloとは

「Armadillo (アルマジロ)」は、ARMコアプロセッサ搭載・Linux対応の組み込みプラットフォームのブランドです。Armadilloブランド製品には以下の特長があります。

◆ ARMプロセッサ搭載・省電力設計

ARMコアプロセッサを搭載しています。1~数ワット程度で動作する省電力設計で、発熱が少なくファンを必要としません。

◆ 小型・手のひらサイズ

CPUボードは名刺サイズ程度の手のひらサイズが主流です。名刺1/3程度の小さなCPUモジュールや無線LANモジュール等、超小型のモジュールもラインアップしています。

◆ 標準OSとしてLinuxをプリインストール

標準OSにLinuxを採用しており、豊富なソフトウェア資産と実績のある安定性を提供します。ソースコードをオープンソースとして公開しています。

◆ 開発環境

Armadilloの開発環境として、「Atmark Techno Development Environment (ATDE)」を無償で提供しています。ATDEは、VMwareなど仮想マシン向けのデータイメージです。このイメージには、Linuxデスクトップ環境をベースにGNUクロス開発ツールやその他の必要なツールが事前にインストールされています。ATDEを使うことで、開発用PCの用意やツールのインストールなどといった開発環境を整える手間を軽減することができます。

3.1.2. Armadillo-IoTゲートウェイG3Lとは

Armadillo-IoTゲートウェイG3Lは、組み込みプラットフォームとして実績のあるArmadilloをベースにした、IoT/M2M向けのゲートウェイを簡単に、素早く開発するためのプラットフォームです。高い自由度と、開発のしやすさ、組み込み機器としての堅牢性をバランスよく兼ね備えており、オリジナルの商用IoTゲートウェイを市場のニーズに合わせてタイムリーに開発したい方に好適です。

モバイル通信(LTE)対応

モバイル通信用に、LTE対応モジュールを搭載しています。Armadillo-IoT専用回線プランも各社から提供されており、LTE対応機能をすぐに導入できます。

Linuxをベースとしたソフトウェアスタック

標準OSとしてLinuxをプリインストールしているため、オープンソースソフトウェアを中心とした、各種ソフトウェア資産を活用できます。また、RubyやOracle Javaにも対応しているため、C/C++言語以外でのソフトウェア開発が可能です。

クラウド対応

MQTTクライアントなど、クラウドシステムと相性の良いソフトウェアスタックをプリインストール。また、各社のクラウドサービス対応エージェントが、Armadillo-IoT向けにポーティング済みなので、クラウドと連携したシステムが開発しやすくなっています。

3.2. 製品ラインアップ

Armadillo-IoT ゲートウェイ G3L の製品ラインアップは次の通りです。

表3.1 Armadillo-IoT ゲートウェイ G3L ラインアップ

名称型番
Armadillo-IoTゲートウェイG3L D1モデル開発セットAGL3000-D10Z
Armadillo-IoTゲートウェイG3L D1モデル量産用 (LTE搭載、WLANコンボ非搭載)[a]AGL3000-C10Z
Armadillo-IoTゲートウェイG3L D1モデル量産用 (LTE搭載、WLANコンボ搭載)[a]AGL3000-C11Z

[a] 発売予定


3.2.1. Armadillo-IoTゲートウェイG3L開発セット

Armadillo-IoTゲートウェイG3L開発セット(型番:AGL3000-D10Z)は、Armadillo-IoTを使った開発がすぐに開始できるように、開発に必要なものを一式含んだセットです。

表3.2 Armadillo-IoTゲートウェイG3L開発セットのセット内容

Armadillo-IoT ゲートウェイG3L 本体 (LTEモジュール、WLAN+BTコンボモジュール、WLAN + BT用基板アンテナ搭載)
3G/LTE用 外付けアンテナ 03 (2個)
開発用USBシリアル変換アダプタ
USB2.0ケーブル(Aオス-miniBタイプ)
ACアダプタ(12V)
アンテナホルダー
ジャンパーソケット
ネジ類
開発用DVD-ROM

3.2.2. Armadillo-IoTゲートウェイG3L量産用

Armadillo-IoT ゲートウェイ G3L 量産用(型番:AGL3000-C10Z/AGL3000-C11Z)は、Armadillo-IoTを使った製品の量産用モデルです。

量産用モデルのうち、AGL3000-C10ZはWLANコンボモジュール非搭載です。

量産用モデルでは、どちらのモデルもWi-SUNモジュールはオプションでの搭載となります。

付属品など、量産時に必要なものを同時に発注することができる「BTOサービス」に対応しています。 詳細についてはお問い合わせください。

3.3. 仕様

Armadillo-IoTゲートウェイG3Lの主な仕様は次のとおりです。

表3.3 仕様

項目AGL3000-D10ZAGL3000-C10ZAGL3000-C11Z

プロセッサ

NXP Semiconductors i.MX7Dual

Main: ARM Cortex-A7 x 2

- 命令/データキャッシュ 32KByte/32KByte

- L2キャッシュ 512KByte

- 内部SRAM 256KByte

- メディアプロセッシングエンジン(NEON)搭載

- Thumb code(16bit 命令セット)サポート

Secondary: ARM Cortex-M4

- 命令/データキャッシュ 16KByte/16KByte

システムクロック

CPUコアクロック(ARM Cortex-A7): 966MHz

CPUコアクロック(ARM Cortex-M4): 240MHz

DDR クロック: 533MHz

源発振クロック: 32.768kHz, 24MHz

RAM

DDR3L:512MByte

バス幅 32bit

ROM

QSPI NOR型フラッシュメモリ:8MByte

eMMC(SLC Mode): 約 3.8GiB

LAN(Ethernet)

RJ-45 x 1

100BASE-TX/10BASE-T, AUTO-MDIX対応

無線LAN/BT

WLAN+BTコンボモジュール TI製 WiLink WL1837MOD 搭載

IEEE 802.11a/b/g/n and BT

非搭載

WLAN+BTコンボモジュール TI製 WiLink WL1837MOD 搭載

IEEE 802.11a/b/g/n and BT

モバイル通信

LTE Cat1モジュール Gemalto製 Cinterion ELS31-J搭載 [a] [b]

microSIMスロット x 1

Wi-SUN

非搭載

Wi-SUNモジュール ROHM製 BP35A1オプション搭載可能

シリアル

RS422 or RS485

SD/MMC

microSDスロット x 1

USB

USB 2.0 Host x 1 (High Speed)

スイッチ

ユーザースイッチ x 1

LED

ユーザーLED x 3

電源電圧

DC 8.0V~26.4V

消費電力

6W以下 (突入時およびUSB給電時を除く)

使用温度範囲 [c]

-10~50℃

外形サイズ

140 x 59.9 x 31.0mm (突起部、アンテナを除く)

重量

約 240g[d]

約 220g

[a] 外付けアンテナを接続する必要があります。

[b] LTEモバイル通信microSIMカード(NTTドコモのLTEエリア対応のもの)は別売です。

[c] 結露無きこと。

[d] ACアダプター、USBシリアル変換アダプタ、USB2.0ケーブル、開発用DVD-ROM、ジャンパーソケットは含まず。


3.4. Armadillo-IoTゲートウェイG3Lの外観

Armadillo-IoTゲートウェイG3Lの外観

図3.1 Armadillo-IoTゲートウェイG3Lの外観


Armadillo-IoTゲートウェイG3Lの各部名称

図3.2 Armadillo-IoTゲートウェイG3Lの各部名称


表3.4 各部名称と機能

番号名称説明
1LANコネクタLANケーブルを接続します。
2USBコネクタUSBメモリ等を接続します。
3シリアルポートRS422/RS485のシリアルケーブルを接続します。
4電源コネクタ1付属のACアダプタを接続します。
5電源コネクタ2付属のACアダプタ以外の電源ケーブルを接続します。
6デバッグシリアルコネクタ付属のUSBシリアル変換アダプタを接続します。
7microSIMスロットmicroSIMカードを接続します。
8microSDスロットmicroSDカードを接続します。
9ユーザーLED3ユーザーで自由に機能を設定できる緑色LEDです。
10ユーザーLED4
11ユーザーLED5
12ユーザースイッチユーザーで自由に機能を設定できるタクトスイッチです。
13無線LAN用基板アンテナ無線LAN用の内蔵アンテナです。
14920MHz帯基板アンテナWi-SUN用の内蔵アンテナです。(オプション)
15アンテナコネクタ1付属のLTE用外付けアンテナを取り付けます。
16アンテナコネクタ2

3.5. ブロック図

Armadillo-IoTゲートウェイG3Lは、メインユニットとサブユニットで構成されています。ブロック図は次のとおりです。

Armadillo-IoT ゲートウェイ G3L ブロック図

図3.3 Armadillo-IoT ゲートウェイ G3L ブロック図


3.6. ソフトウェア構成

Armadillo-IoT で動作するソフトウェアの構成について説明します。

Armadillo-IoT で利用可能なソフトウェアを表3.5「Armadillo-IoTで利用可能なソフトウェア」に示します。

表3.5 Armadillo-IoTで利用可能なソフトウェア

ソフトウェア説明
U-Bootブートローダーです。工場出荷状態ではブートローダーイメージはQSPIフラッシュメモリに配置されています。
Linuxカーネルバージョン3.14のLinuxカーネルです。工場出荷状態ではLinuxカーネルイメージはeMMCに配置されていますが、ブートローダーの機能によりmicroSDカードに配置することもできます。
Debian GNU/LinuxDebian Projectによって作成されたLinuxディストリビューションです。パッケージ管理システムを備えているため、Debian Projectが提供する豊富なソフトウェアパッケージを簡単に追加することができます。工場出荷状態ではDebian GNU/LinuxのルートファイルシステムはeMMCに配置されていますが、LinuxカーネルがサポートしているmicroSDカードなどのストレージデバイスに配置することもできます。

Armadillo-IoT のQSPIフラッシュメモリのメモリマップを表3.6「QSPIフラッシュメモリ メモリマップ」に示します。

表3.6 QSPIフラッシュメモリ メモリマップ

物理アドレスサイズ説明

0x00000000

0x001003FF

約 1 MByte

U-Bootブートローダーイメージ

0x00100400

0x001403FF

256 KBytes

ライセンス情報

0x00140400

0x007FFFFF

約 6.7 MBytes

予約領域


Armadillo-IoT のeMMC のメモリマップを表3.7「eMMC メモリマップ」に示します。

表3.7 eMMC メモリマップ

パーティションサイズ説明

1

32 MBytes

Linux カーネルイメージ/Device Tree Blob

2

約 3.4 GBytes

Debian GNU/Linux

3

128 MBytes

リカバリイメージ